オプタテシケ 

シュプールの波

北海道・大雪山系  2,013m  2008年3月29~30日(テント1泊)

日本三百名山

275

腰まで埋まる深雪だってェ

すっ転ばないように気をつけな-

波乗りの要領なんだよォ

泳いだことはないけどナ

そーら、すっ飛ばすぞォ

(パウダーの煙)

❄❄❄❄❄

そして9時前、北西尾根の上に豪壮なオプタテシケが姿を現わす。左右にピークを従えた白い岩峰。見とれるばかりに美しい。やがて太陽がオプタテシケの上に輝き、青い空に白い岩峰が映える。巨大な造形に挑もうとする白いヘルメット。

西肩の手前で休憩。4時間経過。目の前の西肩雪岩はなかなかの迫力。その上にオプタテの頂上がある。もう少しだ。ふとオプタテの右、稜線の向こう側に目を向けると、見たことのないかっこうをした山が立っている。横広がりの土台の上に丸い山頂。ニペソツだ。

辿り着いた頂上は思ったとおり狭かった。頂上の向こう側には、トムラウシとそれに続く縦走路が続いている。トムラウシもずいぶん違った形になっていて、双耳峰に見える。昨年はどっちに登ったんだろう。たぶん左側かな。

連続ターンで北西尾根を軽快に下る。きれいなシュプールを描ける。振り返って見上げると、踏み跡に沿って下ってくるシュプールがくっきり残っている。シュプールの波は深く見えるが、実に軽い粉雪で軽々とターンできる。最高の気分。

美瑛に向かう途中で、居並ぶ十勝連峰を眺める。両肩をいからせたオプタテシケ、斜めにナギの走るベベツ、その名の通り富士型の美瑛富士、美しい尖峰の美瑛岳と並び、その右に、広い溶岩台地をもった十勝岳が噴煙を上げている。一つ一つが記憶に残る個性の山々。

 北西尾根の上に豪壮なオプタテシケが姿を現わす。左右にピークを従えた白い岩峰。見とれるばかりに美しい。やがて太陽がオプタテシケの上に輝き、青い空に白い岩峰が映える。巨大な造形に挑もうとする白いヘルメット。
 連続ターンで北西尾根を軽快に下る。きれいなシュプールを描ける。振り返って見上げると、踏み跡に沿って下ってくるシュプールがくっきり残っている。シュプールの波は深く見えるが、実に軽い粉雪で軽々とターンできる。最高の気分。
 トムラウシ
 ニペソツ
 粉雪
十勝連峰:オプタテシケ、ベベツ、美瑛冨士、美瑛岳、十勝岳
D1  9:47 駐車地点発(標高650m付近)12:31 尾根取付き13:31 西尾根末端、テント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り3時間44分(標高1,150m付近)D2  7:10 テント発、シール  8:08 アイゼン10:40 主稜線(1,850m付近)11:06 西の肩1,920m11:42 オプタテシケ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り4時間32分12:23 オプタテシケ発、滑走12:51 西の肩13:38 テント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・滑走1時間15分     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復6時間28分14:15 テント発、滑走16:39 駐車地点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・PMテント撤収から2時間24分       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・AMテント発から9時間29分

OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO

D1

なっちゃん*は深夜、早朝の運航はなく、在来船の深夜函館着の便。いつもどおりに函館から高速に乗り、モダ石油(これももうない)で給油し、富良野を目指す。有珠山SAで休憩し、美沢PAで夜が明ける。旭川鷹栖で下り、白金温泉に向かう。山に近づくとやがて雪道となり、白金温泉を過ぎ、ガイドにあった国立大雪青少年交流の家を過ぎ、除雪末端地点となる。車が数台止めてあり、雪の上にはスキートレースがあるので、ここから登山開始ということだろう。ガイドには「青少年交流の家に車を止め」とあったが、数百メートル離れているので、ここに止めることにする。

*今はなき高速フェリー。帰りの函館で、フェリー乗場にゆくとなっちゃんが19時過ぎにあったのでそれに乗る。初めて乗るなっちゃんは飛行機のような感じで、トイレも清潔でなかなか良かった。

