南八甲田・櫛ヶ峰  ショウジョウバカマの輝き

青森県  1,517m  2017年6月18日

東北百名山

211

矢櫃萢(やびつやち)の手前で少し色あせたショウジョウバカマを発見。もしかするとこれ一輪で見納めかもしれないので、何枚も写す。ところが、少し歩くと元気なショウジョウバカマが咲いていた。しかも一輪だけではない。うれしくなって全部を写しながら進む。そのあたりだけかな、と思ったショウジョウバカマは数メートルおきとは言わないが、数十メートルおきに道端に現われ、櫛ヶ峰の頂上直下の短い笹の中にも咲いていて、途中の湿原には小さな群落のショウジョウバカマが笑っていた。

薄紫、ピンクに加え、白や赤のショウジョウバカマ。残雪に悩まされ、ヤブ山と化していた櫛ヶ峰だが、ショウジョウバカマの輝きは恐ろしく魅力的だった。

矢櫃萢に着いて視界が開ける。大きな湿原の正面に乗鞍岳の一角、右に猿倉岳。湿原には露のついたチングルマが咲いていたが、まだ満開ではなかった。

ますますヤブはひどくなり、残雪を渡り、水路と化した道を進み、ヤブをかき分け、地獄峠の湿原に着く。14年前に見たチングルマの群落は無かったが、ショウジョウバカマがたくさん咲いていて、ところどころで小群落になっている。北に猿倉岳から駒ヶ峰の稜線。

いくつもの沢を横切り、やっと櫛ヶ峰分岐に着く。左に行くと十和田湖畔の御鼻部山だが、長い道で、最初からヤブに覆われている。櫛ヶ峰方面は最初はガレの登りで、その先で待望の木道に出る。木道の向こうに残雪の櫛ヶ峰。西側の斜面は傾斜が緩そうだ。そして木道の湿原には、ショウジョウバカマに加え、チングルマの大群落があった。痛んだ木道と花咲く湿原と残雪の櫛ヶ峰。

南東尾根手前の雪渓に出て、横断にかかるが、ヤブの踏跡を進むより、雪渓を登るほうが楽だと気づく。少し斜めに、九十九折りを切って登っていく。アイゼンを持ってくればよかった。急斜面の登りはきつく、時々休みながらの登りとなる。背後には黄瀬川源流の広大な平原。その中に湿原が散らばっており、その向こうに駒ヶ峰と乗鞍岳。

最後の雪の急斜面ではキックステップで足場を確保しながら登る。長靴だとつま先が痛い。やがて傾斜が緩み、頂上直下に到達。笹の切り分けを登っているときにショウジョウバカマを見る。それは14年前に櫛ヶ峰頂上付近で見つけた、ピンクの丸いショウジョウバカマそっくりだった。時を遡って昔を訪れたような奇妙な感覚。

櫛ヶ峰の頂上はいつもの通りだったが、頂上標識の背後の北八甲田は雲に隠れようとしていた。雪のない二等三角点はいつもより大きく見える。十和田湖と御鼻部山、乗鞍岳と黄瀬沼、駒ヶ峰と木道の湿原、そして北には横岳。夏山で登ったのは14年ぶりだが、山スキーで何度も見ているいつもの風景。雪原だったところに湿原と木道があるのが新鮮。


 木道の向こうに残雪の櫛ヶ峰。西側の斜面は傾斜が緩そうだ。そして木道の湿原には、ショウジョウバカマに加え、チングルマの大群落があった。痛んだ木道と花咲く湿原と残雪の櫛ヶ峰。

