はじめに
日本共産党津市議の中野裕子氏が、2025年6月に離党した。中野氏はその理由として、同党所属の三重県議・吉田あやか氏によるハラスメントを挙げているが、党機関はこれをハラスメントとは認定しなかった。この件に関連して、吉田氏の過去のSNS投稿が注目を集めている。
以下は、この投稿とその内容について調査、考察したものである。
「脱法ハーブ」投稿
2024年10月7日11時46分、大分市議会議員選挙に立候補していた深川雅司氏は、X(旧Twitter)にて以下のような投稿を行った。
共産党三重県議の吉田あやか氏が新SNSサービスである、スレッズでスピリチュアル系の紹介をしています。
僕が確認出来た投稿はコレ。
アフリカではイボガという植物を使い多幸感が得られる、医療では精神安定に使われるなどという動画を引用して紹介。
イボガにはイボガインという幻覚作用がある成分が含まれており、厚生労働省が平成27年に注意喚起をしているような植物並びに成分になります。
そんな脱法ドラッグのような物をスピリチュアルとして紹介し、自らも使用した事があるとし西洋医学では得られない効果があると絶賛。
とても医療従事者(元看護師)とは思えない浅はかさ。
日本共産党三重県委員会は説明責任があると思います。
また、フェミニズムに傾倒しており発言少々過激な発言も目立ち議員としての資質が問われると思います。
写真2の吉田議員の投稿のスクショをご覧ください。驚愕。
写真1と2は吉田あやか三重県議のスレッズより転載。
現在、このthreads上の投稿は確認できなくなっており、削除された可能性がある。ただし、深川氏は当時投稿が確認できた時点でスクリーンショットを取得していた。以下はその内容である。
西洋医学以外の精神医療って本当に日本では手が届きづらいよね、これだけストレスフルな社会なのに。精神疾患や障害へのスティグマ・偏見も強いし。イボガは自分の弱いところをガツッと背中を押してくれるようになるよ〜(私の経験では)
また、吉田氏が引用していたのは「botanicanna_wellness」というアカウントの「イボガとマニの歴史に迫る アニメでとても分かりやすく、現地の人々のエネルギーを感じでじんわり温まるムービー、必見です」(絵文字略)という投稿である。
「botanicanna_wellness」で検索すると以下のような結果が出てくる。
「イボセラでは、ガボンのbwiti属シャーマンと現地で交流や信頼関係を結んだ上でお取り引き」「セール終了まであと3時間」 とあるように「Iboga Tharapy Japan」というアカウントはイボガを販売するショップと思われる。
ただ、この「Iboga Tharapy Japan」、threadsのみならず、X、Instagram、各種サービスのアカウントおよびWebサイトを現在削除し、YouTubeチャンネルおよび運営元と考えられる「一般社団法人 Earth Frequency」なるWebサイトのみが残っているだけである。
「Earth Frequency」については、Webサイトで、
私たち(私/協会/お店)の発信している表現は、単なる情報や言葉ではなく、すべて魂からのメッセージです。無断での転載・使用はご遠慮ください。私の言葉やエッセンスを借りて、リーダーぶるのは自由。でも、それを“学び”ではなく“コピー”でやるなら、話は別です。本質は、表面だけの模倣では決して伝わりません。本当に届けたいのなら、協会で正式に学び、使用許可を得て、クリーンなエネルギーで発信してください。ベースが歪んだままでは、必ずどこかで軋みが生まれます。この場は、「表現の自由」だけでなく、「意識の成熟と共鳴」を育てるために存在しています。それぞれが意識的な選択を通して、豊かで尊いエネルギーの循環が生まれることを、心から願っています。 (「創設者からの手紙」より)
としているので、著作権法の許す限り引用は最低限にとどめたい。
