剱岳  岩峰の景観と雪渓の滑走

富山県  剱岳2,999m  2012年5月27日

    浄土山(北峰2,831m、南峰2,830m) 2012年5月26日

(剱岳)日本百名山

(浄土山)富山百山

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長次郎のコルに到着し、ふりかえると、はるか下に長次郎雪渓が連なり、その左に八ツ峰。その峰のひとつひとつに個性があり、自己主張している。悪いけど私は登れないよ。

ついに剱頂上に到着。久しぶりの祠のところにザックとスキーを置き、雪の最高点に戻り、ボーダーに写真をとってもらう。サングラスがメガネから少し外れていて、変な顔。ボーダーは平蔵谷の方に滑ってゆき、一人になった私はとりあえず祠のそばで横になって休憩。満足感と疲労困憊。

長次郎のコルからの滑走。これは平蔵谷と違い、クラックもなく、急傾斜もないから、まあ、のんびりと下れる。それでも熊岩までは比較的急で、雪はやわらかいが、連続ターン、連続加重はこたえる。熊岩に到着し、7回目の休憩。

剱はたいへんな山だが、なんとか登り、滑走することができた。満足感に達成感。心地よい疲労感。全てはこのために。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

俺はただ無心に登った。はるかなる白き峰しか見ていなかった

体は疲れ果て、太陽はまぶしく、汗がしたたり落ちた

それでも俺は登るのを止めなかった。上がらぬ足を騙し、惰性で登った

頂上に着いたとき、俺の頭はからっぽになった。すごく、いい気分だった。

俺は天空から下界を見下ろしていた。天空は穏やかだったが、去らねばならなかった

そこで俺はスキー板を履き、天空から滑った。

俺は風になっていた

(はるかなる白き峰)

北西側(大猫山)から見る剱岳。まさに岩の殿堂。頂上の左が長次郎ノコル。この画面では岩しか見えないが、雪斜面が頂上までつながっている(2012年5月13日)
北東側(五竜岳)から見る剱岳。頂上のすぐ右が長次郎ノコル。急な南壁から頂上まで雪斜面が繋がっているのが分かる。長次郎谷は八ツ峰の陰で見えていない(2008年4月29日)
南東(針ノ木岳)から見る二つの谷を従えた剱岳(2014年5月4日)④長次郎谷⑤熊岩⑥長次郎ノコル①平蔵谷②天狗岩③インディアン・クーロアール
八ツ峰:その峰のひとつひとつに個性があり、自己主張している。悪いけど私は登れないよ。
剱岳頂上
長次郎谷の滑走
D112:42 室堂発14:24 浄土山・北峰14:31 浄土山・南峰15:59 雷鳥沢テントサイト・・・・・・・・・・・・・・・合計3時間17分D2 3:05 雷鳥沢テントサイト発 5:40 剱御前小屋前、剱沢滑走 6:10 長次郎谷・シール歩行 6:36 アイゼン11:34 剱岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り、長次郎谷から5時間24分、雷鳥沢から8時間29分12:19 剱岳発、滑走13:45 剱沢18:22 剱御前小屋前、雷鳥沢滑走・・・・・・・剱御前小屋前から往復12時間42分18:50 雷鳥沢テントサイト・・・・・・・・・・・・・・・・・往復15時間45分D3 7:28 雷鳥沢テントサイト発 8:24 室堂バスターミナル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り56分

