朝日連峰・大上戸山、寒江山 こんにちわウスユキソウ

新潟県  大上戸山1,430m、相模山1,591m 2018年6月23~24日(テント1泊)

山形県 寒江山1,695m、竜門山1,688m

(大上戸山)2005年三面から初めて登る

(寒江山、竜門山)新潟百名山

(相模山)日本の山1,000

317

辛い登り

ふと見上げるとピンクの花

急ぐ足元に小さな花が咲いていて

立ち止まる

(花の縦走路)

✾✾✾✾✾

駐車地点の小さなヘビイチゴ以外、最初は花はなし。水場のあたりから小さな白がはじけるマイヅルソウ、その先の真っ黄色な湿原はリュウキンカの群落、そして白い大きな花びらのタムシバが舞う。清太岩山の手前あたりから小さなピンクの団体さん、ツガザクラが目立ちはじめ、小さい白い顔のミツバオウレンやツマトリソウもちらほら。道脇の灌木にはやや地味な赤のサラサドウダンがいっぱいぶら下がっている。

P3・1,359mのあたりから林を抜け、曇空に初めて大朝日と小朝日を見る。少し猫背で真っ黒な小朝日。その向こうで白い斑点の残雪の大朝日。やがて視界が開け、目の前には小朝日岳から大朝日岳、西朝日岳、竜門山、寒江山、そして以東岳の雄大な景観。朝日連峰の主稜を見るのも久しぶり。大朝日岳の上をヘリコプターが飛んでいた。荷物の配送かな。

それにしても残雪がびっしり。山腹に大量に残雪が白く輝いている。これも朝日と飯豊の夏のトレードマークだな。今回は3箇所の残雪登りがあった。最初のはP3手前で、短いが傾斜がきつく、踏み跡のくぼみを慎重にたどる。二つ目と三つ目は竜門山の主稜線間近にあり、二つ目は短く、三つ目は長かった。たどり着いた登山道脇にはショウジョウバカマの群落。

主稜線から竜門小屋に向かうと、いきなりウスユキソウが現われた。ここまで全くなかったのに。その白い綿毛はまるでおもちゃの花のよう。たくさんの白い綿毛がくるくる回って、魔法の国にいるみたいに不思議な魅力。ものすごく長い白い綿毛はどこの人?

イチゴの三つ葉はキジムシロ(ヘビイチゴかミツバツチグリかも)、菊の葉のはキンポウゲ?竜門小屋のあたりにはチングルマの群落がびっしり。

そして北西方向に今回初めて大上戸山と相模山を見る。大上戸の標高は低いが朝日連峰の西端にあり、残雪をたっぷりかかえた姿は主稜線の諸峰にひけをとらない貫録。それほど遠くは見えないが、相模池まで5㎞、大上戸山までは9㎞のかなた。ほんの薄曇りで日が遮られ、適度に風が吹いていて涼しく、最高のコンディション。今日中に行ってしまおう。

縦位置に見えた寒江山までは遠く、巨大な残雪を右下に見ながら行くと、左側にシラネアオイが咲いていた。南寒江山に近づくとウスユキソウが稜線全体に咲いている。その花の中に歩いて入ってみる。花に取り囲まれて、不思議な気分。寒江山にも新しい頂上標識が立っていた。三角点と頂上標識の向こうに重厚な以東岳。

北寒江山から三面口方面に向かう。この尾根にはツマトリソウのかわいい五角形がびっしり。ヒナザクラの群落がひとむら。残雪の上を渡って相模池の西岸に下っていき、枯草帯の上にテントを設営。軽いザックで大上戸山に向かう。

相模山は東ピーク1,606mが最高点だが、三角点は500mほど離れた西ピークにあり、2004年にはそこまで達して三角点を確認している。細尾根の少し南側に付けられた道を歩き、三角点峰に到達。14年ぶり。登山道にはツガザクラがびっしり。ヒメサユリのピンクにニッコウキスゲの黄色が時々。

緩い坂を登り、ついに大上戸山の頂上に着く。ここにも傾いた三角点。四方が開けた狭い頂上。真っ黒に錆びた四角い板は、たぶん山名板だろう。北も南も切れ落ちていて、谷の向こうには以東岳、寒江山、西朝日、祝瓶山などが並ぶ。主稜線から5㎞強、三面口からは11㎞離れた、朝日連峰の最奥の一角。少し横になって休み、そして帰途につく。

相模山から下っているときについに夕日が射し始める。それまでずっと顔を見せなかった太陽が、沈む直前に地平線上に赤い光を見せ始め、やがて歪んだ赤い夕陽が大きくなる。

翌日、北寒江山から寒江山に下っていくと、一面に咲いたウスユキソウに囲まれていた。思わずその花の間をさまよい歩く。前日も同じところを歩いていたが、このときは霧で視界がなく、風に吹かれてひらひら揺れている白い花に妙に親しみを感じた。こんにちは、ウスユキソウ。

 竜門山から北西方向に今回初めて大上戸山を見る。標高は低いが朝日連峰の西端にあり、残雪をたっぷりかかえた姿は主稜線の諸峰にひけをとらない貫録。それほど遠くは見えないが、大上戸山までは9㎞のかなた。ほんの薄曇りで日が遮られ、適度に風が吹いていて涼しく、最高のコンディション。今日中に行ってしまおう。(写真は遠山峰(約1㎞手前)からのもの)
 縦位置に見えた寒江山までは遠く、巨大な残雪を右下に見ながら行く。南寒江山に近づくとウスユキソウが稜線全体に咲いている。(写真はユウフン山付近から見る残雪たっぷりの寒江山)
 一面に咲いたウスユキソウに囲まれ、花の間をさまよい歩く。風に吹かれてひらひら揺れている白い花。こんにちは、ウスユキソウ。
 長い花びらのウスユキソウ。その白い綿毛はまるでおもちゃの花のよう
 イチゴの三つ葉はキジムシロ(ヘビイチゴかミツバツチグリかも)、菊の葉のはキンポウゲ?
 竜門小屋のあたりにはチングルマの群落がびっしり。
キジムシロとキンポウゲ
チングルマでいっぱい
寒江山
バイカオウレン?
(D1)  3:43 日暮沢駐車地点発  7:25 清太岩山1,465m  8:21 ユウフン山1,565m  9:34 竜門小屋11:15 寒江山1,695m11:50 北漢港山・分岐12:23 相模池、テント・・・・・・・・・・・・・・・・(距離14㎞→10㎞、標高差1,600m、計画8時間)登り8時間40分12:49 テント発13:40 相模山1,591m15:09 遠山峰1,430m15:51 大上戸山1,430m16:02 大上戸山発16:39 遠山峰18:09 相模山18:56 相模池、テント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(距離4㎞x2、標高差300m、計画4時間)往復6時間7分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・合計(距離22㎞→18㎞、標高差1,900m、計画12時間)15時間13分(D2)  3:52 テント発  4:53 北寒江山・分岐  5:32 寒江山  6:54 竜門小屋  7:15 竜門小屋発  7:46 竜門山  8:51 ユウフン山  9:39 清岩山12:30 日暮沢駐車地点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下り8時間38分

OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO

(前日)

6月も後半となり、西日本は梅雨の大雨だが、日本海側は晴。2年前に登れなかった大上戸山に再トライ。木曜日にザックを整える(結局、シュラフ・カバーを忘れた)。キャベツとマイタケも刻んで袋二つに小分けし、ソーセージ2本とザックの上蓋に入れる。日暮沢のコースは2002年に初めて登って以来3度目で、前回2016年は通行止めの林道を4㎞歩き、オーバーペースがたたって調子が悪くなったうえに雨に降られ、ユウフン山までで下山した。よって、今回は夜明け前に登山開始し、昼ごろまでに相模池に着き、初日に大上戸山まで往復するプランとした。

前日、村田JCから山形に向かうと、蔵王の雁戸山や大朝日岳が夕日に輝いていた。夜の寒河江SAでは高山植物のような花を見る(シモツケソウとビヨウヤナギ?)。起きたのは翌1時だから、3時間くらいしか寝てない。最近こういうのが多い。もっと睡眠時間をとらないと・・・・・。パンとバナナもザックの上蓋に入れておく。このザックは意外に上蓋が小さい。この週は気温が30度を越えるという予報になっていて、夏の山着をもってきていたが、寒河江の夜は寒かった。念のためにもってきていたダウンもザックに詰め、レインウェアを着込んでいく。

(D1)

2年前は林道崩壊で日暮沢登山口の4㎞手前から歩いたので、今回もそこから歩くプランにしていたが、今回は林道は修復されていて奥まで入れた。最奥の手前の日暮沢のところはコンクリ車道の上に水が流れていて、夜の明かりでは行き止まりだと思い、その手前のスペースに駐車した。ヘルメットをかぶり、モンベルの軽いスティックを持っていく。4時前。ヘッドランプで歩いてみて、日暮沢にはコンクリ橋がかかっていて、その上を水が多少流れているが、十分車で通れることが分かった。まあ、150mくらい。日暮沢小屋前の駐車場には車が10台前後駐車していた。さすが朝日連峰。小屋泊か車中泊かな。明かりのついた車もいたような気がした。静かに通過。

林の中の小道を進み、すぐに尾根の急登が始まる。根っこの急坂を登ろうとしながらウォークマンを起動しようとしたのは2年前と同じ。だが、今回はマイペースで登り、スタミナがもった。樹間に日の出を見る。もう明るくなってヘッドランプを消し、暖かくて汗が出るので、P1・809mでザックを下ろし、ヘッドランプをしまい、レインウェアを脱ぐ。すると、もう男性が一人、追い付いてきて登って行った。こんなに早い人もいるんだ。駐車地点の小さなヘビイチゴ以外、最初は花はなし。水場のあたりから小さな白がはじけるマイヅルソウ。樹間には月山と葉山。この頃は日が射していて、一番天気が良かった。

水場の先の真っ黄色な湿原はリュウキンカの群落。そして白い大きな花びらのタムシバが舞う。清太岩山の手前あたりから小さなピンクの団体さん、ツガザクラが目立ちはじめ、小さい白い顔のミツバオウレンやツマトリソウもちらほら。道脇の灌木にはやや地味な赤のサラサドウダンがいっぱいぶら下がっている。尾根の急坂を登っていて、何度も頭上の枝に頭をぶつける。ヘルメットをかぶってきて正解。最初の雪渓を越え、P3・1,359mのあたりから林を抜けるが、薄雲で日は陰り気味。おかげで熱射病は抑えられたと思う。その曇り空に初めて大朝日と小朝日を見る。少し猫背で真っ黒な小朝日。その向こうで白い斑点の残雪の大朝日。清太岩山の手前で二人目が追いついてきたので少しペースを上げる。このとき、シロバナヘビイチゴとベニバナツクバネウツギを見たと思ったが、ベニバナの方はタニウツギだったようだ。清太岩山の傾いた三角点を写し、二度目の休憩。パンを食べる。目の前には小朝日岳から大朝日岳、西朝日岳、竜門山、寒江山、そして以東岳の雄大な景観。2年前は雨だったから、朝日連峰の主稜を見るのも久しぶり。大朝日岳の上をヘリコプターが飛んでいた。荷物の配送かな。

このあたりから下ってきた人にも会う。ユウフン山へは、いったん急な下りがあり、それから長い登り返し。傾斜がやっと緩くなってから頂上稜線をだいぶ歩いて、ユウフン山の頂上。ここも最高の展望。竜門山までは、2年前は遠く感じた覚えがあるが、今回は近く感じる。もう途中のマイナーピークを越えていくさっきの男性が見える。それにしても残雪がびっしり。稜線上は消えているようだが、山腹に大量に残雪が白く輝いている。これも朝日と飯豊の夏のトレードマークだな。竜門山への登りには、3箇所の残雪登りがあった。最初のは短いが傾斜がきつく、踏み跡のくぼみを慎重にたどる。二つ目と三つ目は主稜線間近にあり、二つ目は短く、三つ目は長かった。残雪の下の登山道は水が流れていて泥だらけ。残雪を登った先の登山道がどこなのか、確かめながら登る。三つ目のは大きく左から登り、登山道は右上。たどり着いた登山道脇にはショウジョウバカマの群落。これもたくさん咲いていたが、櫛ヶ峰の大きなショウジョウバカマと比べるとやや小ぶり。

(主稜線)

主稜線には新しい分岐表示が立っており、古い標識も置いてあって、ベンチ代わりになっていた。竜門小屋に向かうと、いきなりウスユキソウが現われた。ここまで全くなかったのに。その白い綿毛はまるでおもちゃの花のよう。たくさんの白い綿毛がくるくる回って、魔法の国にいるみたいに不思議な魅力。ものすごく長い白い綿毛はどこの人?黄色い花は2種類あって、イチゴの三つ葉はキジムシロ(ヘビイチゴかミツバツチグリかもしれない)、菊の葉のはキンポウゲ?キジムシロには濃い橙色のアクセントが入っていて気品がある。そして北西方向に今回初めて大上戸山と相模山を見る。大上戸の標高は低いが、朝日連峰の西端にあり、残雪をたっぷりかかえた姿は主稜線の諸峰にひけをとらない貫録。それほど遠くは見えないが、相模池まで5㎞、大上戸山までは9㎞のかなた(因みに、日暮沢小屋から水場まで2.5㎞、竜門山まで6㎞)。ほんの薄曇りで日が遮られ、適度に風が吹いていて涼しく、最高のコンディション。明日はどうなるかわからない。今日中に行ってしまおう。竜門小屋でザックを下ろし、水を汲む。水場は登山道脇にあり、後から来た夫婦連れが先に水を汲み、寒江山のほうへ歩いて行った。2リットルの袋に2/3くらい入れ、ザックに押し込む。やっぱりたくさん持って来すぎなんだろうな。昨年の蝙蝠岳のときほど重く感じなかったのは、多少、体力が戻ったためだろうか。このあたりにはチングルマの群落がびっしり。