問題の「Earth Frequency」は、「Iboga Tharapy Japan」関連アカウントの削除について「今回イボガセラピージャパンを閉めてメンバーズオンリーで始め直そうと思った理由は『正しいシャーマニズムやメディスンの教育そして安全な形での提供』の強化です」と説明している。
「botanicanna_wellness threads」で検索するとGoogleの検索ページにthreadsとInstagramのページログが残っている。以下、
「イボセラでは、ガボン のbwiti族シャーマンと現地で交流や信頼関係を結んだ上でお取引きをさせていただいています。 そしてなんと、55年物のプレミアムイボガの収穫 ...」(threads)
「ピグミー族 の伝統に感謝いたします ✨セール終了まであと3時間✨ 心身の癒しや目覚めを」(threads)
「新商品『マニのパウダー』数量限定で先行予約開始! 大人気で大容量もすぐ売り切れるマニティンクチャーですが、今回パウダーを入荷できる運びとなりました✨ イボガ...」(Instagram)
「Iboga Tharapy Japan」はイボガ等を現地から輸入していたようである。以下の検討に見るように2015年(平成27年)段階では厚労省は「日本におけるイボガイン含有食品の業としての輸入実績はありません」としている。
深川氏に改めて投稿の経緯を尋ねたところ、次のような経緯が説明された。
まず、吉田氏に関する「スピリチュアル疑惑」の投稿を見かけたことがきっかけで、深川氏は吉田氏の各種SNSアカウントを確認したという。最初に疑惑を指摘した人物は、吉田氏がストーリーズで高額なスピリチュアル商品を購入していたことに着目し、調査を始めたとされる(ストーリーという期限付き投稿のため以後は確認できない)。
その過程で、吉田氏がSNS「threads」において「脱法ハーブ」に関連する投稿をしていたことが発覚。深川氏はこれを問題視し、2024年10月7日に自身のXアカウントで告発的な投稿を行った。
当該投稿のスクリーンショットは10月6日に取得したものであり(スマホ内に記録が残っていた)、吉田氏による問題の投稿は2024年9月に行われたことが確実だと述べている。深川氏は2024年4月2日に吉田氏のSNSアカウントからブロックされていたという。
この脱法ハーブの投稿はSNSで拡散され、日本共産党関係者にも届いたと思われるが、三重県委員会を含む党組織からは、現時点で一切の公式なアナウンスがなされていない状況が続いている。
現在、吉田氏の投稿についてのエビデンスは深川氏が保有するスクリーンショットのみである。当該エビデンスの証拠能力については、深川氏が2025年2月の大分市議会議員選挙に立候補し現在もSNS等で活動をしていること、資金管理団体を設立し住所も明らかにしていることを考えて、高いものと推定でき、以下、吉田氏の投稿が事実であることを前提に話を進めたい。
「魔女のような共産主義者」の意味
高額スピリチュアル商品を購入しているという投稿については、現在、それを指摘した元の投稿は削除されているが深川氏がアーカイブから探し出してくれた。
三重県の吉田あやか県議。個人アカウントでスピリチュアル系の紹介。
怪しいものではございません
本物のシャーマンに会いたい人
〇〇さんがつないでくれる場所は本当に本物のばっかりだよ!(語彙のなさ)
私が保証する
因みにシャーマンの人の投稿をみたら、ウォーターセラピー2万円。
「怪しいものではございません/本物のシャーマンに会いたい人/〇〇さんがつないでくれる場所は本当に本物のばっかりだよ!(語彙のなさ)/私が保証する」というのが吉田氏の投稿であろう(当該投稿は上記のとおり現在確認できない)。「シャーマン」とはどういうことか。
あけび書房の岡林信一氏が以下のような投稿を行っており、当該投稿が吉田氏の投稿を指摘したものとして拡散されたことが確認できる。
単にスピリチュアルであるだけでなく、明らかに非科学的な高額商品を宣伝している。
議員がこのような拡散をすることを、誰も止めないのか?
批判はすぐブロックする吉田あやか三重県議だから、誰も止められないのか?
