鳳凰山 自然の芸術品

山梨県  鳳凰山: 観音岳2,840m、薬師岳2,780m、地蔵岳(オベリスク)2,764m  2008年8月14日

    アサヨ峰2,799m、栗沢山2,714m  2008年8月13日

(鳳凰山)日本百名山

(アサヨ峰)日本三百名山

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正面から間近に見るオベリスクは自然の作り上げた芸術品。たくさんの岩が折り重なって生命を宿し、今にも飛び立とうとしている。その頂上に立つ二つの岩は強烈なパワーを発散していて、見る者を圧倒する。

アカヌケ沢ノ頭に来ると正面にオベリスク。その場に座り込み、しばし眺める。鳳凰山の核心がここに、名山たらしめているものがここにある。天を突く二つに合わさった岩。それを支える鋭角の岩峰。しばらく見ていると、基部から岩峰を登ろうとしている人がいる。てっぺんまでは無理としても、突端の二つの岩の根元あたりまでは登れるのだろう。分岐のところにザックを置き、オベリスクに登りに分岐を下る。

オベリスクの基部は傾いた広場になっていて、小さな地蔵がたくさん並んでいる。人間もいしょに座っている。基部から岩を伝って登って行き、オベリスクの二つの岩の基部に到達。二つの岩の割れ目にロープがはさまっている。あれを使えばてっぺんまで登れるのだろう。やってみたいという衝動にかられたが、ハーネスもロープもヘルメットもないのに無謀だ、と思い、引返す。岩登りは本業ではない。ここまで到達し、自然の芸術を堪能し、分岐に戻る。とても不思議な場所だった。

オベリスクをこの目で見て、ウェストンや深田久弥と同じ感動を共有できた。無限の山の魅力。

☼☼☼☼☼

アサヨ峰から鳳凰三山の縦走では、たくさん写真を撮り、様々な体験、数知れぬものを見た。しかし、アカヌケ沢ノ頭から見たオベリスクを改めて眺めていて私は悟った。結局、それらすべてを語るよりも、この一枚の写真の方が余程雄弁なのだと

正面から間近に見るオベリスクは自然の作り上げた芸術品。たくさんの岩が折り重なって生命を宿し、今にも飛び立とうとしている
尾根を登っていくと、ついに行く手の右にアサヨ峰が見えてくる。やや左に傾いた二つのピークで、奥が頂上のようだ
甲斐駒ヶ岳
雲をかぶった北岳。青空に雲をたなびかせ、こちらを見ている。
雲から姿を現わした北岳
観音岳: 緑に覆われた巨体の切れ目に白い花崗岩の肌。
薬師岳の頂上部分は広く、縦走路から少し北に外れたところの岩峰が最高点のようだったので、そこに行ってみる。
ピンク色の花がたくさん咲いている。ビランジ?
ホシガラス: 稜線の下は緑の林だが、木にとまっていた鳥が飛び立つ。
フシグロセンノウ
北岳と小太郎尾根
D1 9:46 北沢峠発12:58 栗沢山14:45 アサヨ峰・・・・・・・・・・・・・・・・・登り4時間59分16:47 早川尾根ノ頭16:51 早川尾根小屋(テント)・・・・・・・・合計7時間5分D2 5:14 早川尾根小屋発 8:53 高峰 9:56 アカヌケ沢ノ頭10:39 地蔵岳(オベリスク直下)10:59 アカヌケ沢ノ頭12:15 観音岳13:08 薬師岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り7時間54分14:04 南御室小屋15:42 杖立峠16:27 夜叉神峠17:09 夜叉神峠登山口・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・合計11時間55分

HHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH

D1

朝5時、ホテル出発。芦安のバスの時間を調べておくべきだった。夜叉神峠に下るから、そこに駐車しておこうとしたが、芦安の管理人に呼び止められ、広河原に行くんならここに止めるように言われる。「広河原に行くが、夜叉神に下るから夜叉神に行かせてくれ」と頼むべきだったかもしれない。この朝の甲府はなんと雨が降っていて、走っている車も少なかったが、芦安のバス停前の駐車場は満車。ずっと下まで行けといわれる。たしか前回にも止めた下の駐車場に行くと、そこの係員は「この天気だから上の駐車場が空いてるはず」と言うので、引返す。さっきの係員にその旨を言うと、空いているスペースに案内してくれた。なるほど。しかし、バスは出てしまい、次は乗合タクシーの7時だという。1時間待たねばならない。実は、広河原から北沢峠に行くバスは9時だったので、7時の乗合タクシーでなく、そのあとのバスでもよかったようだ。とにかく、バスの時間は調べてから出かけたほうがよさそうだ。しかし、まあ、テントがあるし、あわてることはない。

乗合タクシーはほぼ満車の入りで、雨はあがり雲間から時々山並みが見える。反対側には谷に滝がかかり、沢の名前が出ている。最後に近いあたりにシレイ沢(白井沢)があった。大きなガレの滝。たいへんそうだ。広河原につくと、上の北岳登山口でみんな下りてしまい、バス停まで行ったのは私一人。バス停は閑散としている。おかしい、と思ったら、北沢峠行きは9時。またまた1時間待ちだ。風が冷たいのでレインウェアを着込み、ピンクフロイドを聞きながら待つ。次第にバスを待つ客が増えてくる。

北沢峠に向かうバスでは更に天気は良くなり、青空も見える。甲斐駒は見えているようだ。北沢峠に着き、トイレに入ると、なんと水洗。感激しながらありがたく使わせてもらう。新しいウォーキングスティックをポクポクいわせながら歩き始める。駒仙小屋までは前回と同じ。河原のテント場はほとんど満員。小屋の入口にはビールの自動販売機。後に見えているのは仙丈の一角だろうか。橋をわたり、栗沢山に向かう。

最初は沢沿いの急登り。ゆっくりぽくぽく登る。ようやく視界が開けてきて、南西に雲をかぶった北岳。しかし、北東の甲斐駒はガスに隠れているようだ。林の中のやや楽な道となる。ついに尾根に上がり、視界を遮る樹木はなくなり、眼下にはさっき渡った沢が小さく見え、ガスをかぶった北岳、仙丈、甲斐駒が廻りに並ぶ。なかなか姿を現わさない。尾根を登っていくと、ついに行く手の右にアサヨ峰が見えてくる。やや左に傾いた二つのピークで、奥が頂上のようだ。やがて尾根は岩場となり、アサヨと栗沢の間の岩尾根を歩いているパーティが見える。栗沢頂上の手前で、摩利支天が姿を現わしたが、その後はまた隠れてしまう。栗沢の頂上でパーティと会う。彼らは駒仙のほうに下っていった。朝は甲斐駒は見えていたという。そいつは残念。

アサヨに向かっているときが一番晴れ、北岳はほとんど見え、仙丈も頭以外が見え、甲斐駒も2/3くらいが見えていた。岩尾根の黄色いペンキをたよりに歩き、アサヨの手前のピークに着き、そしてアサヨの頂上に立つ。頂上に大きな岩があり、その上に頂上標識、その奥の岩の下に大きな三等三角点。これから向かう早川尾根が低く東に続いているが、鳳凰は雲に隠れていて見えない。早川尾根を登ってくる男性が一人。時計を見るともう15時近い。北沢峠を出たのが10時前だから、5時間かかったことになる。栗沢まで3時間だが、アサヨまで2時間近くかかっているのは予想外。アサヨからテント場まで、下りとはいえ距離はあり、3時間としても18時になってしまう。急ぐことにする。(この下りはアップダウンが多く、時間がかかったような気がしたが、実際は2時間、17時前に着いている)

