静岡県 蝙蝠岳2,865m、塩見岳(東峰・最高点3,052m、西峰・三角点3,047m)、本谷山2,658m
2017年9月30日~10月2日(テント2泊)
(蝙蝠岳)静岡の百山
(塩見岳)日本百名山
257
すっかり涼しくなって、朝は肌寒いほど
澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込み
もう紅葉の山道を登る
秋の抜けるような青空が広がれば
心は山野を駆け巡る
☀☀☀☀☀
ネットで読んだ木橋というのは、山腹の山道が崩れて途切れたところに細木を組んで渡したもので、最初のはやや不安程度、次のは危ない感じ、そして壊れそうな木橋を恐る恐る渡る。
水場のところで2リットル汲んでいく。ザックの重さがだんだんこたえてくる。重い・・・。
塩川からの道との合流点に着くが、塩川方面は通行禁止になっていた。塩見岳に登ったのは2005年9月末だから、ちょうど12年前。そのときは塩川から登り、この合流点から登山道が格段に歩きやすくなったという記憶がある。途中の林道が通れないらしいが、鳥倉の方が数段、楽だろう。
そして樹間に塩見が現われる。紅葉の稜線の向こうににょっきり突き出た巨大なタコ入道。すごい。
二日目夜明け前。本谷山もまっくらだったが、塩見や南アルプスの稜線が白んでいる。この後夜が明け、シルエットの塩見を何度も写す。コルに下り、登り返しの途中で休憩。おじさんが登っていく。よろよろと。しかし、私はあの人よりももっとよろよろに違いない。
分岐の先で視界が開け、中央アルプス、甲斐駒、間ノ岳などが見える。北アルプスの乗鞍岳、槍・穂高、白馬岳のあたりもはっきり見えている。「今日はすばらしい天気だねえ」と言って登っていく男性。こんな良い天気の日に登れて、私も幸運だ。この幸運を逃すまい。
狭い塩見岳・東峰頂上は、先にいた二人で満員状態。写真を撮っている二人を待ち、標識を写してから縦走路に向かう。東峰にはどんどん人が集まり、盛況。塩見の北から大きく東に回り込んだ先にある蝙蝠は、ゆったりした三角形のおちついた姿をしていて、そこに至る稜線は、手前部分を除き、歩きやすそうに見えた。こいつは確かに4㎞はあるなあ。よし、行くぞ。私は覚悟を決め、北の縦走路へ下って行った。こんな良い天気の日は、もう二度と巡り合えないだろう。この日がチャンスなのだ。
P5・2,920mの上で、私は南アルプスの諸峰に囲まれていた。仙丈、甲斐駒、間ノ岳、農鳥。南には悪沢と荒川。荒川岳の中岳と前岳は、やっぱり一つの山に見えるなあ。快晴の日差しはもう夏の太陽ではない。横になって少し昼寝。うとうとして、何か夢を見ていてはっと目覚めたら、南アルプスの中だった。ここからは広い稜線漫歩。ゆったりした三角形の蝙蝠は形を変えず、だんだん大きくなる。
蝙蝠岳の頂上標識の北側で休んでいると、背後で物音がする。振り返るとなんと、人がいた。この肌寒いのに、半袖短パンに地下足袋の若者。トレイル・ラン・スタイル。こんにちは、と若者。ああ、ご苦労さん、と私。なるほど、これだけ軽装スタイルで来るのが正解なのかもしれない。だけど風邪をひいちゃうな。帰りしなに写真を取り合う。いい感じですね-、という若者。南アルプスのど真ん中にいる感じだね、と言う私。軽快に走り去った若者の後で、とぼとぼと歩く私。ナッツを一袋出して、食べながら帰路を歩む。
KKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKKK
D1
9月最終週、全国的に晴予報。連休ではないが、蝙蝠か八ヶ岳に行こう。来週まで待つと、また今年も行かずじまいになるだろう。八ヶ岳の方が楽だが、しんどい蝙蝠に挑戦しよう。蝙蝠のための準備は全て木曜。靴、レキ・スティック、ポカリ6本、ダウン上下、出かける寸前にインナー薄着とタイツを持って行ったが、正解だった。風邪気味。
波志江PAで弁当を買い、横川SAで車中泊。前週の岩手は日中は暑くて半袖短パンだったのに、横川は肌寒かった。ダウン上下を着て寝る。翌朝も寒く、インナーとタイツを着込む。持ってきてよかった。寝たのは0時近く、翌朝は3時半に起きたと思う。睡眠時間3時間半。昔はほとんど寝ないで登っていたが、今はきつい。
佐久で降り、R142とR152を走る。佐久市内で迷い、白樺湖でトイレに寄り、茅野から南アルプス方面に向かう。100㎞強を4時間近くかかったと思う。高速の方がだいぶ早いだろう。美和湖の先でえらく細い道となる。対向車が来ると慎重にすれ違う。鹿塩の道路脇のトイレに寄り、鳥倉林道に上がる。予想通り、立派な舗装路を延々と登る。最初に見えたのは中央アルプス。あの百閒ナギは遠目でもすぐ分かる。その左右が南駒ヶ岳と空木岳。その右にある木曽駒は、小さく尖った宝剣が目印。