縦位置に見えた寒江山までは遠く、途中にM1・1,588mと軽い岩場があったと思う。巨大な残雪を右下に見ながら行くと、左側にシラネアオイが咲いていた。紫色の花はムシトリスミレ?南寒江山に近づくとウスユキソウが稜線全体に咲いている。赤いイワカガミもちらほら。その花の中に歩いて入ってみる。花に取り囲まれて、不思議な気分。南寒江山には石標とケルン。寒江山にも新しい頂上標識が立っていた。三角点と頂上標識の向こうに重厚な以東岳。360度の景観を二回りほど撮影。日が射してないので映りはいまいちかもしれない。大きく下り、登り返して北寒江山。ここも頂上標識はなく、やや北側に三面口(みおもて)への分岐標識がある。

(三面口方面)

レイングローブをはめ、三面口方面に向かうと、すぐに三方池がある。尾根の北側に残雪に囲まれた池。道に「三方池」の表示が真っ二つに割れて置いてある。道端には青紫のリンドウのような花、そしてヒメサユリ。背後には、三方境の方から登ってくる人影。主稜線を外れ、この先、誰にも会わなかった。緩い下りでマイナーピークを二つ越えていき、残雪にほとんど埋もれた小さな源蔵池の手前にテントを張れそうなところがあり、行ってみる。残雪が融けたばかりらしくい、でこぼこのない場所だが、わずかに傾斜がある。風が吹いていて、ナイロンのズボンは寒くないが、ポリエステルの上着は寒く感ずる。登山服なら同じポリエステルでも違うのだろう。だが、夏に厚い生地のものは着にくい。

この尾根にはツマトリソウのかわいい五角形がびっしり。ヒナザクラの群落がひとむら。源蔵池の先でいったん尾根を北に外れ、残雪の上を渡って相模池の西岸に下っていく。そこは平坦な地形になっていて草原と残雪の間に枯草帯がある。その枯草帯の上にテントを設営。下は残雪跡でまだ湿っていたが、平。ヒモの支えに小さな灌木を1本、ペグを3本。ペグはペットボトルで打ち込む。少し横になって休むと、おしりに水がしみていた。

軽いザックで大上戸山に向かう。南東にある残雪を渡って下ってきたところからルートは不明瞭になっていたが、ピンクリボンが灌木に絡めてあり、テントを張った場所はそこに近い。よって、ルートは南西にある残雪を登り返した先だろう。それらしい箇所に目星をつけ、その南西方向の残雪を登る。100mくらい。傾斜はそんなにないが、踏み跡がないのでよく滑る。目星をつけた地点にルートがあり、そこを登って稜線に上がり、K3・1,590mに向かう。背後の緑のテントは景色の中に小さくなっており、探すのが難しいほど。

相模山は細尾根で、特に南側は鋭く切れ落ちていて、数十メートル下に残雪が見える。深い谷の向こうからザアザア音が聞こえていて、寒江山の山腹の雪渓の下から大きな滝が流れているのが見えた。あれは相当大きそうだ。相模山は東ピーク1,606mが最高点だが、三角点は500mほど離れた西ピークにあり、2004年にはそこまで達して三角点を確認している。細尾根の少し南側に付けられた道を歩き、三角点峰に到達。最初は気づかずに通り過ぎ、GPSにも三角点は出ていなかったが、地理院地図で確認し、少し引返し、ヤブの中の赤リボン、その近くに傾いた三角点を発見。14年ぶり。登山道にはツガザクラがびっしり。ヒメサユリのピンクにニッコウキスゲの黄色が時々。

さて、ここからは未知の領域。ここまでは何の障害もなく来れたが、この先は難所があるかもしれない。特に、大上戸山の手前にある遠山峰の東斜面は強烈に見えた。遠山峰まで1㎞、そこから大上戸まで1㎞くらいだろう。前週の中ノ沢岳の失われた縦走路では1㎞というのは無限の長さだったが、それに比べるとこの日の1㎞はえらく短く感じた。最低コル1,350mまでは250mほどだが、相模山からいきなり急な下りがあり、笹や灌木を掴んで下る。ザックが軽いので楽。半分ほど下ると、尾根の途中にK6・岩峰が立っていて、その岩に右側からよじ登って越えていく。最低コルのあたりは尾根を少し北に外し、灌木トンネルの中の道になっている。横なぐりの細い灌木の枝は先週もあった。顔をかすめていく枝はやっかい。

遠山峰の強烈な東斜面が気になっていたが、登山道はその右側(北側)の灌木トンネルの中を淡々と登っていくように付けられていて、斜面の脇からも離れていた。さすがに疲れてきてゆっくり登っていき、ようやく傾斜が緩くなり、そして遠山峰の最高点に着く。2005年には三面口から大上戸山に登り、たぶんここまで来て引き返した。相模山から遠山峰まで2㎞弱だが、そのときはへとへとに疲れていて、相模山を目の前にして断念していたので、感慨深い。あと1㎞先の大上戸はすぐ近くに見える。緩い坂を登り、ついに大上戸山の頂上に着く。ここにも傾いた三角点。四方が開けた狭い頂上。真っ黒に錆びた四角い板は、たぶん山名板だろう。2005年にはここで温い缶ビールを飲みながら(たぶん、湯を沸かしてカップ麺を食べながら)四周を眺めた。北も南も切れ落ちていて、谷の向こうには以東岳、寒江山、西朝日、祝瓶山などが並ぶ。主稜線から5㎞強、三面口からは11㎞離れた、朝日連峰の最奥の一角。大朝日は西朝日に隠れているが、朝日連峰の西側の全景がほぼ見渡せる。南には巣戸々山、東には鷲ヶ巣山の双耳。少し横になって休み、そして帰途につく。

2005年当時のメモ「11:56大上戸頂上。二等三角点。正面に西朝日。大朝日はどこだ!? 西朝日の右肩に少し見えているのが大朝日のようだ。少しがっかり。祝瓶は三角形のぼんやりした大きな姿。竜門の肩に小屋。寒江山は全く違った形。昨晩冷やしたビールを飲む(だいぶぬるくなった)。ゆっくり食事。とりあえずは第一目標達成。ここにザックを置いて相模まで行ってみたい。12:34出発。タイガース・ザックのみ。しかし、遠山峰へのわずかな登りがこたえる。こんなにへばっていてはムリだ。遠山峰13:06で引き返す。残念。」 なお、「遠山峰」というのは、三面小屋の中にあった案内図の記載による。