オプタテシケに登るため、テントとシュラフを詰め込んだロウ・アルパイン・ザックにピッケルを差し込み、ロシニョールにシールを貼って出発。オプタテの西斜面はパウダーらしいので、こちらのスキーがいいだろう。道は途中で川を渡って美瑛富士登山口の方へ向かう。ガイドによると、渡らずにまっすぐだが、トレースは全部、川を渡っているので、こちらに従う。この先、山側に美瑛富士登山口が再び現れたが、ここは林道を進むトレースに従う。この先、延々と歩くが、途中で滑り下りてくる三人に会う。時間からいって前日テント泊で、西尾根を途中まで登ってきたのだろうか。ガスなので写すものとてなく、やがて左手の川向こうの道からの橋らしきものが見える。ガイドにあった望岳橋かもしれない。しかしここから林道はどんどん山を登っていく。どうもガイドのルートと違うようだが、トレースがあるのがなによりの証拠なので、これに従う。林道が平坦になったところで休憩。マップを調べ、どうも新しい林道のほうを歩いているようだ。GPSもそのあたりの現在位置を示している。

林道はやがて雪に埋まった沢を渡り、トレースはここで林道を離れて尾根を登っていく。ガイドのとおりなのでトレースに従うが、さっきの三人のものと思われるトレースに、真新しい登りトレースがバラバラについている。しばらく登ったところで登りトレースが左にそれてゆき、そちらに行ってみると行く手にテントが張ってある。なるほど。林のだいぶ低いところに張ってあり、風をしのぐにはいいだろうが、もう少し登っておきたいと思い、林の斜面を登る。あまり登ると木が少なくなるので、斜面中腹の樹木が集まっているところにテントを張ることにする。木々の間をならして固め、テントを張ってロープをまわりの木につなぐ。これならスキーを支柱にしなくてすむ。

それにしてもまだ2時半。まずは昼飯にラーメンを作って食べる。ワンセグを起動すると映るので、ずっと高校野球を見る。便利になったなあ。冬用のシュラフを広げ、最初は軽い服装でシュラフにもぐりこんで時間をつぶしたが、夕方になり、気温が下がってくるとスキー服を着ないと耐えられない。夕食の御飯を食べ、ホットウイスキーを飲み、そのあとはシュラフに頭からもぐりこむ。空気が入ってくると寒いし、背中や足も寒い。真夜中にトイレに起きると、夜空は満天の星。じっくり眺めたかったがあまりの寒さにがまんできず、テントにシュラフにもぐりこむ。ぬれたソックスの足も冷たく、しきりに冷たいところをさすりながら、なんとか一夜を過ごす。

D2

寒かった夜が明けると快晴の空が広がっていた。ぐっすり眠れない夜だったが、いつのまにか眠り込んだと見え、外が明るくなっている。とりあえずトイレに外に出る。快晴になりそうだ。着替え、食事をし、ザックを詰め替え、シュラフとマットを片付け、出発は7時過ぎになっていた。西尾根にまだ日は差していない。乾いた雪にシールを乗せて登る。斜面の左側に真新しい登りトレースがあった。下のテントの主かもしれない。更に登ると滑走トレースが数本。これは昨日の三人のものかもしれない。やがて尾根の左上から朝日が射してくる。斜面の西側に真っ白く日を浴びているのは美瑛富士で、その手前がベベツだろうか。

森林限界を超えて雪斜面を登り、ブッシュのあるところで登りトレースと下りトレースが無くなる。どうやらここまで登り、滑り下りていったらしい。ここからは一人旅。傾斜もきつくなっていたので、アイゼンに切り替える。東に見える山並みの上に大雪山が見えるようになる頃、下の森林限界のあたりに人影を見る。どうやらスキーで一人登ってくるようだ。まだだいぶ下。

そして9時前、北西尾根の上に豪壮なオプタテシケが姿を現わす。左右にピークを従えた白い岩峰。見とれるばかりに美しい。もう少し登った小さなコブのあるところで休憩。オプタテシケの真下にはガイドにあったおおきなナギが落ちている。斜面全体に日が差してきて、デジカメの設定を自動に切り替える。もっと早く切り替えるべきだった。やがて太陽がオプタテシケの上に輝き、青い空に白い岩峰が映える。巨大な造形に挑もうとする白いヘルメット。

東尾根の向こうに見えているのは旭岳だ。反対側の美瑛富士のほうを見ると、さっきの男性がもう真横近くまで登ってきている。かなり早い。追い越されるのは時間の問題だろう。その向こうにははるかな地平線。