 四色のショウジョウバカマ

 怪しい輝きの薄紫のショウジョウバカマ
 おしゃれなピンクのショウジョウバカマ
 白いショウジョウバカマ、気品のある姿
 赤いショウジョウバカマ、すごく派手
 途中の湿原には小さな群落のショウジョウバカマが笑っていた。残雪に悩まされ、ヤブ山と化していた櫛ヶ峰だが、ショウジョウバカマの輝きは恐ろしく魅力的だった
 ショウジョウバカマ全景(花以外は地味)
 チングルマ
 ヒナザクラ
  4:17 猿倉温泉発(標高850m)  6:22 矢櫃萢  8:03 一ノ沢  9:00 地獄峠  9:38 駒ヶ峰分岐10:26 櫛ヶ峰分岐、木道・東端11:05 木道・西端13:02 櫛ヶ峰・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り8時間45分13:15 櫛ヶ峰発14:19 木道・西端14:46 櫛ヶ峰分岐15:29 駒ヶ峰分岐15:49 地獄峠16:47 一ノ沢18:17 矢櫃萢20:11 猿倉温泉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下り6時間56分       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復15時間54分
往路12.6㎞、標高差948m、速度1.4㎞/h、108m/h帰路10.2㎞、標高差373m、速度1.5㎞/h

🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸

14年前に登った時見た櫛ヶ峰のショウジョウバカマをもう一度、見に行く。そのときは駐車場がえらく混んでいたようなので、2時起き、4時出発のプランで行く。4時前の猿倉温泉はさすがに空いており、奥に停めるが、そこも温泉敷地内で、もっと奥の一般駐車場に停めるべきだった。前日はレインウェアなしでも暑かったが、青森の朝は寒くて10度以下。酸ヶ湯で停車し、レインウェアを着込む。駐車場にヤマオダマキ。明るくなってきた空に雲をまとった高田大岳。14年ぶりの長靴を履いていくが、ソールがきちんとはまっていなかったらしく、戻って靴を脱いでみると、靴下が接着剤でべとべとになっていた。一応、沢ザックに登山靴とウォーキング・スティックとポカリ3本を入れていく。一般駐車場には車1台。林の中の道を行くと、さっそく水溜りがあり、長靴でジャブジャブ歩く。道沿いには花がたくさん。オオカメノキ、キスミレ、シラネアオイにヘビイチゴ。

矢櫃萢(やびつやち)の手前、大きな倒木をくぐり、1,010m屈曲点のあたりから道は荒れてくるが、そこで少し色あせたショウジョウバカマを発見。花びらが少なくて丸くなく、やや色あせてはいるが、もしかするとこれ一輪で見納めかもしれないので、何枚も写す。ところが、少し歩くと元気なショウジョウバカマが咲いていた。しかも一輪だけではない。少し先に次のショウジョウバカマ、今度は二つ並んで、そして丸いショウジョウバカマも咲いていた。次々に現れるショウジョウバカマを一つ一つ写していく。何枚も。ついでに映像の解像度を上げて写す。どのくらい違うだろう。うれしくなって全部を写しながら進む。そのあたりだけかな、と思ったショウジョウバカマは数メートルおきとは言わないが、数十メートルおきに道端に現われ、櫛ヶ峰の頂上直下の短い笹の中にも咲いていて、途中の湿原には小さな群落のショウジョウバカマが笑っていた。薄紫、ピンクに加え、白や赤のショウジョウバカマ。残雪に悩まされ、ヤブ山と化していた櫛ヶ峰だが、ショウジョウバカマの輝きは恐ろしく魅力的だった。矢櫃萢の手前では、ミズバショウやミツバオウレン、怪しい輝きの薄紫のショウジョウバカマにおしゃれなピンクのショウジョウバカマ。