尾根に下り始め、アサヨから見た男性に会う。最初の二つのピーク(P1、P2)は岩峰で、視界が利いたが、行く手の鳳凰は隠れている。P2の先が大きな下りとなり、林の中に入っていく。かなり下り、水場もありそうなところまできて期待したが、小屋はなし。登り返しとなる。最低鞍部にはテント場に使える空地あり。その先はP1、P2よりも背が低く、樹木に覆われた三つのピーク(P3、P4、P5)を越える。最後のP5からは、行く手の鳳凰の全身が見えていたようだが、まだ雲が多く、オベリスクなどは見えていない。まだだいぶ距離があるな、という感じで二つ目のコルに下りていく。このコルの底にもテント場に使える空地あり。そこから少し登り返したところに三角点があり、それに「早川尾根の頭」と刻んである。こりゃあもうすぐだな。

果たして早川小屋はそのすぐ先にあった。古い木造平屋建て。管理人が夕食を調理中。テントは400円、水は水場があるとのこと。テント場は狭く、先客2帳。真ん中に設営する。

東側の先客はワイワイ賑やかで、翌日は北岳に行くようなことを言っていた。カップラーメンに五目御飯を食べ、満腹。夜中に起きると星、カシオペアに白鳥座?

D2

この日は夜叉神峠まで10時間を越える行程なので、4時に起き、5時過ぎに出発する。夜叉神峠のバス16時40分もしくは最終18時に乗らねばならない。高峰まで3時間、薬師岳まで3時間、夜叉神まで4時間、計10時間のプランだが、実際は12時間(4+4+4)かかった。隣のテントのパーティは早朝から騒がしく、5時にはもういない。反対側のテント(男性一人)と小屋の人たちはこれから食事の構え。高峰の間にピークが二つ(P6、P7)あり、景色を楽しみながらの歩きとなる。最初に見えたのは北岳。青空に雲をたなびかせ、こちらを見ている。広河原への分岐のあるコルに下り、P7(赤薙沢ノ頭)への登りの途中で、まず樹間に地蔵岳のオベリスクが見える。前日は雲に隠れて見えていなかったので、今回初めてである。次に、背後に甲斐駒とアサヨが見える。全身を現わした甲斐駒は摩利支天が縦位置のためか目立たなくなり、すっきりしたピラミッドになっている。見事。そのかたわらのアサヨは緑の尾根をめぐらせ、甲斐駒の白を引き立てる。

P7(赤薙沢ノ頭)への登りの途中で、まず樹間に地蔵岳のオベリスクが見える。前日は雲に隠れて見えていなかったので、今回初めてである。P7(赤薙沢ノ頭)の先で最初の休憩。逆光の下にオベリスクが見えており、北岳の雲が次第に取れてくる。頭を隠していた仙丈も見えてきた。二つ目の広河原への分岐を過ぎ、高峰への登りの途中で、北岳の全身が姿を現わす。草すべりの下に小屋が見える。小太郎山から北岳頂上までの長い尾根を正面から見る位置。仙丈も二つのカールと三つのピークを見せる。北岳の奥の間ノ岳はずっと雲をかぶったまま。眼下に目を移すと、広河原の大きな鉄橋が小さく見えており、その上に大樺沢の雪渓と北岳がある。

高峰へはかなりの登りで(地蔵岳よりも高い)、岩場の頂上に到達。あとから早川小屋から来たらしい人たちが次々にやってくる。ここにも大きな三等三角点。北岳の方角に向かって座るが、北岳は雲をかぶっている。谷向こうの観音岳は見事だが、その他の山々は雲を引いていて見えなくなってしまった。

地蔵に向かおうと腰を上げると、若い男性に「甲武信と雲取はどれですか」と聞かれる。そいつは気をつけてなかったが、「あの大きなかたまりが奥秩父で、左端に尖りのあるのが金峰、甲武信や雲取は見えているか分からない」と答える。たぶん、右側の大きなかたまりが北奥千丈と国師で、甲武信と雲取はその向こう側で見えていないのだろう。

高峰から下っていくと、登山道の修復材料をもった人たちが登ってきた。ご苦労さん。コルは真っ白な花崗岩とその砂でできていて、たぶん白鳳峠なのだろう。ピンク色の花がたくさん咲いている。なんという花だろう(この花はこの後も砂の上にたくさん咲いていた)。