雪が柔らかくなってくるとブーツがときどきもぐって歩きにくくなってくる。堅そうなところを見定めて登るが、同じような雪でも柔らかいところが現われる。ブッシュのあるところは総じて柔らかいが、大きく踏み抜くことは少なく、かえってブッシュ沿いが正解かもしれない。ベベツと美瑛富士が目の高さになり、オプタテ西肩1,920mの雪岩が迫ってくる。ふと上を見ると、さっきの男性がいつのまにか上を歩いている。西側のくぼみの向こうでスキーを外しているところまでは見たが、その後は窪みのなかを歩いて見えないところで追い越されたらしい。やがて、ベベツの上に美瑛岳が頭を出す。その右手前に美瑛富士、左手奥に見えている低い尾根は境山と下ホロカメットクらしい。

ついに縦走路に達すると、ベベツ、美瑛富士、美瑛岳、堺山、下ホロが並んで見える。もっとたくさんのピークが隠れているのだろうが、判別できない。美瑛岳の北西斜面には小さく噴煙が見える。眼下には北西尾根のはるか下に昨日歩いた林が見えている。西肩の手前で休憩。4時間経過。目の前の西肩雪岩はなかなかの迫力。その上にオプタテの頂上がある。もう少しだ。ふとオプタテの右、稜線の向こう側に目を向けると、見たことのないかっこうをした山が立っている。横広がりの土台の上に丸い山頂。ニペソツだ。鋭い岩峰も横から見るとこんな感じになり、横広がりの稜線は天狗岳のようだ。天狗と反対側にも同じような稜線。その右手に二つある山のうち、大きい方がウペペサンケ。ニペソツとウペペの間にひとつ山があるようだ(丸山)。ウペペサンケも横長でない形。

西肩1,920mの頂上は予想に反して平坦。ナギの上に突き出しているのが真下からだと目立つのだろう。最高点までいくと雪庇で危なそうなので頂上をトラバースして先に進む。少し下ってから最後の登りとなるが、鋭角のピラミッドはなかなか立派。先行の男性が見えないと思ったら、稜線を外し、雪のついている南斜面沿いを登っていた。雪が切れてハイ松の上を歩いたりして、ようやく頂上。

辿り着いた頂上は思ったとおり狭かった。男性が向こうむきに座っていた。写真を撮って先に帰って行ったが、「ここを滑るんですか」とナギを指す。「とんでもない」と否定する。滑れないことはないだろうが、狭くなった先が見えない。頂上の向こう側には、トムラウシとそれに続く縦走路が続いている。トムラウシもずいぶん違った形になっていて、双耳峰に見える。昨年はどっちに登ったんだろう。たぶん左側かな。頂上標識の裏側に古い名盤がついている。東南斜面にも雪原が広がっているが、雪は少なそうだ。美瑛岳の右奥には芦別岳と富良野スキー場が見える。オプタテの東尾根の先にある低い尾根の間に氷結した池を発見。あれは縦走路からは外れてるかもしれない。

大雪山・旭岳はここからは低い二等辺三角形に見えるが、顕著ではない。その右隣りで目立っているピークが白雲岳だとすると、昨年通った化雲岳はどのあたりだろう。トムラウシ手前のクワンナイの上流部はあのへんかな。トムラウシの右には少し離れて石狩岳の峰々がならび、更に離れてニペソツ、ウペペサンケと続く。まさに大雪から東大雪、十勝に続く北海道の中央山脈の全景を眺めている。写真を一枚とってもらい、男性は先に下ってゆく。テントに泊まったといっていたが、どのあたりだろう。たぶん尾根の麓のもっと西側だろう。頂上標識に座って十勝連峰を眺める。澄んだ空気と青い空に白い山々が映える。この峰々を縦走することがあるだろうか。

最後に頂上の東側まで歩き、ナギの下を写す。スキーをはいて出かけようとするときには、男性はもう西峰の向こうの尾根を歩いていた。頂上から登ってきたルートを下る。横滑りとショートターンにハイ松の上を歩き、ついに岩だらけのところでスキーを外して歩く。だんだん雪が増えてきて、ターンを決めてコルに滑り込む。スキーを外して西峰に登り、再びスキーを履いて西尾根の滑走。しかし、思ったとおり雪はクラスト部分と溶けている部分があって滑りにくい。ジャンプターンでこなすが、たびたびひっかかりそうになってターンを中止。西側にゆきすぎていて、尾根の踏み跡まで戻る頃には雪は滑りやすくなってきていた。連続ターンで北西尾根を軽快に下る。きれいなシュプールを描ける。振り返って見上げると、踏み跡に沿って下ってくるシュプールがくっきり残っている。シュプールの波は深く見えるが、実に軽い粉雪で軽々とターンできる。最高の気分。

