ペテガリ  遥かなる山

北海道(日高)  ペテガリ1,736m、ポンヤオロマップ1,405m  2006年9月22~24日(テント2泊)

(ペテガリ)日本二百名山

219

まだ夏の残る日、

詰め込んだザックを背負って山へ

山はそろそろ紅葉、

日が射さないと肌寒い

稜線にたどり着くと、

目指す山が現われる

それは気高く、神々しく、まだまだ遠い

(初秋の縦走)

☁☁☁☁☁

ポンヤオロマップ頂上の端から目指すペテガリが見える。一度も見たことは無いが、絶対あれに違いない。三つのピークに三つのカール。それは、はるか遠くから私を差し招いていた。あそこまで行けるだろうか、あそこまでなんとかして行きたい、行かねばならぬ。私は強い衝動にかられた。

翌朝、明るくなった早朝の空に淡いペテガリが浮かぶ。それは、薄明から青に変わろうとしている空の中で、金色に輝いていた。それは、周囲の山並みや全ての上に立ち、その中心で輝いていた。私は一瞬、我を忘れてそれに見取れていた。

ここからは楽だろうと思った最後のペテガリへの登りは、たいへんなハイマツとの戦いが待っていた。ハイマツが密集しているとまるで進めない。無理に急ぐのは止め、帰りはヘッドランプを灯して元来たルートを戻ることにし、ペースを乱さずに登ることにする。・・・・・覚悟してしまえば、その後は気が楽になり、周りも見えるようになる。ハイマツの稜線の右側を迂回する踏跡を見つけ、トラバース気味に登っていく。ハイマツの中に比べれば天国ほどの登りやすさ。眼下にはAカールが見事に展開している。

再びハイマツの尾根に戻ると、見上げるペテガリは青空の下に濃い緑の鋭角の姿になっていた。残り300m。今度は上から踏みつけながら登る。振り返ると国境稜線やら靴幅リッジやらがすごく低くなっている。一歩一歩がすごくつらい。

ペテガリの三つあるピークのうち、最初は真ん中のが頂上と思っていたが、実際は左端が頂上。その頂上にある標識がついに見えた。遥かなる山についに到達したのだ。思わず大声をあげる。爽快な気分。二等三角点にカタカナ文字の標識も、「よく来たな」と出迎えてくれているようだ。

海岸にある晩成温泉というのに寄っていく。黒ずんだお湯で、塩味。露天はないが、海が見えるのがいい。ガソリンを入れ、浦河に着いたときはもう暗くなっていた。コンビニ弁当とビールを飲み、就寝。ペテガリの思い出にふける。

明るくなった早朝の空に淡いペテガリが浮かぶ。それは、薄明から青に変わろうとしている空の中で、金色に輝いていた
再びハイマツの尾根に戻ると、見上げるペテガリは青空の下に濃い緑の鋭角の姿になっていた。残り300m。
ポンヤオロマップ
明るくなった青空の下に、ソエマツと神威岳が主稜線の上で対峙していた。
曲がったダケカンバとヤオロマップ
ペテガリ頂上
三つのカール
P7・1,580m峰付近から北西の情景: 国境1,573m峰、ペテガリ、ルベツネ、1,599m峰、十勝幌尻岳
P8・国境1,573m峰付近から見る靴幅尾根: P7・1,580m峰、P4・1,518m峰(分岐点)、1,463m峰
帰りの景観:1,599m峰、コイカクシュサツナイ、1,826m峰、カムエク、ピラミッド峰、エサオマントッタベツ、札内岳、十勝幌尻岳
(D1) 8:02 東登山口発11:03 P1・1,119m峰13:26 ポンヤオロマップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り5時間24分13:57 ポンヤオロマップ発16:08 P3・1,417m峰16:18 テント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・東登山口から8時間16分(D2) 4:47 テント発 5:33 P4・1,518m峰10:04 P8・国境1,573m峰12:40 ペテガリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り7時間53分13:07 ペテガリ発15:03 P8・国境1,573m峰20:32 P4・1,518m峰22:06 テント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復17時間19分(D3) 6:02 テント発 6:19 P3・1,417m峰 9:19 ポンヤオロマップ11:46 P1・1,119m峰13:52 東登山口・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下り7時間50分

