八海山 越後の雪の世界

新潟県  八海山・入道岳1,778m(最高点)、阿寺山1,509m  2009年3月21日

    八海山・薬師岳1,654m  2008年3月16日

(八海山)日本二百名山

169

晴れた冬の日に山に向かう

そこはモノクロの世界

標高が上がり、はるかな峰々が姿を現わす

彼らもまたモノクロの姿

神秘の世界の逍遥

(モノクロの世界)

❄❄❄❄❄

前年、スキー場側から登って八峰の途中で引返した八海山に今度は南側の阿寺山から登る。これは前年の八峰の上で考えたプランで、テント泊の装備を揃えて出かけたが天気が悪く、日帰りに切り替える。

雪の少ない急斜面を4時間で登り切ると霧氷で輝く雪原に出て、そして真っ白な何も無い阿寺山頂に着く。快晴の青空に越後三山が立ち並ぶ。ここから見る八海山は入道岳と八峰のバランスが良い見事な姿。駒ヶ岳、中ノ岳と並んでいるのは正に越後三山だが、カメラのアングルに入りきらない。広大無辺な越後の雪世界。神秘の世界の逍遥。

入道岳の広大な斜めの白い山頂を少し登り、最高地点にストックを立てる。たぶん雪庇の上だろう。向こう側には大日が見える。写真で何度も見た大日を見るのは初めて。快晴だが、頂上は風が強い。はるか左下の斜面にスキー場が見え、駐車場に車が並んでいるらしいのが分かる。その向こうには六日町の平野。その左に阿寺の尾根がはるか眼下に見えており、尾根の末端の林道終点の雪原も見える。いやあ、遠いところまできたもんだ。

さて、シールを外して滑走開始。雪庇の切れ目のところに斜めに滑り込み、下の斜面に降り立ち、広い急斜面を快調に滑る。瞬く間に五竜の手前から右側をトラバースし、阿寺への尾根に乗り、苦労したアイスバーンの急斜面を横滑りからジャンプターンで下る。滑走のあとの歩きは辛く、最低コルについて休憩(7回目)したときは、ザックを枕に横になる。風もなく、太陽がぽかぽかして、気持ちよく昼寝できる。冷めたホットココアを飲み干す。背後には三角形の入道。ひっくり返って青空を眺める。最高にいい気分だ。

(前年: 2008年3月16日)

八海山ロープウェイ・トップから登っていくと、どっしりした薬師岳が目前に迫り、東の空に、あの魚沼駒ヶ岳が姿を現した。日本百名山の写真に出ていたなだらかな姿。

薬師岳の頂上に着くと、先行グループと雪に埋もれた小さな像があった。先行グループが往路を戻って行ったあと、八ツ峰に向かうが、雪上に踏跡は無く、二峰の頂上までで引き返す。

二峰にも小さな像と古い石標あり。行く手には八ツ峰が立ちはだかり、その左手に中ノ岳と檜廊下の稜線。右手の眼下には低く阿寺山の稜線が見えている。

雪山の景色にしばらく時を忘れる。

*****

2年がかりで登った3月の八海山。そこは雪が支配する世界。越後の雪の世界を巡る旅。

最高峰・入道岳と薬師岳には登ったが、八ツ峰には二峰までで、八海山のシンボル・大日岳にはまだ登っていない。

それでも、越後の雪の世界とスキー滑走は忘れえぬ記憶になっている。

☀☀☀☀☀

阿寺山付近から見る八海山: ここから見る八海山は入道岳と八峰のバランスが良い見事な姿。
入道岳の右手に駒ヶ岳が見えてくる。初めて見る角度で、違った印象。こちらからだとグシガハナ1811mの稜線が手前に大きく見えており、二年前に滑った南肩はその右後に見える
中ノ岳
阿寺山・・・・・阿寺の尾根がはるか眼下に見えている
大日岳・・・・・入道岳より。
巻機山
八海山・薬師岳・・・・・八海山ロープウェイ・トップから登っていくと、どっしりした薬師岳が目前に迫る
二峰にも小さな像と古い石標あり。しかし、先には入道ではなく、別の八ツ峰が立ちはだかっていた。諦めて像の隣に腰を下ろす。行く手には八ツ峰が立ちはだかり、その左手に中ノ岳と檜廊下の稜線。右手の眼下には低く阿寺山の稜線が見えている。雪山の景色にしばらく時を忘れる
駒ケ岳
薬師岳頂上の行者の像
パノラマ1・・・・・そして真っ白な何も無い阿寺山頂に着く。ここから見る八海山は入道岳と八峰のバランスが良い見事な姿。駒ヶ岳、中ノ岳と並んでいるのは正に越後三山だが、カメラのアングルに入りきらない。広大無辺な越後の雪世界: 左より、八海山(八ツ峰と入道岳)、駒ヶ岳、中ノ岳
パノラマ2・・・・・滑走開始直後。中ノ岳(左)、阿寺山(右下)、丹後山・小沢岳・巻機山(背後の稜線)
パノラマ3: 八海山(左)と阿寺山・・・・・六日町・浦佐より
パノラマ4: 駒ヶ岳(左)、中ノ岳、八海山・八ツ峰・・・・・薬師岳より
(2009年3月21日) 5:21 広堀橋登山口発・シール 6:10 尾根取付き・アイゼンorシール 9:40 阿寺山・滑走110:04 最低コル・シール11:20 五竜岳12:11 入道岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り6時間50分12:29 入道岳発・滑走213:02 最低コル・シール13:52 阿寺山手前・滑走314:35 尾根末端14:52 広堀橋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・往復9時間31分(2008年3月16日) 9:10 ロープウェイ・トップ発11:56 薬師岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・薬師岳まで3時間2分13:11 八ツ峰・P2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・登り4時間17分13:26 八ツ峰・P2発14:05 薬師岳15:23 ロープウェイ・トップ・・・・・・・・・・・・・・・・往復6時間57分(薬師岳まで往復4時間31分)

