雄冬山 広大な雪世界を越えて

北海道(道北)  雄冬山1,197m、浜益御殿1,039m、大阪山533m  2017年4月17日

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登り返していくにつれ周囲の景色はあざやかに輝きはじめ、広大な雪世界が広がっていく。

東にはごつごつした暑寒別岳が現われ、増毛連峰の盟主の貫禄。しかし、美しさや華やかさの点では雄冬山や浜益岳がきらめいている。優雅に左右に尾根を広げる雄冬はなんとも美しい。

浜益岳も純白に輝き、朝の灰色とは全く別の山になっている。

すぐ近くで黒々とした雪庇を従え、力強いカーブの東尾根を延ばす浜益御殿は印象的で、往路の時の平凡なピークではなくなっていた。

残念なのは群別岳の迫力の鋭鋒が見えないこと。だが、一時はガスに取り囲まれて全く視界が無かったのだから、これ以上は望むまい。すばらしい雪世界を見せてくれてありがとう。

細尾根1の上まで滑って振り返ると、細尾根2の両側はすばらしい雪斜面。ここのさっきの滑走が本日のハイライトで間違いない。

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俺はただ無心に登った。はるかなる白き峰しか見ていなかった

体は疲れ果て、太陽はまぶしく、汗がしたたり落ちた

それでも俺は登るのを止めなかった。上がらぬ足を騙し、惰性で登った

頂上に着いたとき、俺の頭はからっぽになった。すごく、いい気分だった。

俺は天空から下界を見下ろしていた。天空は穏やかだったが、去らねばならなかった

そこで俺はスキー板を履き、天空から滑った。

俺は風になっていた

(遥かなる白き峰)

 ダケカンバと雄冬山: 優雅に左右に尾根を広げる雄冬はなんとも美しい。
 ダケカンバと浜益岳: 浜益岳も純白に輝き、朝の灰色とは全く別の山になっている
 浜益御殿と東尾根と雪庇: 黒々とした雪庇を従え、力強いカーブの東尾根を延ばす浜益御殿は印象的で、往路の時の平凡なピークではなくなっていた
 細尾根1の上まで滑って振り返ると、細尾根2の両側はすばらしい雪斜面。ここのさっきの滑走が本日のハイライトで間違いない
 春の太陽
救助作業中のヘリコプター
  6:04 駐車地点(標高250m)発  7:08 大坂山533m  9:16 浜益御殿1,039m  9:26 浜益御殿発、滑走  9:43 コル850m、シール10:50 細尾根1麓(1,010m付近)、アイゼン11:36 雄冬山1,197m・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り5時間32分12:01 雄冬山発、滑走12:12 細尾根1麓12:40 コル850m、シール13:51 浜益御殿14:01 浜益御殿発、滑走14:55 大坂山15:24 駐車地点着・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復9時間20分

(幌地区から林道・駐車地点)

・もう6年前の4月10日に浜益岳登山口のある林道に上がったときは林道起点に駐車してすぐシールで歩いたが、今回は雪がなく、2㎞ほど林道を車で進む。これで1時間くらいは短縮できただろう。

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もう6年前の4月10日に浜益岳登山口のある林道に上がったときは林道起点に駐車してすぐシールで歩いたが、今回は雪がなく、2㎞ほど林道を車で進む。これで1時間くらいは短縮できただろう。林道の先には車が数台駐車していて、出かけようとしている人たちがいた。私は少し戻った枝道入口に駐車。最初はシートラーゲン。パーティ2組が先に行き、後ろからは一人。

斜面の雪はだいぶ融けていたが林道の雪は切れ目なく続いているようなので、すぐにシールに替える。補修して初めてのシールだったが、調子はよかった。林道の雪の上にはものすごくたくさんのトレースや踏跡がある。前回はこんなになかった。林道が左に大阪山を巻く地点でトレースは林道を外れて山に入る。私は途中でトレースを外れ、GPSを見ながら大阪山の三角点地点まで登る。林の中の平坦な丸い頂上。

