1 はじめに
これまで日本共産党と旧しばき隊を含む、カウンター勢力関係者との金銭的な繋がりや、東京のサブカル/アート系活動家との関係を明らかにしてきました。
これら従来の日本共産党では考えにくいコネクション作りを党内の誰がどういう意図で行なっていたのかは不明でした。
他方、長年の日本共産党ウォッチャーの方が主催するウェブサイトで以下のような投稿が2014年に行われていることを発見しました。
「姫井二郎」なる党職員が旧しばき隊の源流の1つ首都圏反原発連合と党との関係を取り持っていたというのです。姫井氏はもともと日本民主青年同盟中央委員長で、党中央委員会の国民運動委員会で長らく働いている職員です(現在は准中央委員で国民運動委員会事務局次長、つまり、幹部職員です)。
本当だろうかと思いつつ調べてもこのサイトくらいしか話は出てきません。思い切って主宰の方に連絡をして協力を仰ぎました。すると、2024年10月に以下のような投稿をしてくださいました。
こうして「姫井二郎」氏についての調査が始まりました。この報告では彼に関して集められた情報をまとめていきます。
2 姫井氏の自己開示
さて、冒頭のウェブサイトの呼びかけにある方が以下のブログ記事を投稿してくださいました。
ブログタイトルは「じろうの胃がん闘病記」。掲載されている写真と志位和夫氏のウェブサイトに提示されている姫井二郎氏の民青委員長時代の写真(上右)を比べると同一人物であることがわかります。
そしてブログ掲載の猫の写真は「姫井二郎」を名乗るTwitter(X)のアカウント写真と同じです。
姫井二郎氏のブログ、そして、X(Twitter)アカウントと見ていいでしょう。
上に示したブログ記事には次のようにあります。
「素人の乱の松本さん」は「松本哉」氏、「ツィットノーニュークスの平野さん」は「平野太一」氏、「反原発首都圏連合の操さん」は「ミサオ・レッドウルフ」氏です。
日本共産党中央委員会の職員が党外の活動家、いわゆる「新左翼」と親密に交際し、一体化している様子が見て取れます。従来、新左翼を「ニセ『左翼』暴力集団」と忌み嫌っていた日本共産党の姿勢からすれば大きな転換に見えました(それも2012年と10年以上昔です)。
続いて「姫井二郎」氏のXアカウントと他の活動家との交際を検索してみました。まずは凍結された「野間易通」氏の以前のアカウント(@kdxn)を軸に見ていきます。
Facebookのアカウントも発見しました。アカウント写真が2012年投稿のもので、写っているのは姫井氏です。こちらも彼のものと理解して良いでしょう。
「友達」の中には数多くの311以降の有名活動家の名前があります。
左上から「野間易通」氏、「山本匠一郎」氏、「奥田愛基」氏、左下「服部至道」氏、「二見元気」氏、「ミサオ・レッドウルフ」氏、「諏訪原健」氏
また、日本共産党関係の「友達」も多数います。
左上から「味口俊之」氏、「宮本たけし」氏、左下「坂井希」氏、「香西かつ介」氏、「田中悠」氏
驚いたのが「味口俊之」氏で、彼は「東郷ゆう子」氏が原告の「灘民商事件」に関連して訴えられた日本共産党の地方議員です(資料)。
このように彼のブログやSNSでの交友関係を見てみると「姫井二郎」氏が党外活動家と党との接点である可能性が高いです。
3 元党職員の告白
そうこうしているうちに例のウェブサイトの主宰の方より連絡があり、元党職員の方を紹介していただけることになりました。
ここではこの方(以降、福本氏と仮名で呼びます)のインタビューをまとめていきます。福本氏は日本共産党関連団体の地方組織で働いたのち、東京本部に異動し、そこで姫井氏と出会います。最終的には再び地方に異動し党を離れますが姫井氏から党中央と党外活動家たちとの関係を詳細に聞いたと言います。
福本氏からの最初の情報提供は以下のようになっています。
「ミサオ氏や野間氏とつながり、その話が志位氏に伝わり、引き続き反原連とつながりをもって、志位氏の『特命係』となって、取り組みの様子を直接報告する立場に」とあるように、姫井氏は志位委員長の特命を受けて、党外の活動家と関係を持っていたというのです。
福本氏とはこの情報提供に沿って長時間インタビューを行い、文字起こし記録を作成しましたが、ここでは上記内容に関連するものを抜粋します(身元保護のため詳細な記録の公開については検討段階)。
まずは姫井氏が在籍している国民運動委員会について尋ねました。
続けて311以降の姫井氏の動向について尋ねます。このインタビューの核心部分です。
志位氏の特命を受け、姫井氏は反原発運動で活動家と党との関係を構築していったようです。誇らしげな姫井氏に周囲はどのような反応だったのでしょうか。
福本氏ら他の党職員や活動家も姫井氏の敷いた路線に乗り、党外の活動家との連携を強めて行きます。しかし、その中で違和感を覚え始めます。
福本氏は結局、姫井路線で始めた運動を取りやめていったと言います。
再度、姫井氏の役割について尋ねます。
姫井氏の報告が組織運営上、重宝されていた。こうして姫井氏は党でも重要な立場になっていくわけです。
しかし、姫井氏の行動は腑に落ちません。ある種の孤立主義をとっていた日本共産党がどうしてこのような開放政策に出たのか。
姫井氏のオープンな態度は党外の人々を利用するとともに、党そのものを外部の人々に利用させてしまう。姫井氏をきっかけに党のリソースが党外の活動家に食い物にされる。そういう構図ができてしまったということでしょう。