*******************************

(D1)

北海道しか晴れてない週末、日高を目指す。気象解説では、偏西風が蛇行していて、本州は天気悪く、北海道が晴れることになるらしい。ペテガリには東口から入ってテント2泊、水場なしの行程。台風通過直後だったが(九州に上陸し、日本海を北上して北海道の北端にも再上陸)、役場に問い合わせると林道は入れるという。

深夜の函館から帯広に向かう。初日はテント場までの7時間行程だが、二日目のペテガリ往復が10時間で済むかが心配。早朝の帯広の高速の上から、快晴の日高山脈が見えてきたが、カムエクやペテガリははるか奥。夏に確認しておいた(カーナビに登録済み)林道入口に7時に着き、やや荒れた林道の上の折れた枝を2回ほど車から降りてどけ、30分で登山口に着く。

登山ポストにはインターネット投稿が入っていて、雨の日にポンヤオに途中まで登った記録、大阪から来てペテガリに向かった人の記録を見る。ポンヤオに日帰りの人の方が多いのだろう。出発は8時。7リットルの水を入れたザックはそれほどでもないが、軽い足どりとはいかない。登山口350mからハシゴもある急登で尾根らしきところに出る。たぶんそこが601m地点だろう。そこからは尾根のアップダウンを2時間ほどでP1・1,119m峰*の標識に到達。途中までは歩きやすい道だったが、1,119m峰直下は笹の中の急登。尾根からは樹木越しに西側の山並が見えており、ポンヤオの三角形が目立っていた。1時間毎休憩。

*地理院地図では1,121mになっているが、現地の標識には1,119mとある

P1・1,119m峰はひどい笹ヤブ山で、掻き分けないと踏跡が分からない状態。時々、樹間からポンヤオと十勝平野が見える。間近に見えるポンヤオは意外に遠く、小さなピークを二つほど越して下って行き、振り返って1,119m峰の丸い頂上が見えるあたりでも更に下り、そこから急な登り。笹がガンコウランに変わり、ガイドにあった岩場を過ぎ、1,119m峰や隣のピークよりもはるか高くなってもまだ頂上に着かない。1時間くらいと思っていたのが2時間を過ぎ、やっと着いたと思ったところでも緩い道が続き、三角形と思ったピークが実は横長の稜線なんだなと思ったところでやっと頂上標識に着く。大樹営林署の立派な銘盤標識がコンクリで固められており、三等三角点もある。ザックを下ろし、座り込んで昼食。ホットウイスキーを二杯ほど飲む(このときは水は十分と思っていた)。誰かが置いていった1/3ほど入った2リットルの水ボトル。

頂上の端から目指すペテガリが見える。一度も見たことは無いが、絶対あれに違いない。雲が出てきて青空ではなくなっていたが、くっきりと差し招いている。三つのピークに三つのカール。それは、はるか遠くから私を差し招いていた。あそこまで行けるだろうか、あそこまでなんとかして行きたい、行かねばならぬ。私は強い衝動にかられた。

ポンヤオから下ると狭いテント場。焚き火の跡とシートが置いてある。登山道整備に使ったのだろうか。その先も更に下って、木々で見えなかった二つのピークに登る。ガイドにはヤセ尾根とあったが、ロープもある岩場の登り降りで、これではとても1時間ではテント場まで着かないだろう。行く手に見える頂上の曲がったピークはたぶん早大尾根のピーク1,483m峰で、目指すテント場ピーク(P3・1,417m峰)とその先のP4・1,518m峰はその右手に次第に見えてくる。早大尾根の向こうに二つの山が見える(おそらく、ピリカヌプリとソエマツ)。P3・1,417m峰の北東面の岩場が見え、登山道はその左側を登っていく。P4・1,518m峰への稜線上には、それらしき草地が小さく見えている。