コルに滑り降りると浜益岳西峰が見える。すぐに登り返しとなり浜益御殿に向かうと、「スノーモービル乗入禁止」の幕が張ってある。6年前と同じ。最初のマイナーピーク580mに上がると浜益岳本峰も見えてくるが、ここからは西峰の方が立派に見える。次のマイナーピーク770mの先の平らなところにテントが一つ張ってある。どこに行ったのだろう。

地理院地図の標高点804m付近は広く平らな雪原で、帰りにヘリコプターが来たところ。調子がよく、すぐ先の急斜面をストックを使ってなるべくまっすぐ登る。登った先がマイナーピーク835mで、浜益岳の全景が見え、夢中で映す。が、この時も空は灰色で、映りはよくない。浜益岳の右後に幌天狗とその東尾根が見えており、北東に初めて雄冬が見えるが、午後に見た青空の風景と比べると全くグレイ。

頂上尾根940mに上がると、尾根の先に夫婦連れが行くが、もう一人、シールを外して滑り出そうとしている人がいる。もう御殿まで行ってきたのだろうか。そこから見えていたのは浜益御殿・西峰980mで、そこまで登ってやっと浜益御殿・本峰が見える。いったんシールで滑り降りるが、夫婦連れはコルで休憩していた。頂上は風が強かったから、休むならここが最適だろう。「どこまでですか」と聞かれ「あれです」と雄冬を指さす。近くに見えるが、まだまだ遠かった。

浜益御殿の三角点は灌木の出ている東端よりも手前にあるようなのでGPSを見ながら進んでいると、いつのまにか背後のパーティが追越していく。ずいぶん早いな。雪に埋まっている三角点の上に立ってから私も東端の灌木地点に向かう。まあ、そこが頂上の雰囲気だ。地理院地図をみても三角点(1,039m)位置と東端は同じ標高の等高線1,030mの中にある。追い越していったのは元気な若者数名にガイドさんのパーティで、賑やかに頂上到達記念撮影している。これから浜益岳かな。風が強くて寒いので、ホットレモンを少し飲み、シールをはがして滑走。

雄冬山は浜益御殿の北にあるが、浜益御殿の北側はかなりの急斜面なので、まず東に稜線沿いに滑走し、そこから北に向かう。すぐ先行トレースがあるのに気づき、それをたどる。やはり登っている人はいるようだ。滑走してすぐ、かなりブレーキがかかることに気づく。雪の汚れがスキーについてブレーキがかかるのは春になると仕方がない。

それにしても広大な雪世界。大きなダケカンバが点々と生えている雪世界を越えていく。ストックで漕いで平坦な雪原を進み、コルでシールを貼る。ミニ・タオルでべったり付いた黒いシミを拭きとる。濡れているとよく落ちるが、タオルも洗わないといけない。すぐ先のマイナーピーク881mの右側をトラバースし、その先のマイナーピーク880mに向かって登っていると、スキーの男性と女性二人が現われた。「こんにちは」「ごくろうさま」。たぶんあのテントに泊まっていたのだろう。3人のいた地点は緩いピーク(M880m)になっていて、カニ登りでやや登り返しており、ここからコルまで滑走し、シールなのだろう。

3人と会ったのち、ガスが浜益岳や雄冬山の頂上にかかりはじめ、あっという間に四周がガスに取り囲まれてしまった。風も強く、ひどい状況。駐車地点でこの天気なら登らなかっただろうが、ここまできているので頂上まで行こう。細長いM900mに上がるあたりで、今度は頭がぼんやりしてきた。ハイペースで足は動くのだが、頭の方が疲れてきたらしい。無理に登るとバランスが崩れそうになるのでペースを落とし休み休み登る。

そして正面に急な細尾根1が現われる(1,040m付近?)。そこでトレースは踏跡に変わる。どうやらスキーを置いて歩いて頂上まで往復したようだ。細尾根の右は切れ落ちている様子だが、左はダケカンバの斜面になっていて、シールで登れないこともないと思ったが、ガスで数十メートルしか視界がなく、風も強いので、ここはアイゼンで登ることにする。シートラーゲンにしてスキーを担いでいく。もってきたピッケルのカバーを外し、腰にさしていくが、結局、ピッケルを使う場面はなかった。だが、緊急時対応、安心確保には手放せない。

