美瑛岳  5月の雪

北海道・大雪山系  2,052m  2018年5月5日

北海道百名山

298

最北の海を渡れば

冷たい海の上に聳える輝く白峰

北海道の屋根に来たりて

噴煙のかなたに立つ残雪の雄峰に向かい

5月の雪の降りしきる鋭鋒の頂に立つ

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10年前に快晴のオプタテシケから見た美瑛岳の白い鋭鋒は連峰中で一番美しく見え、一目見て登りたくなった山だった。視界は無かったが、頂上まで登ることができ、滑走も楽しめてこんなにうれしいことはない。5月の雪の美瑛岳は忘れられない思い出。

パラつく雨が妙に優雅にふわふわと降ってくる。これは雪だな。やがてみぞれは小雪となり、残雪の上に、笹やハイマツの上に降り積もる。5月の雪。

森林限界を抜け、背後に小麦色の平原が見えてくる。正面左の美瑛富士も一時、頂上まで見えた。正面の美瑛岳は中腹のあたりまで見えていたが、頂上はもっと上だろう。

斜めにカットを切りながらアイゼンで登っていき、ついに頂上の岩の丘に到達。そこから少し東側に頂上標識と二等三角点があった。雪と風で視界はなかったが、たどり着けて無性にうれしかった

帰りの斜面には新雪が薄く降り積もっていた。これだけ雪があれば、岩の間もなんとか滑れるだろう。ハードバーンの上の新雪は軽く、心地よかった。

下るにつれて視界がよくなり、薄く雪の積もった斜面をショートターンしていく。滑りは軽やかだが、滑走トレースは荒れ気味。登りで苦労した1,200m付近の北西大斜面の滑走がハイライトかな。

 10年前に快晴のオプタテシケから見た美瑛岳の白い鋭鋒は連峰中で一番美しく見え、一目見て登りたくなった山だった。
 正面の美瑛岳は中腹のあたりまで見えていたが、頂上はもっと上だろう。
 北西大斜面(1,200m付近)の滑走
東側(十勝岳)から見る美瑛岳。山頂北東側は絶壁(2020年4月19日)
 青空が少し
 頂上標識
   4:44 林道入口(654m)発、シール  5:26 涸沢川670m  6:08 林道出合(800m)  6:42 尾根取付き(900m)  7:45アイゼン(1,100m付近)  8:13 北西大斜面(1,230m)10:44 夏道遭遇(1,710m)12:51 美瑛岳2,052m・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り8時間7分12:55 美瑛岳発13:16 滑走開始(2,030m付近)13:40 北斜面滑走1,940m13:51 往路合流(北西大斜面滑走)1,580m14:27 尾根取付点(900m)14:37 林道出合(800m)15:15 林道入口(654m)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下り2時間20分                                                             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復10時間31分

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美瑛岳は距離7㎞、標高差1,400m、登り7hという今回の北海道ツアーでは利尻岳と並ぶ難関。早めに起きてシールを貼り、出かける。この日の天気予報は曇。前日は雨予報だったが午前中は日が射し、雨が降り出したのは11時頃に少しと夕方だけ。この日も明け方は雲の切れ間に青空も見え、山は頂上が隠れていたが、晴れる予感があった。予定通り、林道入口に駐車してシールで歩き始める。林道を登っていっても涸沢川に出るのだが、やや大回りになると思い、林を南西に横切っていくが、これは失敗だった。斜めに行くつもりが倒木やらの障害物が多く、ほとんど車道沿いに西に進んでしまい、しかも雪に埋まった涸沢川を気づかずに越えていた。GPSを見ながらあるはずの沢沿いに進み、次第に沢形が見えてくる。林の中よりは沢の中の方が格段に歩きやすい。

しばらく沢形を歩いた後、スキートレースに気づく。それは沢を横断していて、ここを林道が交差しているようだ。GPSでも確認。だが、沢の中にはトレースはなし。一人旅が続く。小雨が降ってきたのでタフに替え、ついでに休憩して痛みかけのバナナ2本を食べる。尾根に取付く前後、パラつく雨が妙に優雅にふわふわと降ってくる。これは雪だな。やがてみぞれは小雪となり、残雪の上に、笹やハイマツの上に降り積もる。5月の雪。雨だとやっかいだが、雪ならなんとかなる。両岸が高くなった先で沢が分岐し、ルートはその中央の尾根だが、傾斜があって登れないので、右沢に入ってから斜めに尾根に上がる。右スキーのシールが外れそうなので、いったん外して汚れを拭き取り、貼りなおす。ついでにレイングローブを厚手の手袋に変え、ネックウォーマーとゴーグルを装着。雪だから濡れないだろうが、風がでてくるだろう。だが、雨で水を含んだシールはスキーにしっかり張り付かない。ハードバーンを斜めに登ろうとするとすぐ外れてしまうのではどうしようもない。アイゼンに変える。

