1 はじめに
これまで日本共産党の政治資金報告書を分析する中で、宣伝事業費やデザイン料名目の高額支出が見られ、その一部がカウンター勢力(旧しばき隊系人脈)やその周辺に流れている疑いが浮上しました。
また、旧しばき隊の源流の一つ首都圏反原発連合や市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)をはじめとする(日本共産党がいう「民主団体」とは違う、党と独立的な立場の)市民団体に対しても資金援助を行おうとした痕跡や疑念が指摘されています。
このように、党からいわゆる「市民」に向かう資金・人材の流れは従来の「市民と野党の共闘」だけでは説明がつきにくく、より詳細な検証を要する状況です。
ところで「市民と野党の共闘」で思い出されるのは2024年の東京都知事選挙で「市民と野党」に支援された蓮舫氏が惨敗した事件です。あのとき、「フェス的な街宣」、そして小池都知事への選挙妨害=カウンター、そして、街中に残されたRシールが問題になりました。これら蓮舫陣営の奇妙な選挙戦略について着目し、私はその効果に関して大規模なアンケート調査をしてきました。
従来の選挙スタイルとは一線を画す革新的で奇妙な手法でしたが、効果はなかったというのが結論です。
この選挙は、これまでの野党共闘、つまり「市民」なるものと「立憲野党」とされる各党との結びつきを紐解く上で重要なキーポイントだと考えられます。つまり、暴力的な選挙手法、フェス的な奇抜な選挙手法とをそれぞれ好む人々と、野党、今回の場合、日本共産党が交差する地点にあの選挙があったということです。
今回は、これら別々の事象の結びつきを紐解くため、日本共産党が事実上支援する若手政治学者について注目しながら議論を進めていきます。最終的に私は東京にある、オールドレフトから支援を受ける「ある人脈」の存在を明らかにしていきたいと思います。
2 若手政治学者「塩田潤」氏への支出
日本共産党中央委員会の政治資金報告書によりますと、2019年(令和元年)から2022年(令和4年)にかけて、毎年20万円超の支払いが「塩田潤」なる人物に対して行われていました。
「塩田潤」氏に関しては、同名の若手政治学者がいます。2016-2021年は神戸大学大学院で博士後期課程の学生をしていました。のちに詳細なプロフィールを確認しますがこの人で間違いないでしょう。
この支払いは「宣伝事業費(デザイン料)」という名目で計上されており、同様の名目で井手氏に対する支払いも確認されています。なぜ、政治学者に対して「デザイン」なのか、疑問が持たれました。
塩田氏への初回の支払日は、日本共産党の現職衆議院議員宮本たけし氏が野党共闘を掲げ、無所属で出馬した衆院補選大阪12区の投開票日(2019年4月21日)翌日の22日です。関係者によれば、塩田氏は選挙期間中に宮本たけし氏の事務所で目撃されていました。
この補欠選挙ではバーニー・サンダース氏の選挙活動に用いられたデザインが酷似しているとの指摘もあり、塩田氏が「デザイン料」という名目で関わっていたとすれば彼が盗用に関与した疑いも出てきます。
このバーニー・サンダース氏の選挙デザイン盗用問題について、塩田氏や宮本たけし氏本人に対して2024年10月に質問メールを送付しましたが、現時点では返信が得られていません(塩田氏については上記「デザイン料」支払いの実態についても質問しました)。なお、サンダース事務所およびデザインを担当した制作者側にも連絡済みです。
さらに2025年2月28日現在、最新の2023年(令和5年)の政治資金報告書を見ると、塩田氏への支払いは前年までの20万円超という水準から大幅に増加し、年間およそ150万円(144万7816円)に達していることがわかりました。
不自然なほどの急増です。このように、2019年から2022年にかけての不透明な支払いと、2023年の大幅な増額が重なったことにより、塩田氏と日本共産党の関係、そして塩田氏が実際に従事していた業務や役割について疑問を持たざるを得なくなりました。
3 「塩田潤」氏について
塩田潤氏が日本共産党中央から「宣伝事業費(デザイン料)」として支払いを受けていた期間中、その受取先の住所は東大阪市から大阪市内、そして東京都内へと段階的に変更されていることが確認されています。