遠山峰まで来て相模山を見ると、その前に立つK6・岩峰がいかつく立ちはだかっている。もちろん、登り返しの方が標高差があるのでより辛い。遠山峰からの長い灌木トンネルの下りを淡々と下り、そこからゆっくり登り返していく。だいぶ薄暗くなってきた。K6・岩峰のところは、灌木を片手で掴み、岩の上から少し飛び降りる。前週、足が痛くなる夏靴(AKU・二代目)に苦労したが、おかげで歩き方が改善されてきた。足のかかと側でなくつま先側、かつ、小指のつま先側で歩くと、足裏全体で歩くようになり、足裏も足首も痛くならないようだ。左足の捻挫したところが痛み始めていたが、小指側で歩くようにすると、なぜか痛みがなくなっていった。

相模山まで登り返し、三角点に再会し、ツガザクラの密生している登山道の上に少し横になる。テントまであと1㎞。この手前あたりでウォークマンがバッテリー切れ。相模山から下っているときについに夕日が射し始める。それまでずっと顔を見せなかった太陽が、沈む直前に地平線上に赤い光を見せ始め、やがて歪んだ赤い夕陽が大きくなる。夕日の右に見えているのは桝形山1,331mだろうか。雪渓の下りでは一回転ぶ。どっちみち踏み跡はなく、硬くて踏み跡も作れず、足の裏全体で歩くしかないのだが、変に立ち止まろうとせず、滑ったらそのまま両足で滑るようにすればよいようだ。覚悟を決めると谷側に体重がかかるようになるためか、滑らなくなる。やがて傾斜が緩くなると楽になり、テントの真正面に到着。

出かける前にマットは膨らませておいたが、その下にアルミシートを敷き、インナーバッグをテントの入口に広げてその上で着替え、テントに入る。朝露が出そうなので、靴もコンビニ袋に入れてテントの中にいれておく。食事は後回しでとりあえず仮眠だが、シュラフカバーを忘れてきたことにこのとき気づく。仕方ない。シュラフに入り、ジェネシスをウォークマンで聞こうとすると鳴らない。どうやら前週、バッテリー切れにしたまま充電し忘れていたらしい。がっくり。だがこの後、22時頃に起きるまで、ぐっすり眠る。この週末は30度と聞き、着替えは半袖を持ってきたのだが、寒かった。22時に起き、まずダウンの上下を着込む。湯を沸かし、野菜を入れ、吹きこぼれそうなのでテントの外で野菜(キャベツとマイタケ)を煮る。風が吹いていて火をつけにくかったが、ダウンのおかげで寒くはなかった。もってきてよかった。外には月が出ていて、ほんのり明るい。キャベツが硬いので時間をかけて煮込み、ナイフで刻んだソーセージを入れ、プラスチック容器に移し、シオコショーをかけて食べる。これを始めたのはトヨニに登った頃からだから、まだ4~5年。止められない。もう遅くなってしまったので、翌朝の分も食べ、最後にカフェオレ2杯分の湯を沸かし、カフェオレをゆっくり飲み、就寝。

(D2)

アラームは2時だったが、起きられず、2時半ごろに起きたと思う。まだ暗いが、テント撤収している間に明るくなるだろう。まずシュラフとダウンを収納。外は風が吹いていて寒そうなので、レインウェア上下を着込む。着替えて靴をはき、テントの外に出てからマットを収納してなかったのに気づき、ヒザをついて収納する。マットとシュラフを2段ザックの下に入れ、テントを押し込もうとすると入らない。どうなってるんだとしばらくじたばたし、ザックのベルトを緩めてないのに気づく。そうか、大上戸に往復するとき、中身を出してベルトを締めたんだった。ベルトを緩めると、テントもマットもシュラフも全部入った。

夜は月が出ていたのに、夜明け前は霧がかかって月は見えない。東側の主稜の向こうが明るくなりだしていて、ヘッドランプなしでも薄暗い程度になっていた。だが、テントを撤収し終わって歩き始めるころ、主稜も霧で見えなくなっていた。帰路の方角には(大上戸に向かう雪渓とは別の)雪渓が広がっており、その先の登山道が分からない。GPSで当たりをつけて歩いていき、あそこだろうと思って進んだところの少し左に登山道があった。ここも雪渓の上を100mくらい。尾根に上がると強い風が吹いていて、視界は数百メートル程度。このときは前日のうちに大上戸まで往復しておいてよかったと思った。

北寒江山から寒江山に下っていくと、一面に咲いたウスユキソウに囲まれていた。思わずその花の間をさまよい歩く。前日も同じところを歩いていたが、このときは霧で視界がなく、風に吹かれてひらひら揺れている白い花に妙に親しみを感じた。こんにちは、ウスユキソウ。寒江山頂上で休みたかったが、風が強いので先に進む。追いついてきた男性は南寒江までで引き返したらしいが、この後、天気は回復していく。夜明けの気温上昇で霧が生じたが、強い風で運び去られたのだろう。南寒江とのコルでもウスユキソウの中を歩く。やあ、またいたね。

竜門小屋には出発前の団体さんがいて、彼等の中のスペースにザックを下ろし、この日最初の休憩。ポカリ2本とペットボトル半分の水が残っていて、この天気ならもういらないだろうと思って汲まなかったが、この後、快晴になった。ワイワイ言いながら団体さんが出発。大多数は下山したようだが、大朝日に登った人は幸運だったろう。彼等の後でゆっくり出発。二人連れが追いついてきたので、道を譲る。

竜門山分岐から、100mほど先の竜門山頂上に行く。ここには何もないが、四方が開けていて、景観はよい。このときは大上戸も相模も姿を見せていて、別れを告げることができた。竜門山からの下りでは、三つの雪渓を慎重に下る。相模山の雪渓と違って柔らかく、踏み跡があるので、かかとで踏み跡に踏み込んで下る。果敢にグリセードで下った跡がついていたが、きちんと下れたのだろうか。ユウフン山への登り返しの時だったと思うが、でっかいピッケルを持って登っている若い二人がいた。

ユウフン山の頂上に団体さんがたくさん立っているのが見える。快晴の青空が広がり、悔しがっている人もいたかもしれない。P6・1,540m頂上手前の草原で昼寝していると、3人組がやってきて記念撮影している。こんなに天気になるとは。ユウフン山に着いたときは一人(後から一人がやってくる)。レインウェアを脱ぎ、絶景を見ながらバナナを食べる。清太岩山へは灌木トンネルの辛い登り返しがあったが、頂上では休まずに通過。日差しが強いのでサングラスを出さねばと思いつつ、もうすぐ林に入るだろうからと出さず。日差しに輝く白いタムシバや黄色いリュウキンカを撮影し、清太岩山から1㎞くらいだろうと思った水場へは思ったよりも早く着く。