森林限界を抜け、背後に小麦色の平原が見えてくる。正面左の美瑛富士も一時、頂上まで見えた。正面の美瑛岳は中腹のあたりまで見えていたが、頂上はもっと上だろう。そのまま晴れ渡ってほしかったが、しばらくするとまた雪が降り出し、景色は見えなくなった。標高1,200m付近に大斜面(北西大斜面)があり、アイゼンで斜めに長くキックステップを切って登っていく。デジカメをいったんイクシーに戻すが、雪になってタフに戻す。傾斜が緩くなり、ブッシュの混じるあたりで2度目の休憩。青空が見えて視界が広がったと思うと、いつのまにか雪が降り出して視界がなくなる、を繰り返す。まだ風は弱く、ネックウォーマーとゴーグルで寒くはなかったが、この先で風が強くなるだろう。スキーグローブに替える。完全な冬武装。晴れるかどうか分からないので、タフとイクシーの両方を首にかけ、一方をウェストバッグの中に入れておく。

まっすぐ登るとハイマツ帯で、その左右に雪の切れ込みがある。どっちに進むべきだろう。最初は左に向かうが、その上の雪が切れていそうなので、途中で右に方向転換。だが、右側の雪も切れてそうなので、中央のハイマツ帯の間の雪を拾っていく。すると、ハイマツの間に水平の切れ込みがある。どうやら夏道のようだ。その夏道を少し東にたどるが(この夏道は頂上をトラバースしている)、尾根の中央あたりで分かれて斜面を登る。やがてハイマツはほとんどなくなり、岩の間の雪を拾って登っていく。最後の500mが長かった。見えない頂上への斜面は次第にきつくなり、ハイマツや岩が行く手をさえぎる。途中で左手にスキー滑走できそうな雪斜面を見る(北斜面)。帰りはあそこを滑ろう。斜めにカットを切りながらアイゼンで登っていき、ついに頂上の岩の丘に到達。西側から丘に上がると大きな岩があり(その南側は断崖絶壁になっているのが見えた)、そこから少し東側に頂上標識と二等三角点があった。雪と風で視界はなかったが、たどり着けて無性にうれしかった。何度も頂上標識と三角点を映す。タフのバッテリーがなくなるが風で交換しづらく、とりあえずイクシーを使う。スキーを履いた時にタフのバッテリーを替えたと思う。

帰りの斜面には新雪が薄く降り積もっていた。これだけ雪があれば、岩の間もなんとか滑れるだろう。頂上直下でスキーを履き、岩やハイマツの間のスペースを探して滑る。スキーグローブをはめていても手は冷たかったが、ハードバーンの上の新雪は軽く、心地よかった。視界がない雪の斜面を調子よくすべり、いったん止まってGPSを確認すると、まるで違う方角に来ている。真東の縦走路方面に下っていたので方角を変え、北西方向に斜めに進み、1,940m付近で往路の近くに至る。そこは往路で見た北斜面の起点で、真下に長い雪斜面が続いている。ここを滑れば往路をまた外れることになるが、下で合流することができる。そこで北斜面を滑走開始。雪が舞っていて斜面が見にくいので飛ばせないが、ハイマツの黒いラインを見ることで傾斜とスピードを把握し、慎重に滑走。行く手に涸沢川源頭の深く切れ落ちた溝が見えてきたあたりで西に転ずるが、北に滑り降りすぎていて、ハイマツの列をいくつか横断し、500mくらいトラバースして往路に合流。

下るにつれて視界がよくなり、薄く雪の積もった斜面(北西大斜面)をショートターンしていく。滑りは軽やかだが、滑走トレースは荒れ気味。登りで苦労した1,200m付近の大斜面(北西大斜面)の滑走がハイライトかな。尾根取付きのところも豪快に滑り降り、涸沢川に下る。涸沢川は傾斜が緩く、ストックで押したりの滑走となるが、やがて林道出会いに着き、緩い傾斜をスキーで斜め登り。林道が下降に転ずるところにゲートがあり、そこでザックを下ろして本日3度目の休憩。もう肩と腰が痛くなっていた。ホットレモンをゆっくり飲む。下では雪が雨になっているようだ。林道をゆるゆると滑っていくが、途中に二つほど緩い登り返しがあり、最初のはトラバース、二つ目はトラバースできないので斜め登り。やっと下りに転じ、長い緩斜面の先は左カーブで、そのすぐ先に林道入口と車があった。