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(2009年3月21日)

前年、スキー場側から登って八峰の途中で引返した八海山に今度は南側の阿寺山から登る。これは前年の八峰の上で考えたプランで、テント泊の装備を揃えて出かけたが天気が悪く、日帰りに切り替える。

雨の日の翌日、4時の目覚ましで起きると外はまっくら。コンビニでパンとホット・ココア二つを買い(パンは手持ちがあった。ココアは正解。新聞を買うのを忘れた)、まっくらな広堀橋で準備。途中で車が一台やってきて登る準備を始めたのにはびっくり。まあ、トレースもあるくらいだから晴なら登るんだろう。

どんどん明るくなり、ヘッドランプをしまって出発。川沿いの長い雪の林道歩き。ショートカットしているスキー・トレースもあるが、淡々と九十九折を登る。やがて行く手正面に阿寺山が見え、左手に入道岳が見えてくる。林道末端のところでトレースが消え、ルートが分からなくなる。たぶんこの尾根だろうと思うが、確信なし。マップとにらめっこしているうちに車の男性がショートスキーでやってきて、尾根を登っていく。途中に雪の切れているところがあり、スキーを外している。

GPSで位置確認し、マップと照合すると、登山口はもう少し先で徒渉するとある。そこには小さな枝沢があり、それを渡れば広い斜面になっているので、スキーをかついで沢を渡り、斜面を登る。少し平坦になったところでスキーを下ろしてシールで登る。良くある疎林の雪のシール登り。

右手に高倉山の二つのピークが見えてきたところで最初の休憩。だいぶ登ったと思ったが、まだ7時前。マップを取り出し、標高1000mより手前で、この先まだ長いだろうと認識し直す。けれども、当初想定の「阿寺まで6時間」よりは早いだろう(テントを持っていれば6時間はかかっただろう)。ここからスキーを担ぎ、アイゼンで登る。

7時になったあたりから入道の左の八峰が見えてきて、昨年どこまで登っていたのかを確かめる。大日のすぐ手前まで行っていたのでは、と期待したが、岩峰はずいぶん長く、その左端からだいぶ離れて避難小屋がかすかに見え、8時前になると小屋のだいぶ左に薬師が見えた。

更に登って雪の少ない急斜面を4時間で登り切り、木が低くなると(雪に埋まっているというべきか)、霧氷が美しく輝いているのに気付く。最初は斜面の日影にいたのが日向となり、今では太陽が高い位置にある。だいぶ前にサングラスをかけており、手袋をとって手にサンオイルを塗る。どんどん視界が広がり、右手に巻機山が見えてくる。平らな頂上稜線の中央に牛ヶ岳(左手前)と巻機本峰(右奥)が重なり、右ピークが割引岳だろう。また登ってみたい。広い雪原に出て、阿寺頂上かと思ったら、やはり数百メートル先に小高い頂上丘がある。やれやれ。ここで2度目の休憩。シールに変える。途中で休んでいたのを追い越していた男性がいつの間にか追いついてきて、主稜線の方にトラバースしていくが、私はは阿寺に向かう。

青空の下に雪の砂漠のような阿寺の頂上。楽に歩いていきながら景色を眺める。八峰の向こうにスキー場が見えている。今日は晴れているから大勢来ているだろう。頂上丘に達すると、入道の右手に駒ヶ岳、次いで中ノ岳が見えてくる。いずれも初めて見る角度で、違った印象。こちらからだとグシガハナ1811mの稜線が手前に大きく見えており、二年前に滑った南肩はその右後に見える。中ノ岳も手前に御月山1821mが見えており、その左後に二年前に通った天狗平と檜廊下の尾根が連なる。

そして真っ白な何も無い阿寺山頂に着く。快晴の青空に越後三山が立ち並ぶ。中ノ岳の二つの尾根、御月山からオカメノゾキの細い縦走路と日向山から十字峡に下る尾根。ここから見る八海山は入道岳と八峰のバランスが良い見事な姿。真っ白な八海山(八ツ峰と入道岳)の右奥に険しい姿の駒ヶ岳と中ノ岳がと並んでいるのは正に越後三山だが、カメラのアングルに入りきらない。西には高倉山がずいぶん低くなっており、その左手に巻機山。巻機と中ノ岳の間にある稜線に高いピークが見えている(下津川山と小沢山らしい)。広大無辺な越後の雪世界。神秘の世界の逍遥。

阿寺から入道までの稜線はだいぶアップダウンがありそうで、手前の雪庇のあるピークで最低コルは見えない。オカメノゾキ尾根とのジャンクションピークが五竜岳のようだが、そこから入道まではかなりの傾斜で、スキーで登るのは無理かもしれないが、滑走は期待できそう。入道の頂上直下、東側に雪庇が見えている。

さて、スキーアイゼンを引き上げてシールで滑走。ところどころにアイスバーンがでている。阿寺頂上の北側には尾根が2本(更に行くと3本)あり、その間のくぼみは池(三ノ池、四ノ池)のようだ。右が主尾根のようだが、登り返しになるので左の尾根を歩く。広い尾根を行くと急な下りが見えてきて、最低コルまではずいぶん下ると分かる。入道が遠く感じてきた。今日、あそこまで行けるだろうか。

左尾根の北端は右尾根につながっておらず、右尾根に登り返さずに左尾根北端から最低コル目指して滑る。ここが阿寺から一番傾斜のあるところで、右尾根の北端(帰りにここに登り返す)の左斜面をトラバースして主尾根に出て、最低コルまで滑る。駒ヶ岳から中ノ岳の景観を間近に見ながら進む。左傾斜の尾根を進むと、左足の脛がスキー靴に当たって痛い(左脛は軽症、右足かかとは皮がむけて重症)。

