NTT R&Dフォーラム2011 参加レポート
参加日時:2011年2月22日(火)
Taiki KITADA
1.NTTが研究開発している技術の展示発表会「NTT R&Dフォーラム2011」の見学内容まとめ
(1) 協働・創造性教育のデジタル教材:ビスケット
デジタル教材「ビスケット」とは、2003年にNTTコミュニケーション科学基礎研究所の原田康徳さんが開発した主に子供などPC初心者を対象としたビジュアルプログラミング言語である。
一般的にキーボードを使ってプログラム言語を入力していく方法ではなく、マウス、タッチパネル搭載PCやAndorid端末(会場ではGALAXY Tabを使用)を使用して視覚的にプログラムの作成が行えるものである。
また、ビスケットはActionScriptで開発されていてFlashが動作する環境であれば、OSに依存せずWebブラウザ上で利用が可能である。
基本的なプログラムの作成方法として、絵を書いてめがねというツールを使い、変化前と変化後の動きを指定するだけで書いた絵をアニメーションさせるといったものが簡単に作成できる。またこの動きの指定方法も文字ではなく、絵を移動させたり、回転させるといった視覚的な方法で指定ができる。(詳しい作成方法は公式サイトにて)
ビスケットではこのように子供でもプログラミングの楽しさを体感することができ、モチベーションを向上させるデジタル教材の作成などに活用することができる。
(例としてコンピュータウィルスを説明するビスケットで解説した作品 )
実際に展示ブースで解説を行っていた原田さんの話では、落ち着きのない子供でも作成制作に集中して取り組むことができ、その子供が一番技術力が高くてその子を中心に技術交換が行われていたという事例の紹介があった。
引用:ビスケットあれこれ ビスケットでコンピュータウィルスを再現する
(2) 紙の教科書とデジタル教材をつなぐ技術:Kappan
Kappanは紙の教科書とAndorid携帯電話を使った技術で、教科書の文章を携帯電話のカメラで撮影するとその教科書の文章の内容に関連する映像を携帯電話上で鑑賞することができる技術である。
実際のデモでは歴史の教科書の文章を携帯電話で撮影し、関連する動画を鑑賞することができた。この技術の仕組みとしては、OCR(光学文字認識:Optical Character Recognition)技術を使ってカメラから得た画像を元に文字の位置の並びからデータベース検索を行って該当する映像を携帯電話に配信を行う。ただ、英語や数式などの認識も可能であるか質問として尋ねたところ、英語の場合は文字数が少なく判断が難しく、数式も判断がまだ難しいとのこと。
(3) スーパーハイビジョン国際ライブ中継
スーパーハイビジョンとはNHKが開発しているハイビジョンの16倍の3300万画素の超高精細映像と22.2チャンネルのマルチチャンネル音響システムを実現する技術で、デモでは世田谷にあるNHK研究所から街をビル上空からリアルタイム撮影している中継映像を海外からグローバルIPネットワークを介して会場のNTT武蔵野研究所に送信し、スーパーハイビジョン映像を大型スクリーンに投影するものである。
実際に街の映像やその他のデモ映像を見た感想としては、やはりスーパーハイビジョン映像なので細部までくっきりと見ることができ、音声も迫力のあるもので驚いた。さらにこれをネットワーク越しに遅延も感じることなく送信できる技術の凄さと進化にも驚き、感動した。 また、この技術の将来について調べてみると、海外で開催されるスポーツイベントや中継映像をネットワークを介してその場にいるような臨場感をパブリックビューイング会場などで体感できるのを目指しているということが分かった。 その他にもNTTの映像配信の研究分野として複数の4K映像を繋げて臨場感あふれるコミュニケーションを実現する4Kマルチ映像コラボレーションシステムや原音を再現する音楽コンテンツ伝送技術などの技術を持っていてNTTの研究の広さを実感できた。
技術内容の詳細と参考資料: WirelessWire News 「NHKとNTT、スーパーハイビジョンの国際ライブ中継を共用IPネットで世界初成功」
(4) その他の展示物
つながる体感コミュニケーション「体温ハート」
圧力センサと脈拍センサや発熱体を搭載したハート型のデバイスも用いることで相手とのつながりをリアルに感じ取ることができるデバイス。メールや電話などを使わないノンバーバルコミュニケーションを実現している。 ・運 動視差映像コミュニケーションシステム「MoPaCo」
ディスプレイとビデオカメラで構成されており、奥行き感のある映像を体感することが可能なシステム。実際にデモを体験してみると、テレビ電話のように相手と会話をしながら頭を右に傾けると相手の左側の方に映像が移動し、まるで目の前で実際に会話をしているような感覚でコミュニケーションを体験することができる。仕組みとしては、顔の目の部分をカメラで認識させることでこれを実現しているとのこと。
2. ワークショップ 「モバイルブロードバンドの発展とスマートイノベーションへの取り組み」の聴講まとめ
株式会社NTTドコモ先進技術研究所
村瀬淳所長の講演
(1) モバイルブロードバンドの動向
・世界の携帯電話の契約数 53億
⇒アフリカ・中東とアジア・太平洋で大きな成長が見込まれる。
(2) FOMAトラフィックの状況
・2倍の伸び
・LTEの導入(2010年) ⇒次世代LTE通信サービス「Xi(クロッシィ)」の開始
・移動通信方式のLTEへの統合 ⇒LTE規格に世界的に統合
※LTE(Long Term Evolutionの略で4Gへスムーズに移行するために3Gを発展させる事をコンセプトにしたデータ通信仕様。国際標準化が進められている。)
(3) スマートフォン
・2013年 スマートフォンがフィーチャーフォン(俗で言うガラケー)を逆転と予想
(3) 今後のドコモが目指すもの
『スマートイノベーション』
R&Dの取り組み
(4) LTEからLTE-Advancedへ
LTEからLTE-Advanced(次世代の第4世代の高速データ通信方式でLTEの進化版。研究中)へ
(5) デバイスの進化と端末
iモードからスマートフォンへ
・SPモード(スマートフォン向けプロバイダ 2010年9月開始)
・ドコモマーケット(コンテンツ配信サイト)
(6) 新しい通信対応デバイスの登場
・デジタルフォトフレーム
・携帯ゲーム機 (NGP?)
(7) AR技術
・Mobile AR技術 (AR家具配置シミュレーション)
(8) 新たな価値創造に向けた取り組み
・モバイルマルチメディア放送
・モバイル空間統計
⇒ネットワーク運用データから全国の人口分布を推計したモバイル空間統計を生み出し、
公共分野を支援(都市部の移動人口や年代統計など)
3. 感想
前回のNTT横須賀と今回のR&Dフォーラム見学では、これから4年生「卒研生」としてどう過ごしていくべきか考える機会を与えてくれました。
この体験を生かして4月から始まる新しい学生生活が成長の一年になるように精一杯頑張りたいと思います。