矢櫃萢に着いて視界が開ける。大きな湿原の正面に乗鞍岳の一角、右に猿倉岳。湿原には露のついたチングルマが咲いていたが、まだ満開ではなかった。その先、14年前に固定ロープを使って渡った壊れた橋は、新しい橋に付け替えられていた。14年前に比べてよくなっていたのはここだけだが、デザインも悪くない良い橋だ。だが、その新しい橋を渡ってから、残雪が道に覆い被さり、雪の上に上がって越えていくようになる。最初の難所は急斜面の沢沿いにあり、沢を越えるところの残雪が薄くて登れず、上流側の残雪の急斜面に登り、笹につかまって向こう側に下った。この調子だと櫛ヶ峰は無理かな、と思い始める。次は平坦な道に斜めに覆い被さった残雪の上をトラバース気味に歩く。いまにも滑って落ちそうだが、雪が柔らかいためか、長靴は最後まで滑らなかった。ちょっと自信がでてくる。二つ目の屈曲点(1,150m)までは長く、曲がってからも長く感じた。大きな葉に不気味な色はエンレイソウ。沢を渡り、ようやく一ノ沢に着く。背後の視界が開け、北八甲田の諸峰が見えている。一ノ沢は狭い平地で、乗鞍岳への分岐があるが、登路の沢筋は残雪で埋まっている。ここでヘルメットをかぶり、ウォーキング・スティックを出す。

ますますヤブはひどくなり、残雪を渡り、水路と化した道を進み、ヤブをかき分け、地獄峠の湿原に着く。北には猿倉岳。道沿いにはピンクのミツバツツジ。14年前に見たチングルマの群落は無かったが、ショウジョウバカマがたくさん咲いていて、ところどころで小群落になっている。北に猿倉岳から駒ヶ峰の稜線。マシュマロを食べる。地獄峠の最初の湿原の先は雪解け水で浅い池になっており、ヤブを抜けて次の湿原で初めて駒ヶ峰の奥に櫛ヶ峰が見える。残雪が多いな。登れるだろうか。一連の湿原を過ぎると下りとなり、黄瀬沼分岐。その先は残雪で埋まった道を進み、沢を渡って駒ヶ峰分岐に着く。ここで駒ヶ峰に登って帰る手もあるが、沢沿いの急斜面は楽ではなかろう。初志貫徹。駒ヶ峰の南のトラバース路も残雪が多いが、視界が開け、南側の湿原に池塘が見事。残雪を下って湿原と池塘の間を歩きたくなるが、順路に戻る。

いくつもの沢を横切り、やっと櫛ヶ峰分岐に着く。ここの分岐標識も14年でだいぶくたびれたが、まだいい方。駒ヶ峰分岐と黄瀬沼分岐の標識は倒れていた。ここで真っ白なショウジョウバカマを見る。土の成分の影響だろうか。気品のある姿。左に行くと十和田湖畔の御鼻部山だが、長い道で、最初からヤブに覆われている。櫛ヶ峰方面は最初はガレの登りで、その先で待望の木道に出る。木道の向こうに残雪の櫛ヶ峰。西側の斜面は傾斜が緩そうだ。そして木道の湿原には、ショウジョウバカマに加え、チングルマの大群落があった。痛んだ木道と花咲く湿原と残雪の櫛ヶ峰。ここには赤いショウジョウバカマが咲いていた。すごく派手。1本目のポカリを飲み干し、木道を歩きながらバナナチップを食べる。木道が終わり、いったん沢に下る。沢は残雪に覆われ、渡渉点からは残雪に上がれないので、ヤブを上流側に進み、残雪のないところを渡渉。ところが対岸にびっしり雪がついていてルートが分からない。笹ヤブは強力で、進むのは容易ではない。残雪の沢筋をたどってみるがGPSルートから逸れていく。何度もいったりきたりし、残雪の迷路を進んだ先で、笹ヤブの中の踏跡をようやく発見。Vサイン。

櫛ヶ峰の南東尾根まで、何度も残雪の沢筋を横断し、その度に対岸の踏跡を探す。2度目のロストも何度も行ったり来たりし、やや下流側で踏跡発見。踏跡はひどいヤブ。ヤブの中で狭い残雪にスティックを刺して何度か越え、ふと見るとスティックのゴムが両方ともなくなっていた。外しておくんだった。ヤブの踏跡の両側にショウジョウバカマを何度も見たが、もう撮影している余裕はなし。11時54分から南東雪渓に出た12時32分まで、40分近く写真を撮っていない。