水場で4度目の休憩。また横になって昼寝。とにかく心地よい。水場から登山口まで1㎞だろうと思ったが、もう少しあった。もう一度、マイナーピークのどこかで休憩し、最後の急な尾根を下り、ついに平坦な道に降り立つ。日暮沢小屋前の駐車場は半分ほどの入り。この日に下山して降りた人が駐車場の半分はいるということか。この日に登った人の車は道路脇に10台弱はあったと思う。日暮沢の水の流れている橋を渡り、駐車地点に着く。ゆっくり片づけ、小さなヘビイチゴを写して車を出す。この間にも、帰っていく車、やってくる車がいた。大きな葉をした、あの白い大きな花を咲かせるのはホオノキと言うらしい。大井沢の湯ったり館の風呂に入る。300円。広くはないが人も多くない。露天はないが木造で熱い湯。

今回は林道を日暮沢小屋まで入れたので相模池まで14㎞→10㎞だったが、計画8時間をやや上回る8時間40分。テントから大上戸山まで往復8㎞は、計画4時間をだいぶ越えて6時間かかった。それほどゆっくり登ったつもりはないが、夜明け前から登ると余裕がある分ペースは速くならないので、結果的に時間はかかるのだろう。因みに、2002年の初日は竜門分岐まで3時間半(今回5時間半)、北寒江山まで6時間半(今回8時間)とずいぶん差がある。やはり若いときは体力があったということか。

夕焼けの雁戸山

6月も後半となり、西日本は梅雨の大雨だが、日本海側は晴。2年前に登れなかった大上戸山に再トライ。木曜日にザックを整える(結局、シュラフ・カバーを忘れた)。キャベツとマイタケも刻んで袋二つに小分けし、ソーセージ2本とザックの上蓋に入れる。日暮沢のコースは2002年に初めて登って以来3度目で、前回2016年は通行止めの林道を4㎞歩き、オーバーペースがたたって調子が悪くなったうえに雨に降られ、ユウフン山までで下山した。よって、今回は夜明け前に登山開始するプランにとし、昼ごろまでに相模池に着き、初日に大上戸山まで往復するプランとした。

(前日)

夕焼けの大朝日岳と山形市の夜景

夕焼けの月山

寒河江SAのシモツケソウ

寒河江SAの大きな黄色い花(ビヨウヤナギ?)

前日、村田JCから山形に向かうと、蔵王の雁戸山や大朝日岳が夕日に輝いていた。夜の寒河江SAでは高山植物のような花を見る(シモツケソウとビヨウヤナギ?)。起きたのは翌1時だから、3時間くらいしか寝てない。最近こういうのが多い。もっと睡眠時間をとらないと・・・・・。パンとバナナもザックの上蓋に入れておく。このザックは意外に上蓋が小さい。この週は気温が30度を越えるという予報になっていて、夏の山着をもってきていたが、寒河江の夜は寒かった。念のためにもってきていたダウンもザックに詰め、レインウェアを着込んでいく。

(D1)

林道入口の道標

2年前は林道崩壊で日暮沢登山口の4㎞手前から歩いたので、今回もそこから歩くプランにしていたが、今回は林道は修復されていて奥まで入れた。最奥の手前の日暮沢のところはコンクリ車道の上に水が流れていて、夜の明かりでは行き止まりだと思い、その手前のスペースに駐車した。ヘルメットをかぶり、モンベルの軽いスティックを持っていく。4時前。ヘッドランプで歩いてみて、日暮沢にはコンクリ橋がかかっていて、その上を水が多少流れているが、十分車で通れることが分かった。まあ、150mくらい。日暮沢小屋前の駐車場には車が10台前後駐車していた。さすが朝日連峰。小屋泊か車中泊かな。明かりのついた車もいたような気がした。静かに通過。

夜明け前の林の空

朝焼け

日の出

マイヅルソウ

林の中の小道を進み、すぐに尾根の急登が始まる。根っこの急坂を登ろうとしながらウォークマンを起動しようとしたのは2年前と同じ。だが、今回はマイペースで登り、スタミナがもった。樹間に日の出を見る。もう明るくなってヘッドランプを消し、暖かくて汗が出るので、P1・809mでザックを下ろし、ヘッドランプをしまい、レインウェアを脱ぐ。すると、もう男性が一人、追い付いてきて登って行った。こんなに早い人もいるんだ。駐車地点の小さなヘビイチゴ以外、最初は花はなし。水場のあたりから小さな白がはじけるマイヅルソウ。樹間には月山と葉山。この頃は日が射していて、一番天気が良かった。

朝日をあびるツルアジサイ

チゴユリ

葉山

オオカメノキ

リュウキンカ

リュウキンカ

リュウキンカ

スミレ

ツガザクラ

タムシバ

タムシバ

イワウチワ

シラネアオイ

ミツバオウレン

ツツジ

ハナカミキリ?とツマトリソウ

清太岩山の手前の雪渓

小朝日岳と大朝日岳

水場の先の真っ黄色な湿原はリュウキンカの群落。そして白い大きな花びらのタムシバが舞う。清太岩山の手前あたりから小さなピンクの団体さん、ツガザクラが目立ちはじめ、小さい白い顔のミツバオウレンやツマトリソウもちらほら。道脇の灌木にはやや地味な赤のサラサドウダンがいっぱいぶら下がっている。尾根の急坂を登っていて、何度も頭上の枝に頭をぶつける。ヘルメットをかぶってきて正解。最初の雪渓を越え、P3・1,359mのあたりから林を抜けるが、薄雲で日は陰り気味。おかげで熱射病は抑えられたと思う。その曇り空に初めて大朝日と小朝日を見る。少し猫背で真っ黒な小朝日。その向こうで白い斑点の残雪の大朝日。清太岩山の手前で二人目が追いついてきたので少しペースを上げる。このとき、シロバナヘビイチゴとベニバナツクバネウツギを見たと思ったが、ベニバナの方はタニウツギだったようだ。清太岩山の傾いた三角点を写し、二度目の休憩。パンを食べる。目の前には小朝日岳から大朝日岳、西朝日岳、竜門山、寒江山、そして以東岳の雄大な景観。2年前は雨だったから、朝日連峰の主稜を見るのも久しぶり。大朝日岳の上をヘリコプターが飛んでいた。荷物の配送かな。

大朝日岳(D2の青空のとき)

大朝日岳とヘリコプター

ユウフン山(D2の青空のときの写真)

カタクリ

シロバナヘビイチゴ

8枚花びらのシロバナヘビイチゴ?