北西尾根の途中で写真を撮っていると、尾根の西側に男性発見。いつの間にか追いついていた。スキーのデポ地点だったようで、スキーをはいて滑って行く。こちらはデジカメを撮るのに時間をかけるので、もう追いつけまい。オーバーハングをこえて最後の斜面。降りるところを間違えるとたいへんなので、トレースを確かめながら下る。午後になって気温が上がり、稜線の雪は溶けてきたが、北西尾根の雪は軽く、ターンを刻みながら気持ちよく滑走する。トレースは今朝よりも増えていて、どうやら何人か登ってきていたようだ。スキー・トレースの大半は頂上まで行かず、雪質のよい北西尾根途中から滑走しているようだ。4月でもパウダーというのは価値があるだろう。ここまで降りてきても雪質は軽い。軽快ターンを続ける。眼下に森林帯がせまり、テントはその手前のまばらに木がはえているあたりだろう。アイゼンに履き替えた地点までくると、西側からトラバースしてくるトレースがある。先行の男性のものだろう。疎林帯に入り、自分のトレースを見失わないようにしてテントを発見。やれやれ。

テントをたたんでいて、ポールを折ってしまう。テントを立てるときもずいぶんきつかったが、少しポールに力をかけただけで折れてしまった(この後、KIWIで替えのポールを購入)。気を取り直して滑走開始。ザックは重く、ターンするとヒザに負担かかるが、それよりヘルメットがザックに当たって頭を上げられないのが不便。森林帯まで降りると、昨日のテントがまだある。そばに立ててあったスキーはないので、ずっと張ってあるのかもしれない。

森林帯に入っても雪は軽く、見下ろすとスキーの上に粉雪。樹林帯にはところどころ開けた場所があり、最初はベベツ、次に美瑛富士、そしてオプタテシケが見えてくる。美瑛富士の麓あたりに見えていた噴煙はその向こうの十勝岳のものだろう。森林帯から見るオプタテはずいぶん遠く見え、昨日見えていたら気が重くなっていただろう。オプタテは北西尾根からみたのと同じ姿で、頂上と両肩の三本の峰が立っている。林道に出て、ビンディングを外し、半分歩きとなる。林道の下りになると、真後ろの空間にオプタテが見える。こう見えるように作ったのだろう。北西尾根の麓まで見えるが、麓が二つに分かれており、どちらから登ったのだろう。左側からだろうと思うが、ずいぶん傾斜があるように見える。隣のベベツには中央に大きなナギがあり、頂上も横長。ベベツの右側に小さなピークが見える(石垣山)。

林道下りの滑走は結構スピードが出て、途中で寒くなって上着を着込む。しかし、川沿いまで降り切り、歩きになるとまた暑くなる。ここは上から見えていたこんもりした林が川向こう間近に見えている。歩きに疲れて最後の休憩(前の休憩から1時間)。橋をわたり、雪に埋もれた林道ゲートを越え、美瑛富士登山口を過ぎ、最後の橋を渡って車道に出る。美瑛富士あたりから真新しいトレースがたくさんある。ようやく駐車地点にたどり着き、もう翌日の十勝のことを考えていたのだが、車のフロントワイパーに地元警察の紙がはさんであった。後の窓ガラスが割られ、バッグ二つとザックを盗まれていた。紙をはさんでくれた美瑛の駐在所までゆく#。

# この後、パソコンだけは戻ってきたが、他は戻ってこなかった。大雪青少年交流の家に泊めておけばよかったのかもしれない。これからは細心の注意をしていこう。

美瑛に向かう途中で、居並ぶ十勝連峰を眺める。両肩をいからせたオプタテシケ、斜めにナギの走るベベツ、その名の通り富士型の美瑛富士、美しい尖峰の美瑛岳と並び、その右に、広い溶岩台地をもった十勝岳が噴煙を上げている。一つ一つが記憶に残る個性の山々。

