雨飾山 猫の耳
長野県 雨飾山P2・1,838m 2005年4月17日
ネット情報、岳人
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「猫の耳のような二つのピークが睦まじげに寄り添って、すっきりと五月の空に立っていた」(日本百名山・雨飾山)
P2が近づくと、正面に雨飾の小さな双耳峰が見える。これが猫の耳(*)なのだろう。印象的な姿。しかし頂上は全く切り立っていて、こちらからは登れそうもない。
P2に着くと目の前に猫の耳の山頂。しかし、こちらからは頂上に道はない。ザックを降ろし、頂上に近い尾根を辿ってみるが、あと数10mなのに行けない。残念無念。
荒菅沢を渡り、北東稜線に登らねば頂上には行けなかったのだ。しかし、雨飾のこの印象的な猫の耳は、ここからしか見ることはできないはずで、それを実際に見ることができたのはよかった。
P2からは南尾根を滑走。長大なダウンヒル・コース。急な斜面ばかりでなかなかおもしろい。
広い大斜面にターンを刻み、急で狭い雪尾根を滑走し、林の斜面を下って、はるか下に見えていた大海川に滑り込む。
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奈落の底を見下ろし
静かに、断崖絶壁の縁から滑り込む
パウダースノーを巻き上げ、アイスバーンに鋭く切り込み
軽やかに、風を切る
(ダウンヒル)
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憧れの雨飾へ。小谷温泉の手前で、夜明けのとき、雨飾のシルエットが見える。一目で分かった。
栃ノ樹亭前の駐車場にはたくさん車があり、準備している。スキーをしょってアスファルト林道を歩く。やがて除雪終点となり、スキーを履いて歩く。
キャンプ場に向かって行くと、正面に雨飾が見えてきて、その手前に雪に埋まった大海川。トレースがたくさんあり、大海川に斜めに降りて行く。徒歩の女性が斜面を登り始めたので、ザックを降ろしてアイゼンを付けようとしたが、火打まで行こうとしたというスキーの男性が山から下りてきて、スキーならもっと先だというので、水の出ている沢沿いをしばらく進む。今度はスキーをしょった男性3人が斜面を登ろうとしている。こちらからでも登れるんだろうが、スキー・シールだともっと北側からなのだろう。そこで、もう一つ先の雪の支流を登る。ここもトレースがたくさん付いていたのだが、上は急でとてもスキーで登れない。ひび割れかけた雪の上でアイゼンを付け、スキーをザックに付ける。
平坦なところに出て最初の休憩。その先で登ったのが荒菅沢右岸尾根で、頂上に至る荒菅沢左岸尾根ではなかった。スキーの歩いたトレースと徒歩の跡が真北の沢に向かって降りていた。その沢にはデブリがたくさん転がっていて、荒菅沢かもしれないとは思ったが、そのまま尾根を登る。最初に見たとおりだんだん急になり、誰も歩いた跡が無いのもあって苦労。
布団菱を真横から見る。半分雪で隠れているが、確かに一枚スラブのようである。北には焼山が見えている。P2が近づくと、正面に雨飾の小さな双耳峰が見える。これが猫の耳(*)なのだろう。印象的な姿。しかし頂上は全く切り立っていて、こちらからは登れそうもない。猫の耳の北の稜線に小さく歩いている人が見える。更に登り、南に回りこむとトレースと足跡がたくさんあり、人が二人いるP2頂上に着く。目の前に猫の耳の山頂。しかし、こちらからは頂上に道はない。ザックを降ろし、頂上に近い尾根を辿ってみるが、目の前にあと数10mなのに行けない。残念無念。
荒菅沢を渡り、北東稜線に登らねば頂上には行けなかったのだ。しかし、雨飾のこの印象的な猫の耳は、ここからしか見ることはできないはずで、それを実際に見ることができたのはよかった。現にたくさん人が来ていて、スキーの三人組は南西斜面を登っているのが見えたし、やはりここに来たのだろう。とにかくゆっくりラーメンを食べ、ビールを飲む。日が翳ってきて風も出てきた。先の二人はもうおらず、その後も誰も来ず。ひとりのピークを楽しみ、それから滑り降りる。