P3からの景観: 小朝日岳、大朝日岳、中岳、西朝日岳、ユウフン山、竜門山、清太岩山、寒江山、以東岳

竜門小屋

サラサドウダン

ウラジロヨウラク

清太岩山の傾いた三角点

ナナカマドの花

障子ヶ岳(左遠方)と清太岩山

ユウフン山頂上と西朝日岳と竜門山

 ユウフン山から西の朝日連峰: 小朝日岳、大朝日岳、中岳、西朝日岳、竜門山、竜門小山、寒江山、以東岳

障子ヶ岳

以東岳

寒江山(D2の青空のときの写真)

大朝日岳

ハクサンチドリ

ゴゼンタチバナ

ユウフン山

西朝日岳と竜門山

ヘビイチゴの実

シロバナニガナ

ヒメサユリ

竜門山の一つ目の雪渓

バイケイソウ

竜門小屋と相模山の雪渓

寒江山

真っ赤なイワカガミ

このあたりから下ってきた人にも会う。ユウフン山へは、いったん急な下りがあり、それから長い登り返し。傾斜がやっと緩くなってから頂上稜線をだいぶ歩いて、ユウフン山の頂上。ここも最高の展望。竜門山までは、2年前は遠く感じた覚えがあるが、今回は近く感じる。もう途中のマイナーピークを越えていくさっきの男性が見える。それにしても残雪がびっしり。稜線上は消えているようだが、山腹に大量に残雪が白く輝いている。これも朝日と飯豊の夏のトレードマークだな。竜門山への登りには、3箇所の残雪登りがあった。最初のは短いが傾斜がきつく、踏み跡のくぼみを慎重にたどる。二つ目と三つ目は主稜線間近にあり、二つ目は短く、三つ目は長かった。残雪の下の登山道は水が流れていて泥だらけ。残雪を登った先の登山道がどこなのか、確かめながら登る。三つ目のは大きく左から登り、登山道は右上。たどり着いた登山道脇にはショウジョウバカマの群落。これもたくさん咲いていたが、櫛ヶ峰の大きなショウジョウバカマと比べるとやや小ぶり。

ショウジョウバカマ

竜門山の二つ目の雪渓

ミヤマカタバミ

サンカヨウ

エンレイソウ

(D1: 主稜線)

竜門山分岐

主稜線には新しい分岐表示が立っており、古い標識も置いてあって、ベンチ代わりになっていた。

最初のウスユキソウ

竜門小屋に向かうと、いきなりウスユキソウが現われた。ここまで全くなかったのに。その白い綿毛はまるでおもちゃの花のよう。たくさんの白い綿毛がくるくる回って、魔法の国にいるみたいに不思議な魅力。ものすごく長い白い綿毛はどこの人?

長い花びらのウスユキソウ

キジムシロ

黄色い花は2種類あって、イチゴの三つ葉はキジムシロ(ヘビイチゴかミツバツチグリかもしれない)、菊の葉のはキンポウゲ?キジムシロには濃い橙色のアクセントが入っていて気品がある。

キンポウゲ

竜門山から西の景観: 鷲ヶ巣山、大上戸山、相模山、相模山・最高点峰、寒江山、以東岳

大上戸山

そして北西方向に今回初めて大上戸山と相模山を見る。大上戸の標高は低いが、朝日連峰の西端にあり、残雪をたっぷりかかえた姿は主稜線の諸峰にひけをとらない貫録。それほど遠くは見えないが、相模池まで5㎞、大上戸山までは9㎞のかなた(因みに、日暮沢小屋から水場まで2.5㎞、竜門山まで6㎞)。ほんの薄曇りで日が遮られ、適度に風が吹いていて涼しく、最高のコンディション。明日はどうなるかわからない。今日中に行ってしまおう。

相模山

寒江山と竜門小屋

竜門小屋

竜門小屋でザックを下ろし、水を汲む。水場は登山道脇にあり、後から来た夫婦連れが先に水を汲み、寒江山のほうへ歩いて行った。2リットルの袋に2/3くらい入れ、ザックに押し込む。やっぱりたくさん持って来すぎなんだろうな。昨年の蝙蝠岳のときほど重く感じなかったのは、多少、体力が戻ったためだろうか。このあたりにはチングルマの群落がびっしり。

竜門小屋の水場

チングルマ

ミツガシワ

シロバナヘビイチゴ

シラネアオイ

ハクサンイチゲ

南寒江山頂上・・・・・背景: 鷲ヶ巣山、大上戸山、相模山

縦位置に見えた寒江山までは遠く、途中にM1・1,588mと軽い岩場があったと思う。巨大な残雪を右下に見ながら行くと、左側にシラネアオイが咲いていた。紫色の花はムシトリスミレ?南寒江山に近づくとウスユキソウが稜線全体に咲いている。赤いイワカガミもちらほら。その花の中に歩いて入ってみる。花に取り囲まれて、不思議な気分。南寒江山には石標とケルン。寒江山にも新しい頂上標識が立っていた。三角点と頂上標識の向こうに重厚な以東岳。360度の景観を二回りほど撮影。日が射してないので映りはいまいちかもしれない。大きく下り、登り返して北寒江山。ここも頂上標識はなく、やや北側に三面口(みおもて)への分岐標識がある。

キジムシロとキンポウゲ

ウスユキソウの原

キバナノコマノツメ?

寒江山頂上と以東岳

寒江山の三角点

寒江山頂上標識と相模山

イワカガミ

ムシトリスミレ

キジムシロ

ウスユキソウ

北寒江山頂上分岐

頂上分岐・木柱

以東岳

(三面口への尾根)

リンドウ

レイングローブをはめ、三面口方面に向かうと、すぐに三方池がある。尾根の北側に残雪に囲まれた池。道に「三方池」の表示が真っ二つに割れて置いてある。道端には青紫のリンドウのような花、そしてヒメサユリ。背後には、三方境の方から登ってくる人影。主稜線を外れ、この先、誰にも会わなかった。緩い下りでマイナーピークを二つ越えていき、残雪にほとんど埋もれた小さな源蔵池の手前にテントを張れそうなところがあり、行ってみる。残雪が融けたばかりらしくい、でこぼこのない場所だが、わずかに傾斜がある。風が吹いていて、ナイロンのズボンは寒くないが、ポリエステルの上着は寒く感ずる。登山服なら同じポリエステルでも違うのだろう。だが、夏に厚い生地のものは着にくい。

ヒナザクラ

三方池の標識

三方池

以東岳と三方池

ヒメサユリ

グンナイフウロ?

ニッコウキスゲ

源蔵池と相模山

以東岳と相模池

テント場・・・・・中央左の雪渓脇の枯草の原

テント

この尾根にはツマトリソウのかわいい五角形がびっしり。ヒナザクラの群落がひとむら。源蔵池の先でいったん尾根を北に外れ、残雪の上を渡って相模池の西岸に下っていく。そこは平坦な地形になっていて草原と残雪の間に枯草帯がある。その枯草帯の上にテントを設営。下は残雪跡でまだ湿っていたが、平。ヒモの支えに小さな灌木を1本、ペグを3本。ペグはペットボトルで打ち込む。少し横になって休むと、おしりに水がしみていた。

テント場を見下ろす

軽いザックで大上戸山に向かう。南東にある残雪を渡って下ってきたところからルートは不明瞭になっていたが、ピンクリボンが灌木に絡めてあり、テントを張った場所はそこに近い。よって、ルートは南西にある残雪を登り返した先だろう。それらしい箇所に目星をつけ、その南西方向の残雪を登る。100mくらい。傾斜はそんなにないが、踏み跡がないのでよく滑る。目星をつけた地点にルートがあり、そこを登って稜線に上がり、K3・1,590mに向かう。背後の緑のテントは景色の中に小さくなっており、探すのが難しいほど。

ヒナザクラ

白い花(深緑の丸葉)(バイカオウレン?)