小雨の降る林道入口でゆっくり片づけていると、パトロールらしき車が二度ほどやってくる。最初に寄った温泉は駐車場が満車で、宿泊でないと断わられ、次のホテルの湯に入る。湯は露天も熱く、良かった。10年前に快晴のオプタテシケから見た美瑛岳の白い鋭鋒は十勝連峰中で一番美しく見え、一目見て登りたくなった山だった。視界は無かったが、頂上まで登ることができ、滑走も楽しめてこんなにうれしいことはない。5月の雪の美瑛岳は忘れられない思い出。

林道入口

美瑛岳は距離7㎞、標高差1,400m、登り7hという今回の北海道ツアーでは利尻岳と並ぶ難関。早めに起きてシールを貼り、出かける。この日の天気予報は曇。前日は雨予報だったが午前中は日が射し、雨が降り出したのは11時頃に少しと夕方だけ。この日も明け方は雲の切れ間に青空も見え、山は頂上が隠れていたが、晴れる予感があった。予定通り、林道入口に駐車してシールで歩き始める。林道を登っていっても涸沢川に出るのだが、やや大回りになると思い、林を南西に横切っていくが、これは失敗だった。斜めに行くつもりが倒木やらの障害物が多く、ほとんど車道沿いに西に進んでしまい、しかも雪に埋まった涸沢川を気づかずに越えていた。GPSを見ながらあるはずの沢沿いに進み、次第に沢形が見えてくる。林の中よりは沢の中の方が格段に歩きやすい。

林の中

涸沢川

青空が少し

林道出合

しばらく沢形を歩いた後、スキートレースに気づく。それは沢を横断していて、ここを林道が交差しているようだ。GPSでも確認。だが、沢の中にはトレースはなし。一人旅が続く。小雨が降ってきたのでタフに替え、ついでに休憩して痛みかけのバナナ2本を食べる。尾根に取付く前後、パラつく雨が妙に優雅にふわふわと降ってくる。これは雪だな。やがてみぞれは小雪となり、残雪の上に、笹やハイマツの上に降り積もる。5月の雪。雨だとやっかいだが、雪ならなんとかなる。両岸が高くなった先で沢が分岐し、ルートはその中央の尾根だが、傾斜があって登れないので、右沢に入ってから斜めに尾根に上がる。右スキーのシールが外れそうなので、いったん外して汚れを拭き取り、貼りなおす。ついでにレイングローブを厚手の手袋に変え、ネックウォーマーとゴーグルを装着。雪だから濡れないだろうが、風がでてくるだろう。だが、雨で水を含んだシールはスキーにしっかり張り付かない。ハードバーンを斜めに登ろうとするとすぐ外れてしまうのではどうしようもない。アイゼンに変える。

涸沢川・ゴルジュ部

尾根取付点の二俣

尾根取付点

美瑛富士

美瑛富士

大斜面(1,200m付近)

森林限界を抜け、背後に小麦色の平原が見えてくる。正面左の美瑛富士も一時、頂上まで見えた。正面の美瑛岳は中腹のあたりまで見えていたが、頂上はもっと上だろう。そのまま晴れ渡ってほしかったが、しばらくするとまた雪が降り出し、景色は見えなくなった。標高1,200m付近に大斜面があり、アイゼンで斜めに長くキックステップを切って登っていく。デジカメをいったんイクシーに戻すが、雪になってタフに戻す。傾斜が緩くなり、ブッシュの混じるあたりで2度目の休憩。青空が見えて視界が広がったと思うと、いつのまにか雪が降り出して視界がなくなる、を繰り返す。まだ風は弱く、ネックウォーマーとゴーグルで寒くはなかったが、この先で風が強くなるだろう。スキーグローブに替える。完全な冬武装。晴れるかどうか分からないので、タフとイクシーの両方を首にかけ、一方をウェストバッグの中に入れておく。