アカヌケ沢ノ頭に来ると正面にオベリスク。その場に座り込み、しばし眺める。鳳凰山の核心がここに、名山たらしめているものがここにある。天を突く二つに合わさった岩。それを支える鋭角の岩峰。しばらく見ていると、基部から岩峰を登ろうとしている人がいる。てっぺんまでは無理としても、突端の二つの岩の根元あたりまでは登れるのだろう。分岐のところにザックを置き、オベリスクに登りに分岐を下る。

正面から間近に見るオベリスクは自然の作り上げた芸術品。たくさんの岩が折り重なって生命を宿し、今にも飛び立とうとしている。その頂上に立つ二つの岩は強烈なパワーを発散していて、見る者を圧倒する。

オベリスクの基部は傾いた広場になっていて、小さな地蔵がたくさん並んでいる。人間もいしょに座っている。基部から岩を伝って登って行き、オベリスクの二つの岩の基部に到達。二つの岩の割れ目にロープがはさまっている。あれを使えばてっぺんまで登れるのだろう。やってみたいという衝動にかられたが、ハーネスもロープもヘルメットないのに無謀だ、と思い、引返す。岩登りは本業ではない。ここまで到達し、自然の芸術を堪能し、分岐に戻る。とても不思議な場所だった。

アカヌケ沢ノ頭から目指す観音岳を見ながらコルに下ると、鳳凰小屋への分岐がある。その小屋は稜線からは見えなかったが、地蔵岳から下っていく人は大勢いたので、鳳凰小屋を使う人も多いのかもしれない。視界のない登り返しを淡々と登り、観音岳の頂上に着く。ここも花崗岩の岩場の頂上で、二等三角点にたくさんの頂上標識。親子連れがやってくる前に先に進む。広い砂地の尾根道の真ん中にピンクの花がぽつんと咲いている。ひとつの苗に葉が見えないほど花をつけている。これで養分はとれてるのかなと思う。観音と薬師の間はシレイ沢の終点であり、さかんに谷底を見下ろすが、もちろん沢は見えない。一箇所、下に続く踏跡があり、沢に続いているのかもしれない。稜線の下は緑の林だが、木にとまっていた鳥が飛び立つ。

薬師岳の頂上部分は広く、縦走路から少し北に外れたところの岩峰が最高点のようだったので、そこに行ってみる。戻ってきて先に進むと、東側にも岩峰があり、そっちのほうが高いかもしれない、と思い、そこにも行っておく。観音岳の親子連れが追いついてきた。物好きな人だと思われたかもしれない。薬師岳小屋は頂上のすぐ東にあった。こじんまりした建物。客がすでに数人。薬師岳で時計を見てもう13時を過ぎていたのでややあせる。16時40分のバスに乗るためには3時間半で下らないといけない。薬師岳小屋には夜叉神峠まで10kmとあった。まあ、時速4kmで歩けば3時間でクリアできるんだが。小屋の裏手には砂払岳という小さな岩峰あり。岩の上に座って写真をとっている人。ザックをしょってゆっくり歩いてる人。先に行かせてもらう。ガマの岩というのがあり、携帯受信可能表示もあり。無雪期登山道という表示を下っていたつもりが、いつのまにか積雪期のものと思われるガレ道を下っており、南御室小屋に着く。

南御室小屋は古い平屋の小屋だが、敷地は広く、工事用のトイレが多数にテントも数帳。外のテーブルに数人。時計をみると14時すぎ、下りだったのに全然時間短縮できなかったので、先を急ぐ。ところがそこから苺平までは緩い登り。大股でできるかぎり早く進む。かなり早く歩いていたつもりなのに男性に抜かれる。どうやら小屋の管理人らしく、先の倒木のところで枝を切っていた。苺平には14時40分に着き、少し短縮できたので休憩。反対側からやってきたパーティが二組。ここから辻山への分岐表示があった。この先は林から出て、半分草原のような道となる。古い仏像。

再び林の尾根道となり、杖立峠に着く。15時40分。夜叉神峠まであと40分とあるので、16時20分には着ける。ゆっくり休んで出発(こいつはとんでもない間違いだった)。しかし、この先の道は次第に険しく、急な下りとなり、いけどもいけども着かない。