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D1

立山駅に10時過ぎに着き、11時のケーブルに乗車(阿賀野川から立山駅は3~4時間)。弥陀ヶ原は高曇で、鍬崎は頭が隠れていたが、薬師、大日は見えていた。室堂に着き、シールを貼って(ベンチで貼っていたら、野外店の人がやってきたので場所を変える)、浄土山に向かう。しかしどうもビンディングの調子が悪い。左右のどちらか忘れたが、ブーツにしっかりはまらなくなっている。浄土山の麓にある立山山荘の外のテーブルにザックを置き、山荘に入ってドライバーを借りる。ビンディングの構造が分からなくて苦労したが、力が加わるとブーツが外れるスプリングの部分の仕組みが分かり、なんとか元の状態に戻す。良かった。半分外れたままで滑っていたら、少しの力でブーツが外れ、転んでいたかもしれない。店の主人に礼を言い、ついでにトイレも借りる。直したスキーと小ザックにピッケルを持ち、さっそく浄土山に向かう。雪の状態は柔らかすぎて余り良くない。トレースは多数。登っている人も、下ってくる人もいる。雪がたっぷりあり、どこからでも登れると思った浄土には意外に岩が出ていて、西側にある西ピークとの間のコルから南側に回り込む。浄土の西側は岩が出ていて雪は上の方で切れている感じだったが、徒歩の男性が一人、その岩場を登っていた。

コルが近付くと南の薬師が見えてくるが、やや雲をかぶっている。薬師との間の主稜にはピークが三つほど見えている。そのピークの左に傾いた平らな高原。それは五色ヶ原と鷲岳、鳶岳のようだ。その向こうに見えるピークが越中沢岳だろう。あのオートルートをいつか辿らねば。2泊3日プラス1日程度のテントツアーが基準になるだろう。コルから南回りに浄土に登って行くと、東のコルにいる団体さん(展望台らしい)と、その向こうに室堂山らしきピーク。浄土山への登りは次第に急になり、雪の部分の幅は狭く、雪は柔らかくて極めて登りにくくなる。縦に強引に登る。やがて雪が切れている箇所があり、写真が無いが、最初の岩場はスキーをいったん外して越えたと思う。その後、傾斜が緩んでからの潅木帯はスキーのままで歩く。浄土山の山頂部は南北に長く、北峰にはケルンがあり、その中に「軍人・・・」と書かれた木標が雪に埋まっている。慰霊碑だろうか。頂上の中央には雪があり、少し離れた南峰には人が数人。東には針の木と蓮華。北東には雄山がすぐ近くにそびえている。その頂上には大きな雄山神社、その左にやや高い祠のピーク。北西には立山と似た形に見える奥大日。

南峰に向かい、最高点と思われる場所で認定。雪の消えた土の上に石標があったが、三角点ではなかった。南東方向に竜王の頂上の一部らしき部分が見えている。近そうに見えるが、今回は行くのをやめておく。竜王に登ると、頂上からカールに滑走したくなるだろう。そうすればカールからの登り返しに相当時間をとられてしまう。シールを外して滑走の準備。さっきまで南峰にいた数人は、北東方向の斜面に滑っていった。そのルートでも東から北、西に回って立山山荘に戻れるだろう。が、それではつまらないので、北にまっすぐく下るコースに向かう。立山山荘から登るときに見えていた、山頂直下の雪の部分を滑りたい。ま北にはオーバーハングの急斜面があり、快調にショートターンで下る。停止したとき、右には雄山の南尾根の麓が同じ高さに見えており、だいぶ下った。しかし下にはまだオーバーハングが続いており、オーバーハングの下には室堂の雪原とそこを行く小さな人影が見えるが、なんでみんなここを滑らないで北東を回って行くのだろう。おかしい。たぶん崖か何かになっているのだろう。この予感は当たっていて、下から見上げたこの下の部分は岸壁になっていた。予感に従い、斜面が見えるところまで西にトラバースしていく。