やっとP3・1,417m峰の頂上らしき空地に着き(眺望なし)、すぐに下る。もう16時を回っており、北海道では17時には日が落ちてしまうだろう。下っていった稜線にはところどころ狭い草地があり、無理をすればテントを張れないこともないが、先に進む。ガイドで言うほど広い鞍部とは思えない。ほとんど木がびっしり生えている。ヤブ道をだいぶ進んでふと登山道の左手に空地を見つける。裸地ではないがテント場に間違いない。ザックを下ろしてテントを張る。木立の向こうにも別の草地があり、その先には沼もありそうな雰囲気。石がないので立ち木と折枝にロープを結ぶ。このときもホットウイスキーとラーメン。2リットル・ボトル二つに水とお茶で4リットル、500ミリ・ペットボトル6個で3リットル、合計7リットルだが、初日はお茶ボトル2本弱と水1リットル強(ラーメン二つにホットウイスキー)で約2リットル消費。残り2日5リットルで十分持つと思っていた。

水よりも翌日の行程が心配で、夜が明ける5時前には出発し、ガイドの往復10時間プラス2時間でも17時に戻れるよう、翌朝4時にアラームをセット。沢登ウェアからの着替えは、前回の和名倉では薄着で大丈夫だったので今回も薄着にレインウェアとしたが、寒かった(翌週の悪沢・赤石ではジャージ)。ブランドXを聞きながら眠る。

(D2)

翌朝、4時過ぎに起きて準備。2リットル・ボトルからペットボトル2本を満たし、6本全部と水が半分の2リットル・ボトルを持っていく(計5リットル弱)。まだ暗いのでヘッドランプを点けていく。たいへんなヤブ道だが、ヘッドランプでもなんとか行けるものだ。直ぐ先に暗く光る沼を発見。意外に大きいようだ。ヤブでいったんロストしそうになるが、少し戻ってルートを発見。そこから狭い岩場を過ぎ、一途の登りでP4・1,518m峰に到着。標識も何も無いが尾根の上で視界が開けている。

明るくなった早朝の空に淡いペテガリが浮かぶ。それは、薄明から青に変わろうとしている空の中で、金色に輝いていた。それは、周囲の山並みや全ての上に立ち、その中心で輝いていた。私は一瞬、我を忘れてそれに見取れていた。

その左に並んでいるのが中ノ岳、神威岳、それにソエマツ岳かなあ。中ノ岳は、小さな体から三方に尾根を延ばしている。三つ並んでるうちの真ん中のが一番形がいいので、たぶんこれが神威岳だろう。その後、明るくなった青空の下に、ソエマツと神威岳が主稜線の上で対峙していた。反対の北の稜線に見えていたのは、鋭角の1,599m峰。はるか遠くに並ぶのはエサオマントッタベツ、札内岳、十勝幌尻岳のようだ。行く手の靴幅リッジの稜線は右左にうねってP8・国境1,573m峰に続いており、その間に大小のピークがたくさんあるが、顕著なのは三つ。快晴でザックも軽めときてるので、3時間くらいで国境ピークまでいけそうな気がする(実際は5時間半)。しかし、手前に隠れていたP5・1,494mに行くまでで1時間かかってしまう。

P6・1,510mに達すると、ペテガリがだいぶ近づき、Cカールがよく見える。この先の鞍部にテント場跡らしい空地や岩場のロープ場がある。P7・1,580mを過ぎたあたりでトビだか鷹のようなのが頭上を飛び、ピーっと鳴いたかと思うと小便を排出。霧となってたちまち消えてしまったが、困ったやつだ。いったん稜線北側のトラバース路に下ったところに休憩場所があり、そこから正面にAカールが良く見える。やはりカール底は平である。ついにP8・国境1,573m峰に到達。まだ10時なので、ここから1時間で頂上に行ければ、17時頃までにテントに戻れることになる。とりあえずは休み、青空の下の絶景を楽しむ。登ってきた靴幅リッジは狭いという感じはまるでしなかったが、このピークから見るとすごく切り立った狭い稜線に見える。冬に来ると相当切り立ってるのかもしれない。