ようやく16時半前に夜叉神峠の店に到着。曇り空だが視界の開けたところで、店の前に何人かくつろいでいる。が、時間がないのでバス亭へ急ぐ。ところが、店の裏には分岐があり、西口下山道、東口下山道とある。どっちえいけばいいんだ!パニックになりそうなのを抑えてマップを取出す。な、なんと、東へ下ればいいらしいが、ここから40分くらいかかるとある。夜叉神峠と夜叉神登山口は違っていたのだ。ここは16時40分は諦め、ゆっくり歩く。まあ、18時のバスがあるさ。

バス停に着き、店にはいって時間をつぶそうとすると、この店には風呂がある。まだ50分あるからもちろん入っていくことにする。宿の狭い風呂だったが、天国、天国。半そで、短パンに着替え、店でコーヒーフロートをもらい、記念品を買う。最終のバスは8分の入り。見憶えのある車掌のおばさん。

沢登りではなかったが、オベリスクをこの目で見て、ウェストンや深田久弥と同じ感動を共有できた。無限の山の魅力。

D1

北沢峠

北沢峠に向かうバスでは更に天気は良くなり、青空も見える。甲斐駒は見えているようだ。北沢峠に着き、トイレに入ると、なんと水洗。感激しながらありがたく使わせてもらう。新しいウォーキングスティックをポクポクいわせながら歩き始める。駒仙小屋までは前回と同じ。河原のテント場はほとんど満員。小屋の入口にはビールの自動販売機。後に見えているのは仙丈の一角だろうか。橋をわたり、栗沢山に向かう。

栗沢山への分岐標示

眼下の野呂川を見下ろす

最初は沢沿いの急登り。ゆっくりぽくぽく登る。ようやく視界が開けてきて、南西に雲をかぶった北岳。しかし、北東の甲斐駒はガスに隠れているようだ。林の中のやや楽な道となる。ついに尾根に上がり、視界を遮る樹木はなくなり、眼下にはさっき渡った沢が小さく見え、ガスをかぶった北岳、仙丈、甲斐駒が廻りに並ぶ。なかなか姿を現わさない。尾根を登っていくと、ついに行く手の右にアサヨ峰が見えてくる。やや左に傾いた二つのピークで、奥が頂上のようだ。やがて尾根は岩場となり、アサヨと栗沢の間の岩尾根を歩いているパーティが見える。栗沢頂上の手前で、摩利支天が姿を現わしたが、その後はまた隠れてしまう。栗沢の頂上でパーティと会う。彼らは駒仙のほうに下っていった。朝は甲斐駒は見えていたという。そいつは残念。

アサヨ峰

摩利支天

栗沢山頂上

アサヨ峰

アサヨ峰頂上

アサヨに向かっているときが一番晴れ、北岳はほとんど見え、仙丈も頭以外が見え、甲斐駒も2/3くらいが見えていた。岩尾根の黄色いペンキをたよりに歩き、アサヨの手前のピークに着き、そしてアサヨの頂上に立つ。頂上に大きな岩があり、その上に頂上標識、その奥の岩の下に大きな三等三角点。これから向かう早川尾根が低く東に続いているが、鳳凰は雲に隠れていて見えない。早川尾根を登ってくる男性が一人。時計を見るともう15時近い。北沢峠を出たのが10時前だから、5時間かかったことになる。栗沢まで3時間だが、アサヨまで2時間近くかかっているのは予想外。アサヨからテント場まで、下りとはいえ距離はあり、3時間としても18時になってしまう。急ぐことにする。(この下りはアップダウンが多く、時間がかかったような気がしたが、実際は2時間、17時前に着いている)