https://x.com/oldsayoku/stat/oldsayoku/status/1842891047288050020 (2024年10月6日 20:55投稿)
先に見た吉田氏の「脱法ハーブ」投稿において、共有したイボガの元投稿の投稿アカウント運営者「一般社団法人 Earth Frequency」。代表「Earth Frequency 会長Calen」氏のプロフィールには「【学術・専門分野】国際看護学(マインドヘルス専攻)/【グローバルな実践と学び】・・・メキシコでの本格的なシャーマン修行/イボガシャーマンと共に5年間活動し、約4,500人のケアを担当/日本人女性で唯一、国際シャーマン認定保持・・・」とある。
Calen氏はシャーマンだったのである。吉田氏が行なった上記「スピリチュアル投稿」はシャーマンのCalen氏のものだったのではないかと推察される。
ちなみに吉田氏の議員として利用しているものとは別のインスタグラム・アカウントの自己紹介に「魔女になりたい☮🦄⚖️wanna be a witchy communist」とある。「witchy communist」とは「魔女のような共産主義者」。魔女、すなわち、シャーマン。吉田氏は魔女になりたくて、イボガを摂取したのだろうか。
イボガ/イボガインについて
ここでは「イボガ」およびその成分「イボガイン」と共に解説したいと思う。
深川氏は「イボガ」・「イボガイン」を「脱法ハーブ」としているがこれは間違いである。そもそも「脱法ハーブ」とは、乾燥植物片などに合成カンナビノイドを添加し、大麻に似た幻覚作用を狙った乾燥ハーブ製品の総称であり、自然由来ではなく、化学的に大麻様作用を強調した合成物であり、自然由来のイボガインとは物質の構造上異なっている。
では安全な物質かと言えば、以下に示す深刻な健康リスクや精神衛生上のリスク、そして法的規制の状況を考慮すると、「脱法ハーブ」どころか「危険ドラッグ」に分類されるべき物質であると言える。「危険ドラッグ」とは大阪府のウェブサイトによると「麻薬や覚醒剤のように多幸感(たこうかん)、快感等を高めるものとして販売されている製品」である。
以下、ドラッグ情報のデータベースである「Drugs.com」の該当ページを翻訳・要約したものを示す。
イボガ(Iboga)は、西アフリカ原産で同地域全域で栽培される常緑低木であり、その根皮に含まれるアルカロイド「イボガイン(ibogaine)」は強力な幻覚作用と抗依存効果を併せ持つ物質として知られている。米国では、薬物依存治療への応用が一部で模索されているものの、1970年以降は連邦法により使用が禁止されており、正規の医療現場では使用されていない。
イボガインの作用は用量により異なる。低用量では交感神経系を刺激し、筋力や持久力の一時的な増加を促す可能性がある。一方、高用量では迷走神経優位に移行し、意識を保ったままの夢見的な幻覚状態を誘発する。
この幻覚性は伝統的儀式での使用に見られる。ドラッグとしての分類上、イボガインは明確にサイケデリック(幻覚剤)に位置づけられるが、低用量に限れば交感神経を刺激しアッパー的性質(興奮状態になる)も併せ持つ。
有望な点としては、(動物実験であるが)オピオイドやコカイン、アルコール、ニコチン依存症に対して、単回投与でも比較的長期間の禁断維持効果が報告されていることである。
しかしながら、健康上のリスクは極めて高い。特に心臓への影響が深刻であり、心拍数の低下、高用量では神経系への障害、一部の患者では、血圧上昇と脈拍低下が観察されている。また、死亡例もあり、心疾患、うつ病、PTSD、不安、統合失調症、てんかん、自律神経の異常などで死亡リスクが高まるとされる。
精神衛生上のリスクとしては、使用後に発現する躁状態が知られており、不眠、衝動性、誇大妄想、攻撃性、情緒不安定、言語の逸脱、自殺念慮などが1〜2週間続く場合がある。
以上のように、イボガインは依存症治療における潜在的な効果がある一方で、重大な身体的・精神的リスクを伴う物質である。その使用には専門的知識と厳重な医療監督が不可欠であり、安易な摂取は極めて危険である。
日本では、現在のところ、イボガインそのものが麻薬及び向精神薬取締法などの法律で直接的に規制されている「麻薬」や「向精神薬」に指定されているわけではなく、また、平成27年段階では、イボガイン含有食品の業としての輸入販売実績はないものの、健康被害を未然に防止する目的から、厚生労働省や自治体から注意喚起が行われている(「平成27年8月4日都道府県各保健所設置市衛生主管部(局)食品衛生担当課御中 特別区厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課健康食品の原材料として使用された成分(イボガイン)の取り扱いについて」)。
ドラッグ使用公言の問題
(1)薬機法抵触の疑い
これらを踏まえ、吉田氏の投稿について問題点を検討したい。