さて、ここからは楽だろうと思った最後のペテガリへの登りは、たいへんなハイマツとの戦いが待っていた。ハイマツが密集しているとまるで進めない。無理に急ぐのは止め、帰りはヘッドランプを灯して元来たルートを戻ることにし、ペースを乱さずに登ることにする。・・・・・覚悟してしまえば、その後は気が楽になり、周りも見えるようになる。ハイマツの稜線の右側を迂回する踏跡を見つけ、トラバース気味に登っていく。ハイマツの中に比べれば天国ほどの登りやすさ。眼下にはAカールが見事に展開している。下からは見えなかったが、カール底は平らになって草地と岩場になっている。水はないのかなあ。

再びハイマツの尾根に戻ると、見上げるペテガリは青空の下に濃い緑の鋭角の姿になっていた。今度は上から踏みつけながら登る。振り返ると国境稜線やら靴幅リッジやらがすごく低くなっている。一歩一歩がすごくつらい。

ペテガリの三つあるピークのうち、最初は真ん中のが頂上と思っていたが、実際は左端が頂上。その頂上にある標識がついに見えた。遥かなる山についに到達したのだ。思わず大声をあげる。爽快な気分。二等三角点にカタカナ文字の標識も、「よく来たな」と出迎えてくれているようだ。岩に腰掛けてさっそく食事。ラーメンと水割り。4リットルあった水も、帰りの分は1.25リットルになっていた。しかも明日の分はテントに残してきた約1リットル分しかない。今後は、ぜいたくにラーメンを作る訳にも、水割りウイスキーを飲むわけにもいくまい。

山頂に登り出した頃からガスが出始めて、頂上の反対側はガスで見えなくなっていた。西側の登山道があり、うっすらと1,301m峰が見える。食事が終わってもまだ帰り難く、デジカメにスタンドをつけて写真を撮り、13時を回って頂上発。大変な苦労をして登りついたのだが、是非また来たいという思いが頭を離れなかった。ルベツネにも、Cカールにも行ってみたい。

ハイマツを踏みつけながら下ってゆき、トラバース路に入って笹を掻き分け、再び尾根に出て見上げると、頂上はガスで隠れていた。しかし、岩尾根を辿っていくとガスが取れてきて、ペテガリが姿を現したので、夢中でデジカメに撮る。2時間かけて国境1,573m峰に着いたのは15時。いつでも出せるようにヘッドランプを用意。だいぶ疲れがたまり、この頃には30分毎休憩。尾根の南側にガスが出ており、空にも雲があるが、帯広は晴れており、当分は明るいだろう。

Aカールの見えるトラバース路で休憩したのが15時半過ぎ。この先のデジカメ記録は少ないが、暗くなってからスピードがにぶっているのが分かる。星が出ていたのと、帯広の街明かりがずっと見えていたのが大きな安心になっていた。しかし、このあと、ルート・ロストに2度遭遇。

最初は靴幅尾根の途中で、下りのトラバース路で分からなくなったもの、2回登り直し、3回目の下りで正しいルートを発見。1回目の登り直しのところでヘッドランプの電池が切れ、ウェストバッグからすぐにスペアを取り出した。2回目のロストは、P4・1,518m峰を下ったテント直前の草原。見覚えのない岩場にいるのに気付き、確かな踏み跡のあるところまで引き返す。このあたりにあるはず・・・というところに白いテントを発見。22時を回っていた。ゆっくり着替えをし、水ボトルのお茶を飲んで就寝。明日はゆっくり起きよう。

(D3)

この日は7時頃起きようと思っていたが、目が覚めてしまい、外が明るくなってきたので5時過ぎに起き出す。この日もいい天気だ。テントをたたんで6時に出発。一応、沼を見に行く。たまり水だが、煮沸すれば飲めないのかなあ。P3・1,417m峰に達すると行く手にポンヤオが見えてくる。その左手遠くにエサオマンも見えていたが、ペテガリは最初靴幅リッジの陰で見えず、だんだんと見えてくる。ルベツネの右手奥、曲がったダケカンバの間に見えるのはヤオロマップの親分、その右に鋭角の1,599m峰、その右奥に並ぶのは、コイカクシュサツナイとカムエクのようだ。