いったん平坦な場所になり、すぐに次の大岩とハイ松の細尾根2(1,080m付近?)に出会い、踏跡に従ってハイ松の中をハイ松を掴んで登る。ここも登っているときは尾根の左右は見えなかったが、シールで登るのは難しいかもしれない。そこを抜けると平坦になり、その先は広い雪斜面を淡々と登る。頂上まであと少しのあたりで一瞬、ガスが飛ばされて青空が見える。これはもしかすると晴れるかも、と期待。そして広い雄冬山頂上に到達。うろうろと三角点地点と最高地点を探して歩きまわるが、三角点地点が一番高いようだ。

歩き回っているうちに深く踏み抜いた左足がななかな抜けないのでザックを降ろし、ゆっくり左足を引き抜く。ついでにそのままそこで休憩。ザックに座り、ホットレモンを飲んでいると、次第に青空が広がり、山が見え始める。いいぞ、もっと見えてくれ。浜益御殿は見えているが、浜益岳や暑寒別岳にかかったガスはなかなかとれない。見たかった群別はずっと雲の中で、この日は見れなかった。

風は弱くなったが、いつまでも待っていられない。スキーをはいて滑走開始。頂上の南側はオーバーハングしていて下が見えないので端まで行ってみると、滑りごろの急斜面が麓まで続いている。見なければ細尾根西側を往路沿いに降りたと思うが、この細尾根東側斜面を見てしまい、滑りたくなった。ショートターン開始。しかし、まっすぐ滑ると細尾根から離れてしまうので、細尾根沿いにやや斜めに滑る。それだとあまりショートターンにならず、ちょっと不満。

登っているときは全貌が見えていなかったが、細尾根2の麓の岩は巨大な岩峰で、登ったのはその右のハイ松のところ。細尾根1の上まで滑って振り返ると、細尾根2の両側はすばらしい雪斜面。ここのさっきの滑走が本日のハイライトで間違いない。斜めでなく、まっすぐ滑るんだった。細尾根1では狭い尾根上を途中まで横滑り、下半分はショートターン2回ほどで滑り降りる。しかし麓から振り仰ぐと、細尾根1の東の急斜面も滑れないことはないように見える。

コルまで滑走し、勢いで少し登り返したところでシールを貼る。だいぶ疲れていて、シールを貼ってからザックを枕にして横になる。浜益御殿の上の灌木がやけに増えている。人だろうかと思ったが、写真を拡大してみると大勢のパーティだった。

シールでの登り返しは辛く、数歩歩いては休む。腰が痛い。一方、登り返していくにつれ周囲の景色はあざやかに輝きはじめ、広大な雪世界が広がっていく。すぐ近くで黒々とした雪庇を従え、力強いカーブの東尾根を延ばす浜益御殿は印象的で、往路の時の平凡なピークではなくなっていた。東にはごつごつした暑寒別岳が現われ、増毛連峰の盟主の貫禄。しかし、美しさや華やかさの点では雄冬山や浜益岳がきらめいている。優雅に左右に尾根を広げる雄冬はなんとも美しい。浜益岳も純白に輝き、朝の灰色とは全く別の山になっている。残念なのは群別岳の迫力の鋭鋒が見えないこと。だが、一時はガスに取り囲まれて全く視界が無かったのだから、これ以上は望むまい。すばらしい雪世界を見せてくれてありがとう。

コルから浜益御殿に登り返すまでの雪世界の景観こそがこの日のハイライトであった。疲れ切り、休み休み登り返したが、その間にたくさんの鮮やかな景観を見ることができた。ようやく浜益御殿に着き、見晴らしの良い少し西寄りのところでザックを降ろして休憩。また横になり、冷たいミネラル水を飲むと、だいぶ生き返る。