寒江山

寒江山の大滝

相模山・最高点峰

相模山・三角点峰

相模山は細尾根で、特に南側は鋭く切れ落ちていて、数十メートル下に残雪が見える。深い谷の向こうからザアザア音が聞こえていて、寒江山の山腹の雪渓の下から大きな滝が流れているのが見えた。あれは相当大きそうだ。相模山は東ピーク1,606mが最高点だが、三角点は500mほど離れた西ピークにあり、2004年にはそこまで達して三角点を確認している。細尾根の少し南側に付けられた道を歩き、三角点峰に到達。最初は気づかずに通り過ぎ、GPSにも三角点は出ていなかったが、地理院地図で確認し、少し引返し、ヤブの中の赤リボン、その近くに傾いた三角点を発見。14年ぶり。登山道にはツガザクラがびっしり。ヒメサユリのピンクにニッコウキスゲの黄色が時々。

相模山の三角点

ツクバネウツギ

遠山峰と大上戸山

さて、ここからは未知の領域。ここまでは何の障害もなく来れたが、この先は難所があるかもしれない。特に、大上戸山の手前にある遠山峰の東斜面は強烈に見えた。遠山峰まで1㎞、そこから大上戸まで1㎞くらいだろう。前週の中ノ沢岳の失われた縦走路では1㎞というのは無限の長さだったが、それに比べるとこの日の1㎞はえらく短く感じた。最低コル1,350mまでは250mほどだが、相模山からいきなり急な下りがあり、笹や灌木を掴んで下る。ザックが軽いので楽。半分ほど下ると、尾根の途中にK6・岩峰が立っていて、その岩に右側からよじ登って越えていく。最低コルのあたりは尾根を少し北に外し、灌木トンネルの中の道になっている。横なぐりの細い灌木の枝は先週もあった。顔をかすめていく枝はやっかい。

最低コル1,350m付近の灌木トンネル

遠山峰

祝瓶山

巣戸々山

大上戸山(遠山峰より)

シャクナゲ

大上戸山・頂上

遠山峰の強烈な東斜面が気になっていたが、登山道はその右側(北側)の灌木トンネルの中を淡々と登っていくように付けられていて、斜面の脇からも離れていた。さすがに疲れてきてゆっくり登っていき、ようやく傾斜が緩くなり、そして遠山峰の最高点に着く。2005年には三面口から大上戸山に登り、たぶんここまで来て引き返した。相模山から遠山峰まで2㎞弱だが、そのときはへとへとに疲れていて、相模山を目の前にして断念していたので、感慨深い。あと1㎞先の大上戸はすぐ近くに見える。緩い坂を登り、ついに大上戸山の頂上に着く。ここにも傾いた三角点。四方が開けた狭い頂上。真っ黒に錆びた四角い板は、たぶん山名板だろう。2005年にはここで温い缶ビールを飲みながら(たぶん、湯を沸かしてカップ麺を食べながら)四周を眺めた。北も南も切れ落ちていて、谷の向こうには以東岳、寒江山、西朝日、祝瓶山などが並ぶ。主稜線から5㎞強、三面口からは11㎞離れた、朝日連峰の最奥の一角。大朝日は西朝日に隠れているが、朝日連峰の西側の全景がほぼ見渡せる。南には巣戸々山、東には鷲ヶ巣山の双耳。少し横になって休み、そして帰途につく。

二等三角点

2005年当時のメモ「11:56大上戸頂上。二等三角点。正面に西朝日。大朝日はどこだ!? 西朝日の右肩に少し見えているのが大朝日のようだ。少しがっかり。祝瓶は三角形のぼんやりした大きな姿。竜門の肩に小屋。寒江山は全く違った形。昨晩冷やしたビールを飲む(だいぶぬるくなった)。ゆっくり食事。とりあえずは第一目標達成。ここにザックを置いて相模まで行ってみたい。12:34出発。タイガース・ザックのみ。しかし、遠山峰へのわずかな登りがこたえる。こんなにへばっていてはムリだ。遠山峰13:06で引き返す。残念。」 なお、「遠山峰」というのは、三面小屋の中にあった案内図の記載による。

 大上戸山から西の景観: 鷲ヶ巣山、道陸神峰?桝形山?化穴山?以東岳、相模山、寒江山、遠山峰

 帰路

 

ニッコウキスゲ

遠山峰まで来て相模山を見ると、その前に立つK6・岩峰がいかつく立ちはだかっている。もちろん、登り返しの方が標高差があるのでより辛い。遠山峰からの長い灌木トンネルの下りを淡々と下り、そこからゆっくり登り返していく。だいぶ薄暗くなってきた。K6・岩峰のところは、灌木を片手で掴み、岩の上から少し飛び降りる。前週、足が痛くなる夏靴(AKU・二代目)に苦労したが、おかげで歩き方が改善されてきた。足のかかと側でなくつま先側、かつ、小指のつま先側で歩くと、足裏全体で歩くようになり、足裏も足首も痛くならないようだ。左足の捻挫したところが痛み始めていたが、小指側で歩くようにすると、なぜか痛みがなくなっていった。

相模山・三角点峰と最高点峰

相模山まで登り返し、三角点に再会し、ツガザクラの密生している登山道の上に少し横になる。テントまであと1㎞。この手前あたりでウォークマンがバッテリー切れ。相模山から下っているときについに夕日が射し始める。それまでずっと顔を見せなかった太陽が、沈む直前に地平線上に赤い光を見せ始め、やがて歪んだ赤い夕陽が大きくなる。夕日の右に見えているのは桝形山1,331mだろうか。雪渓の下りでは一回転ぶ。どっちみち踏み跡はなく、硬くて踏み跡も作れず、足の裏全体で歩くしかないのだが、変に立ち止まろうとせず、滑ったらそのまま両足で滑るようにすればよいようだ。覚悟を決めると谷側に体重がかかるようになるためか、滑らなくなる。やがて傾斜が緩くなると楽になり、テントの真正面に到着。

ツガザクラ

シャクナゲ

相模山・頂上稜線の岩峰

夕日

出かける前にマットは膨らませておいたが、その下にアルミシートを敷き、インナーバッグを広げて着替え、テントに入る。朝露が出そうなので、靴もコンビニ袋に入れてテントの中にいれておく。食事は後回しでとりあえず仮眠だが、シュラフカバーを忘れてきたことにこのとき気づく。仕方ない。シュラフに入り、ジェネシスをウォークマンで聞こうとすると鳴らない。どうやら前週、バッテリー切れにしたまま充電し忘れていたらしい。がっくり。だがこの後、22時頃に起きるまで、ぐっすり眠る。この週末は30度と聞き、着替えは半袖を持ってきたのだが、寒かった。22時に起き、まずダウンの上下を着込む。湯を沸かし、野菜を入れ、吹きこぼれそうなのでテントの外で野菜(キャベツとマイタケ)を煮る。風が吹いていて火をつけにくかったが、ダウンのおかげで寒くはなかった。もってきてよかった。外には月が出ていて、ほんのり明るい。キャベツが硬いので時間をかけて煮込み、ナイフで刻んだソーセージを入れ、プラスチック容器に移し、シオコショーをかけて食べる。これを始めたのはトヨニに登った頃からだから、まだ4~5年。止められない。もう遅くなってしまったので、翌朝の分も食べ、最後にカフェオレ2杯分の湯を沸かし、カフェオレをゆっくり飲み、就寝。