トラバースの途中にハイ松帯と岩場があり、スキーのままでなんとか越える。岩場は雪を拾ってかわして進んだと思う。やっと雪斜面に出たが、その斜面の下には雪が解けかけた池が見えており、その斜面もトラバース。ハイ松帯を越えた先は最初に登ってきた西コルの斜面で、頂上直下ではないが、まだだいぶ高い。そこからショートターンで滑るが、もう雪は悪く、立山山荘の近くでは荒れた雪面の上のクルージング。立山山荘から浄土山の北斜面したの岸壁を見る。トラバースしておいてよかった。立山山荘の外のベンチに置いておいたザックを担ぎ、テントサイトに向かう。テントサントには10数個のテント。多くはない。早朝に出発なので、一番奥にテントを設営する。スキーにシールを貼り、立てておく。気温は暖かで、外で湯を沸かしている。この日は浄土に登っただけでも前週の借りを返せたし、立山三山に完登できたのも良かった。しかし、浄土の南に続くオートルートが強い印象に残る。なんとかしてあのルートをたどってみたい。

D2

早朝2時に起床。3時にシールで出発する。しかし、私よりも前に2時頃出発したパーティがいた。どこに向かったのだろう。尾根の麓でアイゼンに替え、斜面を登る。雪は堅く、踏跡もあるので、格段に登りやすい。4時を過ぎたあたりで明るくなってくる。快晴の予感。

快晴となってきた別山乗越に近付く。小屋の上の別山の尾根に人影。ご来光の撮影かな。立山と室堂の全景が白く輝く。昨日登った浄土山の頂上部分と滑走ルート。竜王の左奥に見えるのは槍だろうか。浄土の右奥には薬師の二つのピーク。その左奥には黒部五郎。薬師のずっと左手には鍬崎。

もう朝日が差し込んできた剱沢にスキー滑走。カリカリの雪なので足がジンジンする。剣沢テントサイトにテントが数丁。テントサイトからの急斜面の滑走を振り返ると、きれいなショートターントレースがついている。平蔵谷の入口に人がいる。登り始めているのは一人だけだが、もう谷の上部を登っている二つのパーティが見えた。

長次郎の入口の手前で滑走終了し、シールを貼って登り始める。入口から少し登ると、もう数百メートル先を登っているパーティ。そのもっと先を、正面のコルのあたりを登っているパーティもいた。

長次郎谷は傾斜が緩く見えたが、堅くて荒れている雪渓はシールには不向き。最初の休憩をとり、アイゼンに替える。しばらくは谷は日陰になっていたが、7時半に日向に出る。最初の休憩から1時間。二回目の休憩。背後の谷間には双耳になったスバリと針ノ木。

正面の二俣の中央にある熊岩の手前を右俣の方向へ進むボーダーがいったん姿を消し、熊岩の左上に姿を現したとき、「熊岩の上を右から左へトラバースする」ことを思い出す。

真下まできて見上げる熊岩はとてもでかい。広い谷に両側に切り立った岸壁。左岸は八ツ峰、右岸は源次郎尾根。背後には針ノ木と蓮華。右俣を登って行くと、予想通りに踏跡は熊岩の上に左に曲がる。直射日光のためにだいぶ消耗していて、熊岩の上で3回目の休憩。

熊岩から左俣は柔らかくて急な登り。ストックを最短にし、先行のつづら折りの踏跡を辿る。長次郎のコルの上に人影が二つ。

熊岩から1時間半で長次郎のコルに到着。ふりかえると、はるか下に長次郎雪渓が連なり、その左に八つ峰。その峰のひとつひとつに個性があり、自己主張している。悪いけど私は登れないよ。長次郎のコルにはスキーが二つ置いてあり、頂上まで歩いて往復してきたらしいパーティが急坂の上からロープで降りてくる。雪が柔らかく、下るのがたいへんそうだ。このくらいの斜面ならスキーの方が下りやすいだろうと思い、スキーをザックに担いで斜面を登る。すると、上から二人、スキーの横滑りで降りてくる人がいる。やっぱりスキーでも下れるようだ。上の急勾配は横滑り、コルが近付いたところでターンを切る。それが正解だな。

斜面を登り切るのに30分。行く手には丸いP2・2,960mがまだ高く、剱はまだその先。北にはやや霞んでいるが、大猫と毛勝三山が見えている。大猫の平らな山頂に大ブナクラ雪渓、三つ並んだ毛勝三山。猫又と釜谷は意外に近いな。