最低コルから登り返しとなるが、まだアップダウンの下りの滑りがあるようなので、スキーアイゼンは上げたままで行く。オカメノゾキが近くなり、こことは大違いの険しく、細く、高低差ありの、スキーとは無縁の尾根に見える。入道のほうは、最低コルまででだいぶ距離をかせぎ、近く見える。2時間で行けるだろう(その通り)。尾根を登っていって振り返ると、阿寺がずいぶん遠くなっている。その左には中ノ岳から日向山の稜線。オカメノゾキほどの傾斜ではない。しかし、それらの真下の沢筋はどれも厳しそう。稜線近くは傾斜が緩むが、稜線までの傾斜がきつい。

稜線の両側が切れ落ちているが、右側(西側)には雪庇があり、ところどころ割れ目もあるので、割れ目より右側を通らないように進む。稜線の最後部がすごく近く見えているが、ジャンクションピークの五竜はたぶん見えていない先にあるのだろう。オカメノゾキ尾根を最も近く見て、入道の頂上が尖った針のようになり、背後の阿寺と同じくらいの高さに登り返したあたりで、腰に疲れを感じて休憩(4回目)とする。足もスタミナも大丈夫だが、腰にきたか。まあここまで順調だし、ゆっくり行こう。

しかし、この先のコル(神生ノ池?)の登り返しが木立のある急な坂で、アイゼンに履きかえるか迷ったが、スキーアイゼンでの横登りで臨み、苦労する。カリカリのアイスバーンの急斜面に小さな木立や枝が邪魔で、なんとか登りきり、その上のやや平らなところで休憩(5回目)。すると、例の男性がいずこからか登ってきた。入道までいくという。もう入道はほぼ真上に近づき、五竜はすぐそこ。

男性はアイゼンで五竜をトラバースしていったが、私は五竜に向かう。五竜頂上には窪みがあり(五竜ノ池?)、頂上の反対側はいかにも雪庇になっていそう。恐る恐る最高地点にストックを立てるが、その向こう側までは行かず。五竜には東に肩が出ていて、そのため頂上からオカメノゾキは見えない。反対側の入道は真上にあり、頂上直下の雪庇がよく見える。とてもスキーでは登れそうもないように見える(結局、雪庇のところを除き、全部スキーで登る)。背後の阿寺は稜線のかなた、はるかに低くなっており、その向こうに巻機が雄大に広がっている。

入道頂上までの途中と頂上直下に傾斜がやや緩いテラスがあり、頂上の雪庇をどこから越えればよいのか気にしながらの登りとなる。男性は左の片斜面をアイゼンで登っていたが、頂上直下のテラスのところまで行くと、丁度、雪庇の切れ目から降りてきた。なるほど、あそこから上がればいいのか。どうやら以前からの雪庇の切れ目のようで、良いところにつけてある。男性と入れ違いで切れ目に上がり、一回スキーを外して雪庇の上に登る。

入道岳の広大な斜めの白い山頂を少し登り、最高地点にストックを立てる。たぶん雪庇の上だろう。向こう側には大日が見える。写真で何度も見た大日を見るのは初めて。快晴だが、頂上は風が強い。一度脱いだ上着を途中で着直していたが、スキーの上着を着ていても寒いくらい。それでも、本年初の三百名山登頂ということで、スキーを外して休憩し、テルモスのお茶を飲み干す。大日までは急な下りだが、雪の稜線が繋がっている。その先の八峰は大日の陰で見えない。実際には相当険しいのだろう。薬師も、昨年登ったピークも見えず、左に張り出しているのは避難小屋あたりからの枝尾根で、その向こうにロープウェイ頂上駅らしきものが微かに見えている。そのはるか左下の斜面にスキー場が見え、駐車場に車が並んでいるらしいのが分かる。大きな駐車場は満車ではないようだ。その向こうには六日町の平野。その左に阿寺の尾根がはるか眼下に見えており、尾根の末端の林道終点の雪原も見える。いやあ、遠いところまできたもんだ。

さて、シールを外して滑走開始。雪庇の切れ目に下る途中で頂上を見上げると、右側が大きな雪庇になっている。五竜の方を見下ろすと、中ノ岳とオカメノゾキの尾根が真正面だが、最低コルまでは見えないようだ。雪庇の切れ目のところに斜めに滑り込み、下の斜面に降り立ち、広い急斜面を快調に滑る。時々止まって滑走トレースを見上げるが、くっきりとは見えない。真っ青な空でなく、やや薄曇なのだろう。

瞬く間に五竜の手前から右側をトラバースし、阿寺への尾根に乗り、苦労したアイスバーンの急斜面を横滑りからジャンプターンで下る。阿寺の向こうには巻機の左に中ノ岳に連なる長い稜線(小沢山・下津川山、その左が本谷山・越後沢山、丹後山だろうか)。そこからは登り返しが数箇所あったが、最低コルまではシールなしで、ビンディングを外した歩き・プラス・滑りで行く。滑走のあとの歩きは辛く、最低コルについて休憩(7回目)したときは、ザックを枕に横になる。風もなく、太陽がぽかぽかして、気持ちよく昼寝できる。冷めたホットココアを飲み干す。背後には三角形の入道。ひっくり返って青空を眺める。最高にいい気分だ。

(2008年3月16日)

日曜は晴れるとの予報に、土曜午後に出発する。八海山・八ツ峰の通過がポイントだが、大山・剣ヶ峰の細尾根を前週経験していたのでなんとかなると踏んでいた(甘かった)。ピッケルとアイゼンは必携。新潟に入ると予想外にガスが出ている。視界のない小出インターを降り、最初間違えて十日町の八海山麓スキー場に着いてしまう。カーナビを入れなおして六日町の八海山スキー場に到着。ふいにガスが晴れて山が見える。ロープウェイの駐車場に止め、しばらく待つ。リフトは8時だが、ロープウェイは8時半だという。