南の谷向こうに見えていたのは奥茶臼山だった。予想通り、登山口の2㎞ほど手前にゲート。しかもゲート前駐車場は満車で、1㎞ほど手前の第二駐車場に停める。途中の道脇に停めている人たちもいたが、たいして変わるまい。日が射してきて、暑くなると思い、インナーとタイツを脱いでいくが、二つともザックにいれていく。
途中では登山する人たちの気配もなく、釣り人を見たくらいだったが、こんなに塩見に登っているのか。天気予報では、前日まで雨だが、土曜は晴、日曜は晴時々曇、月曜は曇時々晴、だったと思うが、土曜のこの日は雲が多い。ブルートゥース・イヤホンでホールズワースを聞く。2000年アムステルダムのテキサス、ややぎこちない速弾き。イヤホンのバッテリーが切れ、充電しておいて、もう一つのイヤホンで聞き続ける。山腹の舗装路を歩くと、カーブした向かいに鳥倉山が大きく、その山腹に小さくゲート駐車場が見える。やがて砂利道となり、その先に登山口。自転車が数台。この日、約6㎞のうち半分来てしまったので、だいぶ早く着きそうだな、と思ったが、甘かった。登山届を出して登りにかかる。
降りてくる人たちにたくさん会う。2度目の休憩でパンを食べる。ゆっくり登っていると、数人に抜かれる。ネットで読んだ木橋というのは、山腹の山道が崩れて途切れたところに細木を組んで渡したもので、最初のはやや不安程度、次のは危ない感じ、そして壊れそうな木橋を恐る恐る渡る。水場のところで、「三伏峠の水場は今年度は撤去しました。テント泊使用する方、ここの水場より水を持参してください」という表示があり、水サックに2リットル汲んでいく。ザックの重さがだんだんこたえてくる。重い・・・。塩川からの道との合流点に着くが、塩川方面は通行禁止になっていた。塩見岳に登ったのは2005年9月末だから、ちょうど12年前。そのときは塩川から登り、この合流点から登山道が格段に歩きやすくなったという記憶がある。途中の林道が通れないらしいが、鳥倉の方が数段、楽だろう。だいぶくたびれ、ここでも休憩。
樹間の北の風景が次第に見えてくる。最初に同定できたのは本谷山。すっきりした緑の山が紅葉の山になりかけている。青空の下に見えた最初の巨人は農鳥岳・西峰のようだ(すぐ右に農鳥岳・東峰、左に間ノ岳があるが、これらが揃って見えたのは塩見岳の稜線に上がってから)。数分後、仙丈岳は本谷山の左手に現われ、仙丈の右手に、雪のように真っ白な甲斐駒が右下に摩利支天を従えている。そして樹間に塩見が現われる。紅葉の稜線の向こうににょっきり突き出た巨大なタコ入道。すごい。
12年ぶりの三伏峠。あまり変わってないような気がする。テント場にはテント10帳くらい。まだスペースはある。林の上ににょっきり立っている塩見は巨大なタコ入道。テントを張ってから受付。2泊1,400円。三伏小屋は明日までらしい。受付をしていた男性二人は素泊まりで6000円。水もビールも買っていた。その手があったか。
汗をかいているのに寒い。こいつはおかしい。せめてこの日、烏帽子岳くらいは登っておこうと思っていたが、この体調では無理だ。明日もダメかもしれない。とにかくテントに入って着替え、シュラフに入るが、夏シュラフでは寒い。ダウンを着込み、最後にはインナーとタイツも着込む。気付かぬうちに風邪をひいていたようだ。頭も痛い。最悪。暗くなる前に起き、野菜スープ(キャベツ、マイタケ、ソーセージに塩コショウ)に白米のぞうすいを作り、食欲は無かったが、無理やり全部食べる。二つもってきたヘッドランプの一つが点かず、調べると、電池との接触部がサビていた。湿ったままにしておいたためか。もう一つのブラックダイヤモンドのヘッドランプを点ける。
D2
アラームが2時に鳴る前に目が覚め、トイレに行く。1時頃。頭痛は治っている。大丈夫だ。そこでアラームが鳴る直前に起き、ミニカップ麺とココアの食事をし、ヘッドランプで出発。私が出かけるころには、周囲のテントも物音がしていた。だが、蝙蝠まで行く人は多くはなかろう。少し登って、まだ真っ暗な三伏山に着く。東には真っ黒な塩見、西には町並みの明かりが近い。伊那から飯田のあたりだろう。林の中で着てきたダウンの上を脱ぐ。インナーとタイツは着たまま。すると、もう追いついてきた人が行く。この後も何人もの人たちに抜かれる。二人目だったと思うが、ものすごい速さで斜面を登って行った男性がいた。軽ザックだったので、小屋からかな。
本谷山もまっくらだったが、塩見や南アルプスの稜線が白んでいる。本谷山の北に進むと登山道がない。真っ暗な頂上でGPSも見ながら探し、東側から北に伸びる登山道を見つける。この後夜が明け、シルエットの塩見を何度も写す。コルに下り、登り返しの途中で休憩。おじさんが登っていく。よろよろと。しかし、私はあの人よりももっとよろよろに違いない。ウォークマンがバッテリー切れとなり、充電。
