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市民の政策評価・教育意識
INQ-BR
本報告書は、市民の教育意識を多面的に整理することを目的とし、「教育の公共性」「社会的資源配分」「進学・学習動機」という三論点について多様な知見を探索的に描き出した。
第一に、政策評価では教育系(若手研究者支援・教員待遇改善・高等教育無償化)が比較的高く、スポーツ行政支援政策は中程度であった。教育系は高等教育の意義認識や自己責任観、初等中等段階での教育経験と結びつきやすく、スポーツ系は応援・運動習慣・子ども期経験などの関与と関連していた。政治的価値観は保守・リベラル双方で正方向に作用し、とくにリベラルは多くの政策評価において肯定的であった(積極的な財政支出と関係が示唆)。
第二に、教育満足度は「中学校で低く、大学で高い」という段階差があり、30〜50代が低め、60〜70代が高めという年代差が一貫してみられた。教師の教育力や授業の興味・人間関係との関連は安定して確認され、進路指導や社会的有用性といった要素も段階ごとに影響を持っていた。一方で主体的学び経験は明瞭な関連を示さなかった。
第三に、学問分野は「公共投資(政策優先度)」と「市場需要(学習希望・労働市場展望)」の二軸で整理できる。情報AIや医療バイオは二重優位の領域として示され、工学・数理は公的援助型、経済・経営・法は市場牽引型、人文・芸術・スポーツなどは基盤が弱い構図が現れた。
第四に、大学教員のあり方では、実務家登用、専任分離、処遇見直し、国家戦略研究など改革群への肯定が多く、大学教員の肩書を伴う政治・社会活動は否定的評価が優位であった。自己責任観は成果・制度改革系と結びつき、市民講座参加や研究者尊敬は社会発信・公平性系と併存しやすかった。価値観の分岐も観察され、女性限定公募はリベラル寄り、国家戦略研究は保守寄りで評価が分かれた。
最後に、大学入学理由は「学修・成果/つながり・経験」と「入試容易/費用負担」の二層に整理され、前者は学力や進路指導と、後者は経済状況や学力状況と関わっていた。
総じて、本研究は教育政策や制度設計の評価、学問分野の将来像、進学要因における市民意識の多層的構造を明らかにし、教育の公共性・資源配分・学習動機をめぐる議論に基盤的知見を提供するものである。
本ウェブサイト掲載の内容は蒲生諒太の個人研究成果です。所属機関等の公式見解ではございません。