<ゲーム就活とらのまき> 学内説明会〜良い質問・悪い質問〜

Post date: Nov 3, 2010 11:24:31 AM

早いものでもう2012年卒の就職活動が始まっております。

「ゲーム就活とらのまき」と題してゲーム関連企業への就職を中心に「就職活動・ちょっといい話」をまとめていきたいとおもいます。

あくまで「ゲーム感覚で」読んでくださいね〜!シリアスすぎるのはよくない!

さて神奈川工科大キャリア就職センターのご協力で、(株)コナミデジタルエンタテインメントさんの学内説明会が11/17に開催されます

都合で例年よりもさらにはやく設定されたものだそうです。

学生の皆さんの心理を想像するに、トップバッター、緒戦の説明会というものは甘く見がちですが、企業側はそうは見てくれません。

今回は特に「学内説明会」に絞った形でゲーム関連企業への就職に向けて、何をすべきか、何をすべきでないか、をまとめてみました。

※これは違う!という採用方面のご意見などありましたら遠慮無くお寄せください。

■ゲーム関連企業(に限らず)学内説明会のポイント

学内説明会に来校される企業はまず「その大学からの学生の採用に興味がある」

つまり、少なくとも「十把一絡げに"Fラン"扱いされていない」ということです。

※神奈川工科大情報メディア学科はいわゆる「Fランク」ではありませんが…!

代ゼミ私立学科別ランキング→ http://www.yozemi.ac.jp/rank/gakka/shiritsu/ri.html

学内説明会を設定する場合は大きく分けると以下の分類ができると思います。

(あくまで白井の推測)

・その大学からの応募者が多い

・その大学からの採用実績も多い

・その大学からのOBで活躍している社員がいる

・その大学のOB社員がいるが、(守秘義務等あり)OB訪問を許可していない

・最終選考等まで残るが残念な学生が多い

・就職課などのお導きにより

・同業他社がその大学にアプローチしているので

※もちろん他の理由もあると思います!ご指摘歓迎>採用各位

いずれにせよ採用側にはその大学に対するある程度の「ブランド意識」があります。

同様に企業の採用側にも企業のブランド意識があります。

逆を言えば11月〜1月期の会社説明会のほとんどは

「あっちのブランドじゃなくてこっちのブランドを理解してね!」という意味で開催されることが多いでしょう。

学生側はこの時期は「企業研究」と「自分研究」がしっかりすすめられている必要があります。

具体的には『ソニーでも東芝でもNECでも三菱でもパナソニックでも富士通でもなくウチなのは、なぜ?』

…という質問にしっかり答えられる理解がある必要がある、ということです。

(↑ある電機メーカーによる例。あれ?どの会社が質問しているのでしょうか…?)

学生の皆さんは気にもしたことはないと思いますが、新卒の採用にはコストがかかります。

時代や会社にもよりますが、大手企業は新卒の採用に、だいたい一人当たり400万円ぐらいのコストが掛かります。

つまり入社した時点でその学生の年収ぐらいはマイナスになっているということです。

内訳としては就職情報誌への印刷広報、Webへの掲載、社員のインタビュー記事の作成、カメラマン、ライター、

SPI等の試験、面接に関わる社員の時間コスト…会社側が主催する説明会もその大きなコストです。

ホテルのホール一室を半日借りるだけで何十万というお金が飛んでいきます。

そんなわけで会社主催の説明会は時間勝負です。

大量に全国から集まった学生、どこから来たかわからない学生に対して会場質問のやりとりをします。

真剣勝負ですし、トチ狂った質疑応答で会社のブランドを下げかねません。

しかし学内での説明会は状況が異なります。

会場費は大学持ちですから時間も余裕がありますし、質問相手は「すべてこの大学の学生」です。

もちろん学科や学生それぞれの意識は異なりますが、おバカな質問をする学生が多い、

意識の低い学生が多い学校かどうかはマトモな人事担当者であればすぐに見抜くことが出来るでしょう。

つまり「企業側のブランド」に大きなリスクを置かずに、

「大学のブランド」を見極めることができるということです。

これは学生側は真剣に挑まなければなりません。

※これは合同説明会にも言えることですが、今回は単一企業の学内説明会に絞って話をします。

特に説明会の最後に設定されるであろう「質疑応答」が重要です。

ここで『(シーン…)と沈黙が流れる校風』があるかもしれませんが、それは大間違いです。

もしかしたらゲーム関連企業向けなら「大失敗」と言ってもいいかもしれない間違いです。

しかし下手な質問をしたら、目をつけられるかもしれません…!では以下のように考えてみてください。

『大学のブランドを意識して、有益な質問をしよう!』

大学のブランド…?有益な質問?ってなんでしょう?