滑走再開。浜益御殿・西峰は北側をトラバース。勢いで半分登り、あとはカニ登り。この浜益御殿・南西尾根の滑走では、南西尾根の背後に日本海が広がっていた。雪山を滑走しながら見る海の青と空の青。自然が息づく無限の空間を行く。頂上尾根940mから下るとき、これで見納めになる雄冬山が、日本海からのパノラマで見えていた。6年前に登った時、一番目立っていたのはこの山で、当時は名前を知らなかった。険しい幌天狗の西尾根を越えて登った群別の迫力とは違い、大きなダケカンバの立つ広大な雪世界を越えて登った美しい白峰は忘れられない思い出になるだろう。

頂上尾根からは急傾斜の滑走。トレースの上の雪は良く滑るが、トレースを外すとブレーキがかかる。しかし、トレースの上ばかり滑っているのではややもの足りない。M835mまで降りると、真下のM804m雪原に大勢のパーティがいる。どうやらヘリコプターを待っているようで、さきほどから音がしている。布を振って合図している先にヘリコプターが見えてきて上空をいったん通過し、次の周回で降りてきてロープで人を降ろし始めた。二人目が降りる前に私は滑走通過したが、ヘリコプターはしばらくして戻っていったので、負傷した人を乗せていったのだろう。

その後は次第に傾斜が緩くなり、スキーの滑るトレースを外さないように滑り続ける。大阪山手前のコルでシールを貼ってもよかったが、登り返しはわずかなので、かかとが上がるようにビンディングをセットし、登り返す。大阪山頂上付近からもビンディングはそのままにして滑走。トレースはたくさんあり、太くてよく滑るトレースに乗って滑走。

ところが、辿っていた滑走トレースが次第に往路トレースを外れていくのがGPSで確認でき、頃合いで滑走トレースを辿るのを止め、右(北)に斜面をトラバース。すると、同様にトラバースしているトレースがあり、それをたどる。沢筋を越えて登り返すとき、一旦、スキーを外して両手に持つが、すぐにスキーを履き、少し滑って往路の林道に復帰。

駐車地点手前の滑走終了地点にミニ・パトカーと車が数台、警官と関係者らしき人が数名、待っている。話しかけてきた男性に、「ヘリコプターがやってきて、二人が降りてきたところまで見た。たぶんその後、負傷者を乗せていったのではないか」と話す。男性によると、メンバーが一人、滑走中に急ブレーキがかかって負傷したらしい。雪でブレーキがかかることについて私は自分のスキーの裏を見せ、「トレースを外すとブレーキがかかるので滑りにくい。この黒い汚れ(油?)が付着するせいではないか」と話す。心配そうな様子だった。たいした怪我でなければいいが。

駐車地点に戻り、ゆっくり片付け。スキーの黒い汚れもクリーナーを何度も塗って落とす。フッ素ワックスを塗るとよいようだが、持ってくるのを忘れていた。その後、6年ぶりに浜益温泉に行く。露天もあり、熱くて良い湯。

林道起点と幌地区(復路、浜益御殿・西尾根より)

もう6年前の4月10日に浜益岳登山口のある林道に上がったときは林道起点に駐車してすぐシールで歩いたが、今回は雪がなく、2㎞ほど林道を車で進む。これで1時間くらいは短縮できただろう。林道の先には車が数台駐車していて、出かけようとしている人たちがいた。私は少し戻った枝道入口に駐車。最初はシートラーゲン。パーティ2組が先に行き、後ろからは一人。

林道起点とオホーツク海(帰り道)

朝の林道

斜面の雪はだいぶ融けていたが林道の雪は切れ目なく続いているようなので、すぐにシールに替える。補修して初めてのシールだったが、調子はよかった。林道の雪の上にはものすごくたくさんのトレースや踏跡がある。前回はこんなになかった。林道が左に大阪山を巻く地点でトレースは林道を外れて山に入る。私は途中でトレースを外れ、GPSを見ながら大阪山の三角点地点まで登る。林の中の平坦な丸い頂上。

大坂山(復路、浜益御殿・西尾根より)

大坂山頂上付近(復路にて)

コル490m(復路にて)