下っていく人たち、団体さんたち何組かとすれ違う。塩見小屋に泊まった人たちだろうか。この日の朝に登った人はまだだろう。分岐の先で視界が開け、中央アルプス、甲斐駒、間ノ岳などが見える。北アルプスの乗鞍岳、槍・穂高、白馬岳のあたりもはっきり見えている。「今日はすばらしい天気だねえ」と言って登っていく男性。こんな良い天気の日に登れて、私も幸運だ。この幸運を逃すまい。午後には雲がでてくるだろうから、今のうちに何枚も写す。
霜柱の溶けかけた道。塩見小屋で休憩し、バナナ2本食べる。ここはセルフ・トイレで、入口の袋を200円で買い、中で使うらしい。女性が掃除中に200円払って袋を手にトイレに入っていく男性。面倒そうだが、将来はみなこんな風になるのか。
ここから見る塩見は西側にある2,920m岩峰(天狗岩)との双耳になっている。切り立った岩峰はとても登れそうには見えない。ハイマツの切り分けを歩き、西尾根の南側をトラバースし、2,920m岩峰の直下を通過。狭いコルを渡り、スティックを持ったまま、塩見への岩場を登っていく。下ってくる人がたくさんいて、先に下ってもらう。大斜面の南側をぐるぐる登り、頂上尾根西側に到達し、そこから頂上はすぐだった。追いついてきた二人と同時に塩見岳・西峰に到達。三等三角点を確認。初めて塩見に登り、大感激の男性は、もう一人に写真を撮ってもらっている。背景には富士山。私は東峰に向かう。というか、蝙蝠に向かう。
狭い塩見岳・東峰頂上は、先にいた二人で満員状態。写真を撮っている二人を待ち、標識を写してから縦走路に向かう。東峰にはどんどん人が集まり、盛況。蝙蝠はあれか、思ったより近いな。と思ったのも束の間。それは塩見岳南陵の2,941m峰で、蝙蝠はもっと東にあった。塩見の北から大きく東に回り込んだ先にある蝙蝠は、ゆったりした三角形のおちついた姿をしていて、そこに至る稜線は、手前部分を除き、歩きやすそうに見えた。こいつは確かに4㎞はあるなあ。よし、行くぞ。私は覚悟を決め、北の縦走路へ下って行った。こんな良い天気の日は、もう二度と巡り合えないだろう。この日がチャンスなのだ。
縦走路には植生回復の養生をしてある斜面が数か所。下る途中のハイマツの小広場で休憩。塩見への登りでだいぶ疲れていて、横になって休憩。人もいないので、ホールズワースを大きな音で鳴らしていく。尾根の西側のトラバースを見逃し、ハイマツの急斜面を下り、両側が切れ落ちた足幅尾根を通過し、分岐標識に着く。左は熊ノ平、右が蝙蝠岳。右に進む。ここからP5・2,920mまでが核心部。細い岩尾根。背後には塩見がものすごく高くそびえていて、帰りの登り返しが辛そう。頂上にいる人が何人も、いつまでも見えていた。誰も私には気づいてないんだろうな。
最初のP1は北側をトラバースしたと思う。ガレ場の、ほとんど踏み跡が消えかけたトラバース。手前の岩のペンキと向かいのリボンが目印。一番強烈な印象の小タコ入道のP2・2,940mは、ほとんど真上を越えていく。が、頂上付近にトラバース路があり、帰りはそこを通る。トラバースの方がかなり楽だと思うが、頂上からの眺めも悪くない。P3ではルートが見当たらず、まっすぐ登ろうとして止め、いったん戻って見直し、やっぱりまっすぐかと思い、更によく見て左の灌木の間にルートを発見。古いリボンがあった。P4のあたりには小ピークがいくつかあり、尖がったピークは北側をトラバース、次のピークをまっすぐ登ろうとしていると、左の灌木の中から突然、男性が現われた。びっくり。それは早朝に追い越して行った軽ザックの男性で、こんにちは、と言ってスタスタと歩いて行った。もう往復してきたのか。ものすごい速さ。彼の出てきた灌木ルートを進み、細尾根を渡ると核心部は終了。
P5・2,920mの上で、私は南アルプスの諸峰に囲まれていた。仙丈、甲斐駒、間ノ岳、農鳥。南には悪沢と荒川。荒川岳の中岳と前岳は、やっぱり一つの山に見えるなあ。快晴の日差しはもう夏の太陽ではない。横になって少し昼寝。うとうとして、何か夢を見ていてはっと目覚めたら、南アルプスの中だった。えらく現実的な夢だったが、思い出せない。ここからは広い稜線漫歩。たらたらと歩き、P6は南側をトラバース。ゆったりした三角形の蝙蝠は形を変えず、だんだん大きくなる。P7でも昼寝をして、また夢を見る。もうだいぶ疲れていた。
P8・2,758mはあまり目立たない最低コル手前の小ピークで、その手前からハイマツと灌木の切り分け道となり、P8を越えると草原の小世界に迷い込んでいた。最低コルの草原と灌木の小世界。
また視界が広がったとき、蝙蝠はもう目の前に大きかった。目の前のP9には並べたような縦の岩。P9の左のハイマツの切り分けを越えると、行く手にP10が見える。あれが頂上か、と思って気持ちを高めて登ったが、着いてみると、更に100mほど先に更に高いピークがあった。やられた、と思いながら、黙々と登る。頂上目前まで登って、突然、二つの木標が見えた。こんなに立派な頂上標識があるとは思っていなかった。それは、一つは道標、一つは蝙蝠岳の頂上標識で、その根元に三等三角点があった。感激。ついに蝙蝠岳に登ることができた。叫びはしなかったが、とにかく、うれしかった。ここまで来て、本当に良かった。時間を見て、まだ12時15分だったので、感謝。これでなんとか明るいうちに塩見を越えられるだろう。