ポンヤオ手前の岩場ピークを越え、9時過ぎにポンヤオ着。クッキーをかじる。これが最後と思い、ペテガリを何度も写す。ポンヤオの下りでは、左足のスネが痛い。笹や枝を押し分け続けてきたせいだろう。登ってきたときにすごく印象に残っていた笹ヤブはそれほどでもなく、丸い頂上にゆっくり登り返してP1・1,119m峰に着き、あとは最後の尾根を下っていく。時々ある軽い登り返しが辛く感ずる。601m地点は気付かずに通過したが、最後の下りはきつかった。記憶に残っている長い九十九折を左右に下り、ついに駐車場と車が見えてきた。登山ポストに下山の報告と二日目17時間かかったことを書く。次の欄に、昨日、ポンヤオに登った人の書込みがあった。

こんなに天気がいいのに誰もペテガリには登らないのか。もう日が短くなってるから、夏場だけなのかなあ。海岸にある晩成温泉というのに寄っていく。黒ずんだお湯で、塩味。露天はないが、海が見えるのがいい。ガソリンを入れ、浦河に着いたときはもう暗くなっていた。コンビニ弁当とビールを飲み、就寝。ペテガリの思い出にふける。

D1

登山口標識と登山届ボックス

北海道しか晴れてない週末、日高を目指す。気象解説では、偏西風が蛇行していて、本州は天気悪く、北海道が晴れることになるらしい。ペテガリには東口から入ってテント2泊、水場なしの行程。台風通過直後だったが(九州に上陸し、日本海を北上して北海道の北端にも再上陸)、役場に問い合わせると林道は入れるという。

深夜の函館から帯広に向かう。初日はテント場までの7時間行程だが、二日目のペテガリ往復が10時間で済むかが心配。早朝の帯広の高速の上から、快晴の日高山脈が見えてきたが、カムエクやペテガリははるか奥。夏に確認しておいた(カーナビに登録済み)林道入口に7時に着き、やや荒れた林道の上の折れた枝を2回ほど車から降りてどけ、30分で登山口に着く。

1,119m峰の標識・・・・・地理院の標高は1,121m

登山ポストにはインターネット投稿が入っていて、雨の日にポンヤオに途中まで登った記録、大阪から来てペテガリに向かった人の記録を見る。ポンヤオに日帰りの人の方が多いのだろう。出発は8時。7リットルの水を入れたザックはそれほどでもないが、軽い足どりとはいかない。登山口350mからハシゴもある急登で尾根らしきところに出る。たぶんそこが601m地点だろう。そこからは尾根のアップダウンを2時間ほどでP1・1,119m峰*の標識に到達。途中までは歩きやすい道だったが、1,119m峰直下は笹の中の急登。尾根からは樹木越しに西側の山並が見えており、ポンヤオの三角形が目立っていた。1時間毎休憩。

*地理院地図では1,121mになっているが、現地の標識には1,119mとある

ポンヤオロマップ

P1・1,119m峰はひどい笹ヤブ山で、掻き分けないと踏跡が分からない状態。時々、樹間からポンヤオと十勝平野が見える。間近に見えるポンヤオは意外に遠く、小さなピークを二つほど越して下って行き、振り返って1,119m峰の丸い頂上が見えるあたりでも更に下り、そこから急な登り。笹がガンコウランに変わり、ガイドにあった岩場を過ぎ、1,119m峰や隣のピークよりもはるか高くなってもまだ頂上に着かない。1時間くらいと思っていたのが2時間を過ぎ、やっと着いたと思ったところでも緩い道が続き、三角形と思ったピークが実は横長の稜線なんだなと思ったところでやっと頂上標識に着く。大樹営林署の立派な銘盤標識がコンクリで固められており、三等三角点もある。ザックを下ろし、座り込んで昼食。ホットウイスキーを二杯ほど飲む(このときは水は十分と思っていた)。誰かが置いていった1/3ほど入った2リットルの水ボトル。

十勝平野

ピリカヌプリとソエマツ

ポンヤオロマップの頂上標識(D3の映像)

ポンヤオロマップの三角点

ポンヤオロマップから見るペテガリ(D3の映像)