コルに滑り降りると浜益岳西峰が見える。すぐに登り返しとなり浜益御殿に向かうと、「スノーモービル乗入禁止」の幕が張ってある。6年前と同じ。最初のマイナーピーク580mに上がると浜益岳本峰も見えてくるが、ここからは西峰の方が立派に見える。次のマイナーピーク770mの先の平らなところにテントが一つ張ってある。どこに行ったのだろう。

朝の雄冬山

地理院地図の標高点804m付近は広く平らな雪原で、帰りにヘリコプターが来たところ。調子がよく、すぐ先の急斜面をストックを使ってなるべくまっすぐ登る。登った先がマイナーピーク835mで、浜益岳の全景が見え、夢中で映す。が、この時も空は灰色で、映りはよくない。浜益岳の右後に幌天狗とその東尾根が見えており、北東に初めて雄冬が見えるが、午後に見た青空の風景と比べると全くグレイ。

幌天狗と東尾根(復路にて)

朝の浜益岳

朝の西から見る浜益御殿

頂上尾根940mに上がると、尾根の先に夫婦連れが行くが、もう一人、シールを外して滑り出そうとしている人がいる。もう御殿まで行ってきたのだろうか。そこから見えていたのは浜益御殿・西峰980mで、そこまで登ってやっと浜益御殿・本峰が見える。いったんシールで滑り降りるが、夫婦連れはコルで休憩していた。頂上は風が強かったから、休むならここが最適だろう。「どこまでですか」と聞かれ「あれです」と雄冬を指さす。近くに見えるが、まだまだ遠かった。

朝の東から見上げる浜益御殿

浜益御殿の三角点は灌木の出ている東端よりも手前にあるようなのでGPSを見ながら進んでいると、いつのまにか背後のパーティが追越していく。ずいぶん早いな。雪に埋まっている三角点の上に立ってから私も東端の灌木地点に向かう。まあ、そこが頂上の雰囲気だ。地理院地図をみても三角点(1,039m)位置と東端は同じ標高の等高線1,030mの中にある。追い越していったのは元気な若者数名にガイドさんのパーティで、賑やかに頂上到達記念撮影している。これから浜益岳かな。風が強くて寒いので、ホットレモンを少し飲み、シールをはがして滑走。

雄冬山は浜益御殿の北にあるが、浜益御殿の北側はかなりの急斜面なので、まず東に稜線沿いに滑走し、そこから北に向かう。すぐ先行トレースがあるのに気づき、それをたどる。やはり登っている人はいるようだ。滑走してすぐ、かなりブレーキがかかることに気づく。雪の汚れがスキーについてブレーキがかかるのは春になると仕方がない。

コルから見る雪世界と雄冬山(復路にて)

それにしても広大な雪世界。大きなダケカンバが点々と生えている雪世界を越えていく。ストックで漕いで平坦な雪原を進み、コルでシールを貼る。ミニ・タオルでべったり付いた黒いシミを拭きとる。濡れているとよく落ちるが、タオルも洗わないといけない。すぐ先のマイナーピーク881mの右側をトラバースし、その先のマイナーピーク880mに向かって登っていると、スキーの男性と女性二人が現われた。「こんにちは」「ごくろうさま」。たぶんあのテントに泊まっていたのだろう。3人のいた地点は緩いピーク(M880m)になっていて、カニ登りでやや登り返しており、ここからコルまで滑走し、シールなのだろう。

M900m付近からの雄冬山(復路にて)

3人と会ったのち、ガスが浜益岳や雄冬山の頂上にかかりはじめ、あっという間に四周がガスに取り囲まれてしまった。風も強く、ひどい状況。駐車地点でこの天気なら登らなかっただろうが、ここまできているので頂上まで行こう。細長いM900mに上がるあたりで、今度は頭がぼんやりしてきた。ハイペースで足は動くのだが、頭の方が疲れてきたらしい。無理に登るとバランスが崩れそうになるのでペースを落とし休み休み登る。

細尾根1(往路では視界なし、写真は復路)