まずは下の『学内説明会、こんな質問はGood/Bad』をみてみてください。

※これは白井研のゼミ生の修士1年生(企画系志望・プログラマも可)にメモを取ってもらったものをベースに整理しています。

■ゲーム関連企業の学内説明会「こんな質問はGood/Bad」

<こんな質問はGood!>

・どんな学生を求めていますか?

言い換えれば「堅実タイプ」と「挑戦的なタイプ」どちら?とか

→社風が出ます。また「その両方です」と返ってくる企業も。

・全体の採用人数

・プランナー・デザイナー(アーティスト)・プログラマーの採用比率/例年の応募者規模

→そもそも土俵がどれだけ違うのか知っておくといいです。

他の会社と比較することも重要。これが「企業研究」でもあります。

ちなみにアーティスト採用が多い会社、というのはあります。

※これでやっと「離職率」を聞くフラグが立ちます(ゲーム業界は3年以下離職率が高く人事担当者はいきなりこれを聞かれるのが痛い)。

・関連会社との採用関係

→最近のゲーム関連企業は玩具会社やサービス関連と連結していますので、

そもそも採用窓口がどうなっているのか(事業ごとなのか全体なのか)は重要情報です。

・社内の玩具・スポーツといったゲーム以外の分野に挑戦(異動)できるか

→中途と違って新卒はいろいろな職種を体験できる可能性があります。

「そんなのやだい!ゲームばっかり作るんだい!」って人も聞いておいたほうがいいです。

・平均年齢

・平均年齢よりも高い方々は、制作ではなく何 をしているのか

→管理?転職?ソフトウェア業の基本ですが35歳になると管理職か独立起業という流れがあります。

なので世の中には星の数ほどソフトハウスがあるのですね!

・平均年齢35才(として)、その年齢に達するまでには何本くらいの作品に関われるのか?

これぐらいハイエンドな質問をする学生だと採用する側も真剣味が出てきます。

逆に学生さんたちが「(ぬぼ〜)ゲーム会社入れればいいや〜(ぬぼ〜)」と思っているとこんな話題にはなりません。

この質問はキャリアプランそのものに関わるものです。どうせ就職するならキャリアになる会社が良いわけです。

他にも「1プロジェクトにどれくらい時間がかかるのか」といった質問にも直結してきます。

ちなみにゲーム製品のことを「作品」と呼ぶか「製品」と呼ぶか「タイトル」と呼ぶかで思考回路を見抜かれます。

・採用形態

・「有期雇用はありますか?」

→普通は「ある(=プロジェクト終わったら解雇される)、でも皆さんの場合は新卒採用です」、

という問答になると思います。まれに大企業で「中途も新卒も定年まで解雇なしです」という会社もあります。

でも「使えないスカタン社員」がいても、クビにならない企業を幸せと考えるかどうか?

これは皆さんの自分研究×企業研究の結果で印象は異なると思います。

ちなみにゲーム産業的には、(リスクを考えれば普通は)プロジェクト採用が中心でしょう。

つまり新卒であってもその意識は忘れない方がいいです。

・プランナーとしてもプログラムの勉強もしていますが、(御社の場合)どちらで受けるべき?

→両方受けて良いか?確定的に求められるスキルは?

「どちらか1種でお願いします」となる場合、どちらを推薦されるかは社風によって異なります。

・採用までに何段階のステップ(試験)があるのか?

→普通はエントリーから役員面接まで6〜7段階ですね。企画系の場合、1万人ぐらい受けて採用6人ぐらいでしょうか。

・ポートフォリオを出すタイミングは?

→ポートフォリオ(作歴)を用意することは採用区分にかかわらずナイスです、しかし出すのはエントリー時?面接時??