往路の荒菅沢右岸尾根でなく、南尾根を滑走。長大なダウンヒル・コース。急な斜面ばかりでなかなかおもしろい。大海川への最後の斜面で雪のひび割れをとっさに飛び越したのは良かったが、河原に滑り込んだときバランスを失って転ぶ。平地で転ぶと立ち上がるのがやっかい。林道まで歩き、スキーをかつぎ、林道が大きくカーブするところでスキーを付けてショート・カット。雪壁を慎重に降り、駐車場に帰着。
まだ車が数台残っているのは泊まりなのだろう。二人ほど徒歩の人が降りてきた。 少し下の雨飾荘というところで風呂に入る。熱くて、アルカリ温泉だがシャンプーなし。帰りの道の駅小谷の山菜ソバが美味かった。ワラビにタケノコ。また来なくては。
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(*)雨飾山の猫の耳(本物とニセモノ)
本物の猫の耳は「日本百名山」と「深田久弥の山がたり」に出てくる北側から仰ぎ見た猫の耳、雨飾山の頂上に立った深田久弥が歩いた30mほど離れた猫の耳で、これは三角点峰と最高点峰(祠のある峰)と思われる。
「翌日、あざやかに晴れた。雨飾山はその広い肩の上に二つの耳を立てて、相変わらず気高く美しかった。・・・・二つのピークが睦まじげに寄り添ってすっきりと青空に立っていた。」(「深田久弥の山がたり」p42、雨飾山)「北側から仰いだ雨飾山はよかった。左右に平均の取れた肩を長く張って、その上に、猫の耳のような二つのピークが睦まじげに寄り添って、すっきりと五月の空に立っていた。」(「日本百名山」p142、雨飾山)
「一休みして、私たちはもう一つのピークの上へ行った。案外近く、三十米ほどしか離れていなかった。下から眺めてあんなに美しかった、その二つの耳の上に立った喜びで、私の幸福には限りがなかった。」(「日本百名山」p144、雨飾山)
因みに、「深田久弥の山がたり」(p42、雨飾山)に載せられた「梶山新湯から鋸岳へ至る稜線(北方)から見る雨飾山の二つの耳」の写真では、右耳は雨飾山頂上、左耳は笹平1,894mと思われるが、これらは600mくらい離れているので、先の猫の耳ではあり得ない。
私がP2から見た猫の耳(冒頭の写真)は、地形図と比較参照すると、これは本物の猫の耳(最高点峰と三角点峰)ではなく、左耳は三角点峰、右耳は南東峰1,950m?(三角点峰の南東に突き出た峰)のようである。
夜明けの雨飾山
憧れの雨飾へ。小谷温泉の手前で、夜明けのとき、雨飾のシルエットが見える。一目で分かった。
明星山・・・・・雨飾の西
栃ノ樹亭から舗装林道
栃ノ樹亭前の駐車場にはたくさん車があり、準備している。スキーをしょってアスファルト林道を歩く。やがて除雪終点となり、スキーを履いて歩く。
雨飾山(左奥)とP2(白ピーク)
キャンプ場に向かって行くと、正面に雨飾が見えてきて、その手前に雪に埋まった大海川。
大海川
トレースがたくさんあり、大海川に斜めに降りて行く。徒歩の女性が斜面を登り始めたので、ザックを降ろしてアイゼンを付けようとしたが、火打まで行こうとしたというスキーの男性が山から下りてきて、スキーならもっと先だというので、水の出ている沢沿いをしばらく進む。今度はスキーをしょった男性3人が斜面を登ろうとしている。こちらからでも登れるんだろうが、スキー・シールだともっと北側からなのだろう。そこで、もう一つ先の雪の支流を登る。ここもトレースがたくさん付いていたのだが、上は急でとてもスキーで登れない。ひび割れかけた雪の上でアイゼンを付け、スキーをザックに付ける。
P2への登り
平坦なところに出て最初の休憩。その先で登ったのが荒菅沢右岸尾根で、頂上に至る荒菅沢左岸尾根ではなかった。スキーの歩いたトレースと徒歩の跡が真北の沢に向かって降りていた。その沢にはデブリがたくさん転がっていて、荒菅沢かもしれないとは思ったが、そのまま尾根を登る。最初に見たとおりだんだん急になり、誰も歩いた跡が無いのもあって苦労。
布団菱
布団菱を真横から見る。半分雪で隠れているが、確かに一枚スラブのようである。北には焼山が見えている。
焼山(左)、金山(中央)、三田原山
昼闇山・・・・・焼山の左(北)