南東尾根手前の雪渓に出て、横断にかかるが、ヤブの踏跡を進むより、雪渓を登るほうが楽だと気づく。少し斜めに、九十九折りを切って登っていく。アイゼンを持ってくればよかったが、これまでのところ大丈夫で、スティックでバランスを保てばいけるだろう。上の方は傾斜がきつそうだが、南東尾根のあたりの傾斜はそれほどでもない。少し斜めに、九十九折りを切って登り、雪渓の真ん中にある雪の消えた箇所を目指し、その次は雪渓の北側に沿って登る。そこならもし滑り落ちても、下は雪が消えているので止まるだろう。急斜面の登りはきつく、時々休みながらの登りとなる。背後には黄瀬川源流の広大な平原。その中に湿原が散らばっており、その向こうに駒ヶ峰と乗鞍岳。

南東雪渓の北側の雪解け部分の先端に達し、最後の雪の急斜面ではキックステップで足場を確保しながら登る。長靴だとつま先が痛い。やがて傾斜が緩み、昔の木道跡に行きあたる。そして頂上直下に到達。笹の切り分けを登っているときにショウジョウバカマを見る。それは14年前に櫛ヶ峰頂上付近で見つけた、ピンクの丸いショウジョウバカマそっくりだった。時を遡って昔を訪れたような奇妙な感覚。

櫛ヶ峰の頂上はいつもの通りだったが、頂上標識の背後の北八甲田は雲に隠れようとしていた。雪のない二等三角点はいつもより大きく見える。頂上標識木柱はだいぶくたびれ、文字も消えかけている(14年前の写真を見ると、「櫛ヶ峰山頂」の文字はくっきり)。十和田湖と御鼻部山、乗鞍岳と黄瀬沼、駒ヶ峰と木道の湿原、そして北には横岳。夏山で登ったのは14年ぶりだが、山スキーで何度も見ているいつもの風景。雪原だったところに湿原と木道があるのが新鮮。

もう13時なので、早々に下りにかかる。南への切り分けを下り始め、まだ祠を見ていないことに気づき、引き返す。東の切り分けを下ってみたが、見当たらない。まだ雪の下なのだろうか。下りの切り分けは南東尾根にあり、まったく雪はなし。しかし下部で尾根から雪渓に下り、今度は雪渓下り。かかとを使い、なるべく斜めに下る。雪渓ははるか下までつながっており、踏跡はその途中にある。GPSは大体の位置を示してくれるが、10m前後になると不正確。GPSはもっと下だと指していたが、自分の目で見て、見つける。最初のロスト地点で、沢筋の残雪を辿らずに踏跡を探し、見つける。往路のときにもう少しよく見ればよかった。雪をかぶった沢を、復路では残雪の上を渡ってみる。うまくいって、記念撮影しようとすろと、突然、雪が崩れた。幸い水にはつからなかったが、さっさと岸にあがるんだった。木道に着き、横になって少し休憩。もう腰が痛い。

復路の地獄峠の水たまりは、往路のときよりもずいぶん水が増えているように感じた。長靴よりも深いところにはまりたくない。地獄峠や一ノ沢でも横になって休憩。どちらかで2本目のポカリを飲み干す。3本しか持ってこなかったのは失敗?それともちょうどよかった?一ノ沢から1150m屈曲点、1150m屈曲点から新しい橋へは長かった。雪が柔らかくなっていて、何度か踏み抜く。最大の難所、急斜面の沢沿いの残雪を往路と同じように渡り、新しい橋。これでもう難所はない。矢櫃萢で最後の休憩。朝に比べて咲いているチングルマが増えているように感じた。もう18時半なので、ヘッドランプを出し、ヘルメットをしまう。1010m屈曲点を過ぎ、次第に暗くなり、ヘッドランプを点ける。道はだいぶ歩きやすくなったが、石ころを踏むと足の裏が痛いので駆け下りられない。大きな倒木をくぐるあたりで少し迷うが、GPSも使ってルートに復帰。残り100mくらいで猿倉温泉の明かりが見える。