8時半前にトイレに寄ったり(車の中で薄着をしていたせいか)、チケット売場で登山届を出したりしていて、ロープウェイ乗車は9時近くなってしまう。8時過ぎに最初の便が出ており、これに登山客が乗っていたとすれば、約1時間遅れてしまったことになる。時間も無いので、入道岳から阿寺山を周回するのではなく、八ツ峰を往復して戻ってくる計画に変更し、登山届にもそう書き、車のキイを預ける。

スキー場からは薬師岳、八ツ峰、入道が見えており、難攻不落にも見えるが、快晴になりそうなのでなんとかなりそうと思う。眼下にはコブの急斜面。へばったあとでこの斜面は滑りたくない(滑ってしまった)。ロープウェイ頂上からは南に巻機山が雄大に見えている。ボーダーやスキーヤーがコブ斜面に飛び込んでいくのを尻目に、シールを貼って出発。少し上にリフトが登っているが、コブ斜面を下ってからリフトで登るくらいなら、ここから登ったほうが正解だ。しかし、元気良く歩き出したのは良かったが、しばらく歩くとどっと疲れてくる。ここのところの仕事の疲れ、車の中で身体を冷やしてしまった、快晴の日を浴びている、が原因と思われる。

八海山ロープウェイ・トップから登っていくと、どっしりした薬師岳が目前に迫り、東の空に、あの魚沼駒ヶ岳が姿を現した。日本百名山の写真に出ていたなだらかな姿。ようやくこの姿を見ることができた。しばらく感慨にひたる。こちらからは半月形に見え、右端にはノッキリが立っている。昨年、肝を冷やした斜面はノッキリの尾根の向こう側のようで、ここからは見えていない。薬師岳と八ツ峰はすぐ近くに見え、2時間くらいで着きそうにも見えるが、縦位置なので実際はだいぶあるのだろう。入道は八ツ峰の向こう側で見えない。後で写真を見ると、薬師の手前のピークに女人堂の屋根が見えている。振り返ると、ロープウェイの上の雪原に展望台と避難小屋らしき建物が見えている。

稜線の末端から下りとなり、薬師岳との間には池ノ峰の雪原がややでこぼこに続いている。そこを歩いている先行グループを発見。でこぼこ雪原に下り、トレースに沿って歩くと(古いスキートレースも発見)、池ノ峰のピークは外して進む。遠くはないが、寄ってみるだけの余裕はない。一番後ろの人に追いついてしまう直前に休憩を入れる。先になってしまうとかえって疲れてしまう。その先で小さな尾根を廻りこんでいったところでトレースを見失い、結局スキーを担いで尾根に登る。そのまま斜面をトラバースしていくのが正解だったのだが、踏跡のない雪の斜面を登るのは疲れる。

女人堂の直前で薬師岳に登っている先行グループが見える。相当急な斜面のようだ。女人堂の前で休憩し、スキーを履いて出発。真直ぐ登るか、右側の尾根を登るかだが、結局ジグザグに真直ぐ登る。雪は堅く、スキーアイゼンを利かせての登りに1時間強かかる。キックステップがうまくなった。西の街並が小さく近く見えてきたが、写真を撮っている余裕はあまりなし。まばらな潅木帯に入り、薬師岳の頂上に着くと、先行グループと雪に埋もれた小さな像があった。

青銅の像が上半身を雪の上に現わしていたが、他に標識はなし。食事をしていたグループはここで引返すらしい。スキー向きの山ではない、と言っていたが、この先に見えている小屋には、いったん5mほど飛び降り、帰るときは大きく廻りこまないといけないという。たいへんそうだ。一人は駒ヶ岳の小屋の主人だそうで、本も出しているという。今度は谷川岳だ、といいながら戻っていった。先行グループが往路を戻って行ったあと、八ツ峰に向かうが、雪上に踏跡は無く、二峰の頂上までで引き返す。

静寂の頂上で小ザックをとりだし、ピッケルを腰にさして先に進む。なるほど、すぐ先が絶壁になっていて、小屋に続く尾根には5mほどありそうだ。それにしても小屋の先にそびえる八ツ峰の岩峰は威圧的で、どうにも越えられそうもない感じがする。後ろ向きになって途中まで降り、そこから飛び降りようかとも思ったが、登り返す場所を見極めておきたいこともあり、いったん頂上に戻って稜線の西側に下り、大きく回って尾根に登り返す。避難小屋の先まで進むと、何回が踏み抜く。抜け出すのに苦労すると、精神的にまいってくる。八ツ峰の最初のピークを右側から廻りこみ、二峰とのコルに登ったところで古い石仏を発見。ノッペラボウの石も何か名前がありそうだ。薬師から先にトレースはなく、苦労したので、二峰に達して向こう側に入道が見えなければ引返そうと決めて二峰に登る。

二峰にも小さな像と古い石標あり。しかし、先には入道ではなく、別の八ツ峰が立ちはだかっていた。諦めて像の隣に腰を下ろす。行く手には八ツ峰が立ちはだかり、その左手に中ノ岳と檜廊下の稜線。右手の眼下には低く阿寺山の稜線が見えている。雪山の景色にしばらく時を忘れる。1時半に帰途につく。苦労したトラバースも踏み抜きも、トレースがあると実に楽になる。一峰の異様な姿や中ノ岳から駒ヶ岳の稜線を写しながら歩く。汗をかくので、タオルをかぶってその上にヘルメットをかぶる。こいつは正解。

薬師に戻り、振り返ると、八ツ峰の左に入道が見えている。なるほど、縦位置でみると入道はずいぶん近そうだが、実際はどうなのかなあ。駒と中ノ岳に少し雲がかかってきたようだ。シールをはがし、滑走の準備をする。