北海道の冬の野営、すばらしい景観、そして試練。思い出に残るツアーとなった。

 D1

大雪青少年交流の家

なっちゃん*は深夜、早朝の運航はなく、在来船の深夜函館着の便。いつもどおりに函館から高速に乗り、モダ石油(これももうない)で給油し、富良野を目指す。有珠山SAで休憩し、美沢PAで夜が明ける。旭川鷹栖で下り、白金温泉に向かう。山に近づくとやがて雪道となり、白金温泉を過ぎ、ガイドにあった国立大雪青少年交流の家を過ぎ、除雪末端地点となる。車が数台止めてあり、雪の上にはスキートレースがあるので、ここから登山開始ということだろう。ガイドには「青少年交流の家に車を止め」とあったが、数百メートル離れているので、ここに止めることにする。

*今はなき高速フェリー。帰りの函館で、フェリー乗場にゆくとなっちゃんが19時過ぎにあったのでそれに乗る。初めて乗るなっちゃんは飛行機のような感じで、トイレも清潔でなかなか良かった。

駐車地点

オプタテシケに登るため、テントとシュラフを詰め込んだロウ・アルパイン・ザックにピッケルを差し込み、ロシニョールにシールを貼って出発。オプタテの西斜面はパウダーらしいので、こちらのスキーがいいだろう。道は途中で川を渡って美瑛富士登山口の方へ向かう。ガイドによると、渡らずにまっすぐだが、トレースは全部、川を渡っているので、こちらに従う。この先、山側に美瑛富士登山口が再び現れたが、ここは林道を進むトレースに従う。この先、延々と歩くが、途中で滑り下りてくる三人に会う。時間からいって前日テント泊で、西尾根を途中まで登ってきたのだろうか。ガスなので写すものとてなく、やがて左手の川向こうの道からの橋らしきものが見える。ガイドにあった望岳橋かもしれない。しかしここから林道はどんどん山を登っていく。どうもガイドのルートと違うようだが、トレースがあるのがなによりの証拠なので、これに従う。林道が平坦になったところで休憩。マップを調べ、どうも新しい林道のほうを歩いているようだ。GPSもそのあたりの現在位置を示している。

テント

林道はやがて雪に埋まった沢を渡り、トレースはここで林道を離れて尾根を登っていく。ガイドのとおりなのでトレースに従うが、さっきの三人のものと思われるトレースに、真新しい登りトレースがバラバラについている。しばらく登ったところで登りトレースが左にそれてゆき、そちらに行ってみると行く手にテントが張ってある。なるほど。林のだいぶ低いところに張ってあり、風をしのぐにはいいだろうが、もう少し登っておきたいと思い、林の斜面を登る。あまり登ると木が少なくなるので、斜面中腹の樹木が集まっているところにテントを張ることにする。木々の間をならして固め、テントを張ってロープをまわりの木につなぐ。これならスキーを支柱にしなくてすむ。

それにしてもまだ2時半。まずは昼飯にラーメンを作って食べる。ワンセグを起動すると映るので、ずっと高校野球を見る。便利になったなあ。冬用のシュラフを広げ、最初は軽い服装でシュラフにもぐりこんで時間をつぶしたが、夕方になり、気温が下がってくるとスキー服を着ないと耐えられない。夕食の御飯を食べ、ホットウイスキーを飲み、そのあとはシュラフに頭からもぐりこむ。空気が入ってくると寒いし、背中や足も寒い。真夜中にトイレに起きると、夜空は満天の星。じっくり眺めたかったがあまりの寒さにがまんできず、テントにシュラフにもぐりこむ。ぬれたソックスの足も冷たく、しきりに冷たいところをさすりながら、なんとか一夜を過ごす。

 D2

雪山の朝

寒かった夜が明けると快晴の空が広がっていた。ぐっすり眠れない夜だったが、いつのまにか眠り込んだと見え、外が明るくなっている。とりあえずトイレに外に出る。快晴になりそうだ。着替え、食事をし、ザックを詰め替え、シュラフとマットを片付け、出発は7時過ぎになっていた。西尾根にまだ日は差していない。乾いた雪にシールを乗せて登る。斜面の左側に真新しい登りトレースがあった。下のテントの主かもしれない。更に登ると滑走トレースが数本。これは昨日の三人のものかもしれない。