準備時間が長ければ長いほうが質の高いものを出すことができますが、

もちろん他の学生も質の高いものを作る時間がありますので、エントリー時に受け取りの方が、明らかに就職対策が効いてくるわけです。

・人物

・コミュニケーション能力の高い人と、実装能力の高い人、どちらが求められますか?

→これも社風によりますが、最近は前者が多い、プログラマーなら加えて「両方かな?あと数学と物理」を必ず言われるはずです。

合同説明会や多くの大学が集まった状態での説明会と違って、このあたりは突っ込んだディスカッション、

特に「なぜ神奈川工科大から採用するのか?何を期待しているのか?」をしっかり聞き出せれば、大人だと思います。

・履歴書や企画書はPCで作成しても良いか?

→事務系企業は手書き重視しますので多くの就職マニュアル本には「履歴書手書きで書かないやつは落ちる」とか書いてありますが、

「PCも使えないヤツ」と思われることもあるので、前提として序盤に聞いておくと良いです。

ちなみにエントリーシート、履歴書等の送付時はレター(送付状)を付けてください。

『学校ではレターなんて教えてくれなかった!』とか言う人がいますが、社会人の常識です。英語圏ならカバーレターは履歴書以上に重要。

再利用すれば他の企業にも使えますし、 Googleに聞けば文例なんていくらでも出てきます。

これを知っているか知らないかだけでゴミ箱直行するかどうか変わるなら、とにかくつけた方がいいです。

<こんな質問はBad!>

・数学物理はどの程度のものを求められていますか?何を勉強すればいいですか?

→「勉強していないことがモロバレ」です。

数年前と違って、普通に有隣堂なりジュンク堂なりのゲーム書籍コーナーに「ゲーム数学物理」の書籍がたくさん並んでいます(使えるかどうかはともかく)。

また先端の刺激を求め続けるゲーム産業における数学や物理に「これだけ学べば大丈夫!」なんてものは存在しません。

必要なものは「何が最先端で、何が基礎かを分かっていて、自分で勉強できる基礎学習能力がある」ということです。

※カンニングとかコピペとかが常習になっている人は、数年かけないとリハビリできないので注意です。というか今更です。

・個別タイトルや守秘義務に触れる質問

具体的なBad例では『私は御社のXXというタイトルが大変好きで…!!!(女子に多い)』とか、

『XXというタイトルのシェーダーの使い方について、私はこう思うのですが御社のエンジニアはこれについて…』とか、

『XX2の登場キャラクターに男性をいれたのは絶対間違いだと思うんです!!!社員さんはどう思ってるんですか?』とか。

ちなみに、一番好きなゲームを列挙して、思い出など語りだす行為は面接ではOKです。

むしろFAQ(よく聞かれれる問答)として『あなたの一番好きなゲームタイトルを挙げ、理由を述べてください』という面接質問があります。

これはいきなり聞かれると答えられないものです(この質問の真意と対策についてはまた別の機会に解説します)。

・個別のゲーム企画に関する提案

いきなりスクッと立ち上がって開口一番『今のゲーム産業は腐ってると思うんです!』ってところまでは(百歩譲って)いいんですが、

その後『私の考える最高のRPGとは…剣と魔法のみのハードコアなファンタジーでパラメータは…』とかいう感じで

自分が考えているゲーム企画提案そのものの話をその場で演説する人のことですね。

一言で言えば「空気読め」なんですが、この手のコミュニケーションりょくが微妙な人は書類で通っても面接で落ちるかも。

もちろん企画者には「場の雰囲気をひっくり返して自分の土俵に持っていく…」という能力が必要なときもありますが、それもTPOあってのこと。

・福利厚生/財務状態/年間の休暇日数や休みの使い方

→ひとくくりにすると「Webや求人票を見ればわかること」をいちいち聞かないことです。

『福利厚生が充実しているから御社を選びました!』という理由でゲーム業界を選ぶ人はちょっとおかしいです。

(任天堂と別の中小企業を比較して…という話ならともかく、それならそれで他の理由が必要ですよね?)