頂上の端から目指すペテガリが見える。一度も見たことは無いが、絶対あれに違いない。雲が出てきて青空ではなくなっていたが、くっきりと差し招いている。三つのピークに三つのカール。それは、はるか遠くから私を差し招いていた。あそこまで行けるだろうか、あそこまでなんとかして行きたい、行かねばならぬ。私は強い衝動にかられた。

早大尾根と1,483m峰

ポンヤオから下ると狭いテント場。焚き火の跡とシートが置いてある。登山道整備に使ったのだろうか。その先も更に下って、木々で見えなかった二つのピークに登る。ガイドにはヤセ尾根とあったが、ロープもある岩場の登り降りで、これではとても1時間ではテント場まで着かないだろう。行く手に見える頂上の曲がったピークはたぶん早大尾根のピーク1,483m峰で、目指すテント場ピーク(P3・1,417m峰)とその先のP4・1,518m峰はその右手に次第に見えてくる。早大尾根の向こうに二つの山が見える(おそらく、ピリカヌプリとソエマツ)。P3・1,417m峰の北東面の岩場が見え、登山道はその左側を登っていく。P4・1,518m峰への稜線上には、それらしき草地が小さく見えている。

1,417m峰(D3の映像)

やっとP3・1,417m峰の頂上らしき空地に着き(眺望なし)、すぐに下る。もう16時を回っており、北海道では17時には日が落ちてしまうだろう。下っていった稜線にはところどころ狭い草地があり、無理をすればテントを張れないこともないが、先に進む。ガイドで言うほど広い鞍部とは思えない。ほとんど木がびっしり生えている。ヤブ道をだいぶ進んでふと登山道の左手に空地を見つける。裸地ではないがテント場に間違いない。ザックを下ろしてテントを張る。木立の向こうにも別の草地があり、その先には沼もありそうな雰囲気。石がないので立ち木と折枝にロープを結ぶ。このときもホットウイスキーとラーメン。2リットル・ボトル二つに水とお茶で4リットル、500ミリ・ペットボトル6個で3リットル、合計7リットルだが、初日はお茶ボトル2本弱と水1リットル強(ラーメン二つにホットウイスキー)で約2リットル消費。残り2日5リットルで十分持つと思っていた。

テントの中

水よりも翌日の行程が心配で、夜が明ける5時前には出発し、ガイドの往復10時間プラス2時間でも17時に戻れるよう、翌朝4時にアラームをセット。沢登ウェアからの着替えは、前回の和名倉では薄着で大丈夫だったので今回も薄着にレインウェアとしたが、寒かった(翌週の悪沢・赤石ではジャージ)。ブランドXを聞きながら眠る。

D2

夜明け前

翌朝、4時過ぎに起きて準備。2リットル・ボトルからペットボトル2本を満たし、6本全部と水が半分の2リットル・ボトルを持っていく(計5リットル弱)。まだ暗いのでヘッドランプを点けていく。たいへんなヤブ道だが、ヘッドランプでもなんとか行けるものだ。直ぐ先に暗く光る沼を発見。意外に大きいようだ。ヤブでいったんロストしそうになるが、少し戻ってルートを発見。そこから狭い岩場を過ぎ、一途の登りでP4・1,518m峰に到着。標識も何も無いが尾根の上で視界が開けている。

日の出

1,518m峰(D3の映像)

夜明けのペテガリ

明るくなった早朝の空に淡いペテガリが浮かぶ。それは、薄明から青に変わろうとしている空の中で、金色に輝いていた。それは、周囲の山並みや全ての上に立ち、その中心で輝いていた。私は一瞬、我を忘れてそれに見取れていた。

青空に輝くペテガリ

南の情景: ピリカヌプリとソエマツ、神威岳、中ノ岳

中ノ岳

その左に並んでいるのが中ノ岳、神威岳、それにソエマツ岳かなあ。中ノ岳は、小さな体から三方に尾根を延ばしている。三つ並んでるうちの真ん中のが一番形がいいので、たぶんこれが神威岳だろう。