早川尾根ノ頭の三角点

尾根に下り始め、アサヨから見た男性に会う。最初の二つのピーク(P1、P2)は岩峰で、視界が利いたが、行く手の鳳凰は隠れている。P2の先が大きな下りとなり、林の中に入っていく。かなり下り、水場もありそうなところまできて期待したが、小屋はなし。登り返しとなる。最低鞍部にはテント場に使える空地あり。その先はP1、P2よりも背が低く、樹木に覆われた三つのピーク(P3、P4、P5)を越える。最後のP5からは、行く手の鳳凰の全身が見えていたようだが、まだ雲が多く、オベリスクなどは見えていない。まだだいぶ距離があるな、という感じで二つ目のコルに下りていく。このコルの底にもテント場に使える空地あり。そこから少し登り返したところに三角点があり、それに「早川尾根の頭」と刻んである。こりゃあもうすぐだな。

早川尾根小屋のテント場

果たして早川小屋はそのすぐ先にあった。古い木造平屋建て。管理人が夕食を調理中。テントは400円、水は水場があるとのこと。テント場は狭く、先客2帳。真ん中に設営する。

東側の先客はワイワイ賑やかで、翌日は北岳に行くようなことを言っていた。カップラーメンに五目御飯を食べ、満腹。夜中に起きると星、カシオペアに白鳥座?

D2

夜明け

この日は夜叉神峠まで10時間を越える行程なので、4時に起き、5時過ぎに出発する。夜叉神峠のバス16時40分もしくは最終18時に乗らねばならない。高峰まで3時間、薬師岳まで3時間、夜叉神まで4時間、計10時間のプランだが、実際は12時間(4+4+4)かかった。隣のテントのパーティは早朝から騒がしく、5時にはもういない。反対側のテント(男性一人)と小屋の人たちはこれから食事の構え。高峰の間にピークが二つ(P6、P7)あり、景色を楽しみながらの歩きとなる。最初に見えたのは北岳。青空に雲をたなびかせ、こちらを見ている。広河原への分岐のあるコルに下り、P7(赤薙沢ノ頭)への登りの途中で、まず樹間に地蔵岳のオベリスクが見える。前日は雲に隠れて見えていなかったので、今回初めてである。次に、背後に甲斐駒とアサヨが見える。全身を現わした甲斐駒は摩利支天が縦位置のためか目立たなくなり、すっきりしたピラミッドになっている。見事。そのかたわらのアサヨは緑の尾根をめぐらせ、甲斐駒の白を引き立てる。

雲をかぶった北岳

最初に見えたのは北岳。青空に雲をたなびかせ、こちらを見ている。

樹間のオベリスク

P7(赤薙沢ノ頭)への登りの途中で、まず樹間に地蔵岳のオベリスクが見える。前日は雲に隠れて見えていなかったので、今回初めてである。

甲斐駒ヶ岳

背後に甲斐駒とアサヨが見える。全身を現わした甲斐駒は摩利支天が縦位置のためか目立たなくなり、すっきりしたピラミッドになっている。見事。そのかたわらのアサヨは緑の尾根をめぐらせ、甲斐駒の白を引き立てる。

アサヨ峰と甲斐駒ヶ岳

逆光の下のオベリスク

P7(赤薙沢ノ頭)の先で最初の休憩。逆光の下にオベリスクが見えており、北岳の雲が次第に取れてくる。頭を隠していた仙丈も見えてきた。二つ目の広河原への分岐を過ぎ、高峰への登りの途中で、北岳の全身が姿を現わす。草すべりの下に小屋が見える。小太郎山から北岳頂上までの長い尾根を正面から見る位置。仙丈も二つのカールと三つのピークを見せる。北岳の奥の間ノ岳はずっと雲をかぶったまま。眼下に目を移すと、広河原の大きな鉄橋が小さく見えており、その上に大樺沢の雪渓と北岳がある。