へばっていたので心配だったが、2~3ターンすると絶好調となる。とはいえ、中央ではなく、左の尾根筋を慎重に滑走。団体さんもここを下っていったようだ(追いつかず)。ときどき停止し、自分のシュプールを写す。このくらいの堅さだときれいなシュプールになる。女人堂の手前を少し登り返し、薬師を何度も見上げる。女人堂からの下りは柔らかい雪をたくさん崩れ落ちさせながらの騒がしい滑走となる。池ノ峰の雪原までくると、もう薬師のてっぺんに雲がかかっていた。早く帰れということか。二峰から先に行かなくて良かったということだろう。

池ノ峰の先でごまかしながらジグザグに登っていたが、さすがにスキーのままでは登れなくなり、スキーを外して歩く。ザックに付けるのも面倒だったので手に持って歩いたが、ザックにつけるべきだった。稜線まで登ると、もう薬師はだいぶ霞んでいた。スキーを履き、スキー場に滑り込む。ゴンドラ駅のところでザックをいったん下ろし、ピッケルをザックに入れ、最後の滑走。まっすぐにコブ斜面に下ってしまい、後悔したがもう遅い。モグラーたちにまじって黙々とコブをターンしていくが、さすがに二つ目のバーンの最後のあたりでへばる。コブのない斜面を探してゆっくりくだり、ロープウェイ麓駅に帰着。車のキイを返してもらって車に戻る。4時前。

長岡に行く前に、たもんの湯というのに寄っていく。入道に登れなかったのでまたトライせねばならないが、同じルートは岩登りを習得しないと厳しいだろう。夏くるか、もしくは阿寺から逆に登るかだが、来年、阿寺から再度トライすることにしよう。本物の岩峰を見せられた八ツ峰の八海山であった。リベンジにくるぞ!

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2年がかりで登った3月の八海山。そこは雪が支配する世界。越後の雪の世界を巡る旅。最高峰・入道岳と薬師岳には登ったが、八ツ峰には二峰までで、八海山のシンボル・大日岳にはまだ登っていない。それでも、越後の雪の世界とスキー滑走は忘れえぬ記憶になっている。

2009年3月21日

早朝の雪の林道

雨の日の翌日、4時の目覚ましで起きると外はまっくら。コンビニでパンとホット・ココア二つを買い(パンは手持ちがあった。ココアは正解。新聞を買うのを忘れた)、まっくらな広堀橋で準備。途中で車が一台やってきて登る準備を始めたのにはびっくり。まあ、トレースもあるくらいだから晴なら登るんだろう。

早朝の入道岳

どんどん明るくなり、ヘッドランプをしまって出発。川沿いの長い雪の林道歩き。ショートカットしているスキー・トレースもあるが、淡々と九十九折を登る。やがて行く手正面に阿寺山が見え、左手に入道岳が見えてくる。林道末端のところでトレースが消え、ルートが分からなくなる。たぶんこの尾根だろうと思うが、確信なし。マップとにらめっこしているうちに車の男性がショートスキーでやってきて、尾根を登っていく。途中に雪の切れているところがあり、スキーを外している。

八ツ峰

GPSで位置確認し、マップと照合すると、登山口はもう少し先で徒渉するとある。そこには小さな枝沢があり、それを渡れば広い斜面になっているので、スキーをかついで沢を渡り、斜面を登る。少し平坦になったところでスキーを下ろしてシールで登る。良くある疎林の雪のシール登り。

細尾根の登り

右手に高倉山の二つのピークが見えてきたところで最初の休憩。だいぶ登ったと思ったが、まだ7時前。マップを取り出し、標高1000mより手前で、この先まだ長いだろうと認識し直す。けれども、当初想定の「阿寺まで6時間」よりは早いだろう(テントを持っていれば6時間はかかっただろう)。ここからスキーを担ぎ、アイゼンで登る。

高倉山の二つのピーク

黒姫山と米山(右奥)?・・・・・西の情景

粉雪・・・・・サラサラの雪がスキーの上に転がる

7時になったあたりから入道の左の八峰が見えてきて、昨年どこまで登っていたのかを確かめる。大日のすぐ手前まで行っていたのでは、と期待したが、岩峰はずいぶん長く、その左端からだいぶ離れて避難小屋がかすかに見え、8時前になると小屋のだいぶ左に薬師が見えた。

巻機山

更に登って木が低くなると(雪に埋まっているというべきか)、霧氷が美しく輝いているのに気付く。最初は斜面の日影にいたのが日向となり、今では太陽が高い位置にある。だいぶ前にサングラスをかけており、手袋をとって手にサンオイルを塗る。どんどん視界が広がり、右手に巻機山が見えてくる。平らな頂上稜線の中央に牛ヶ岳(左手前)と巻機本峰(右奥)が重なり、右ピークが割引岳だろう。また登ってみたい。広い雪原に出て、阿寺頂上かと思ったら、やはり数百メートル先に小高い頂上丘がある。やれやれ。ここで2度目の休憩。シールに変える。途中で休んでいたのを追い越していた男性がいつの間にか追いついてきて、主稜線の方にトラバースしていくが、私はは阿寺に向かう。

駒ヶ岳

青空の下に雪の砂漠のような阿寺の頂上。楽に歩いていきながら景色を眺める。八峰の向こうにスキー場が見えている。今日は晴れているから大勢来ているだろう。頂上丘に達すると、入道岳の右手に駒ヶ岳、次いで中ノ岳が見えてくる。いずれも初めて見る角度で、違った印象。こちらからだとグシガハナ1811mの稜線が手前に大きく見えており、二年前に滑った南肩はその右後に見える。中ノ岳も手前に御月山1821mが見えており、その左後に二年前に通った天狗平と檜廊下の尾根が連なる。