美瑛岳

眼下の情景

美瑛岳

ハイマツ帯

まっすぐ登るとハイマツ帯で、その左右に雪の切れ込みがある。どっちに進むべきだろう。最初は左に向かうが、その上の雪が切れていそうなので、途中で右に方向転換。だが、右側の雪も切れてそうなので、中央のハイマツ帯の間の雪を拾っていく。すると、ハイマツの間に水平の切れ込みがある。どうやら夏道のようだ。その夏道を少し東にたどるが(この夏道は頂上をトラバースしている)、尾根の中央あたりで分かれて斜面を登る。やがてハイマツはほとんどなくなり、岩の間の雪を拾って登っていく。最後の500mが長かった。見えない頂上への斜面は次第にきつくなり、ハイマツや岩が行く手をさえぎる。

岩石帯

眼下の情景

北斜面・上端

途中で左手にスキー滑走できそうな雪斜面を見る(北斜面)。帰りはあそこを滑ろう。

眼下の情景

頂上標識

斜めにカットを切りながらアイゼンで登っていき、ついに頂上の岩の丘に到達。西側から丘に上がると大きな岩があり(その南側は断崖絶壁になっているのが見えた)、そこから少し東側に頂上標識と二等三角点があった。雪と風で視界はなかったが、たどり着けて無性にうれしかった。何度も頂上標識と三角点を映す。タフのバッテリーがなくなるが風で交換しづらく、とりあえずイクシーを使う。スキーを履いた時にタフのバッテリーを替えたと思う。

三角点

頂上標識と三角点

大斜面(1,200m付近)の滑走

帰りの斜面には新雪が薄く降り積もっていた。これだけ雪があれば、岩の間もなんとか滑れるだろう。頂上直下でスキーを履き、岩やハイマツの間のスペースを探して滑る。スキーグローブをはめていても手は冷たかったが、ハードバーンの上の新雪は軽く、心地よかった。視界がない雪の斜面を調子よくすべり、いったん止まってGPSを確認すると、まるで違う方角に来ている。真西の縦走路方面に下っていたので方角を変え、北西方向に斜めに進み、1,940m付近で往路の近くに至る。そこは往路で見た北斜面の起点で、真下に長い雪斜面が続いている。ここを滑れば往路をまた外れることになるが、下で合流することができる。そこで北斜面を滑走開始。雪が舞っていて斜面が見にくいので飛ばせないが、ハイマツの黒いラインを見ることで傾斜とスピードを把握し、慎重に滑走。行く手に涸沢川源頭の深く切れ落ちた溝が見えてきたあたりで西に転ずるが、北に滑り降りすぎていて、ハイマツの列をいくつか横断し、500mくらいトラバースして往路に合流。

大斜面1,200m付近)の滑走

ダケカンバ

林間滑走

下るにつれて視界がよくなり、薄く雪の積もった斜面をショートターンしていく。滑りは軽やかだが、滑走トレースは荒れ気味。登りで苦労した1,200m付近の大斜面の滑走がハイライトかな。尾根取付きのところも豪快に滑り降り、涸沢川に下る。涸沢川は傾斜が緩く、ストックで押したりの滑走となるが、やがて林道出会いに着き、緩い傾斜をスキーで斜め登り。林道が下降に転ずるところにゲートがあり、そこでザックを下ろして本日3度目の休憩。もう肩と腰が痛くなっていた。ホットレモンをゆっくり飲む。下では雪が雨になっているようだ。林道をゆるゆると滑っていくが、途中に二つほど緩い登り返しがあり、最初のはトラバース、二つ目はトラバースできないので斜め登り。やっと下りに転じ、長い緩斜面の先は左カーブで、そのすぐ先に林道入口と車があった。

林道の滑走

小雨の降る林道入口でゆっくり片づけていると、パトロールらしき車が二度ほどやってくる。最初に寄った温泉は駐車場が満車で、宿泊でないと断わられ、次のホテルの湯に入る。湯は露天も熱く、良かった。

(10年前)

美瑛岳(オプタテシケより)

10年前に快晴のオプタテシケから見た美瑛岳の白い鋭鋒は十勝連峰中で一番美しく見え、一目見て登りたくなった山だった。視界は無かったが、頂上まで登ることができ、滑走も楽しめてこんなにうれしいことはない。5月の雪の美瑛岳は忘れられない思い出。

美瑛富士と美瑛岳

美瑛岳(北より)

東側(十勝岳)から見る美瑛岳。山頂北東側は絶壁(2020年4月19日)


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