最初の東大阪市の住所は、日本共産党の東大阪市議の「塩田清人」氏と同一であり、苗字も同じです。このことから、塩田氏と東大阪市議との親族関係が推測される状況です。
塩田氏は2011年に民青(日本民主青年同盟)京都府委員会主催の東日本大震災へのボランティア活動で実績があり、その後、「SEALDs KANSAI」(令和3年[2021]12月に解散済み。日本共産党大阪府委員会、IWJ報道記事)や「関西市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める関西市民連合)」においても幹部的な役割を担っていたと見られています(赤旗での報道参照。関西市民連合では代表を務めていた)。
なお、関西市民連合の会計責任者「湊隆介」氏は、2023年4月に日本共産党公認で大阪市会議員選挙に立候補したものの落選した人物であり、関西市民連合が日本共産党との人脈的なつながりが深い組織であることがうかがえます。
また、塩田氏はJCPサポーター五周年記念祭に司会として参加し、志位和夫氏とも共演しています(参照1 参照2)。
塩田氏は2022年(令和4年)頃から東京での非常勤講師のポジションを得ていますが、東京での担当大学は2022年度に1校[関西4校]、2023年度に2校[関西2校]、2024年度に2校[関西0校]と変化しています。以下、彼の研究者プロフィールページより。
2024年4月 - 現在 独立行政法人日本学術振興会, 特別研究員(PD)
2024年4月 - 現在 立教大学, 法学部 政治学科, 非常勤講師
2022年4月 - 現在 法政大学, キャリアデザイン学部, 非常勤講師
2023年4月 - 2024年3月 江戸川大学, 社会学部 現代社会学科, 非常勤講師
2021年4月 - 2024年3月 京都光華女子大学, キャリア形成学部, 非常勤講師
2020年4月 - 2024年3月 神戸大学, 大学院国際協力研究科, 部局研究員
2020年4月 - 2024年3月 龍谷大学, 法学部 政治学科, 非常勤講師
2021年4月 - 2023年3月 関西大学, 政策創造学部, 非常勤講師
2021年4月 - 2023年3月 大阪大谷大学, 人間社会学部, 非常勤講師
一方で「独立行政法人日本学術振興会, 特別研究員」の受け入れ大学は京都の龍谷大学です。制度上、拠点大学の近くに居を構える必要はありませんが、他方で関西在住者が首都圏に移住する根拠には全くなり得ません。なお、受け入れ研究者の龍谷大学渡辺博明氏は安保法制に反対する学者の会の「賛同者署名リスト」に名前があります。
塩田氏の動向を追うと、2023年、市民連合の事務局業務にも携わるようになっています。2023年9月14日、市民連合と「立憲野党」との意見交換会に彼の名前が事務局として明記されています(「市民連合からは、運営委員の中野晃一さん、高田健さん、菱山南帆子さん、事務局として福山真劫さん、竹内広人さん、菊地敬嗣さん、塩田潤さんが参加」)。
市民連合の事務局は以前、SEALDsとその後継団体のメンバーが担当しており、若手活動家への経済的支援のスキームの一環ではないかと私は指摘していました。
2023年(令和5年)の市民連合の政治資金報告書では人件費は245万9049円です。上記事務局メンバーについては福山氏、竹内氏は自治労の元職員で、年齢的には年金支給がされている可能性が高いです(竹内氏について)。菊地氏は元々、各種団体が運営に携わる、立憲左派や社民党と関係が強い「フォーラム平和・人権・環境」(平和フォーラム)の職員です。
年齢的には塩田氏が最も若手であり、プロパーとして活動していた職員を考えると彼に対しての支払いが大きくなることは想像に難くありません。
2023年については市民連合の人件費に加え、日本共産党中央から支払われる報酬などを合算すると単身であれば東京で生活が成り立つ金額は得られていたと考えられます。もちろん、非常勤講師としての年俸もありますが、それだけではとても東京で生活は厳しいでしょう(なお、2024年度は学術振興会の研究員として報酬を得られるようになっています)。
そう考えると、日本共産党や市民連合からの資金は実質的な生活支援になっているのではないかとの見方も可能でしょう。
4 市民連合の不可解な支出