御月山1,821mと中ノ岳

阿寺山頂上・・・・・背後は中ノ岳

そして真っ白な何も無い阿寺山頂に着く。中ノ岳の二つの尾根、御月山からオカメノゾキの細い縦走路と日向山から十字峡に下る尾根。ここから見る八海山は入道岳と八峰のバランスが良い見事な姿。真っ白な八海山(八ツ峰と入道岳)の右奥に険しい姿の駒ヶ岳と中ノ岳がと並んでいるのは正に越後三山だが、カメラのアングルに入りきらない。西には高倉山がずいぶん低くなっており、その左手に巻機山。巻機と中ノ岳の間にある稜線に高いピークが見えている(下津川山と小沢岳らしい)。

阿寺山

阿寺から入道までの稜線はだいぶアップダウンがありそうで、手前の雪庇のあるピークで最低コルは見えない。オカメノゾキ尾根とのジャンクションピークが五竜岳のようだが、そこから入道まではかなりの傾斜で、スキーで登るのは無理かもしれないが、滑走は期待できそう。入道の頂上直下、東側に雪庇が見えている。

さて、スキーアイゼンを引き上げてシールで滑走。ところどころにアイスバーンがでている。阿寺頂上の北側には尾根が2本(更に行くと3本)あり、その間のくぼみは池(三ノ池、四ノ池)のようだ。右が主尾根のようだが、登り返しになるので左の尾根を歩く。広い尾根を行くと急な下りが見えてきて、最低コルまではずいぶん下ると分かる。入道が遠く感じてきた。今日、あそこまで行けるだろうか。

入道岳・・・・・入道の頂上が尖った針のようになる

左尾根の北端は右尾根につながっておらず、右尾根に登り返さずに左尾根北端から最低コル目指して滑る。ここが阿寺から一番傾斜のあるところで、右尾根の北端(帰りにここに登り返す)の左斜面をトラバースして主尾根に出て、最低コルまで滑る。駒ヶ岳から中ノ岳の景観を間近に見ながら進む。左傾斜の尾根を進むと、左足の脛がスキー靴に当たって痛い(左脛は軽症、右足かかとは皮がむけて重症)。

オカメノゾキ(下の吊尾根)と檜廊下(上の稜線)

最低コルから登り返しとなるが、まだアップダウンの下りの滑りがあるようなので、スキーアイゼンは上げたままで行く。オカメノゾキが近くなり、こことは大違いの険しく、細く、高低差ありの、スキーとは無縁の尾根に見える。入道のほうは、最低コルまででだいぶ距離をかせぎ、近く見える。2時間で行けるだろう(その通り)。尾根を登っていって振り返ると、阿寺がずいぶん遠くなっている。その左には中ノ岳から日向山の稜線。オカメノゾキほどの傾斜ではない。しかし、それらの真下の沢筋はどれも厳しそう。稜線近くは傾斜が緩むが、稜線までの傾斜がきつい。

五龍岳・・・・・阿寺山から入道岳への尾根と、オカメノゾキ尾根とのジャンクションピークが五竜岳

稜線の両側が切れ落ちているが、右側(西側)には雪庇があり、ところどころ割れ目もあるので、割れ目より右側を通らないように進む。稜線の最後部がすごく近く見えているが、ジャンクションピークの五竜はたぶん見えていない先にあるのだろう。オカメノゾキ尾根を最も近く見て、入道の頂上が尖った針のようになり、背後の阿寺と同じくらいの高さに登り返したあたりで、腰に疲れを感じて休憩(4回目)とする。足もスタミナも大丈夫だが、腰にきたか。まあここまで順調だし、ゆっくり行こう。

入道岳・・・・・もう入道はほぼ真上に近づき、五竜はすぐそこ

しかし、この先のコル(神生ノ池?)の登り返しが木立のある急な坂で、アイゼンに履きかえるか迷ったが、スキーアイゼンでの横登りで臨み、苦労する。カリカリのアイスバーンの急斜面に小さな木立や枝が邪魔で、なんとか登りきり、その上のやや平らなところで休憩(5回目)。すると、例の男性がいずこからか登ってきた。入道までいくという。もう入道はほぼ真上に近づき、五竜はすぐそこ。

入道岳の雪庇・・・・・五龍岳頂上より。入道は真上にあり、頂上直下の雪庇がよく見える

男性はアイゼンで五竜をトラバースしていったが、私は五竜に向かう。五竜頂上には窪みがあり(五竜ノ池?)、頂上の反対側はいかにも雪庇になっていそう。恐る恐る最高地点にストックを立てるが、その向こう側までは行かず。五竜には東に肩が出ていて、そのため頂上からオカメノゾキは見えない。反対側の入道は真上にあり、頂上直下の雪庇がよく見える。とてもスキーでは登れそうもないように見える(結局、雪庇のところを除き、全部スキーで登る)。背後の阿寺は稜線のかなた、はるかに低くなっており、その向こうに巻機が雄大に広がっている。

五龍岳頂上・・・・・頂上の反対側はいかにも雪庇になっていそう。恐る恐る最高地点にストックを立てるが、その向こう側までは行かず

入道頂上までの途中と頂上直下に傾斜がやや緩いテラスがあり、頂上の雪庇をどこから越えればよいのか気にしながらの登りとなる。男性は左の片斜面をアイゼンで登っていたが、頂上直下のテラスのところまで行くと、丁度、雪庇の切れ目から降りてきた。なるほど、あそこから上がればいいのか。どうやら以前からの雪庇の切れ目のようで、良いところにつけてある。男性と入れ違いで切れ目に上がり、一回スキーを外して雪庇の上に登る。

入道岳頂上

広大な斜めの白い山頂を少し登り、最高地点にストックを立てる。たぶん雪庇の上だろう。向こう側には大日が見える。写真で何度も見た大日を見るのは初めて。快晴だが、頂上は風が強い。一度脱いだ上着を途中で着直していたが、スキーの上着を着ていても寒いくらい。それでも、本年初の三百名山登頂ということで、スキーを外して休憩し、テルモスのお茶を飲み干す。大日までは急な下りだが、雪の稜線が繋がっている。その先の八峰は大日の陰で見えない。実際には相当険しいのだろう。薬師も、昨年登ったピークも見えず、左に張り出しているのは避難小屋あたりからの枝尾根で、その向こうにロープウェイ頂上駅らしきものが微かに見えている。そのはるか左下の斜面にスキー場が見え、駐車場に車が並んでいるらしいのが分かる。大きな駐車場は満車ではないようだ。その向こうには六日町の平野。その左に阿寺の尾根がはるか眼下に見えており、尾根の末端の林道終点の雪原も見える。いやあ、遠いところまできたもんだ。