(D2)

朝霞と以東岳と相模池

アラームは2時だったが、起きられず、2時半ごろに起きたと思う。まだ暗いが、テント撤収している間に明るくなるだろう。まずシュラフとダウンを収納。外は風が吹いていて寒そうなので、レインウェア上下を着込む。着替えて靴をはき、テントの外に出てからマットを収納してなかったのに気づき、ヒザをついて収納する。マットとシュラフを2段ザックの下に入れ、テントを押し込もうとすると入らない。どうなってるんだとしばらくじたばたし、ザックのベルトを緩めてないのに気づく。そうか、大上戸に往復するとき、中身を出してベルトを締めたんだった。ベルトを緩めると、テントもマットもシュラフも全部入った。

源蔵池

朝焼け雲

夜は月が出ていたのに、夜明け前は霧がかかって月は見えない。東側の主稜の向こうが明るくなりだしていて、ヘッドランプなしでも薄暗い程度になっていた。だが、テントを撤収し終わって歩き始めるころ、主稜も霧で見えなくなっていた。帰路の方角には(大上戸に向かう雪渓とは別の)雪渓が広がっており、その先の登山道が分からない。GPSで当たりをつけて歩いていき、あそこだろうと思って進んだところの少し左に登山道があった。ここも雪渓の上を100mくらい。尾根に上がると強い風が吹いていて、視界は数百メートル程度。このときは前日のうちに大上戸まで往復しておいてよかったと思った。

ツマトリソウ

ウラジロヨウラク

三方池付近から朝の寒江山

ウスユキソウたち

寒江山

北寒江山から寒江山に下っていくと、一面に咲いたウスユキソウに囲まれていた。思わずその花の間をさまよい歩く。前日も同じところを歩いていたが、このときは霧で視界がなく、風に吹かれてひらひら揺れている白い花に妙に親しみを感じた。こんにちは、ウスユキソウ。寒江山頂上で休みたかったが、風が強いので先に進む。追いついてきた男性は南寒江までで引き返したらしいが、この後、天気は回復していく。夜明けの気温上昇で霧が生じたが、強い風で運び去られたのだろう。南寒江とのコルでもウスユキソウの中を歩く。やあ、またいたね。

キジムシロ

ウスユキソウでいっぱい

南寒江山

キンポウゲ

寒江山 (南寒江山より)

南寒江山頂上の石柱

ハクサンチドリ

ウスユキソウたち

竜門山

竜門小屋には出発前の団体さんがいて、彼等の中のスペースにザックを下ろし、この日最初の休憩。ポカリ2本とペットボトル半分の水。この天気ならもういらないだろうと思って汲まなかったが、この後、快晴になった。ワイワイ言いながら団体さんが出発。大多数は下山したようだが、大朝日に登った人は幸運だったろう。彼等の後でゆっくり出発。二人連れが追いついてきたので、道を譲る。竜門山分岐から、100mほど先の竜門山頂上に行く。ここには何もないが、四方が開けていて、景観はよい。このときは大上戸も相模も姿を見せていて、別れを告げることができた。竜門山からの下りでは、三つの雪渓を慎重に下る。相模山の雪渓と違って柔らかく、踏み跡があるので、かかとで踏み跡に踏み込んで下る。果敢にグリセードで下った跡がついていたが、きちんと下れたのだろうか。ユウフン山への登り返しの時だったと思うが、でっかいピッケルを持って登っている若い二人がいた。

ミツガシワ

イワカガミ

チングルマたち

チングルマでいっぱい

 竜門山から西の景観: 小朝日岳、大朝日岳、中岳、西朝日岳、袖朝日岳、鷲ヶ巣山、大上戸山、相模山、寒江山、以東岳(雲の中)

青空と竜門山

ユウフン山の頂上に団体さんがたくさん立っているのが見える。快晴の青空が広がり、悔しがっている人もいたかもしれない。P6・1,540m頂上手前の草原で昼寝していると、3人組がやってきて記念撮影している。こんなに天気になるとは。ユウフン山に着いたときは一人(後から一人がやってくる)。レインウェアを脱ぎ、絶景を見ながらバナナを食べる。清太岩山へは灌木トンネルの辛い登り返しがあったが、頂上では休まずに通過。日差しが強いのでサングラスを出さねばとおもいつつ、もうすぐ林に入るだろうからと出さず。日差しに輝く白いタムシバや黄色いリュウキンカを撮影し、清太岩山から1㎞くらいだろうと思った水場へは思ったよりも早く着く。

 竜門山から西の景観: 小朝日岳、大朝日岳、中岳、西朝日岳、袖朝日岳、鷲ヶ巣山、大上戸山、相模山、寒江山、以東岳(雲の中)

(日暮沢への下降)

キスミレ

日暮沢小屋

水場で4度目の休憩。また横になって昼寝。とにかく心地よい。水場から登山口まで1㎞だろうと思ったが、もう少しあった。もう一度、マイナーピークのどこかで休憩し、最後の急な尾根を下り、ついに平坦な道に降り立つ。日暮沢小屋前の駐車場は半分ほどの入り。この日に下山して降りた人が駐車場の半分はいるということか。この日に登った人の車は道路脇に10台弱はあったと思う。日暮沢の水の流れている橋を渡り、駐車地点に着く。ゆっくり片づけ、小さなヘビイチゴを写して車を出す。この間にも、帰っていく車、やってくる車がいた。大きな葉をした、あの白い大きな花を咲かせるのはホオノキと言うらしい。大井沢の湯ったり館の風呂に入る。300円。広くはないが人も多くない。露天はないが木造で熱い湯。

日暮沢のコンクリ橋

ユウフン山と清太岩山(林道より)

湯ったり館

今回は林道を日暮沢小屋まで入れたので相模池まで14㎞→10㎞だったが、計画8時間をやや上回る8時間40分。テントから大上戸山まで往復8㎞は、計画4時間をだいぶ越えて6時間かかった。それほどゆっくり登ったつもりはないが、夜明け前から登ると余裕がある分ペースは速くならないので、結果的に時間はかかるのだろう。因みに、2002年の初日は竜門分岐まで3時間半(今回5時間半)、北寒江山まで6時間半(今回8時間)とずいぶん差がある。やはり若いときは体力があったということか。

問合せ・コメント等、メール宛先: kawabe.goro@meizan-hitoritabi.com