大学設置基準改正の最悪の帰結:「ケース4」

 これまで大学設置基準の改正に伴い人事の問題について議論をしてきましたが、ある意味でそれらを一気に覆すような話をします。

 

 文科省の説明資料を読んでいて、どうにもこうにも腑に落ちないケースが書かれていました(「ケース④」)。

 いわく「A学部及びB学部の教育課程の編成等に責任を担い、A学部及びB学部の教育課程における年間8 単位以上の授業科目を担当する教員(専ら当該大学の教育研究に従事する者)」はAとB、それぞれの学部の25%枠にそれぞれカウントしていい。あるいは、AかBの学部の従来的な意味での専任教員としてというのです。

 このケースは、「専ら当該大学の教育研究に従事する者」なので「フルタイム雇用」、そして、「A学部及びB学部の教育課程の編成等に責任を担い」なのでAとB、それぞれの学部の教授会に出席している状態です。さらに両学部の授業コマを年間それぞれ4つ以上持っているということです。

 この場合だとAとBの学部でダブルカウントできるというのです。「クロスアポイントメント」もクソもありません。例えば、教育学部の専任の先生に文学部の教職の授業を年間4コマ持たせて会議にも出席させたら、その人は文学部の専任の先生でもある、ということになります。兼務を法的に公認するのかとか、学位プログラムを強化するのかとか、おっしゃる方もいると思いますが、もう少しややこしいでしょう。兼務ではなく、専任としてのダブルカウント。これは建て付け上そうなった「結果」に思えます。つまり、「会議に出て年間4コマ持っていたら基幹教員」としたなら、同一大学内でもこれが適応可能になってしまうということなのです。


 感覚的にいえば、これヤバいです。

A学部が100名の教員、B学部が100名の教員、合計200名のフルタイム雇用がある。うち、A学部の教員25名がB学部の授業を年間8単位(4コマ)ずつ持たせた。そして、B学部の教授会に出席するように業務命令が出た。その場合、A学部の教員25名はB学部の25%枠、つまり、B学部の専任=基幹教員としてもカウントできます。すると、A学部とB学部の教員は合計200名だったのが、B学部の25名が削減でき、175名になります。余った25名は文字通り「余剰人員」。本来なら必要なかった雇用枠です。学生数は減っていないのに余剰人員が生まれたということです。

でも、こういう人もいるでしょう。年間4コマってそれなりに多いよと。だったらこう考えてください。1つの授業を2学部で別授業としてカウントするとどうでしょうか。学位プログラム的な発想としてです。B学部のカリキュラムの中にA学部開講の授業を取り込んでしまえば、A学部の教員にそれほどの負担をかけずに事が済むのではないか。この点は要検討でしょう。

どちらにせよ、極めて簡単な作業で現行の専任教員雇用が一気に減ってしまうのです。するとその余剰基幹教員枠が自然減するまで求人は一切起こらないことになりますし、現在専任の教員の負担も尋常じゃない水準に達すると考えられます。

多分、これが1番の絶望的なケースになるのではないでしょうか。

以下、動画でも説明しています。

公開日:2022年9月6日

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