ところで2023年の市民連合の政治資金報告書を確認すると、以前指摘した政治資金パーティでの資金集めはこの年は行っておらず、他方でチラシやポスターを高い利益率で販売して資金を得ていました。
「統一自治体選挙ビラ」が210万円、「フェミブリッジプラカード」が240万円、合計して450万円の売り上げになっています。この年の収入が673万8632円ですので、66.8%はビラとプラカードの販売収益になっています。なお、印刷費を含む制作費はビラで33万8470円、プラカードで37万9935円ですから、ビラの利益は176万1530円(利益率83.9%)、プラカードで202万65円(利益率84.2%)、合計の利益は378万1595円(利益率84.0%)となります。普通の事業ではあり得ないものです。
労働組合など大口の組織購入が中心と見られ、市民団体というイメージとはかけ離れた資金調達手法に相変わらず疑問を抱かせます。
ただし、2023年で注意すべきものは従来的な強引な収入方法ではなく、ここで儲けたお金をどのように使ったかです。2023年、単年度収入は673万8632円ですが、単年度での支出は705万685円と赤字なのです。
この年、市民連合は3つの大規模なイベントを行いました。2月5日に「戦争回避:本当に戦争は止められないのか?」(LOFT9 Shibuya)、3月19日「3.19オープン・ミーティング『みんなで話そう 子どもがつくる自由な学校』」(Galaxy銀河系)、6月2日「講義とクロストーク『非戦』大国のはざまの安全保障」(LOFT9 Shibuya)です。
「戦争回避」は司会が塩田氏で、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏の講演と、「dept.」という団体の代表eri氏と編集者/フォトグラファーの中里虎鉄氏と柳澤氏のトークとなっています。「みんなで話そう 子どもがつくる自由な学校」は町田ひろみ氏が司会で、世田谷区立桜丘中学校元校長の西郷孝彦氏と東京大学大学院教授の本田由紀氏がゲストです。「非戦」は再び塩田氏が司会で、ゲストは「ND」という団体の代表で弁護士の猿田佐世、防衛ジャーナリストの半田滋氏、先に登場したeri氏です。
「戦争回避」の売り上げは9万5000円、「みんなで話そう 子どもがつくる自由な学校」は2万9000円、「非戦」は5万9000円です。支出は「戦争回避」で57万3428円、「みんなで話そう 子どもがつくる自由な学校」で16万1542円、「非戦」で47万3460円です。3イベントとも大幅な赤字ですが、それぞれ「戦争回避」47万8428 円、「みんなで話そう 子どもがつくる自由な学校」13万2542円、「非戦」41万14460円です。信じられない規模の赤字です。
それぞれ大きな支出として、「戦争回避」は会場代が15万円、配信費が24万2000円、「みんなで話そう 子どもがつくる自由な学校」は会場費が10万6920円、「非戦」は会場費が15万円、配信費が24万2000円です。
会場費については参加人数は不明ですが、「戦争回避」は「高校生以下無料/ U23 1,000円 / 大人 2,000円(+1ドリンク代)」 、1人1500円で見積もり、売り上げ9万5000円で、想定人数は63人、「みんなで話そう 子どもがつくる自由な学校」は参加費が1000円で2万9000円の打ち上げで29人、「非戦」は「23歳以下1000円/大人2000円(飲食代別途必要)」で1500円として39人です。
市民連合は従来利用していた連合会館で100名程度の部屋(201会議室)であると土日祝日での午前午後でも7万4030円、50名程度の部屋(401会議室)であると土日祝日で4万5540円です。今回利用した会場については連合会館を比較すると概ね2倍のコストとなっています。
配信については「戦争回避」「非戦」ともにYouTubeが利用され、それぞれ2025年2月28日現在、3248回、2857回です。5000再生に満たない中で1再生に対しての費用は74.5円、84.7円。それらに対して費用は25万円弱と分不相応な感じもします。
市民連合ウェブサイトより。左端が塩田氏