稜線には少なくとも三つのパーティが歩いた踏跡がついている。それを辿ってP2・2,960mに着くと、行く手に剱の丸い頂上とその上にボードを担いだ男性。剱への最後の登り。

11時半についに剱頂上に到着。久しぶりの祠のところにザックとスキーを置き、雪の最高点に戻り、ボーダーに写真をとってもらう。サングラスがメガネから少し外れていて、変な顔。ボーダーは平蔵谷の方に滑ってゆき、一人になった私はとりあえず祠のそばで横になって休憩。満足感と疲労困憊。剣頂上には50分近くいたが、だいぶ眠ったかもしれない。

滑走開始。まずP2コルへ。P2からは長次郎谷の上部が見渡せる。スキー・トレースが何本もついている。八ツ峰の全景、その向こうに鹿島槍。熊岩の上の雪も見える。振り返った剱の山頂は、ここから見ると丸い雪のピーク。

そしてP1・2,900mの頂から真下の長次郎のコルを見降ろす。ほとんど垂直で、しかも中段に出ている岩の間の細いところを通らなければならない。岩さえ出ていなければショートターンで下るだろうが、ターンがうまくいかないと岩にエッジングすることになりかねない。ここはやはり慎重に横滑りでいく。しかし、雪が柔らかく、なかなか横滑りしてくれない。一歩一歩下ることになり、ひどく体力を使う。岩の間を通過し、ラスト1/3あたりでターン開始し、2~3回でコルに到着。ご苦労さん。またひっくりかえって休憩。

長次郎のコルからの滑走。これは平蔵谷と違い、クラックもなく、急傾斜もないから、まあ、のんびりと下れる。それでも熊岩までは比較的急で、雪はやわらかいが、連続ターン、連続加重はこたえる。熊岩に到着し、7回目の休憩。熊岩から長次郎下部では、もう傾斜は緩い。雪渓の真ん中に並ぶ雪の架台の雪ボール。だんだん雪の上に土くれや枝が散乱してきて、それらを避けながら滑走。13時半に谷の入口について滑走終了し、休憩。シールを貼る。

登り返しは辛く、途中で11回目の休憩。滑走開始の頃からだいぶ雲がでてきて、遠方はかすんでいたが、向かっている西の剱沢の上には青空が広がっている。テントサイトには何人かの人と立てられたスキー。長次郎で会ったスキー・パーティだったかもしれない。

テントサイトを通過し、平坦な場所で休憩。いつの間にかガスが剱沢におりてきて、小雪が舞い始める。またたく間にあたりはガスに覆われ、本降りの雪となる。これにはびっくり。雪は本格的だがみぞれぎみでびしょぬれになってしまう。ザックを下ろしてレインウェアを着込む。(レイングローブやスキーブーツのままでもはけるレインウェアを手に入れたのはこの「剱沢ズブ濡れ事件」の後)

気まぐれ天気は去り、雪の止んだ雷鳥沢を滑走する。もう18時で誰もいない。

ごくろんさん。剱はたいへんな山だが、なんとか登り、滑走することができた。満足感に達成感。心地よい疲労感。全てはこのために。

D3

翌朝、バスの時間に合わせて6時起床。朝食をとってテントを畳む。室堂にはガスがかかっていて山の中腹までしか見えない。小雨模様。干しておいたシールも濡れているが、その濡れたシールをスキーに貼って出発。尾根道に上がるとバスターミナルに向かう人たち。バスに乗り、曇った外を見ていると、濡れたカメラが動かなくなってしまい、9時20分頃に動き出す。水分が乾いたのだろうか。その後も問題なく動いている。いつもの通りに美女平でケーブルに乗り、立山駅に戻り、車に戻り、車の中にアイポッドなどを並べて乾かす。やはり雨。今回もグリーンパーク吉峰に寄り、風呂上がりに歯を磨き、スキンミルクを足に塗る。さっぱりして出発。GS、スーパー、コンビニに寄ってから高速に乗る。霞んだ北陸の山々。名立谷浜PAに寄って昼食。波で削られた古いテトラポッド。