登山者用駐車場には2台駐車しており、うち1台には人がいた。明日の山菜取りだろうか。車に戻り、長靴を脱ぐと、ソールがめくれ、ソックスが接着剤でべとべとになっていた。14年間もほっておいたのが悪い。長靴は翌火曜日に洗ったが、ソールを付け替える必要がある。ほこりをかぶった沢ザックは水曜に洗う。8時半だったので、もう温泉には間に合わない。両足の太ももの外側が痛いのは下りの筋肉だろうか。自宅でシャワーをあびる。疲れたが、四色のショウジョウバカマも見れた。充実の一日。

🌸🌸🌸🌸🌸

14年前は同じ6月、雪は今回ほどなかったが、頂上まで4時間56分、往復10時間10分で歩いている。それが今回、頂上まで8時間45分、往復15時間54分もかかったのは、残雪が多かったこともあるが、夏道が荒れ放題でヤブ化していたためだ。

夜明けの大岳と酸ヶ湯温泉

14年前に登った時見た櫛ヶ峰のショウジョウバカマをもう一度、見に行く。そのときは駐車場がえらく混んでいたようなので、2時起き、4時出発のプランで行く。4時前の猿倉温泉はさすがに空いており、奥に停めるが、そこも温泉敷地内で、もっと奥の一般駐車場に停めるべきだった。前日はレインウェアなしでも暑かったが、青森の朝は寒くて10度以下。酸ヶ湯で停車し、レインウェアを着込む。駐車場にヤマオダマキ。明るくなってきた空に雲をまとった高田大岳。14年ぶりの長靴を履いていくが、ソールがきちんとはまっていなかったらしく、戻って靴を脱いでみると、靴下が接着剤でべとべとになっていた。一応、沢ザックに登山靴とウォーキング・スティックとポカリ3本を入れていく。一般駐車場には車1台。林の中の道を行くと、さっそく水溜りがあり、長靴でジャブジャブ歩く。道沿いには花がたくさん。オオカメノキ、キスミレ、シラネアオイにヘビイチゴ。

ヤマオダマキ

 朝の高田大岳

オオカメノキ

キスミレ

シラネアオイ

ヘビイチゴ

荒れる前の道

スミレ

最初のショウジョウバカマ

矢櫃萢(やびつやち)の手前、大きな倒木をくぐり、1,010m屈曲点のあたりから道は荒れてくるが、そこで少し色あせたショウジョウバカマを発見。花びらが少なくて丸くなく、やや色あせてはいるが、もしかするとこれ一輪で見納めかもしれないので、何枚も写す。ところが、少し歩くと元気なショウジョウバカマが咲いていた。しかも一輪だけではない。少し先に次のショウジョウバカマ、今度は二つ並んで、そして丸いショウジョウバカマも咲いていた。次々に現れるショウジョウバカマを一つ一つ写していく。何枚も。ついでに映像の解像度を上げて写す。どのくらい違うだろう。うれしくなって全部を写しながら進む。そのあたりだけかな、と思ったショウジョウバカマは数メートルおきとは言わないが、数十メートルおきに道端に現われ、櫛ヶ峰の頂上直下の短い笹の中にも咲いていて、途中の湿原には小さな群落のショウジョウバカマが笑っていた。薄紫、ピンクに加え、白や赤のショウジョウバカマ。残雪に悩まされ、ヤブ山と化していた櫛ヶ峰だが、ショウジョウバカマの輝きは恐ろしく魅力的だった。矢櫃萢の手前では、ミズバショウやミツバオウレン、怪しい輝きの薄紫のショウジョウバカマにおしゃれなピンクのショウジョウバカマ。