黒姫山(左)、地蔵山(中央)、高妻山・・・・・三田原山の右(南東)
黒姫山・・・・霞んでいるが、襟巻と中央峰の二重火口
地蔵山・・・・・佐渡山かと思ったが、佐渡から雨飾は見えなかった。たぶん地蔵山だろう
高妻山・・・・手前に乙妻山が重なっている
P2が近づくと、正面に雨飾の小さな双耳峰が見える。これが猫の耳なのだろう。印象的な姿。しかし頂上は全く切り立っていて、こちらからは登れそうもない。猫の耳の北の稜線に小さく歩いている人が見える。更に登り、南に回りこむとトレースと足跡がたくさんあり、人が二人いるP2頂上に着く。目の前に猫の耳の山頂。しかし、こちらからは頂上に道はない。ザックを降ろし、頂上に近い尾根を辿ってみるが、目の前にあと数10mなのに行けない。残念無念。
荒菅沢を渡り、北東稜線に登らねば頂上には行けなかったのだ。しかし、雨飾のこの印象的な猫の耳は、ここからしか見ることはできないはずで、それを実際に見ることができたのはよかった。現にたくさん人が来ていて、スキーの三人組は南西斜面を登っているのが見えたし、やはりここに来たのだろう。とにかくゆっくりラーメンを食べ、ビールを飲む。日が翳ってきて風も出てきた。先の二人はもうおらず、その後も誰も来ず。ひとりのピークを楽しみ、それから滑り降りる。
P2頂上から雨飾山頂上の猫の耳
雨飾山頂上と北東稜線(フトンビシの頭)
この写真には写っていないが、猫の耳の北の稜線に小さく歩いている人が見えていた。
大渚山・・・・・P2から南の情景
P2南尾根のダウンヒル・コース
往路の荒菅沢右岸尾根でなく、南尾根を滑走。長大なダウンヒル・コース。急な斜面ばかりでなかなかおもしろい。大海川への最後の斜面で雪のひび割れをとっさに飛び越したのは良かったが、河原に滑り込んだときバランスを失って転ぶ。平地で転ぶと立ち上がるのがやっかい。林道まで歩き、スキーをかつぎ、林道が大きくカーブするところでスキーを付けてショート・カット。雪壁を慎重に降り、駐車場に帰着。
ダウンヒル上部
徒歩の踏跡も多数
ダウンヒル中盤
大海川に滑り込む
栃ノ樹亭
まだ車が数台残っているのは泊まりなのだろう。二人ほど徒歩の人が降りてきた。 少し下の雨飾荘というところで風呂に入る。熱くて、アルカリ温泉だがシャンプーなし。帰りの道の駅小谷の山菜ソバが美味かった。ワラビにタケノコ。また来なくては。
高妻山から見る夏の雨飾山(2006年9月2日)P2は頂上手前、猫の耳は小さくて見えない
(*)雨飾山の猫の耳(本物とニセモノ)
本物の猫の耳(奥が祠のある最高点峰、手前が三角点峰)
本物の猫の耳は「日本百名山」と「深田久弥の山がたり」に出てくる北側から仰ぎ見た猫の耳、雨飾山の頂上に立った深田久弥が歩いた30mほど離れた猫の耳で、これは三角点峰と最高点峰(祠のある峰)と思われる。
「翌日、あざやかに晴れた。雨飾山はその広い肩の上に二つの耳を立てて、相変わらず気高く美しかった。・・・・二つのピークが睦まじげに寄り添ってすっきりと青空に立っていた。」(「深田久弥の山がたり」p42、雨飾山)「北側から仰いだ雨飾山はよかった。左右に平均の取れた肩を長く張って、その上に、猫の耳のような二つのピークが睦まじげに寄り添って、すっきりと五月の空に立っていた。」(「日本百名山」p142、雨飾山)
「一休みして、私たちはもう一つのピークの上へ行った。案外近く、三十米ほどしか離れていなかった。下から眺めてあんなに美しかった、その二つの耳の上に立った喜びで、私の幸福には限りがなかった。」(「日本百名山」p144、雨飾山)
因みに、「深田久弥の山がたり」(p42、雨飾山)に載せられた「梶山新湯から鋸岳へ至る稜線(北方)から見る雨飾山の二つの耳」の写真では、右耳は雨飾山頂上、左耳は笹平1,894mと思われるが、これらは600mくらい離れているので、先の猫の耳ではあり得ない。
もう一つの猫の耳(左耳は雨飾山頂上、右耳は南東峰)
私がP2から見た猫の耳(冒頭の写真)は、地形図と比較参照すると、これは本物の猫の耳(最高点峰と三角点峰)ではなく、左耳は三角点峰、右耳は南東峰1,950m?(三角点峰の南東に突き出た峰)のようである。