そして正面に急な細尾根1が現われる(1,040m付近?)。そこでトレースは踏跡に変わる。どうやらスキーを置いて歩いて頂上まで往復したようだ。細尾根の右は切れ落ちている様子だが、左はダケカンバの斜面になっていて、シールで登れないこともないと思ったが、ガスで数十メートルしか視界がなく、風も強いので、ここはアイゼンで登ることにする。シートラーゲンにしてスキーを担いでいく。もってきたピッケルのカバーを外し、腰にさしていくが、結局、ピッケルを使う場面はなかった。だが、緊急時対応、安心確保には手放せない。

細尾根2の岩峰(往路では視界なし、写真は復路)

いったん平坦な場所になり、すぐに次の大岩とハイ松の細尾根2(1,080m付近?)に出会い、踏跡に従ってハイ松の中をハイ松を掴んで登る。ここも登っているときは尾根の左右は見えなかったが、シールで登るのは難しいかもしれない。そこを抜けると平坦になり、その先は広い雪斜面を淡々と登る。頂上まであと少しのあたりで一瞬、ガスが飛ばされて青空が見える。これはもしかすると晴れるかも、と期待。

雄冬山頂上

そして広い雄冬山頂上に到達。うろうろと三角点地点と最高地点を探して歩きまわるが、三角点地点が一番高いようだ。

歩き回っているうちに深く踏み抜いた左足がななかな抜けないのでザックを降ろし、ゆっくり左足を引き抜く。ついでにそのままそこで休憩。ザックに座り、ホットレモンを飲んでいると、次第に青空が広がり、山が見え始める。いいぞ、もっと見えてくれ。浜益御殿は見えているが、浜益岳や暑寒別岳にかかったガスはなかなかとれない。見たかった群別はずっと雲の中で、この日は見れなかった。

頂上からの滑走1(頂上より見下ろす)

風は弱くなったが、いつまでも待っていられない。スキーをはいて滑走開始。頂上の南側はオーバーハングしていて下が見えないので端まで行ってみると、滑りごろの急斜面が麓まで続いている。見なければ細尾根西側を往路沿いに降りたと思うが、この細尾根東側斜面を見てしまい、滑りたくなった。ショートターン開始。しかし、まっすぐ滑ると細尾根から離れてしまうので、細尾根沿いにやや斜めに滑る。それだとあまりショートターンにならず、ちょっと不満。

頂上からの滑走2(細尾根2岩峰の真横)

細尾根1の上から見る雄冬山

登っているときは全貌が見えていなかったが、細尾根2の麓の岩は巨大な岩峰で、登ったのはその右のハイ松のところ。細尾根1の上まで滑って振り返ると、細尾根2の両側はすばらしい雪斜面。ここのさっきの滑走が本日のハイライトで間違いない。斜めでなく、まっすぐ滑るんだった。細尾根1では狭い尾根上を途中まで横滑り、下半分はショートターン2回ほどで滑り降りる。しかし麓から振り仰ぐと、細尾根1の東の急斜面も滑れないことはないように見える。

頂上からの滑走3(滑走斜面を見上げる)

浜益御殿とパーティ

コルまで滑走し、勢いで少し登り返したところでシールを貼る。だいぶ疲れていて、シールを貼ってからザックを枕にして横になる。浜益御殿の上の灌木がやけに増えている。人だろうかと思ったが、写真を拡大してみると大勢のパーティだった。

コルから見る雪世界と雄冬山

シールでの登り返しは辛く、数歩歩いては休む。腰が痛い。一方、登り返していくにつれ周囲の景色はあざやかに輝きはじめ、広大な雪世界が広がっていく。すぐ近くで黒々とした雪庇を従え、力強いカーブの東尾根を延ばす浜益御殿は印象的で、往路の時の平凡なピークではなくなっていた。東にはごつごつした暑寒別岳が現われ、増毛連峰の盟主の貫禄。しかし、美しさや華やかさの点では雄冬山や浜益岳がきらめいている。優雅に左右に尾根を広げる雄冬はなんとも美しい。浜益岳も純白に輝き、朝の灰色とは全く別の山になっている。残念なのは群別岳の迫力の鋭鋒が見えないこと。だが、一時はガスに取り囲まれて全く視界が無かったのだから、これ以上は望むまい。すばらしい雪世界を見せてくれてありがとう。