支払い先について見ておきます。会場の1つ「LOFT9 Shibuya」はトークライブハウスで、反原発のイベントによく利用されていました。実は「LOFT9 Shibuya」を運営する株式会社ロフトプロジェクトは首都圏反原発連合の機関誌の発行住所になっていました(LoftProject気付扱い)。
「Galaxy銀河系」は展示会やライブを行う渋谷のレンタルスペースでしたが、2023年7月に閉鎖しています(以下、2025年3月2日追記)。カウンター勢力の活動家「山本匠一郎」氏はSNSに2023年7月9日以下の投稿をしています。
「Galaxy銀河系」はカウンター勢力などの政治活動家の御用達の会場だったようです。なお、上記投稿は解体直前に行われたパーティーの告知のものでした。以下、続きます。
7.15にこの空間で最後のパーティーをやります。7.16の朝から内装の解体が始まります。色々あって離れた人、まだ来たことがない人、ここに思い出がある人、本当の本当の最後なんで是非来てください。7.15(SAT) 14:00-23:30【Galaxy to Galaxy The Final Bash】LIVEhirano taichi西新宿パンティーズDragMadame Bonjour JohnJMaxim&Labianna JoroeMelodiasDJ1-DRINKDJ TASAKAThe Gospel RenegadeHibi Bliss & DJ PoipoiLark ChilloutMAYUDEPTHMars89LIVE PAINTING竹川宣彰MixyTape割高であることも併せて考えると、ともに労組系の市民団体「市民連合」が利用するには不合理な感じがします。
配信に関しては全て株式会社GENAUです。GENAUというと、市民メディアを歌いつつ立憲民主党から資金を受け取っていた「Choose Life Project」(CLP)の問題が出たとき、その制作を担当した会社として名前が上がった企業です。社長の中原大弐氏は元ピースボートの事務局長です。
3つのうち、2つのイベントの司会は塩田氏であり、内容的にも政治学者としての彼の趣向と合致する部分が多いことから、彼をメインに企画展開したものかと思われます。内容的にこの会場をこだわって利用する理屈は考えにくく、不可解な支出となっています。
対面かつ無料配信を合わせた有料イベントであることを考えれば、赤字前提でこれら企業に資金を流しているようにも思えます。しかし、これら企業は労組や左派政党の関連企業というよりも、リベラル寄りでありながらもどちらかと言えばサブカル/アート系の企業であり、その意図は不明です。
5 「WE WANT OUR FUTURE」とは?
「サブカル/アート系」という切り口が出てきましたが、オールドレフトの団体である市民連合はこの分野に食指を伸ばすのは首を傾げます。
調査を進める中で、2024年時点で塩田潤氏が「WE WANT OUR FUTURE」という団体に属していたことが判明しました。
この団体は、2024年の東京都知事選挙において蓮舫氏陣営を支援し、独特な選挙イベントを行ったことで注目を集めました(上:配信はCLPが行っています)。「WE WANT OUR FUTURE」のイベントではカウター人脈の井手実氏や山本匠一郎氏も運営を支えていました (下左:2021年10月16日16時48分、下右:2021年10月17日2時44分)。
この団体の中心人物の1人に気候変動アクティビストのeriという人物がいます(2024年6月30日の蓮舫氏街宣では「共同代表」となっている)。先ほど、市民連合のイベントで塩田氏と共演していた人物です。
彼女はファッションデザイナーであり、かつて原宿にあった古着店「DEPT」の創業者永井誠治氏の娘です。東京・中目黒で店を再開したようですが、コロナで閉店したようです。永井氏の店については「1980年代のカルチャーを牽引した伝説的な古着屋」と言われていたようです。東京のサブカルシーンにネットワークがあると伺える人物です。
eri氏は気候変動の活動家としても活躍しており、赤旗でもその活動が取り上げられ、田村智子委員長とも共演しています。
気候問題に取り組む企業グループ・活動家 “政府目標低すぎる” 共産党と懇談 温室効果ガス削減で 2024年12月14日
田村委員長のインスタライブ始まる どうやったら政治を共通の話題に? ゲストはアクティビストのeriさん 2024年4月20日(下写真)