この出来事は10年ほど前の出来事です。つまり、日本共産党が今よりもまだ若かった時代、最後の組織拡大が可能だった時代です。この時代、党中央は党基盤の拡大よりも外部の活動家たちの取り組みに組織を動員することを重視していたようです。これは論理的に考えて党勢拡大に資するものではなかったのですが、「官邸前の盛り上がりが党勢になっていくはずだ」という思い込みのまま、突き進んだ、そうして自分たちの基盤を再形成するチャンスを逃したと理解できます。
他人のデモに党議員や党員を動員しても動員元の組織に人が集まるわけでありません。例えば、日本共産党が支援したデモに数百人集まった、若い人も集まった。赤旗に写真を載せて自分たちの功績であるように示す。しかしながら、ここに集まった人たちは日本共産党の理念に共感して集まった人たちでもなんでもないのです。他人のデモを自分たちの運動と取り違え錯覚し、自分たちの足元が疎かになっていく。
野党共闘も同じであり、単純に候補者を取り下げただけで達成感を覚える。自分たちは何かをしたように感じる。実際は選挙をしないことで組織全体の回転が落ちて、選挙戦略や現場での選挙技術も継承されなくなるわけで、自分で自分の首を絞めているだけだったわけです。
例えデモやカウンターの現場でオルグができても、結局は党とは異なる運動理論のもとに集った人々が入党するだけです。それらは日本共産党が培ってきた組織的伝統とは相容れない価値観を持つ人々である可能性は高いわけです。
4 「YouTuber小池晃」について
インタビュー後、福本氏はあるYouTube動画を私に送ってきました。小池晃のYouTubeチャンネル「YouTuber小池晃」の「年越しラーメン @どうげんぼうず」(2023年12月31日投稿)です。カウター勢力と近しいといわれる「どうげんぼうず」というラーメン屋に小池晃書記局長が来訪するという動画です。
福本氏曰く、小池氏と店主の間に映り込む男性、これが姫井氏であると。
中央の男性が姫井氏だという
食券を買うシーン。確かに姫井氏である
偶然でしょうか。動画では他の客はモザイク処理をしています(下写真)。
しかし姫井氏にはモザイクはかかっていません。制作スタッフが姫井氏を認知していたから、あるいは彼が制作側だったからではないか(つまり一種のエキストラ出演)とそのように思われます。
戸田市議選事件の際、姫井氏はみろく氏を党幹部で最も早く擁護する投稿をしました。
そして、党側がみろく氏を擁護する動画を出したのはこの「YouTuber小池晃」チャンネルです。このチャンネルではみろく氏が以前、ゲストに出演していましたし(2024年5月14日 下左)、東京都知事選挙の「WE WANT OUR FUTURE」による蓮舫氏の街宣も配信しています(2024年6月30日 下右)。
制作にはJCPサポーターが関与しているようです。チャンネル概要欄には以下のように書いています。
なお、JCPサポーターは塩田潤氏がイベントで司会をしていた日本共産党の組織です。
JCPサポーターと小池晃のYouTubeチャンネルを軸に、姫井氏とみろく氏、塩田氏、そして、小池氏が交差します。
5 おわりに
さて、ここまでの検討をまとめましょう。
本報告では、日本共産党の近年の党外の活動家との連携・交流の中心に日本共産党の幹部職員の姫井二郎氏がいた可能性について、複数の資料や証言に基づいて検証を進めてきました。従来、日本共産党は内部の組織運営や伝統的な枠組みを重視し、外部との接点を控える傾向にあった組織です。しかし、姫井氏が接点、あるいはきっかけになって、日本共産党は反原発運動や「首都圏反原発連合」といった市民運動との交流を通じ、党外との結びつきを模索していた可能性が指摘される結果となりました。
検証の過程では、姫井氏自身によるブログやSNS上の発信、また元党職員の方の証言などから、姫井氏が志位委員長の特命を受けて党外活動家との連絡役として働いていた点が浮かび上がりました。この点に関しては、党内部の伝統的な運営スタイルと比較して、より柔軟なアプローチが試みられていたと考えられ、またその結果、党のリソースが意図せずして党外の運動体に利用された可能性も見受けられました。
さらに、姫井氏がJCPサポーターと繋がりのある「YouTuber小池晃」チャンネルにも関与している可能性が示唆されました。
こうした動向を踏まえると、JCPサポーターが党外の活動家と姫井氏との現在の結節点として機能しているのではないかという視点も、慎重ながら浮かび上がってくる結果となりました。
本検証を通じて得られた私の認識は、姫井氏と党外活動家との私的な関係が、この10年の日本共産党の方針に大きな影響を与えたのではないかというものです。SNS上で姫井氏と党外活動家とのやり取りは、世界中に発信されているにもかかわらず、大人同士の交わりとしてはやや幼い印象を受け、まるで私信のように気心の知れた間柄であることが感じられました。また、彼のブログには党外活動家への羨望の眼差しが隠さず記されており、姫井氏自身が従来の日本共産党に飽き足らず、より自由で格式ばらない運動を志向していたのではないかと捉えられます。
翻ってみれば、ここ10年の日本共産党は、市民に向けてより開かれた、フランクな方向へと舵を切った側面があるとも言えます。これは、姫井氏と党外活動家とのやり取りの中に見て取れるものと呼応しているように感じられます。しかしながら、これらの動きを可能にした背景には、福本証言をもとに考えると党最高幹部である志位和夫氏の恩恵があったとも解釈でき、すなわち、中央集権的な指導体制=民主集中制のもとで、志位氏の特命係である姫井氏ならではの「自由の行使」があったのではないかという印象を拭えません。結局なところそれは「絶対的権威の恩寵のもとでの自由」というわけであり、現在の日本共産党が持つ「開かれて閉ざされた顔」の正体なのかなと感じました。
公開日:2025年3月2日
原稿作成にChatGPTを用いました