まず、投稿そのものの問題である。吉田氏の投稿が自己の使用体験をもとに「イボガは自分の弱いところをガツッと背中を押してくれるようになる」などの効能効果を謳う保証的表現を用いている。これは医薬品の効能効果を虚偽または誇大に宣伝することにつながる。このような行為は薬機法第66条で禁止されている(「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」)。議員として公人の立場であるため、イボガ・イボガインへの推奨に一般人より高い信頼性が生じてしまう点は注意が必要である。
また、イボガインは日本で医薬品承認を受けていない未承認医薬品に該当し、承認前の医薬品に関する広告は薬機法第68条で一切禁止されている(「・・・認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない」)。
このことについて即座に違法があるかの判断は保留する。しかし、付け加えないといけないのは吉田氏が引用した「Iboga Tharapy Japan」のアカウントである。当該アカウントを運営していたと思われる、一般社団法人Earth Frequencyのウェブサイトには「特定商取引法に基づく表記」の記載があり、「【販売事業者】Iboga Therapy Japan/【販売責任者】代表取締役 武田 かれん/【所在地】神奈川県横須賀市・・・」とある。
このことは(すでに指摘しているとおりだが)吉田氏が引用していたアカウントが販売事業者のものであることを示唆しており、同氏は特定商品の宣伝を意識せずに行なっていたことになる。
(2)政治倫理上の問題
他方で政治倫理の観点からみると吉田氏の投稿に関しては明らかに問題があり、前者の問題と合わせ説明責任を果たさないといけないだろう。
「三重県議会議員の政治倫理に関する条例」の「第2条」において「議員は、県民の負託にこたえるため、絶えず県民全体の利益を擁護するよう行動しなければならない」とあり、その第2項では「議員は、高い倫理的義務が課せられていることを自覚するとともに、その言動が県民及び県政に与える影響に鑑み、自らを厳しく律するとともに、県民の代表として良心及び責任感を持って、議員の品位を保持し、識見を養うよう努めなければならない」とあり、第3項では「議員は、政治倫理に関し、政治的又は道義的批判を受けたときは、真摯しかつ誠実に事実を解明し、その責任を進んで明確にする義務を負うものとする」とある。
「危険ドラッグ」であるイボガの自己使用を公言し、その効能を謳う行為は、公共における模範性を著しく損なうものであり、「県民の代表として良心および責任感を持って議員の品位を保持し、識見を養うよう努めなければならない」とする第2項に明確に抵触する。さらに、SNS上でこの問題が指摘されたにもかかわらず、当該議員がこの点について説明責任を果たしていないことは、「政治的または道義的批判を受けたときは、真摯かつ誠実に事実を解明し、その責任を進んで明確にする義務を負う」と定めた第3項に違反していることも明白である。
これらの点から吉田氏のSNS投稿とそれ以後の沈黙は看過できない倫理違反行為と言わざるを得ない。
さらに深刻な問題点
(1)なぜイボガを?
吉田氏が自身のSNSにおいてイボガの使用を公言したことは、同氏が極めてマイナーかつ高リスクなドラッグについて実体験を有していることを意味する(本人の投稿には「私の経験では」と明言され、事実として認識できる)。
イボガインは、現在においても医療用途として承認されている国はブラジル、南アフリカ、ニュージーランドの3カ国にとどまっており、その希少性は、2023年にアメリカ・コロラド州で初めて法的摘発がなされたという事例からも裏付けられる(CBS報道参照)。
ドラッグカルチャーに詳しい人物に確認したところ、イボガおよびイボガインについては聞いたことがないとのことでやはりマイナーなドラッグと考えられる。また、国内外の一般的な情報源にはほとんど記載がなく、せいぜいWikipediaに簡単な記述がある程度でしかない(2023年に井上朝陽『ミラーニューロン革命:イボガと起こす愛の奇跡』という本がAmazonで販売開始されているが「Independently published」としてあくまでも個人での刊行であることが示されている)。
(2)大麻への寛容的態度
吉田氏はthreadsに2023年11月11日、「結局は大麻のしがらみって、アメリカによる利権と抑圧と人種差別」として、YouTubeのある動画を共有している(現在でも確認可能)。
動画の投稿者は「ガンジャマン」と名乗る人物であり、「ガンジャ」は大麻草の花から生成された大麻を意味する。2014年に投稿された当該動画の概要欄には、
本当にこのままでいいのだろうか。大麻が禁止であることにも疑問を抱かず、議論すらしない日本人。大麻というだけで麻薬中毒と勘違いする日本人。違法であれば健康に良くても使わず、合法であれば健康に悪くても使う日本人。本当にこれでいいのだろうか?????