充実の富山遠征、剱の3週間を終える。

D1

大日岳

立山の全景:別山、真砂岳、富士ノ折立、大汝山、雄山

浄土山頂上

滑走

浄土山

雷鳥沢テントサイト

D2

夜明け前の奥大日岳

早朝2時に起床。3時にシールで出発する。しかし、私よりも前に2時頃出発したパーティがいた。どこに向かったのだろう。尾根の麓でアイゼンに替え、斜面を登る。雪は堅く、踏跡もあるので、格段に登りやすい。4時を過ぎたあたりで明るくなってくる。快晴の予感。

快晴となってきた別山乗越に近付く。小屋の上の別山の尾根に人影。ご来光の撮影かな。立山と室堂の全景が白く輝く。昨日登った浄土山の頂上部分と滑走ルート。竜王の左奥に見えるのは槍だろうか。浄土の右奥には薬師の二つのピーク。その左奥には黒部五郎。薬師のずっと左手には鍬崎。

夜明けの剱岳

もう朝日が差し込んできた剱沢にスキー滑走。カリカリの雪なので足がジンジンする。剣沢テントサイトにテントが数丁。

剱沢の滑走

テントサイトからの急斜面の滑走を振り返ると、きれいなショートターントレースがついている。

平蔵谷入口(小さな人影)

平蔵谷の入口に人がいる。登り始めているのは一人だけだが、もう谷の上部を登っている二つのパーティが見えた。

長次郎谷入口

長次郎の入口の手前で滑走終了し、シールを貼って登り始める。入口から少し登ると、もう数百メートル先を登っているパーティ。そのもっと先を、正面のコルのあたりを登っているパーティもいた。

長次郎谷と針ノ木岳の尾根

長次郎谷は傾斜が緩く見えたが、堅くて荒れている雪渓はシールには不向き。最初の休憩をとり、アイゼンに替える。しばらくは谷は日陰になっていたが、7時半に日向に出る。最初の休憩から1時間。二回目の休憩。背後の谷間には双耳になったスバリと針ノ木。

熊岩

正面の二俣の中央にある熊岩の手前を右俣の方向へ進むボーダーがいったん姿を消し、熊岩の左上に姿を現したとき、「熊岩の上を右から左へトラバースする」ことを思い出す。

八ツ峰

真下まできて見上げる熊岩はとてもでかい。広い谷に両側に切り立った岸壁。左岸は八ツ峰、右岸は源次郎尾根。背後には針ノ木と蓮華。右俣を登って行くと、予想通りに踏跡は熊岩の上に左に曲がる。直射日光のためにだいぶ消耗していて、熊岩の上で3回目の休憩。

長次郎ノコルへの登り

熊岩から左俣は柔らかくて急な登り。ストックを最短にし、先行のつづら折りの踏跡を辿る。長次郎のコルの上に人影が二つ。

長次郎ノコル

熊岩から1時間半で長次郎のコルに到着。ふりかえると、はるか下に長次郎雪渓が連なり、その左に八つ峰。

八ツ峰2

その峰のひとつひとつに個性があり、自己主張している。悪いけど私は登れないよ。

長次郎ノコル南壁

長次郎のコルにはスキーが二つ置いてあり、頂上まで歩いて往復してきたらしいパティが急坂の上からロープで降りてくる。雪が柔らかく、下るのがたいへんそうだ。このくらいの斜面ならスキーの方が下りやすいだろうと思い、スキーをザックに担いで南壁を登る。すると、上から二人、スキーの横滑りで降りてくる人がいる。やっぱりスキーでも下れるようだ。上の急勾配は横滑り、コルが近付いたところでターンを切る。それが正解だな。