2024年12月19日にはWE WANT OUR FUTURE」と彼女が牽引する団体「気候辞書」の経産省前座り込みイベントを開催し、野党各党の議員が参加するなど、東京では政治的影響力を持つ存在として認知されつつあります(SNSに投稿された下写真では、立憲民主党の辻元清美、福山哲郎、日本共産党の小池晃、笠井亮、岩渕友)。この様子は日本共産党機関紙の「赤旗」でも報道されました。
「赤旗」では同団体のイベントがかなりの数、報道され、全てに国会議員が参加しています。
2023年12月16日には「WE WANT OUR FUTURE」と「市民連合」が主催する国会前での集会にも日本共産党の小池晃、伊藤岳、山添拓、立憲民主党の吉田晴美、石川大我、社民党の福島瑞穂、大椿裕子が参加しています。2023年12月22日の「WE WANT OUR FUTURE」と「市民連合」が主催する国会前デモでは日本共産党の吉良よし子、立憲民主党の山岸、高木真理、社民党の福島瑞穂が参加、2024年3月1日の「WE WANT OUR FUTURE」主催の国会前集会には日本共産党の山添拓、伊藤岳、立憲民主党の枝野幸男、社民党の福島瑞穂が参加、 2024年4月26日の「WE WANT OUR FUTURE」主催の国会前集会には日本共産党の山添拓、吉良よし子が、立憲民主党、社民党の国会議員とともに参加しています。
「WE WANT OUR FUTURE」は、2024年の東京都知事選挙において蓮舫氏を支援する活動に積極的に関わりました。多くのサブカル/アーティストと連携し、蓮舫氏を推薦する声をSNSに投稿し続けました(以下SNS投稿より一部分。右下には戸田市議選事件でみろく氏を強く擁護した日本共産党の岡田じゅん子日野市議もいます)。
その中には日本共産党から巨額発注を受けている井手実氏や戸田市議選事件の家登みろく氏もいました。
蓮舫選挙で顕著だったフェス的な街宣はこの団体が主催した「WE WANT OUR FUTURE for RENHO WE WANT OUR FUTURE with RENHO」です。SNSで拡散された「CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU(君の瞳に恋してる)」が流れる中での「れんほっ、れんほっ、れんほっ」コール、そして「みんなすごいキレイだよ」というMC、あれを企画運営したのがこの団体であり、「みんなすごいキレイだよ」のMCがeri氏だったのです。ちなみにこの街宣を「赤旗」は「若者街宣」と呼び好意的に報道しています。
小池晃YouTubeチャンネル「YouTuber小池晃」2024年6月30日投稿より。蓮舫氏の左側にいるMC役の女性がeri氏
塩田氏は、この「WE WANT OUR FUTURE」のメンバーとしてサブカル/アート系ネットワークに深く入り込み、蓮舫氏を支援した「市民連合」の事務局として、そして日本共産党に非常に近い市民活動家として、それらを結びつける役割を果たしていたということでしょう。
6 謎の活動家コネクション
東日本大震災(2011年3月11日)以降の市民運動では、サブカル/アート系の活動家の活躍が顕著でした。首都圏反原発連合のミサオ・レッドウルフ氏はイラストレーター、しばき隊の野間易通氏は編集者であり元バンドマン、井手実氏も元バンドマンと、芸術分野にルーツを持つ人物が多く見られます。戸田市議選事件の家登みろく氏は俳人あり、彼女を擁護し、批判者に対して誹謗中傷を繰り返している鍋倉雅之氏も日本大学芸術学部出身のイラストレーターです。
こうした人脈・グループの特徴として、従来の「全国革新懇(平和・民主・革新の日本をめざす全国の会)」のように著名文化人が結集する組織とは異なり、セミプロやアマチュア、あるいは新興のサブカル/アート系の人材が中心となっている点が挙げられます。
首都圏反原発連合やしばき隊も、以前からサブカル/アート系の人脈を多く抱えていましたが、近年の活動の主力となっている層を見ると、以前とは異なる新しい顔ぶれが増えていることがわかります。