ソエマツと神威岳

その後、明るくなった青空の下に、ソエマツと神威岳が主稜線の上で対峙していた。反対の北の稜線に見えていたのは、鋭角の1,599m峰。はるか遠くに並ぶのはエサオマントッタベツ、札内岳、十勝幌尻岳のようだ。行く手の靴幅リッジの稜線は右左にうねってP8・国境1,573m峰に続いており、その間に大小のピークがたくさんあるが、顕著なのは三つ。快晴でザックも軽めときてるので、3時間くらいで国境ピークまでいけそうな気がする(実際は5時間半)。しかし、手前に隠れていたP5・1,494mに行くまでで1時間かかってしまう。

靴幅尾根

ルベツネ

靴幅尾根とペテガリとルベツネ

三つのカール

P6・1,510mに達すると、ペテガリがだいぶ近づき、Cカールがよく見える。この先の鞍部にテント場跡らしい空地や岩場のロープ場がある。P7・1,580mを過ぎたあたりでトビだか鷹のようなのが頭上を飛び、ピーっと鳴いたかと思うと小便を排出。霧となってたちまち消えてしまったが、困ったやつだ。いったん稜線北側のトラバース路に下ったところに休憩場所があり、そこから正面にAカールが良く見える。やはりカール底は平である。

ペテガリとAカール

P7・1,580m峰付近から北西の情景: 国境1,573m峰、ペテガリ、ルベツネ、1,599m峰、十勝幌尻岳

北の情景(上の右端): 1,599m峰(左端手前)、エサオマントッタベツ(左端奥)、札内岳(中央左)、十勝幌尻岳(右中央)

P8・国境1,573m峰付近から見る靴幅尾根: P7・1,580m峰、P4・1,518m峰(分岐点)、1,463m峰

国境1,573m峰から見るペテガリ

ついにP8・国境1,573m峰に到達。まだ10時なので、ここから1時間で頂上に行ければ、17時頃までにテントに戻れることになる。とりあえずは休み、青空の下の絶景を楽しむ。登ってきた靴幅リッジは狭いという感じはまるでしなかったが、このピークから見るとすごく切り立った狭い稜線に見える。冬に来ると相当切り立ってるのかもしれない。

国境1,573m峰から南の情景: ソエマツ、神威岳、中ノ岳

青空とペテガリと大岩

さて、ここからは楽だろうと思った最後のペテガリへの登りは、たいへんなハイマツとの戦いが待っていた。ハイマツが密集しているとまるで進めない。無理に急ぐのは止め、帰りはヘッドランプを灯して元来たルートを戻ることにし、ペースを乱さずに登ることにする。・・・・・覚悟してしまえば、その後は気が楽になり、周りも見えるようになる。ハイマツの稜線の右側を迂回する踏跡を見つけ、トラバース気味に登っていく。ハイマツの中に比べれば天国ほどの登りやすさ。眼下にはAカールが見事に展開している。下からは見えなかったが、カール底は平らになって草地と岩場になっている。水はないのかなあ。

再びハイマツの尾根に戻ると、見上げるペテガリは青空の下に濃い緑の鋭角の姿になっていた。残り300m。今度は上から踏みつけながら登る。振り返ると国境稜線やら靴幅リッジやらがすごく低くなっている。一歩一歩がすごくつらい。

Aカール

ペテガリの北の稜線と1,599m峰

ペテガリのハイマツと国境1,573m峰

ペテガリ頂上

ペテガリの三つあるピークのうち、最初は真ん中のが頂上と思っていたが、実際は左端が頂上。その頂上にある標識がついに見えた。遥かなる山についに到達したのだ。思わず大声をあげる。爽快な気分。二等三角点にカタカナ文字の標識も、「よく来たな」と出迎えてくれているようだ。岩に腰掛けてさっそく食事。ラーメンと水割り。4リットルあった水も、帰りの分は1.25リットルになっていた。しかも明日の分はテントに残してきた約1リットル分しかない。今後は、ぜいたくにラーメンを作る訳にも、水割りウイスキーを飲むわけにもいくまい。