と日本社会への批判的見解が並び、「日本大麻合法化を考える会」というブログへのリンクも掲載されている。
吉田氏がこの動画を紹介した意図は明示されていないが、投稿内容の文脈や表現から判断する限り、その主張に一定の賛意を示していると考えられる。すなわち、吉田氏は大麻を含むドラッグ規制に対して批判的で、ドラッグ利用について、(イボガの使用公言と合わせて)より寛容な立場をとっている可能性が推測できる。
なおこの吉田氏の投稿について、「みずの さち(植田)2023.5月~黒潮町議1期目」というアカウントが「いいね」をしている。高知県黒潮町には日本共産党の水野さち町議がおり、日本共産党のウェブサイトで示されているFacebookのURLと当該Instagramアカウントに紐づけられたFacebookのURLが一致していることから同一人物である可能性が極めて高いと推定できる。
こうした一連の言動は、単なる情報収集や一時的な関心にとどまらず、ドラッグに対する思想的な関与や実践的な接触、さらにはその使用を一定程度容認・肯定する立場を示唆している。イボガに関する高度に専門的な知識や使用経験は、一般的な情報空間ではほとんど共有されておらず、そうした情報に吉田氏が自発的に接近している点からも、ドラッグに関する特定の思想圏や実践共同体と接点を有している可能性は否定できない。さらに、その背景には、日常的にドラッグを使用している生活実態があると推察されても不自然ではない。
(3)信条に基づくのか、あるいはドラッグか
こうした前提に立てば、吉田氏の言動のうち、特異的なものについて薬物使用による精神的影響という観点から一定の説明が成り立ち得る。
以降、吉田氏が継続的にドラッグを利用している前提で議論を進める。現時点で、吉田氏が薬物を継続的に使用しているかどうかは明らかではない。しかし、過去に使用を自ら公言し、その後に明確な否定や釈明がなされていない以上、公的立場にある人物としては、最も深刻な可能性――すなわち継続的な使用――を前提に慎重に検討せざるを得ない状況である。
また、吉田氏の薬物使用歴については、詳細が明かされていないため不明な点も多いが、薬物使用者の間では、複数の薬物や化学物質を同時または交互に使用する「polysubstance use(多剤併用)」が一般的であり、イボガのみの使用とは考えにくい点も今回考慮しないといけない。
検討を続けよう。
たとえば、2024年の三重県議会での代表質問において、吉田氏は知事が発言で用いた「消滅可能性自治体」という民間団体の試算結果を取り上げ、その試算が出産が想定される若年女性人口をもとにしている点を指摘し「女を何だと思っているんですか。私は思います。産める体を持つ人口だけを数えて、こんな提言をしようなんていうのはおかしいと思うんです」と訴えながら感情を高ぶらせて号泣する場面があった。
SNS上ではその後、自身の情動が制御できなかったことを告白しており、公的な場での情緒失調として顕著であった。
この行動単体で見れば質問中に吉田氏の思いが溢れた場面として理解できるが、同氏自身がのちに振り返るように普通の状況ではないのは映像を見ればわかる(理論上は彼女がフェミニストを公言しているため、信念に基づく感情発露とすれば一定の許容が可能であるが、映像を視聴すると生理的に奇妙な感覚--コミュニケーション上の不自然さ--を得たのが個人的な感想である)。
ドラッグを念頭に置いて考えると、この事態についてはイボガイン使用後に報告されている躁状態、感情の不安定さと一定の符合を見せる(ただし、これらの症状はイボガインに限らず他の幻覚剤や精神活性物質にも共通する現象)。
また、SNS上での振る舞いとして、2024年に共産党を除名された松竹伸幸氏に対し、呼び捨ての上、「かく乱者」と強い侮蔑的な表現を伴う攻撃的投稿を行なったことがある。
SNSで吉田氏はこのような投稿を行なっているが、この点もまた、幻覚剤のバッドトリップに伴う易怒性や衝動性の表れと類似した行動パターンとも解釈できる。
さらに、2025年6月に離党した津市議・中野裕子氏との間では、ハラスメントの訴えが党内で問題となった。党機関はハラスメントを公式には認定しなかったが、吉田氏は中野氏に対して謝罪の意を述べていたようであり(2025年6月8日日本共産党三重県委員会中部地区委員会「見解」より)、実際に深刻な人間関係上の摩擦が生じていたことは明らかである。薬物使用による感情制御の困難さが、こうした対人関係のトラブルを助長した可能性は否定できない。