剱岳・北東尾根

南壁を登り切るのに30分。P1・2,900m地点。行く手には丸いP2・2,960mがまだ高く、剱はまだその先。北にはやや霞んでいるが、大猫と毛勝三山が見えている。大猫の平らな山頂に大ブナクラ雪渓、三つ並んだ毛勝三山。猫又と釜谷は意外に近いな。

P2・2,960m丸頭

剱岳頂上

稜線には少なくとも三つのパーティが歩いた踏跡がついている。それを辿ってP2・2,960mに着くと、行く手に剱の丸い頂上とその上にボードを担いだ男性。剱への最後の登り。

剱岳頂上の私

11時半についに剱頂上に到着。久しぶりの祠のところにザックとスキーを置き、雪の最高点に戻り、ボーダーに写真をとってもらう。サングラスがメガネから少し外れていて、変な顔。ボーダーは平蔵谷の方に滑ってゆき、一人になった私はとりあえず祠のそばで横になって休憩。満足感と疲労困憊。剣頂上には50分近くいたが、だいぶ眠ったかもしれない。

頂上の祠

劔沢と立山方面

パノラマ2:滑走

滑走開始。まずP2コルへ。P2からは長次郎谷の上部が見渡せる。スキー・トレースが何本もついている。八ツ峰の全景、その向こうに鹿島槍。熊岩の上の雪も見える。振り返った剱の山頂は、ここから見ると丸い雪のピーク。

剱岳頂上

パノラマ3:滑走2

長次郎コルへの下降、背景に八ツ峰の全景

そしてP1・2,900mの頂から真下の長次郎のコルを見降ろす。ほとんど垂直で、しかも中段に出ている岩の間の細いところを通らなければならない。岩さえ出ていなければショートターンで下るだろうが、ターンがうまくいかないと岩にエッジングすることになりかねない。ここはやはり慎重に横滑りでいく。しかし、雪が柔らかく、なかなか横滑りしてくれない。一歩一歩下ることになり、ひどく体力を使う。岩の間を通過し、ラスト1/3あたりでターン開始し、2~3回でコルに到着。ご苦労さん。またひっくりかえって休憩。

長次郎谷の滑走

長次郎のコルからの滑走。これは平蔵谷と違い、クラックもなく、急傾斜もないから、まあ、のんびりと下れる。それでも熊岩までは比較的急で、雪はやわらかいが、連続ターン、連続加重はこたえる。熊岩に到着し、7回目の休憩。熊岩から長次郎下部では、もう傾斜は緩い。雪渓の真ん中に並ぶ雪の架台の雪ボール。だんだん雪の上に土くれや枝が散乱してきて、それらを避けながら滑走。13時半に谷の入口について滑走終了し、休憩。シールを貼る。

長次郎谷の滑走2

雷鳥沢テントサイト

登り返しは辛く、途中で11回目の休憩。滑走開始の頃からだいぶ雲がでてきて、遠方はかすんでいたが、向かっている西の剱沢の上には青空が広がっている。テントサイトには何人かの人と立てられたスキー。長次郎で会ったスキー・パーティだったかもしれない。

テントサイトを通過し、平坦な場所で休憩。いつの間にかガスが剱沢におりてきて、小雪が舞い始める。またたく間にあたりはガスに覆われ、本降りの雪となる。これにはびっくり。雪は本格的だがみぞれぎみでびしょぬれになってしまう。ザックを下ろしてレインウェアを着込む。(レイングローブやスキーブーツのままでもはけるレインウェアを手に入れたのはこの「剱沢ズブ濡れ事件」の後)

気まぐれ天気は去り、雪の止んだ雷鳥沢を滑走する。もう18時で誰もいない。

D3

立山駅

問合せ・コメント等、メール宛先: kawabe.goro@meizan-hitoritabi.com