蝙蝠岳の頂上標識の北側で休んでいると、背後で物音がする。振り返るとなんと、人がいた。この肌寒いのに、半袖短パンに地下足袋の若者。トレイル・ラン・スタイル。こんにちは、と若者。ああ、ご苦労さん、と私。なるほど、これだけ軽装スタイルで来るのが正解なのかもしれない。だけど風邪をひいちゃうな。帰りしなに写真を取り合う。いい感じですね-、という若者。南アルプスのど真ん中にいる感じだね、と言う私。軽快に走り去った若者の後で、とぼとぼと歩く私。ナッツを一袋出して、食べながら帰路を歩む。P5までに一袋食べる。もう二つあったが、食べておけばよかったのかもしれない。
P8・2,758m手前の草原でまた昼寝。また夢を見る。風もなく、少し暑いくらい。へばっていて、登り返しのときは時々立ち止まって休まないといけなくなった。P6をトラバースし、P5の手前で休憩。稜線上はこの時は風があり、寒かった。P2のトラバース路を見つけて簡単に越え、P1の危ないガレ場トラバースを通過し、これで蝙蝠の核心部は終了。縦走路分岐で休憩。次は塩見への登り返し。考えてみると、塩見小屋から塩見岳への強烈な岩登りに比べれば、この北縦走路から塩見岳への登りは単純な尾根登り。傾斜も見た目ほどではない。ただ、私は疲れていた。休み休み登る。
ようやく塩見岳・東峰にたどり着く。もう誰もいない。一番高いところにも登り、西峰へ。西峰の三角点に再会し、すぐに下りにかかる。風が強く、寒い。スティックを使って岩場をずんずん下る。時々手を使うが、スティックがある方が断然速い。ガスが舞う狭い釣り尾根を越えて2,920m峰(天狗岩)に登り返し、これで塩見の岩場も終了。岩峰を越えた先で休憩。ここでヘッドランプを出す。塩見小屋には明かりが点いていたが、寄らずに通り過ぎる。
権右衛門山・分岐で休憩。ヘッドランプを消すと一瞬真っ暗だが、雲間に月が出ていてほのかに明るい。そこから本谷まで2㎞、三伏峠まで4㎞なのだが、このあたりでがっくりペースが落ち、大きく下った地点で休憩。こんなに疲れていてはテントに戻っても寝るだけだろう。何でもいいからシュラフに入って横になりたい。立ったまま休むと腰が痛いのが我慢できないが、昼ごろに痛み出していた頭痛は収まっていて、歩き続けることはできる。
ようやく本谷山に着き、最後の休憩。横になるが、寒くてじっとしていられない。三伏山への登り返しもきつかった。休み休み登り続け、やっと頂上。すぐに下りにかかる。下ってから軽い登り返しとなり、行く手で物音がすると思ったら、三伏峠だった。私のテント以外には2つのみ。夢にまで見たテントを開き、ザックをしまい、外で着替えをする。ぼこぼこに疲れているはずだが、汚れているレインウェアを脱いでたたみ、きちんと着替え、最後にダウンを着こんでシュラフに入る。夏シュラフは無いも同然の薄さに感じたが、ダウンを着てしまえばもう暖かい。ついでにアラームも4時にセットしてから寝る。疲れていたはずなのに、やるべきことは体が覚えていて、やってくれた。
D3
夜中に目が覚めたら3時。一応起きてトイレに行くが、小屋のトイレはもう閉鎖されていた。三伏小屋は昨日で終了、冬季小屋を使うように貼紙がしてあった。4時のアラームでなかなか起きられず、なんとか起き上がり、昨晩食べなかった野菜スープだけは2回に分けて食べる。最初はテントの中で茹でるが湯気が大量に出るので、2回目は外で茹でる。二日前はテントの中でもこんなに湯気は出なかった。そんなに寒くないということだ。残った水でココアを作る。これでちょうど2リットル。
外で着替え、寒くはないと思ったが、風邪気味なのを考え、インナーとタイツ、それにレインウェアを着る。ザックは軽くはないが、下りなら休まずにどんどん進む。それでも休憩は取ろうと思い、中間地点で1回、登山口で1回とることにする。下っていく途中で数人、登ってくる人に会う。テントか冬季小屋か。この日は昼前から雨になったが、大丈夫だっただろうか。1/10毎の道標の5/10地点の少し先、2,160mのコルで休憩。赤い石標のあるこのコルで、二日前も休んだかもしれない。
ゲート前の駐車場はガラガラ。10台未満だったと思う。ようやく第二駐車場に着き、ゆっくり着替え、片づける。濡れたテントを乾かしたかったが、天気が悪いので結局止める。小ザックの中の湿った小物を助手席の上に並べて乾かす。ヘッドランプのようになってはいけない。そういえば、最小光度で二日間使い続けたブラックダイヤモンドのヘッドランプは電池は切れなかった。だが、二つ目のヘッドランプを別に用意しよう。