中央アルプス

北岳と小太郎尾根

北岳

高峰への登りの途中で、北岳の全身が姿を現わす。草すべりの下に小屋が見える。小太郎山から北岳頂上までの長い尾根を正面から見る位置。

北岳と小太郎尾根、仙丈岳、アサヨ峰、甲斐駒ヶ岳

仙丈岳

広河原の大きな鉄橋

眼下に目を移すと、広河原の大きな鉄橋が小さく見えており、その上に大樺沢の雪渓と北岳がある。

広河原の鉄橋の上の大樺沢と北岳

高峰頂上

高峰へはかなりの登りで(地蔵岳よりも高い)、岩場の頂上に到達。あとから早川小屋から来たらしい人たちが次々にやってくる。ここにも大きな三等三角点。北岳の方角に向かって座るが、北岳は雲をかぶっている。谷向こうの観音岳は見事だが、その他の山々は雲を引いていて見えなくなってしまった。

奥秩父の稜線

地蔵に向かおうと腰を上げると、若い男性に「甲武信と雲取はどれですか」と聞かれる。そいつは気をつけてなかったが、「あの大きなかたまりが奥秩父で、左端に尖りのあるのが金峰、甲武信や雲取は見えているか分からない」と答える。たぶん、右側の大きなかたまりが北奥千丈と国師で、甲武信と雲取はその向こう側で見えていないのだろう。

金峰山と千丈石?・・・・・上の拡大

鳳凰山の稜線: 地蔵岳オベリスク、アカヌケ沢ノ頭、観音岳

ピンク色の花・・・ビランジ?

ピンク色の花・・・ビランジ?

高峰

高峰から下っていくと、登山道の修復材料をもった人たちが登ってきた。ご苦労さん。コルは真っ白な花崗岩とその砂でできていて、たぶん白鳳峠なのだろう。ピンク色の花がたくさん咲いている。なんという花だろう(この花はこの後も砂の上にたくさん咲いていた)。

地蔵岳オベリスク

アカヌケ沢ノ頭に来ると正面にオベリスク。その場に座り込み、しばし眺める。鳳凰山の核心がここに、名山たらしめているものがここにある。天を突く二つに合わさった岩。それを支える鋭角の岩峰。しばらく見ていると、基部から岩峰を登ろうとしている人がいる。てっぺんまでは無理としても、突端の二つの岩の根元あたりまでは登れるのだろう。分岐のところにザックを置き、オベリスクに登りに分岐を下る。

地蔵岳オベリスク

正面から間近に見るオベリスクは自然の作り上げた芸術品。たくさんの岩が折り重なって生命を宿し、今にも飛び立とうとしている。その頂上に立つ二つの岩は強烈なパワーを発散していて、見る者を圧倒する。

地蔵岳オベリスク

地蔵岳オベリスク直下

オベリスクの基部は傾いた広場になっていて、小さな地蔵がたくさん並んでいる。人間もいしょに座っている。基部から岩を伝って登って行き、オベリスクの二つの岩の基部に到達。二つの岩の割れ目にロープがはさまっている。あれを使えばてっぺんまで登れるのだろう。やってみたいという衝動にかられたが、ハーネスもロープもヘルメットないのに無謀だ、と思い、引返す。岩登りは本業ではない。ここまで到達し、自然の芸術を堪能し、分岐に戻る。とても不思議な場所だった。

観音岳

アカヌケ沢ノ頭から目指す観音岳を見ながらコルに下ると、鳳凰小屋への分岐がある。その小屋は稜線からは見えなかったが、地蔵岳から下っていく人は大勢いたので、鳳凰小屋を使う人も多いのかもしれない。視界のない登り返しを淡々と登り、観音岳の頂上に着く。ここも花崗岩の岩場の頂上で、二等三角点にたくさんの頂上標識。親子連れがやってくる前に先に進む。広い砂地の尾根道の真ん中にピンクの花がぽつんと咲いている。ひとつの苗に葉が見えないほど花をつけている。これで養分はとれてるのかなと思う。観音と薬師の間はシレイ沢の終点であり、さかんに谷底を見下ろすが、もちろん沢は見えない。一箇所、下に続く踏跡があり、沢に続いているのかもしれない。稜線の下は緑の林だが、木にとまっていた鳥が飛び立つ。

観音岳

緑に覆われた巨体の切れ目に白い花崗岩の肌。

ピンクの花・・・ビランジ?