美瑛富士

やがて尾根の左上から朝日が射してくる。斜面の西側に真っ白く日を浴びているのは美瑛富士で、その手前がベベツだろうか。

森林限界を超えて雪斜面を登り、ブッシュのあるところで登りトレースと下りトレースが無くなる。どうやらここまで登り、滑り下りていったらしい。ここからは一人旅。傾斜もきつくなっていたので、アイゼンに切り替える。東に見える山並みの上に大雪山が見えるようになる頃、下の森林限界のあたりに人影を見る。どうやらスキーで一人登ってくるようだ。まだだいぶ下。

オプタテシケ(北西尾根より)

そして9時前、北西尾根の上に豪壮なオプタテシケが姿を現わす。左右にピークを従えた白い岩峰。見とれるばかりに美しい。もう少し登った小さなコブのあるところで休憩。オプタテシケの真下にはガイドにあったおおきなナギが落ちている。斜面全体に日が差してきて、デジカメの設定を自動に切り替える。もっと早く切り替えるべきだった。やがて太陽がオプタテシケの上に輝き、青い空に白い岩峰が映える。巨大な造形に挑もうとする白いヘルメット。

オプタテシケとヘルメット

地平線と美瑛富士と人影

東尾根の向こうに見えているのは旭岳だ。反対側の美瑛富士のほうを見ると、さっきの男性がもう真横近くまで登ってきている。かなり早い。追い越されるのは時間の問題だろう。その向こうにははるかな地平線。

オプタテシケへの稜線

ベベツと美瑛富士

雪が柔らかくなってくるとブーツがときどきもぐって歩きにくくなってくる。堅そうなところを見定めて登るが、同じような雪でも柔らかいところが現われる。ブッシュのあるところは総じて柔らかいが、大きく踏み抜くことは少なく、かえってブッシュ沿いが正解かもしれない。ベベツと美瑛富士が目の高さになり、オプタテ西肩1,920mの雪岩が迫ってくる。ふと上を見ると、さっきの男性がいつのまにか上を歩いている。西側のくぼみの向こうでスキーを外しているところまでは見たが、その後は窪みのなかを歩いて見えないところで追い越されたらしい。やがて、ベベツの上に美瑛岳が頭を出す。その右手前に美瑛富士、左手奥に見えている低い尾根は境山と下ホロカメットクらしい。

主稜線に上がる

ついに縦走路に達すると、ベベツ、美瑛富士、美瑛岳、堺山、下ホロが並んで見える。もっとたくさんのピークが隠れているのだろうが、判別できない。美瑛岳の北西斜面には小さく噴煙が見える。眼下には北西尾根のはるか下に昨日歩いた林が見えている。西肩の手前で休憩。4時間経過。目の前の西肩雪岩はなかなかの迫力。その上にオプタテの頂上がある。もう少しだ。ふとオプタテの右、稜線の向こう側に目を向けると、見たことのないかっこうをした山が立っている。横広がりの土台の上に丸い山頂。ニペソツだ。鋭い岩峰も横から見るとこんな感じになり、横広がりの稜線は天狗岳のようだ。天狗と反対側にも同じような稜線。その右手に二つある山のうち、大きい方がウペペサンケ。ニペソツとウペペの間にひとつ山があるようだ(丸山)。ウペペサンケも横長でない形。

西の肩1,920m

主稜線とオプタテシケと小さな人影

美瑛岳

やがて、ベベツの上に美瑛岳が頭を出す。その右手前に美瑛富士、左手奥に見えている低い尾根は境山と下ホロカメットクらしい。

主稜線から南西の景観:下ホロカメットク、境山、美瑛岳、美瑛富士、ベベツ

オプタテシケ(主稜線1,920m峰付近より)

目の前の西肩雪岩はなかなかの迫力。その上にオプタテの頂上がある。もう少しだ。

旭岳

東尾根の向こうに見えているのは旭岳だ。

ニペソツ

ふとオプタテの右、稜線の向こう側に目を向けると、見たことのないかっこうをした山が立っている。横広がりの土台の上に丸い山頂。ニペソツだ。鋭い岩峰も横から見るとこんな感じになり、横広がりの稜線は天狗岳のようだ。天狗と反対側にも同じような稜線。その右手に二つある山のうち、大きい方がウペペサンケ。ニペソツとウペペの間にひとつ山があるようだ(丸山)。ウペペサンケも横長でない形。