D1
中央アルプス
9月最終週、全国的に晴予報。連休ではないが、蝙蝠か八ヶ岳に行こう。来週まで待つと、また今年も行かずじまいになるだろう。八ヶ岳の方が楽だが、しんどい蝙蝠に挑戦しよう。蝙蝠のための準備は全て木曜。靴、レキ・スティック、ポカリ6本、ダウン上下、出かける寸前にインナー薄着とタイツを持って行ったが、正解だった。風邪気味。
南駒ヶ岳、百閒ナギ、赤梛岳、空木岳
波志江PAで弁当を買い、横川SAで車中泊。前週の岩手は日中は暑くて半袖短パンだったのに、横川は肌寒かった。ダウン上下を着て寝る。翌朝も寒く、インナーとタイツを着込む。持ってきてよかった。寝たのは0時近く、翌朝は3時半に起きたと思う。睡眠時間3時間半。昔はほとんど寝ないで登っていたが、今はきつい。
宝剣岳、木曽駒ヶ岳
佐久で降り、R142とR152を走る。佐久市内で迷い、白樺湖でトイレに寄り、茅野から南アルプス方面に向かう。100㎞強を4時間近くかかったと思う。高速の方がだいぶ早いだろう。美和湖の先でえらく細い道となる。対向車が来ると慎重にすれ違う。鹿塩の道路脇のトイレに寄り、鳥倉林道に上がる。予想通り、立派な舗装路を延々と登る。最初に見えたのは中央アルプス。あの百閒ナギは遠目でもすぐ分かる。その左右が南駒ヶ岳と空木岳。その右にある木曽駒は、小さく尖った宝剣が目印。
ゲートと満車の駐車場
南の谷向こうに見えていたのは奥茶臼山だった。予想通り、登山口の2㎞ほど手前にゲート。しかもゲート前駐車場は満車で、1㎞ほど手前の第二駐車場に停める。途中の道脇に停めている人たちもいたが、たいして変わるまい。日が射してきて、暑くなると思い、インナーとタイツを脱いでいくが、二つともザックにいれていく。
鳥倉山と山腹に小さくゲート駐車場
途中では登山する人たちの気配もなく、釣り人を見たくらいだったが、こんなに塩見に登っているのか。天気予報では、前日まで雨だが、土曜は晴、日曜は晴時々曇、月曜は曇時々晴、だったと思うが、土曜のこの日は雲が多い。ブルートゥース・イヤホンでホールズワースを聞く。2000年アムステルダムのテキサス、ややぎこちない速弾き。イヤホンのバッテリーが切れ、充電しておいて、もう一つのイヤホンで聞き続ける。山腹の舗装路を歩くと、カーブした向かいに鳥倉山が大きく、その山腹に小さくゲート駐車場が見える。やがて砂利道となり、その先に登山口。自転車が数台。この日、約6㎞のうち半分来てしまったので、だいぶ早く着きそうだな、と思ったが、甘かった。登山届を出して登りにかかる。
奥茶臼山
鳥倉登山口
紫の花(ヤマハッカ?)
ホタルブクロ
頼りなげな木橋
降りてくる人たちにたくさん会う。2度目の休憩でパンを食べる。ゆっくり登っていると、数人に抜かれる。ネットで読んだ木橋というのは、山腹の山道が崩れて途切れたところに細木を組んで渡したもので、最初のはやや不安程度、次のは危ない感じ、そして壊れそうな木橋を恐る恐る渡る。
壊れそうな木橋
水場の標示
水場のところで、「三伏峠の水場は今年度は撤去しました。テント泊使用する方、ここの水場より水を持参してください」という表示があり、水サックに2リットル汲んでいく。ザックの重さがだんだん答えてくる。重い・・・。塩川からの道との合流点に着くが、塩川方面は通行禁止になっていた。塩見岳に登ったのは2005年9月末だから、ちょうど12年前。そのときは塩川から登り、この合流点から登山道が格段に歩きやすくなったという記憶がある。途中の林道が通れないらしいが、鳥倉の方が数段、楽だろう。だいぶくたびれ、ここでも休憩。
谷の紅葉
本谷山
樹間の北の風景が次第に見えてくる。最初に同定できたのは本谷山。すっきりした緑の山が紅葉の山になりかけている。
農鳥岳・西峰
青空の下に見えた最初の巨人は農鳥岳・西峰のようだ(すぐ右に農鳥岳・東峰、左に間ノ岳があるが、これらが揃って見えたのは塩見岳の稜線に上がってから)。
甲斐駒ヶ岳
数分後、仙丈岳は本谷山の左手に現われ、仙丈の右手に、雪のように真っ白な甲斐駒が右下に摩利支天を従えている。
塩見岳
そして樹間に塩見が現われる。紅葉の稜線の向こうににょっきり突き出た巨大なタコ入道。すごい。
三伏峠
12年ぶりの三伏峠。あまり変わってないような気がする。テント場にはテント10帳くらい。まだスペースはある。林の上ににょっきり立っている塩見は巨大なタコ入道。テントを張ってから受付。2泊1,400円。三伏小屋は明日までらしい。受付をしていた男性二人は素泊まりで6000円。水もビールも買っていた。その手があったか。
三伏峠小屋
テントサイト