山頂に登り出した頃からガスが出始めて、頂上の反対側はガスで見えなくなっていた。西側の登山道があり、うっすらと1,301m峰が見える。食事が終わってもまだ帰り難く、デジカメにスタンドをつけて写真を撮り、13時を回って頂上発。大変な苦労をして登りついたのだが、是非また来たいという思いが頭を離れなかった。ルベツネにも、Cカールにも行ってみたい。

紅葉

ハイマツを踏みつけながら下ってゆき、トラバース路に入って笹を掻き分け、再び尾根に出て見上げると、頂上はガスで隠れていた。しかし、岩尾根を辿っていくとガスが取れてきて、ペテガリが姿を現したので、夢中でデジカメに撮る。2時間かけて国境1,573m峰に着いたのは15時。いつでも出せるようにヘッドランプを用意。だいぶ疲れがたまり、この頃には30分毎休憩。尾根の南側にガスが出ており、空にも雲があるが、帯広は晴れており、当分は明るいだろう。

Aカールの見えるトラバース路で休憩したのが15時半過ぎ。この先のデジカメ記録は少ないが、暗くなってからスピードがにぶっているのが分かる。星が出ていたのと、帯広の街明かりがずっと見えていたのが大きな安心になっていた。しかし、このあと、ルート・ロストに2度遭遇。

最初は靴幅尾根の途中で、下りのトラバース路で分からなくなったもの、2回登り直し、3回目の下りで正しいルートを発見。1回目の登り直しのところでヘッドランプの電池が切れ、ウェストバッグからすぐにスペアを取り出した。2回目のロストは、P4・1,518m峰を下ったテント直前の草原。見覚えのない岩場にいるのに気付き、確かな踏み跡のあるところまで引き返す。このあたりにあるはず・・・というところに白いテントを発見。22時を回っていた。ゆっくり着替えをし、水ボトルのお茶を飲んで就寝。明日はゆっくり起きよう。

D3

早大尾根1,483m峰

エサオマントッタベツ

この日は7時頃起きようと思っていたが、目が覚めてしまい、外が明るくなってきたので5時過ぎに起き出す。この日もいい天気だ。テントをたたんで6時に出発。一応、沼を見に行く。たまり水だが、煮沸すれば飲めないのかなあ。P3・1,417m峰に達すると行く手にポンヤオが見えてくる。その左手遠くにエサオマンも見えていたが、ペテガリは最初靴幅リッジの陰で見えず、だんだんと見えてくる。

ダケカンバとヤオロマップと1,599m峰

ルベツネの右手奥、曲がったダケカンバの間に見えるのはヤオロマップの親分、その右に鋭角の1,599m峰、その右奥に並ぶのは、コイカクシュサツナイとカムエクのようだ。

コイカクシュサツナイとカムエク: 左から1,599m峰、コイカクシュサツナイ、1,826m峰、カムエク、ピラミッド峰

ポンヤオ手前の岩場ピークを越え、9時過ぎにポンヤオ着。クッキーをかじる。これが最後と思い、ペテガリを何度も写す。ポンヤオの下りでは、左足のスネが痛い。笹や枝を押し分け続けてきたせいだろう。登ってきたときにすごく印象に残っていた笹ヤブはそれほどでもなく、丸い頂上にゆっくり登り返してP1・1,119m峰に着き、あとは最後の尾根を下っていく。時々ある軽い登り返しが辛く感ずる。601m地点は気付かずに通過したが、最後の下りはきつかった。記憶に残っている長い九十九折を左右に下り、ついに駐車場と車が見えてきた。登山ポストに下山の報告と二日目17時間かかったことを書く。次の欄に、昨日、ポンヤオに登った人の書込みがあった。

カムエク(上記の拡大): 左から1,826m峰、カムエク、ピラミッド峰

こんなに天気がいいのに誰もペテガリには登らないのか。もう日が短くなってるから、夏場だけなのかなあ。海岸にある晩成温泉というのに寄っていく。黒ずんだお湯で、塩味。露天はないが、海が見えるのがいい。ガソリンを入れ、浦河に着いたときはもう暗くなっていた。コンビニ弁当とビールを飲み、就寝。ペテガリの思い出にふける。