だからといって『ゲーム会社に行くと休暇が取れない』というのも半分都市伝説で、半分以上真実です。

#こういうのを「些末な議論」といいます。

些末な質問No1は「御社は利益が上がっていますか?」という類のものです。

「だって知りたかったんだもん…」という動機で聞く内容ではありません。

財務状態は公式HPの「IR情報」を見てください。全部載っています。

IR情報の読み方についての解説は株関係のBlogなどにたくさん書いてあります。ゲーム株専門の人もいます。

「会社四季報」や「IR情報」を読み解く能力のは11月〜3月期には確実にあなたの役に立つでしょう。

就職というものは投資に似ています。あなたの一度しかない新卒を投資するのですから…真剣味が必要です。

そういう意味で、興味のある企業のIR情報から「社員ひとりあたり利益」などを抽出してEXCEL表作っておくのも勉強になります。

多くの有名企業で「あの会社…思ったより儲かってない…というかみんな赤字??」という感想を抱くと思います。

その中で驚くべき数字を出しているゲーム関連企業もあります。そういう会社は給料も良いです、そして社員にも多くのことが求められます。

・「売れる/作りたい/おもしろいゲーム」を混乱している質問

→「これ絶対楽しいし作りたいし売れるよ!」という学生らしい「パッション」はとても重要ですが、

これから「プロとして就業」するのであれば、そのへんはしっかり整理しておいたほうがいいですよね。

求められるのは『こういうゲームはこういう理由で売れるだろう、しかしそれでは面白くない、だからこう言うゲームを作りたい』、

『そしてこういうゲームはあの会社では作りづらい、この会社でなければ最高のマーケティング・製作はできないだろう』、

『さらに自分のスキルや経験、興味はここにある、だからこそこの流れを製品に持っていくことができる御社で働きたい!』

…というストーリーです。ぜひ自分なりに考えてみてください。

以上のように「Good質問/Bad質問」でまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?

最初から「大学のブランドを意識して」というのは難しいと思いますが、説明会に参加した学生さんが

「沈黙だけでした」、「会場オタ質問満載でした」、「人事の担当者さん、いい人だった〜」といった感想だと

説明する側もがっかりですし、万が一、才能のある学生さんがそこにいたとしても、

『うーん、なんだかいい会社なんだけど、同僚になる人がアホそうだなあ…』とか変な印象を持ってしまい、

結局、(大学内ではない)面接で『あれっ?学内の志願者とぜんぜん違うぞ…まずい…』と、土俵を読み違えることになってしまいます。

つまり優秀な学生も「沈黙していればいい」というわけではないということが解っていただけますでしょうか。

またわざわざ遠路はるばる大学まで来ていただいている採用担当者さんに

『うむっ!この大学は骨のある学生がいそうだ!』とか

『難しい質問ですが重要ですね、持ち帰らせて後日返答とさせてください』といった反応に持ち込むことが出来れば、

まずまず成功なのではないかと思います。

もちろん人事担当者もプロなので滅多なことでは動じずに笑顔で回答してくれるとはおもいます。

(しかし相手は集団ですから会場が荒れてくるとさすがに大変なことでしょう)

そうそう、冒頭のあいさつや私語なども注意ですよ!戦いはすでに始まっています!

Good luck!!

<文責:神奈川工科大学 情報メディア学科 准教授 白井暁彦>

■白井研究室ではゲーム関連企業向けの就職情報交換メールを配信しています。

参加希望者は簡単な自己紹介を job@shirai.la にお送りください。

企業関係者からの情報提供も大歓迎です!

■Twitterハッシュタグ #KAIT_Shukatsu

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    • フロム・ソフトウェア 採用担当 立野 (@fromsoftware_rc):@o_ob 拝見しました!いくつか具体例がありましたが、″受身な人”と感じさせてしまうような質問は、気をつけたほうが良いかも。とはいえ「いい」「悪い」は場合や人によって異なることが多いので、常に考えて(でも恐れず)質問することが大事だと思います

〔後日談〕キャリア就職センターから...

白井先生

今日はお忙しいなか、ありがとうございました。

先生の素晴らしいアドバイスのおかげで、学生たちの態度も挨拶もびっくりするほど、素晴らしい出来でした。

最後の質問も、14人の学生が挙手し、終わったあとも15人の学生が順番に並んで個別に質問していました。

私も今までたくさんの学内での説明会を見てきましたが、これほど素晴らしいのは初めてです。

次々に質問の手があがっているのを見たときは、一瞬、他の大学かと思いました。。。。。

今後とも、いろいろとお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

→いえいえ。がんばります!

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