汗をかいているのに寒い。こいつはおかしい。せめてこの日、烏帽子岳くらいは登っておこうと思っていたが、この体調では無理だ。明日もダメかもしれない。とにかくテントに入って着替え、シュラフに入るが、夏シュラフでは寒い。ダウンを着込み、最後にはインナーとタイツも着込む。気付かぬうちに風邪をひいていたようだ。頭も痛い。最悪。暗くなる前に起き、野菜スープ(キャベツ、マイタケ、ソーセージに塩コショウ)に白米のぞうすいを作り、食欲は無かったが、無理やり全部食べる。二つもってきたヘッドランプの一つが点かず、調べると、電池との接触部がサビていた。湿ったままにしておいたためか。もう一つのブラックダイヤモンドのヘッドランプを点ける。
三伏峠から見る塩見岳
D2
夜明け前
アラームが2時に鳴る前に目が覚め、トイレに行く。1時頃。頭痛は治っている。大丈夫だ。そこでアラームが鳴る直前に起き、ミニカップ麺とココアの食事をし、ヘッドランプで出発。私が出かけるころには、周囲のテントも物音がしていた。だが、蝙蝠まで行く人は多くはなかろう。少し登って、まだ真っ暗な三伏山に着く。東には真っ黒な塩見、西には町並みの明かりが近い。伊那から飯田のあたりだろう。林の中で着てきたダウンの上を脱ぐ。インナーとタイツは着たまま。すると、もう追いついてきた人が行く。この後も何人もの人たちに抜かれる。二人目だったと思うが、ものすごい速さで斜面を登って行った男性がいた。軽ザックだったので、小屋からかな。
本谷山もまっくらだったが、塩見や南アルプスの稜線が白んでいる。本谷山の北に進むと登山道がない。真っ暗な頂上でGPSも見ながら探し、東側から北に伸びる登山道を見つける。この後夜が明け、シルエットの塩見を何度も写す。コルに下り、登り返しの途中で休憩。おじさんが登っていく。よろよろと。しかし、私はあの人よりももっとよろよろに違いない。ウォークマンがバッテリー切れとなり、充電。
権右衛門山分岐付近からの眺望: 本谷山、中央アルプス、北アルプス、仙丈、甲斐駒、間ノ岳、農鳥
乗鞍岳
下っていく人たち、団体さんたち何組かとすれ違う。塩見小屋に泊まった人たちだろうか。この日の朝に登った人はまだだろう。分岐の先で視界が開け、中央アルプス、甲斐駒、間ノ岳などが見える。北アルプスの乗鞍岳、槍・穂高、白馬岳のあたりもはっきり見えている。「今日はすばらしい天気だねえ」と言って登っていく男性。こんな良い天気の日に登れて、私も幸運だ。この幸運を逃すまい。午後には雲がでてくるだろうから、今のうちに何枚も写す。
穂高岳と槍ヶ岳
鹿島槍ヶ岳、五竜岳、白馬岳
甲斐駒ヶ岳、間ノ岳、農鳥岳
仙丈岳
日の出と塩見岳
塩見小屋
霜柱の溶けかけた道。塩見小屋で休憩し、バナナ2本食べる。ここはセルフ・トイレで、入口の袋を200円で買い、中で使うらしい。女性が掃除中に200円払って袋を手にトイレに入っていく男性。面倒そうだが、将来はみなこんな風になるのか。
日の出と塩見岳(その2)
ここから見る塩見は西側にある2,920m岩峰との双耳になっている。切り立った岩峰はとても登れそうには見えない。ハイマツの切り分けを歩き、西尾根の南側をトラバースし、2,920m岩峰の直下を通過。狭いコルを渡り、スティックを持ったまま、塩見への岩場を登っていく。下ってくる人がたくさんいて、先に下ってもらう。
塩見小屋のピーク2,766m
2,920m峰付近からの眺望: 悪沢岳、荒川岳、小河内岳、烏帽子岳、三伏峠、本谷山、中央アルプス、北アルプス、仙丈岳
悪沢岳と荒川岳
兎岳、中盛丸山、大沢岳
三伏峠小屋
恵那山と本谷山
塩見岳と秋の太陽
甲斐駒ヶ岳
間ノ岳と農鳥岳
塩見岳・西峰頂上標識と富士山
大斜面の南側をぐるぐる登り、頂上尾根西側に到達し、そこから頂上はすぐだった。追いついてきた二人と同時に塩見岳・西峰に到達。三等三角点を確認。初めて塩見に登り、大感激の男性は、もう一人に写真を撮ってもらっている。背景には富士山。私は東峰に向かう。というか、蝙蝠に向かう。
富士山
塩見岳・東峰から見る西峰
塩見岳・東峰頂上標識と悪沢岳
狭い塩見岳・東峰頂上は、先にいた二人で満員状態。写真を撮っている二人を待ち、標識を写してから縦走路に向かう。東峰にはどんどん人が集まり、盛況。蝙蝠はあれか、思ったより近いな。と思ったのも束の間。それは塩見岳南陵の2,941m峰で、蝙蝠はもっと東にあった。塩見の北から大きく東に回り込んだ先にある蝙蝠は、ゆったりした三角形のおちついた姿をしていて、そこに至る稜線は、手前部分を除き、歩きやすそうに見えた。こいつは確かに4㎞はあるなあ。よし、行くぞ。私は覚悟を決め、北の縦走路へ下って行った。こんな良い天気の日は、もう二度と巡り合えないだろう。この日がチャンスなのだ。
富士山と蝙蝠岳
縦走路には植生回復の養生をしてある斜面が数か所。下る途中のハイマツの小広場で休憩。塩見への登りでだいぶ疲れていて、横になって休憩。人もいないので、ホールズワースを大きな音で鳴らしていく。尾根の西側のトラバースを見逃し、ハイマツの急斜面を下り、両側が切れ落ちた足幅尾根を通過し、分岐標識に着く。左は熊ノ平、右が蝙蝠岳。右に進む。ここからP5・2,920mまでが核心部。細い岩尾根。背後には塩見がものすごく高くそびえていて、帰りの登り返しが辛そう。頂上にいる人が何人も、いつまでも見えていた。誰も私には気づいてないんだろうな。