丸山とウペペサンケ

オプタテシケ(主稜線西側コルより)

西肩1,920mの頂上は予想に反して平坦。ナギの上に突き出しているのが真下からだと目立つのだろう。最高点までいくと雪庇で危なそうなので頂上をトラバースして先に進む。少し下ってから最後の登りとなるが、鋭角のピラミッドはなかなか立派。先行の男性が見えないと思ったら、稜線を外し、雪のついている南斜面沿いを登っていた。雪が切れてハイ松の上を歩いたりして、ようやく頂上。

西の肩1,920m

オプタテシケ頂上標識

辿り着いた頂上は思ったとおり狭かった。男性が向こうむきに座っていた。写真を撮って先に帰って行ったが、「ここを滑るんですか」とナギを指す。「とんでもない」と否定する。滑れないことはないだろうが、狭くなった先が見えない。頂上の向こう側には、トムラウシとそれに続く縦走路が続いている。トムラウシもずいぶん違った形になっていて、双耳峰に見える。昨年はどっちに登ったんだろう。たぶん左側かな。頂上標識の裏側に古い名盤がついている。東南斜面にも雪原が広がっているが、雪は少なそうだ。美瑛岳の右奥には芦別岳と富良野スキー場が見える。オプタテの東尾根の先にある低い尾根の間に氷結した池を発見。あれは縦走路からは外れてるかもしれない。

芦別岳(美瑛富士の奥)

美瑛岳の右奥には芦別岳と富良野スキー場が見える。

十勝岳(美瑛岳の奥)

白雲岳

大雪山・旭岳はここからは低い二等辺三角形に見えるが、顕著ではない。その右隣りで目立っているピークが白雲岳だとすると、昨年通った化雲岳はどのあたりだろう。トムラウシ手前のクワンナイの上流部はあのへんかな。

トムラウシ

頂上の向こう側には、トムラウシとそれに続く縦走路が続いている。トムラウシもずいぶん違った形になっていて、双耳峰に見える。昨年はどっちに登ったんだろう。たぶん左側かな。頂上標識の裏側に古い名盤がついている。東南斜面にも雪原が広がっているが、雪は少なそうだ。

石狩岳(トムラウシの右奥)

トムラウシの右には少し離れて石狩岳の峰々がならび、更に離れてニペソツ、ウペペサンケと続く。まさに大雪から東大雪、十勝に続く北海道の中央山脈の全景を眺めている。写真を一枚とってもらい、男性は先に下ってゆく。テントに泊まったといっていたが、どのあたりだろう。たぶん尾根の麓のもっと西側だろう。頂上標識に座って十勝連峰を眺める。澄んだ空気と青い空に白い山々が映える。この峰々を縦走することがあるだろうか。

北東の情景:旭岳、白雲岳、トムラウシ、石狩岳、ニペソツ、丸山、ウペペサンケ

オプタテシケ頂上とスキー

北東稜とトムラウシ

南東稜とニペソツ

ニペソツ

南西の情景:下ホロカメットク、境山、美瑛岳、美瑛富士、ベベツ、オプタテシケ頂上

北東の情景:旭岳、トムラウシ、石狩岳、ニペソツ

オプタテシケ頂上標識とスキー

最後に頂上の東側まで歩き、ナギの下を写す。スキーをはいて出かけようとするときには、男性はもう西峰の向こうの尾根を歩いていた。頂上から登ってきたルートを下る。横滑りとショートターンにハイ松の上を歩き、ついに岩だらけのところでスキーを外して歩く。だんだん雪が増えてきて、ターンを決めてコルに滑り込む。スキーを外して西峰に登り、再びスキーを履いて西尾根の滑走。しかし、思ったとおり雪はクラスト部分と溶けている部分があって滑りにくい。ジャンプターンでこなすが、たびたびひっかかりそうになってターンを中止。西側にゆきすぎていて、尾根の踏み跡まで戻る頃には雪は滑りやすくなってきていた。

頂上からの滑走

主稜の滑走

主稜線からの滑走

尾根の滑走とオプタテシケ

尾根上部の滑走

連続ターンで北西尾根を軽快に下る。きれいなシュプールを描ける。振り返って見上げると、踏み跡に沿って下ってくるシュプールがくっきり残っている。シュプールの波は深く見えるが、実に軽い粉雪で軽々とターンできる。最高の気分。