荒れ始めた道

二つ目のショウジョウバカマ

ミズバショウ

ミツバオウレン

怪しい輝きの薄紫のショウジョウバカマ

おしゃれなピンクのショウジョウバカマ

オオカメノキ

ショウジョウバカマ全景

丸いショウジョウバカマ

オオカメノキ

朝露のチングルマ

矢櫃萢に着いて視界が開ける。大きな湿原の正面に乗鞍岳の一角、右に猿倉岳。湿原には露のついたチングルマが咲いていたが、まだ満開ではなかった。その先、14年前に固定ロープを使って渡った壊れた橋は、新しい橋に付け替えられていた。14年前に比べてよくなっていたのはここだけだが、デザインも悪くない良い橋だ。だが、その新しい橋を渡ってから、残雪が道に覆い被さり、雪の上に上がって越えていくようになる。最初の難所は急斜面の沢沿いにあり、沢を越えるところの残雪が薄くて登れず、上流側の残雪の急斜面に登り、笹につかまって向こう側に下った。この調子だと櫛ヶ峰は無理かな、と思い始める。次は平坦な道に斜めに覆い被さった残雪の上をトラバース気味に歩く。いまにも滑って落ちそうだが、雪が柔らかいためか、長靴は最後まで滑らなかった。ちょっと自信がでてくる。二つ目の屈曲点(1,150m)までは長く、曲がってからも長く感じた。大きな葉に不気味な色はエンレイソウ。沢を渡り、ようやく一ノ沢に着く。背後の視界が開け、北八甲田の諸峰が見えている。一ノ沢は狭い平地で、乗鞍岳への分岐があるが、登路の沢筋は残雪で埋まっている。ここでヘルメットをかぶり、ウォーキング・スティックを出す。

 矢櫃萢

サンカヨウ

サンカヨウ全景

新しい橋

壊れた橋(14年前、2003年6月)

エンレイソウ

エンレイソウ全景

 北八甲田: 大岳、小岳、高田大岳、雛岳

 一ノ沢

 猿倉岳

ミツバツツジ

ショウジョウバカマ全景

ミズバショウの群落

ますますヤブはひどくなり、残雪を渡り、水路と化した道を進み、ヤブをかき分け、地獄峠の湿原に着く。14年前に見たチングルマの群落は無かったが、ショウジョウバカマがたくさん咲いていて、ところどころで小群落になっている。北に猿倉岳から駒ヶ峰の稜線。

ショウジョウバカマ

丸いショウジョウバカマ

ますますヤブはひどくなり、残雪を渡り、水路と化した道を進み、ヤブをかき分け、地獄峠の湿原に着く。北には猿倉岳。道沿いにはピンクのミツバツツジ。14年前に見たチングルマの群落は無かったが、ショウジョウバカマがたくさん咲いていて、ところどころで小群落になっている。北に猿倉岳から駒ヶ峰の稜線。マシュマロを食べる。地獄峠の最初の湿原の先は雪解け水で浅い池になっており、ヤブを抜けて次の湿原で初めて駒ヶ峰の奥に櫛ヶ峰が見える。残雪が多いな。登れるだろうか。一連の湿原を過ぎると下りとなり、黄瀬沼分岐。その先は残雪で埋まった道を進み、沢を渡って駒ヶ峰分岐に着く。ここで駒ヶ峰に登って帰る手もあるが、沢沿いの急斜面は楽ではなかろう。初志貫徹。駒ヶ峰の南のトラバース路も残雪が多いが、視界が開け、南側の湿原に池塘が見事。残雪を下って湿原と池塘の間を歩きたくなるが、順路に戻る。

ショウジョウバカマの群落

 地獄峠

水路と化した登山道

長靴

 櫛ヶ峰と駒ヶ峰

黄瀬沼分岐にある池塘

イワナシ?