蝙蝠岳へのルート前半: 岩尾根のP1とP2
縦走路から見る塩見岳
縦走路分岐
間ノ岳と農鳥岳
P4手前の岩峰
最初のP1は北側をトラバースしたと思う。ガレ場の、ほとんど踏み跡が消えかけたトラバース。手前の岩のペンキと向かいのリボンが目印。一番強烈な印象の小タコ入道のP2・2,940mは、ほとんど真上を越えていく。が、頂上付近にトラバース路があり、帰りはそこを通る。トラバースの方がかなり楽だと思うが、頂上からの眺めも悪くない。P3ではルートが見当たらず、まっすぐ登ろうとして止め、いったん戻って見直し、やっぱりまっすぐかと思い、更によく見て左の灌木の間にルートを発見。古いリボンがあった。P4のあたりには小ピークがいくつかあり、尖がったピークは北側をトラバース、次のピークをまっすぐ登ろうとしていると、左の灌木の中から突然、男性が現われた。びっくり。それは早朝に追い越して行った軽ザックの男性で、こんにちは、と言ってスタスタと歩いて行った。もう往復してきたのか。ものすごい速さ。彼の出てきた灌木ルートを進み、細尾根を渡ると核心部は終了。
蝙蝠岳と笊ヶ岳
黄色い花(キンポウゲ?)
P4・2,900m
塩見岳とP2・2,940m
P5付近からの眺望: 仙丈岳、甲斐駒、間ノ岳、農鳥岳
富士山とP6、蝙蝠岳、笊ヶ岳
P5・2,920mの上で、私は南アルプスの諸峰に囲まれていた。仙丈、甲斐駒、間ノ岳、農鳥。南には悪沢と荒川。荒川岳の中岳と前岳は、やっぱり一つの山に見えるなあ。快晴の日差しはもう夏の太陽ではない。横になって少し昼寝。うとうとして、何か夢を見ていてはっと目覚めたら、南アルプスの中だった。えらく現実的な夢だったが、思い出せない。ここからは広い稜線漫歩。たらたらと歩き、P6は南側をトラバース。ゆったりした三角形の蝙蝠は形を変えず、だんだん大きくなる。P7でも昼寝をして、また夢を見る。もうだいぶ疲れていた。
P5付近からの眺望: 2,941m峰、塩見岳、P2
草原コルと蝙蝠岳
P8・2,758mはあまり目立たない最低コル手前の小ピークで、その手前からハイマツと灌木の切り分け道となり、P8を越えると草原の小世界に迷い込んでいた。最低コルの草原と灌木の小世界。
赤い葉(ウラシマツツジ)
P8からの眺望: 塩見岳とルート尾根(P1~P7)
P10
また視界が広がったとき、蝙蝠はもう目の前に大きかった。目の前のP9には並べたような縦の岩。P9の左のハイマツの切り分けを越えると、行く手にP10が見える。あれが頂上か、と思って気持ちを高めて登ったが、着いてみると、更に100mほど先に更に高いピークがあった。やられた、と思いながら、黙々と登る。頂上目前まで登って、突然、二つの木標が見えた。こんなに立派な頂上標識があるとは思っていなかった。それは、一つは道標、一つは蝙蝠岳の頂上標識で、その根元に三等三角点があった。感激。ついに蝙蝠岳に登ることができた。叫びはしなかったが、とにかく、うれしかった。ここまで来て、本当に良かった。時間を見て、まだ12時15分だったので、感謝。これでなんとか明るいうちに塩見を越えられるだろう。
蝙蝠岳頂上と富士山
蝙蝠岳の頂上標識の北側で休んでいると、背後で物音がする。振り返るとなんと、人がいた。この肌寒いのに、半袖短パンに地下足袋の若者。トレイル・ラン・スタイル。こんにちは、と若者。ああ、ご苦労さん、と私。なるほど、これだけ軽装スタイルで来るのが正解なのかもしれない。だけど風邪をひいちゃうな。帰りしなに写真を取り合う。いい感じですね-、という若者。南アルプスのど真ん中にいる感じだね、と言う私。軽快に走り去った若者の後で、とぼとぼと歩く私。ナッツを一袋出して、食べながら帰路を歩む。P5までに一袋食べる。もう二つあったが、食べておけばよかったのかもしれない。
富士山と徳右衛門岳
塩見岳とルート尾根(P1~P10)
P8・2,758m手前の草原でまた昼寝。また夢を見る。風もなく、少し暑いくらい。へばっていて、登り返しのときは時々立ち止まって休まないといけなくなった。P6をトラバースし、P5の手前で休憩。稜線上はこの時は風があり、寒かった。P2のトラバース路を見つけて簡単に越え、P1の危ないガレ場トラバースを通過し、これで蝙蝠の核心部は終了。縦走路分岐で休憩。次は塩見への登り返し。考えてみると、塩見小屋から塩見岳への強烈な岩登りに比べれば、この北縦走路から塩見岳への登りは単純な尾根登り。傾斜も見た目ほどではない。ただ、私は疲れていた。休み休み登る。
P9の縦長の岩
雲の上の仙丈岳
白い花••••••イワツメクサ?