駒ヶ岳

中ノ岳

六日町

大日岳

大日までは急な下りだが、雪の稜線が繋がっている。その先の八峰は大日の陰で見えない。実際には相当険しいのだろう。薬師も、昨年登ったピークも見えず、左に張り出しているのは避難小屋あたりからの枝尾根で、その向こうにロープウェイ頂上駅らしきものが微かに見えている。

巻機山

阿寺山

入道岳からの滑走

さて、シールを外して滑走開始。雪庇の切れ目に下る途中で頂上を見上げると、右側が大きな雪庇になっている。五竜の方を見下ろすと、中ノ岳とオカメノゾキの尾根が真正面だが、最低コルまでは見えないようだ。雪庇の切れ目のところに斜めに滑り込み、下の斜面に降り立ち、広い急斜面を快調に滑る。時々止まって滑走トレースを見上げるが、くっきりとは見えない。真っ青な空でなく、やや薄曇なのだろう。

ネコブ山(手前)、下津川山(中央左)、小沢岳(中央右)

瞬く間に五竜の手前から右側をトラバースし、阿寺への尾根に乗り、苦労したアイスバーンの急斜面を横滑りからジャンプターンで下る。阿寺の向こうには巻機の左に中ノ岳に連なる長い稜線(小沢山・下津川山、その左が本谷山・越後沢山、丹後山だろうか)。

越後沢山(左)と本谷山

阿寺山と巻機山(背後)

林と入道岳と青空

瞬く間に五竜の手前から右側をトラバースし、阿寺への尾根に乗り、苦労したアイスバーンの急斜面を横滑りからジャンプターンで下る。阿寺の向こうには巻機の左に中ノ岳に連なる長い稜線(小沢山・下津川山、その左が本谷山・越後沢山、丹後山だろうか)。そこからは登り返しが数箇所あったが、最低コルまではシールなしで、ビンディングを外した歩き・プラス・滑りで行く。滑走のあとの歩きは辛く、最低コルについて休憩(7回目)したときは、ザックを枕に横になる。風もなく、太陽がぽかぽかして、気持ちよく昼寝できる。冷めたホットココアを飲み干す。背後には三角形の入道。ひっくり返って青空を眺める。最高にいい気分だ。

ホットココア

阿寺山からの滑走

雪の広場に到着

北から見る駒ヶ岳、八海山、阿寺山

北から見る駒ヶ岳、中ノ岳、八海山・・・・・上の写真よりも北東の位置

夕日

2008年3月16日

八海山ロープウェイ

日曜は晴れるとの予報に、土曜午後に出発する。八海山・八ツ峰の通過がポイントだが、大山・剣ヶ峰の細尾根を前週経験していたのでなんとかなると踏んでいた(甘かった)。ピッケルとアイゼンは必携。新潟に入ると予想外にガスが出ている。視界のない小出インターを降り、最初間違えて十日町の八海山麓スキー場に着いてしまう。カーナビを入れなおして六日町の八海山スキー場に到着。ふいにガスが晴れて山が見える。ロープウェイの駐車場に止め、しばらく待つ。リフトは8時だが、ロープウェイは8時半だという。

ロープウェイ頂上から巻機山

8時半前にトイレに寄ったり(車の中で薄着をしていたせいか)、チケット売場で登山届を出したりしていて、ロープウェイ乗車は9時近くなってしまう。8時過ぎに最初の便が出ており、これに登山客が乗っていたとすれば、約1時間遅れてしまったことになる。時間も無いので、入道岳から阿寺山を周回するのではなく、八ツ峰を往復して戻ってくる計画に変更し、登山届にもそう書き、車のキイを預ける。

避難小屋

スキー場からは薬師岳、八ツ峰、入道が見えており、難攻不落にも見えるが、快晴になりそうなのでなんとかなりそうと思う。眼下にはコブの急斜面。へばったあとでこの斜面は滑りたくない(滑ってしまった)。ロープウェイ頂上からは南に巻機山が雄大に見えている。ボーダーやスキーヤーがコブ斜面に飛び込んでいくのを尻目に、シールを貼って出発。少し上にリフトが登っているが、コブ斜面を下ってからリフトで登るくらいなら、ここから登ったほうが正解だ。しかし、元気良く歩き出したのは良かったが、しばらく歩くとどっと疲れてくる。ここのところの仕事の疲れ、車の中で身体を冷やしてしまった、快晴の日を浴びている、が原因と思われる。

薬師岳

八海山ロープウェイ・トップから登っていくと、どっしりした薬師岳が目前に迫り、東の空に、あの魚沼駒ヶ岳が姿を現した。日本百名山の写真に出ていたなだらかな姿。薬師岳と八ツ峰はすぐ近くに見え、2時間くらいで着きそうにも見えるが、縦位置なので実際はだいぶあるのだろう。入道は八ツ峰の向こう側で見えない。後で写真を見ると、薬師の手前のピークに女人堂の屋根が見えている。振り返ると、ロープウェイの上の雪原に展望台と避難小屋らしき建物が見えている。

駒ヶ岳

そして突然、駒ヶ岳が現われた。日本百名山に出ていた写真の姿。ようやくこの姿を見ることができた。しばらく感慨にひたる。こちらからは半月形に見え、右端にはノッキリが立っている。昨年、肝を冷やした斜面はノッキリの尾根の向こう側のようで、ここからは見えていない。