 乗鞍岳

 駒ヶ峰と乗鞍岳と湿原

 駒ヶ峰と乗鞍岳と池塘

櫛ヶ峰分岐表示

いくつもの沢を横切り、やっと櫛ヶ峰分岐に着く。ここの分岐標識も14年でだいぶくたびれたが、まだいい方。駒ヶ峰分岐と黄瀬沼分岐の標識は倒れていた。ここで真っ白なショウジョウバカマを見る。土の成分の影響だろうか。気品のある姿。左に行くと十和田湖畔の御鼻部山だが、長い道で、最初からヤブに覆われている。櫛ヶ峰方面は最初はガレの登りで、その先で待望の木道に出る。木道の向こうに残雪の櫛ヶ峰。西側の斜面は傾斜が緩そうだ。そして木道の湿原には、ショウジョウバカマに加え、チングルマの大群落があった。痛んだ木道と花咲く湿原と残雪の櫛ヶ峰。ここには赤いショウジョウバカマが咲いていた。派手な印象。1本目のポカリを飲み干し、木道を歩きながらバナナチップを食べる。木道が終わり、いったん沢に下る。沢は残雪に覆われ、渡渉点からは残雪に上がれないので、ヤブを上流側に進み、残雪のないところを渡渉。ところが対岸にびっしり雪がついていてルートが分からない。笹ヤブは強力で、進むのは容易ではない。残雪の沢筋をたどってみるがGPSルートから逸れていく。何度もいったりきたりし、残雪の迷路を進んだ先で、笹ヤブの中の踏跡をようやく発見。Vサイン。

14年前の櫛ヶ峰分岐表示

白いショウジョウバカマ、気品のある姿

白いショウジョウバカマ全景

岩手山

木道と櫛ヶ峰

木道の向こうに残雪の櫛ヶ峰。西側の斜面は傾斜が緩そうだ。そして木道の湿原には、ショウジョウバカマに加え、チングルマの大群落があった。傷んだ木道と花咲く湿原と残雪の櫛ヶ峰。木道はまだ歩けるが、だいぶ傷んでいる。

チングルマ

赤いショウジョウバカマ、すごく派手

ミツバオウレン

チングルマたち

 櫛ヶ峰と木道と湿原

ヒナザクラ

ショウジョウバカマたち

櫛ヶ峰の南東尾根まで、何度も残雪の沢筋を横断し、その度に対岸の踏跡を探す。2度目のロストも何度も行ったり来たりし、やや下流側で踏跡発見。踏跡はひどいヤブ。ヤブの中で狭い残雪にスティックを刺して何度か越え、ふと見るとスティックのゴムが両方ともなくなっていた。外しておくんだった。ヤブの踏跡の両側にショウジョウバカマを何度も見たが、もう撮影している余裕はなし。11時54分から南東雪渓に出た12時32分まで、40分近く写真を撮っていない。

ショウジョウバカマたち全景

南東尾根手前の雪渓に出て、横断にかかるが、ヤブの踏跡を進むより、雪渓を登るほうが楽だと気づく。少し斜めに、九十九折りを切って登っていく。アイゼンを持ってくればよかったが、これまでのところ大丈夫で、スティックでバランスを保てばいけるだろう。上の方は傾斜がきつそうだが、南東尾根のあたりの傾斜はそれほどでもない。少し斜めに、九十九折りを切って登り、雪渓の真ん中にある雪の消えた箇所を目指し、その次は雪渓の北側に沿って登る。そこならもし滑り落ちても、下は雪が消えているので止まるだろう。急斜面の登りはきつく、時々休みながらの登りとなる。背後には黄瀬川源流の広大な平原。その中に湿原が散らばっており、その向こうに駒ヶ峰と乗鞍岳。

ショウジョウバカマの群落

ヒナザクラ

ヒナザクラたち

チングルマたち

 南東雪渓下端

 南東雪渓中段

頂上のショウジョウバカマ

南東雪渓の北側の雪解け部分の先端に達し、最後の雪の急斜面ではキックステップで足場を確保しながら登る。長靴だとつま先が痛い。やがて傾斜が緩み、昔の木道跡に行きあたる。そして頂上直下に到達。笹の切り分けを登っているときにショウジョウバカマを見る。それは14年前に櫛ヶ峰頂上付近で見つけた、ピンクの丸いショウジョウバカマそっくりだった。時を遡って昔を訪れたような奇妙な感覚。