観音岳頂上

三角点とピンクの花

ホシガラス

稜線の下は緑の林だが、木にとまっていた鳥が飛び立つ。

薬師岳

薬師岳の頂上部分は広く、縦走路から少し北に外れたところの岩峰が最高点のようだったので、そこに行ってみる。戻ってきて先に進むと、東側にも岩峰があり、そっちのほうが高いかもしれない、と思い、そこにも行っておく。観音岳の親子連れが追いついてきた。物好きな人だと思われたかもしれない。薬師岳小屋は頂上のすぐ東にあった。こじんまりした建物。客がすでに数人。薬師岳で時計を見てもう13時を過ぎていたのでややあせる。16時40分のバスに乗るためには3時間半で下らないといけない。薬師岳小屋には夜叉神峠まで10kmとあった。まあ、時速4kmで歩けば3時間でクリアできるんだが。小屋の裏手には砂払岳という小さな岩峰あり。岩の上に座って写真をとっている人。ザックをしょってゆっくり歩いてる人。先に行かせてもらう。ガマの岩というのがあり、携帯受信可能表示もあり。無雪期登山道という表示を下っていたつもりが、いつのまにか積雪期のものと思われるガレ道を下っており、南御室小屋に着く。

薬師岳頂上

薬師岳・北の岩峰

薬師岳の頂上部分は広く、縦走路から少し北に外れたところの岩峰が最高点のようだったので、そこに行ってみる。

薬師岳・南の岩峰

戻ってきて先に進むと、東側にも岩峰があり、そっちのほうが高いかもしれない、と思い、そこにも行っておく。観音岳の親子連れが追いついてきた。物好きな人だと思われたかもしれない

薬師岳小屋

薬師岳小屋は頂上のすぐ東にあった。こじんまりした建物。客がすでに数人

観音岳と薬師岳

砂払岳

小屋の裏手には砂払岳という小さな岩峰あり。岩の上に座って写真をとっている人。ザックをしょってゆっくり歩いてる人。先に行かせてもらう

南御室小屋

南御室小屋は古い平屋の小屋だが、敷地は広く、工事用のトイレが多数にテントも数帳。外のテーブルに数人。時計をみると14時すぎ、下りだったのに全然時間短縮できなかったので、先を急ぐ。ところがそこから苺平までは緩い登り。大股でできるかぎり早く進む。かなり早く歩いていたつもりなのに男性に抜かれる。どうやら小屋の管理人らしく、先の倒木のところで枝を切っていた。苺平には14時40分に着き、少し短縮できたので休憩。反対側からやってきたパーティが二組。ここから辻山への分岐表示があった。この先は林から出て、半分草原のような道となる。古い仏像。

杖立峠

再び林の尾根道となり、杖立峠に着く。15時40分。夜叉神峠まであと40分とあるので、16時20分には着ける。ゆっくり休んで出発(こいつはとんでもない間違いだった)。しかし、この先の道は次第に険しく、急な下りとなり、いけどもいけども着かない。

夜叉神峠

ようやく16時半前に夜叉神峠の店に到着。曇り空だが視界の開けたところで、店の前に何人かくつろいでいる。が、時間がないのでバス亭へ急ぐ。ところが、店の裏には分岐があり、西口下山道、東口下山道とある。どっちえいけばいいんだ!パニックになりそうなのを抑えてマップを取出す。な、なんと、東へ下ればいいらしいが、ここから40分くらいかかるとある。夜叉神峠と夜叉神登山口は違っていたのだ。ここは16時40分は諦め、ゆっくり歩く。まあ、18時のバスがあるさ。

フシグロセンノウ

夜叉神峠登山口

バス停に着き、店にはいって時間をつぶそうとすると、この店には風呂がある。まだ50分あるからもちろん入っていくことにする。宿の狭い風呂だったが、天国、天国。半そで、短パンに着替え、店でコーヒーフロートをもらい、記念品を買う。最終のバスは8分の入り。見憶えのある車掌のおばさん。

沢登りではなかったが、オベリスクをこの目で見て、ウェストンや深田久弥と同じ感動を共有できた。無限の山の魅力。