女人堂

稜線の末端から下りとなり、薬師岳との間には池ノ峰の雪原がややでこぼこに続いている。そこを歩いている先行グループを発見。でこぼこ雪原に下り、トレースに沿って歩くと(古いスキートレースも発見)、池ノ峰のピークは外して進む。遠くはないが、寄ってみるだけの余裕はない。一番後ろの人に追いついてしまう直前に休憩を入れる。先になってしまうとかえって疲れてしまう。その先で小さな尾根を廻りこんでいったところでトレースを見失い、結局スキーを担いで尾根に登る。そのまま斜面をトラバースしていくのが正解だったのだが、踏跡のない雪の斜面を登るのは疲れる。

薬師岳頂上の行者の像

女人堂の直前で薬師岳に登っている先行グループが見える。相当急な斜面のようだ。女人堂の前で休憩し、スキーを履いて出発。真直ぐ登るか、右側の尾根を登るかだが、結局ジグザグに真直ぐ登る。雪は堅く、スキーアイゼンを利かせての登りに1時間強かかる。キックステップがうまくなった。西の街並が小さく近く見えてきたが、写真を撮っている余裕はあまりなし。まばらな潅木帯に入り、薬師岳の頂上に着くと、先行グループと雪に埋もれた小さな像があった。

八ツ峰・一峰(1,707m)と千本檜小屋

青銅の像が上半身を雪の上に現わしていたが、他に標識はなし。食事をしていたグループはここで引返すらしい。スキー向きの山ではない、と言っていたが、この先に見えている小屋には、いったん5mほど飛び降り、帰るときは大きく廻りこまないといけないという。たいへんそうだ。一人は駒ヶ岳の小屋の主人だそうで、本も出しているという。今度は谷川岳だ、といいながら戻っていった。先行グループが往路を戻って行ったあと、八ツ峰に向かうが、雪上に踏跡は無く、二峰の頂上までで引き返す。

千本檜小屋

静寂の頂上で小ザックをとりだし、ピッケルを腰にさして先に進む。なるほど、すぐ先が絶壁になっていて、小屋に続く尾根には5mほどありそうだ。それにしても小屋の先にそびえる八ツ峰の岩峰は威圧的で、どうにも越えられそうもない感じがする。後ろ向きになって途中まで降り、そこから飛び降りようかとも思ったが、登り返す場所を見極めておきたいこともあり、いったん頂上に戻って稜線の西側に下り、大きく回って尾根に登り返す。避難小屋の先まで進むと、何回が踏み抜く。抜け出すのに苦労すると、精神的にまいってくる。八ツ峰の最初のピークを右側から廻りこみ、二峰とのコルに登ったところで古い石仏を発見。ノッペラボウの石も何か名前がありそうだ。薬師から先にトレースはなく、苦労したので、二峰に達して向こう側に入道が見えなければ引返そうと決めて二峰に登る。

二峰(1,700m)頂上の像

中ノ岳(左奥)と八ツ峰

二峰にも小さな像と古い石標あり。しかし、先には入道ではなく、別の八ツ峰が立ちはだかっていた。諦めて像の隣に腰を下ろす。行く手には八ツ峰が立ちはだかり、その左手に中ノ岳と檜廊下の稜線。右手の眼下には低く阿寺山の稜線が見えている。雪山の景色にしばらく時を忘れる。

二峰(1,700m)からの下降

1時半に帰途につく。苦労したトラバースも踏み抜きも、トレースがあると実に楽になる。一峰の異様な姿や中ノ岳から駒ヶ岳の稜線を写しながら歩く。汗をかくので、タオルをかぶってその上にヘルメットをかぶる。こいつは正解。

八ツ峰から見る薬師岳

薬師に戻り、振り返ると、八ツ峰の左に入道が見えている。なるほど、縦位置でみると入道はずいぶん近そうだが、実際はどうなのかなあ。駒と中ノ岳に少し雲がかかってきたようだ。シールをはがし、滑走の準備をする。

中ノ岳と入道岳(八ツ峰の左にわずかに見える)と八ツ峰

へばっていたので心配だったが、2~3ターンすると絶好調となる。とはいえ、中央ではなく、左の尾根筋を慎重に滑走。団体さんもここを下っていったようだ(追いつかず)。ときどき停止し、自分のシュプールを写す。このくらいの堅さだときれいなシュプールになる。女人堂の手前を少し登り返し、薬師を何度も見上げる。女人堂からの下りは柔らかい雪をたくさん崩れ落ちさせながらの騒がしい滑走となる。池ノ峰の雪原までくると、もう薬師のてっぺんに雲がかかっていた。早く帰れということか。二峰から先に行かなくて良かったということだろう。

薬師岳からの滑走

池ノ峰の先でごまかしながらジグザグに登っていたが、さすがにスキーのままでは登れなくなり、スキーを外して歩く。ザックに付けるのも面倒だったので手に持って歩いたが、ザックにつけるべきだった。稜線まで登ると、もう薬師はだいぶ霞んでいた。スキーを履き、スキー場に滑り込む。ゴンドラ駅のところでザックをいったん下ろし、ピッケルをザックに入れ、最後の滑走。まっすぐにコブ斜面に下ってしまい、後悔したがもう遅い。モグラーたちにまじって黙々とコブをターンしていくが、さすがに二つ目のバーンの最後のあたりでへばる。コブのない斜面を探してゆっくりくだり、ロープウェイ麓駅に帰着。車のキイを返してもらって車に戻る。4時前。

長岡に行く前に、たもんの湯というのに寄っていく。入道に登れなかったのでまたトライせねばならないが、同じルートは岩登りを習得しないと厳しいだろう。夏くるか、もしくは阿寺から逆に登るかだが、来年、阿寺から再度トライすることにしよう。本物の岩峰を見せられた八ツ峰の八海山であった。リベンジにくるぞ!