こうした点を踏まえると、吉田氏がドラッグ使用により日常生活に支障を来している可能性があり、議員としての適格性以前に、本人の健康と生活の質(QOL)の観点からも看過できない事態である。とりわけ幻覚剤は、「セット」(使用者の心的状態)と「セッティング」(使用環境)の影響を強く受けることが知られており、心理的に不安定な状態で使用した場合、深刻な精神的ダメージを引き起こす可能性が高い。
現在までに、吉田氏自身からイボガ使用の背景や現在の健康状態に関する明確な説明はなされていない。そのため、公人としての重大な健康リスクと政治的責任が浮上しており、所属政党においても事実関係の調査と公表が急務である。同時に、吉田氏には、自身の健康と政治的立場の双方に関わる問題として、誠実な説明責任を果たすことが求められている。
あとがき
以下は、私個人の見解です。
私自身、もともとスピリチュアリティ研究に近い領域からスタートしており、「精神的探究の手段としてのドラッグ利用」は、研究史的には一定の理解を持って接してきました。確かに、サイケデリクスを含む薬物は、意識変容や自己探究の契機として注目された歴史的経緯があります。
しかし、さまざまな試みの中で、ドラッグの有害性等が明らかになる一方で、同様の意識変容や癒しの効果をもたらす手段として、瞑想やボディワークといった代替的アプローチの有効性が実証されてきました。また、薬学的研究も進み、メンタルケアに関する投薬治療も数十年前と比較して良好なものになってきたと考えます。こうした状況を踏まえると、現在においてあえてドラッグによる激烈な体験に頼る必然性は、きわめて低いと評価しています。
とりわけ、大麻を含むいわゆるドラッグの一般使用については、創薬的観点からの研究・評価が十分に進み、安全性や効果が科学的に担保されたうえで製品化され、医療制度や制度的枠組みの中で適切に管理された形で社会に提供されるのが本来のあり方です(たとえば、麻に含まれるCBDが食品や医薬品として一般流通され、CBD含有ドリンクが街中の自動販売機で普通に販売されるようになってきています)。
よって、制度的・医療的な裏づけのないプリミティブな状況下での自己使用は、原則として避けるべきであり、それは自己責任の名のもとにリスクを負う「挑戦者」に限定されるべきだと考えます。
吉田氏が「精神的な探究」のために、管理されていない状況下で、自己責任において脱法的にドラッグを使用すること自体は、あくまで個人の自由であると考えます。
しかしながら、公人として、本レポートで述べたような中途半端な発言や法的に問題が疑われる発信を行うことは、政治家として明確に不適切であると言わざるを得ません。もし信念をもって主張するのであれば、大麻合法化などを公約に掲げ、立場を明確にすべきです。
また、ドラッグ使用告白者として、日頃の言動を慎み、自身がドラッグに「帰依されているか」のような印象を周囲に持たれないようにしなければならないでしょう。このことは公人であれば尚更のことです。
今回調べた限りですが、吉田氏の一部の言動は、明らかに精神的な不安定さと不調を示しており、周囲が医療的なサポートを行うべき段階ではないかと感じさせます。
仮にドラッグの常用などに該当しないのであれば、SNSの投稿が拡散された状況下では、その旨を公に説明する必要があります。というのも、現状では、吉田氏の攻撃的あるいは不安定な言動が政治的信念や信条、そして、有権者からの負託に基づいてなされているものなのか、それともドラッグの影響下にあるものなのか、客観的に判断することが極めて困難な状況にあるからです。このような不透明性は、公職にある者として極めて問題であり、本人による明確な説明が求められます。
もし、それすら判断できない状況に陥っているのであれば、それはもはや「公職にふさわしいかどうか」という次元を超え、周囲が健康面での介入を真剣に考えるべき、緊急性の高い事態に他なりません。
結局のところ、私がこのレポートをまとめた動機は、「吉田氏は現在、相当に深刻で危うい状況にあるのではないか。そして、その吉田氏と関わる中で離党を余儀なくされた中野氏も、きわめて特殊で重い体験をしたのではないか」という疑念に端を発しています。仮に一連のハラスメント騒動にドラッグの要素が関与しているとすれば、事態はきわめて深刻であり、予断を許さない状況にあると言わざるを得ません。
上記調査については、深川雅司氏にご協力いただきましたこと、心より感謝申し上げます
公開日:2025年6月13日
*文章中の「現在」は最初の公開日を指します
原稿作成にChatGPTを用いました