尾根上部の滑走

オプタテシケ

北西尾根の途中で写真を撮っていると、尾根の西側に男性発見。いつの間にか追いついていた。スキーのデポ地点だったようで、スキーをはいて滑って行く。こちらはデジカメを撮るのに時間をかけるので、もう追いつけまい。

尾根中部の滑走

オーバーハングをこえて最後の斜面。降りるところを間違えるとたいへんなので、トレースを確かめながら下る。午後になって気温が上がり、稜線の雪は溶けてきたが、北西尾根の雪は軽く、ターンを刻みながら気持ちよく滑走する。トレースは今朝よりも増えていて、どうやら何人か登ってきていたようだ。スキー・トレースの大半は頂上まで行かず、雪質のよい北西尾根途中から滑走しているようだ。4月でもパウダーというのは価値があるだろう。ここまで降りてきても雪質は軽い。軽快ターンを続ける。眼下に森林帯がせまり、テントはその手前のまばらに木がはえているあたりだろう。アイゼンに履き替えた地点までくると、西側からトラバースしてくるトレースがある。先行の男性のものだろう。疎林帯に入り、自分のトレースを見失わないようにしてテントを発見。やれやれ。

尾根中部の滑走

尾根中部の滑走

粉雪

ベベツ

テントをたたんでいて、ポールを折ってしまう。テントを立てるときもずいぶんきつかったが、少しポールに力をかけただけで折れてしまった(この後、KIWIで替えのポールを購入)。気を取り直して滑走開始。ザックは重く、ターンするとヒザに負担かかるが、それよりヘルメットがザックに当たって頭を上げられないのが不便。森林帯まで降りると、昨日のテントがまだある。そばに立ててあったスキーはないので、ずっと張ってあるのかもしれない。

美瑛富士

森林帯に入っても雪は軽く、見下ろすとスキーの上に粉雪。樹林帯にはところどころ開けた場所があり、最初はベベツ、次に美瑛富士、そしてオプタテシケが見えてくる。美瑛富士の麓あたりに見えていた噴煙はその向こうの十勝岳のものだろう。森林帯から見るオプタテはずいぶん遠く見え、昨日見えていたら気が重くなっていただろう。オプタテは北西尾根からみたのと同じ姿で、頂上と両肩の三本の峰が立っている。林道に出て、ビンディングを外し、半分歩きとなる。林道の下りになると、真後ろの空間にオプタテが見える。こう見えるように作ったのだろう。北西尾根の麓まで見えるが、麓が二つに分かれており、どちらから登ったのだろう。左側からだろうと思うが、ずいぶん傾斜があるように見える。隣のベベツには中央に大きなナギがあり、頂上も横長。ベベツの右側に小さなピークが見える(石垣山)。

ベベツと美瑛富士

林道下りの滑走は結構スピードが出て、途中で寒くなって上着を着込む。しかし、川沿いまで降り切り、歩きになるとまた暑くなる。ここは上から見えていたこんもりした林が川向こう間近に見えている。歩きに疲れて最後の休憩(前の休憩から1時間)。橋をわたり、雪に埋もれた林道ゲートを越え、美瑛富士登山口を過ぎ、最後の橋を渡って車道に出る。美瑛富士あたりから真新しいトレースがたくさんある。ようやく駐車地点にたどり着き、もう翌日の十勝のことを考えていたのだが、車のフロントワイパーに地元警察の紙がはさんであった。後の窓ガラスが割られ、バッグ二つとザックを盗まれていた。紙をはさんでくれた美瑛の駐在所までゆく#。

# この後、パソコンだけは戻ってきたが、他は戻ってこなかった。大雪青少年交流の家に泊めておけばよかったのかもしれない。これからは細心の注意をしていこう。

オプタテシケと滑走尾根(北西尾根)

ベベツ

石垣山

美瑛に向かう途中で、居並ぶ十勝連峰を眺める。両肩をいからせたオプタテシケ、斜めにナギの走るベベツ、その名の通り富士型の美瑛富士、美しい尖峰の美瑛岳と並び、その右に、広い溶岩台地をもった十勝岳が噴煙を上げている。一つ一つが記憶に残る個性の山々。

北海道の冬の野営、すばらしい景観、そして試練。思い出に残るツアーとなった。

十勝連峰:オプタテシケ、ベベツ、美瑛富士、美瑛岳、十勝岳