雲をたなびく塩見岳
ようやく塩見岳・東峰にたどり着く。もう誰もいない。一番高いところにも登り、西峰へ。西峰の三角点に再会し、すぐに下りにかかる。風が強く、寒い。スティックを使って岩場をずんずん下る。時々手を使うが、スティックがある方が断然速い。ガスが舞う狭い釣り尾根を越えて2,920m峰に登り返し、これで塩見の岩場も終了。岩峰を越えた先で休憩。ここでヘッドランプを出す。塩見小屋には明かりが点いていたが、寄らずに通り過ぎる。
紅葉•••••ウルシ?
権右衛門山・分岐で休憩。ヘッドランプを消すと一瞬真っ暗だが、雲間に月が出ていてほのかに明るい。そこから本谷まで2㎞、三伏峠まで4㎞なのだが、このあたりでがっくりペースが落ち、大きく下った地点で休憩。こんなに疲れていてはテントに戻っても寝るだけだろう。何でもいいからシュラフに入って横になりたい。立ったまま休むと腰が痛いのが我慢できないが、昼ごろに痛み出していた頭痛は収まっていて、歩き続けることはできる。
塩見岳と月
ようやく本谷山に着き、最後の休憩。横になるが、寒くてじっとしていられない。三伏山への登り返しもきつかった。休み休み登り続け、やっと頂上。すぐに下りにかかる。下ってから軽い登り返しとなり、行く手で物音がすると思ったら、三伏峠だった。私のテント以外には2つのみ。夢にまで見たテントを開き、ザックをしまい、外で着替えをする。ぼこぼこに疲れているはずだが、汚れているレインウェアを脱いでたたみ、きちんと着替え、最後にダウンを着こんでシュラフに入る。夏シュラフは無いも同然の薄さに感じたが、ダウンを着てしまえばもう暖かい。ついでにアラームも4時にセットしてから寝る。疲れていたはずなのに、やるべきことは体が覚えていて、やってくれた。
D3
朝食
夜中に目が覚めたら3時。一応起きてトイレに行くが、小屋のトイレはもう閉鎖されていた。三伏小屋は昨日で終了、冬季小屋を使うように貼紙がしてあった。4時のアラームでなかなか起きられず、なんとか起き上がり、昨晩食べなかった野菜スープだけは2回に分けて食べる。最初はテントの中で茹でるが湯気が大量に出るので、2回目は外で茹でる。二日前はテントの中でもこんなに湯気は出なかった。そんなに寒くないということだ。残った水でココアを作る。これでちょうど2リットル。
マツムシソウ
外で着替え、寒くはないと思ったが、風邪気味なのを考え、インナーとタイツ、それにレインウェアを着る。ザックは軽くはないが、下りなら休まずにどんどん進む。それでも休憩は取ろうと思い、中間地点で1回、登山口で1回とることにする。下っていく途中で数人、登ってくる人に会う。テントか冬季小屋か。この日は昼前から雨になったが、大丈夫だっただろうか。1/10毎の道標の5/10地点の少し先、2,160mのコルで休憩。赤い石標のあるこのコルで、二日前も休んだかもしれない。
薄緑の葉(ヤブレガサ?)
オオニガナ?(コウゾリナ?)
ゲート前の駐車場はガラガラ。10台未満だったと思う。ようやく第二駐車場に着き、ゆっくり着替え、片づける。濡れたテントを乾かしたかったが、天気が悪いので結局止める。小ザックの中の湿った小物を助手席の上に並べて乾かす。ヘッドランプのようになってはいけない。そういえば、最小光度で二日間使い続けたブラックダイヤモンドのヘッドランプは電池は切れなかった。だが、二つ目のヘッドランプを別に用意しよう。