櫛ヶ峰頂上

櫛ヶ峰の頂上はいつもの通りだったが、頂上標識の背後の北八甲田は雲に隠れようとしていた。雪のない二等三角点はいつもより大きく見える。頂上標識木柱はだいぶくたびれ、文字も消えかけている(14年前の写真を見ると、「櫛ヶ峰山頂」の文字はくっきり)。十和田湖と御鼻部山、乗鞍岳と黄瀬沼、駒ヶ峰と木道の湿原、そして北には横岳。夏山で登ったのは14年ぶりだが、山スキーで何度も見ているいつもの風景。雪原だったところに湿原と木道があるのが新鮮。

櫛ヶ峰頂上標識(14年前)

 櫛ヶ峰頂上からの景観: 南沢岳、横岳、雲間の北八甲田、駒ヶ峰、乗鞍岳、戸来岳、御鼻部山、十和田湖、毛無山?、下岳

黄瀬沼

御鼻部山と十和田湖

湿原と木道

ミツバオウレン

頂上の祠(14年前)

もう13時なので、早々に下りにかかる。南への切り分けを下り始め、まだ祠を見ていないことに気づき、引き返す。東の切り分けを下ってみたが、見当たらない。まだ雪の下なのだろうか。下りの切り分けは南東尾根にあり、まったく雪はなし。しかし下部で尾根から雪渓に下り、今度は雪渓下り。かかとを使い、なるべく斜めに下る。雪渓ははるか下までつながっており、踏跡はその途中にある。GPSは大体の位置を示してくれるが、10m前後になると不正確。GPSはもっと下だと指していたが、自分の目で見て、見つける。最初のロスト地点で、沢筋の残雪を辿らずに踏跡を探し、見つける。往路のときにもう少しよく見ればよかった。雪をかぶった沢を、復路では残雪の上を渡ってみる。うまくいって、記念撮影しようとすろと、突然、雪が崩れた。幸い水にはつからなかったが、さっさと岸にあがるんだった。木道に着き、横になって少し休憩。もう腰が痛い。

湿原と木道

水溜りの道と長靴

復路の地獄峠の水たまりは、往路のときよりもずいぶん水が増えているように感じた。長靴よりも深いところにはまりたくない。地獄峠や一ノ沢でも横になって休憩。どちらかで2本目のポカリを飲み干す。3本しか持ってこなかったのは失敗?それともちょうどよかった?一ノ沢から1150m屈曲点、1150m屈曲点から新しい橋へは長かった。雪が柔らかくなっていて、何度か踏み抜く。最大の難所、急斜面の沢沿いの残雪を往路と同じように渡り、新しい橋。これでもう難所はない。矢櫃萢で最後の休憩。朝に比べて咲いているチングルマが増えているように感じた。もう18時半なので、ヘッドランプを出し、ヘルメットをしまう。1010m屈曲点を過ぎ、次第に暗くなり、ヘッドランプを点ける。道はだいぶ歩きやすくなったが、石ころを踏むと足の裏が痛いので駆け下りられない。大きな倒木をくぐるあたりで少し迷うが、GPSも使ってルートに復帰。残り100mくらいで猿倉温泉の明かりが見える。

夕方の矢櫃萢のチングルマ

最後に見たショウジョウバカマ

登山者用駐車場には2台駐車しており、うち1台には人がいた。明日の山菜取りだろうか。車に戻り、長靴を脱ぐと、ソールがめくれ、ソックスが接着剤でべとべとになっていた。14年間もほっておいたのが悪い。長靴は翌火曜日に洗ったが、ソールを付け替える必要がある。ほこりをかぶった沢ザックは水曜に洗う。8時半だったので、もう温泉には間に合わない。両足の太ももの外側が痛いのは下りの筋肉だろうか。自宅でシャワーをあびる。疲れたが、四色のショウジョウバカマも見れた。充実の一日。

問合せ・コメント等、メール宛先: kawabe.goro@meizan-hitoritabi.com