コルから見る雪世界とダケカンバと浜益岳

青空と雪の上のダケカンバ

浜益御殿と雪庇

 雄冬山と西尾根

 雄冬山と浜益御殿

浜益御殿頂上と雪庇

浜益御殿と薄雲

コルから浜益御殿に登り返すまでの雪世界の景観こそがこの日のハイライトであった。疲れ切り、休み休み登り返したが、その間にたくさんの鮮やかな景観を見ることができた。ようやく浜益御殿に着き、見晴らしの良い少し西寄りのところでザックを降ろして休憩。また横になり、冷たいミネラル水を飲むと、だいぶ生き返る。

 暑寒別岳

 雄冬山と浜益岳

 浜益御殿からのパノラマ

春の太陽

西から見る浜益御殿

滑走再開。浜益御殿・西峰は北側をトラバース。勢いで半分登り、あとはカニ登り。この浜益御殿・南西尾根の滑走では、南西尾根の背後にオホーツク海が広がっていた。雪山を滑走しながら見る海の青と空の青。自然が息づく無限の空間を行く。頂上尾根940mから下るとき、これで見納めになる雄冬山が、オホーツク海からのパノラマで見えていた。6年前に登った時、一番目立っていたのはこの山で、当時は名前を知らなかった。険しい幌天狗の東尾根を越えて登った群別の迫力とは違い、大きなダケカンバの立つ広大な雪世界を越えて登った美しい白峰は忘れられない思い出になるだろう。

浜益御殿・頂上尾根940mとオホーツク海

 オホーツク海と雄冬山と浜益御殿・西峰

ヘリコプターを待つパーティ

頂上尾根からは急傾斜の滑走。トレースの上の雪は良く滑るが、トレースを外すとブレーキがかかる。しかし、トレースの上ばかり滑っているのではややもの足りない。M835mまで降りると、真下のM804m雪原に大勢のパーティがいる。どうやらヘリコプターを待っているようで、さきほどから音がしている。布を振って合図している先にヘリコプターが見えてきて上空をいったん通過し、次の周回で降りてきてロープで人を降ろし始めた。二人目が降りる前に私は滑走通過したが、ヘリコプターはしばらくして戻っていったので、負傷した人を乗せていったのだろう。

その後は次第に傾斜が緩くなり、スキーの滑るトレースを外さないように滑り続ける。大阪山手前のコルでシールを貼ってもよかったが、登り返しはわずかなので、かかとが上がるようにビンディングをセットし、登り返す。大阪山頂上付近からもビンディングはそのままにして滑走。トレースはたくさんあり、太くてよく滑るトレースに乗って滑走。

救助作業中のヘリコプター

ところが、辿っていた滑走トレースが次第に往路トレースを外れていくのがGPSで確認でき、頃合いで滑走トレースを辿るのを止め、右(北)に斜面をトラバース。すると、同様にトラバースしているトレースがあり、それをたどる。沢筋を越えて登り返すとき、一旦、スキーを外して両手に持つが、すぐにスキーを履き、少し滑って往路の林道に復帰。

駐車地点手前の滑走終了地点にミニ・パトカーと車が数台、警官と関係者らしき人が数名、待っている。話しかけてきた男性に、「ヘリコプターがやってきて、二人が降りてきたところまで見た。たぶんその後、負傷者を乗せていったのではないか」と話す。男性によると、メンバーが一人、滑走中に急ブレーキがかかって負傷したらしい。雪でブレーキがかかることについて私は自分のスキーの裏を見せ、「トレースを外すとブレーキがかかるので滑りにくい。この黒い汚れ(油?)が付着するせいではないか」と話す。心配そうな様子だった。たいした怪我でなければいいが。

問合せ・コメント等、メール宛先: kawabe.goro@meizan-hitoritabi.com