これらのサブカル/アート系ネットワークに対し、日本共産党の議員や党組織からの人的な支援が行われていると見られます。具体的な例として、「WE WANT OUR FUTURE」が主催するデモやイベントに、日本共産党議員が参加していることが確認されています。こうした支援が、党とサブカル/アート系活動家との関係をより密接なものにしている可能性があります。
2021年総選挙での「立憲野党」敗北によって、「市民連合」の中心で活動していた政治学者の山口二郎がSNSで次世代への交代を強調していました。
来年の参院選や今後の選挙をどのような戦略で戦うかは基礎から考え直さなければならないと思う。2015年の安保法制反対運動を起点とする市民運動と野党の協働という文脈はここでいったん終わることを認めるべき。市民参加の野党協力というスタイルをどう刷新するかは若い人に考えてもらいたい(2021年11月2日18時25分)
山口の願いの通り、「市民参加の野党協力というスタイルをどう刷新するか」、若い活動家=東京におけるリベラル勢力の中でこのサブカル/アート系活動家人脈が考えたのが、2024年の東京都知事選挙であり、塩田氏が事務局に入ってから行われたサブカル/アート系への資金支出による政治イベントであったとすると、それが良かったのか、悪かったのか・・・。
この人脈に日本共産党が食い込むために、デモ等への参加に加え、塩田氏への資金援助があったと考えるとその全容とその顛末は見えてくるかと思われます。「蓮舫選挙は共産党系」と言われる背景には、こうした人脈的な繋がりもあったわけです。
7 まとめ
ここまでの内容をまとめましょう。
日本共産党中央委員会から毎年20万円超で推移していた塩田氏への支払いが、2023年には150万円弱へと大幅に増加しています。これは、塩田氏が大阪から東京へ拠点を移し本格的な活動を始めるにあたり、党が仕事を与えながら経済的に支援していた可能性を示唆します。
塩田氏は東京進出後、市民連合の事務局業務にも携わっていたことが判明しています。そこから得られる報酬と、前述の日本共産党中央からの支援を合わせることで、東京での単身生活を維持できる程度の収入が確保されているとみられます。そうなると市民連合と日本共産党が連携し、塩田氏を支援する仕組みが形成されていた疑いが出てきます。
塩田氏を中心に調査を進める中で、東京のサブカル/アート系活動家ネットワークの存在が明らかになってきました。これは蓮舫氏のフェス的な選挙を実行したグループでした。この東京サブカル/アート系活動家の中にカウンター勢力も入り込み、さらには日本共産党の「まんなか世代」も関与していました。これらネットワークと日本共産党との接点には塩田氏の存在が象徴的に浮上します。
日本共産党に絞れば、そもそもこのような文化人との付き合いは伝統的には「民主団体」を通じて行われていたものであり、著名ではなく、また、党の指導下にいるわけでもない「サブカル/アート系活動家」にのめり込む道理は歴史的に考えて不思議な印象があります。
そもそもですが、どうして、この人脈に日本共産党にせよ、市民連合にせよ、東京の左翼活動家たちがのめり込むのか。感覚的な回答になるのですが、東京のオールドレフトが思い描く「若者」は「サブカル/アート系活動家」たちであり、「若者による選挙」は「蓮舫選挙」だったということかと思います。その中には旧しばき隊的な、いわゆる「イカつい」「不良文化」を引き継ぐ世界観を持つ中年男性たちも入っており、東京のオールドレフトにはこれが「ナウなヤングにバカウケ」というふうに見えたわけでしょう。
塩田氏については、彼がこのネットワークと党との関係の全てを担っているというよりも、党は彼のような人材に支援をする戦略的な意義があったということでしょう。
これは日本共産党の新しい変化なのでしょうか。いくつかの疑問が浮かびます。党中央の誰が、暴力をも辞さないカウンター勢力を含む「東京サブカル/アート系活動家ネットワーク」との連携を進めているのか。組織自体が高齢化し、党の存続自体が危ぶまれる中で、その人物はどのような意図をもって党外の活動家ネットワークを支援しているのか。そして、それが戸田市議選事件とどのように関連するのか。
全ての謎は東京、代々木にあるのです。
公開日:2025年3月1日
追記:2025年3月2日(「Galaxy銀河系」について)
修正:2025年3月24日(市民連合の利益計算を修正)
原稿作成にChatGPTを用いました