【登場人物】
・小春日まい(こはるびまい) 永遠の十七歳(実年齢はヒ・ミ・ツ)の地下アイドルの地縛霊。キャッチフレーズは「リボーン(再生)の歌姫」。死んでるけど。
(以下は役者無し)
・若田依子(わかたよりこ) 二十代女性。OL。霊感が強く、まいを見て会話もできる。
・稲田厚生(いなだこうせい) アラサーの男性。保険の外交員。霊感は全く無い。
・母 小春日まいの母。
【本編】
暗闇の中、かすかに低く唸り声が聞こえる。ひた、ひた、と、なにかが這い寄る気配。白い布に身を包み、髪振り乱した女が、まるで虫か獣のように這いずり迫ってくる。髪の隙間から覗く目は血走り、腕や身体は不自然な方向に曲がっている。
女 おおおおおおー…。おおおおおおおー…。誰だ…。誰が私をこんなにした…。痛い痛い痛い痛い…。苦しいよおぉぉ…。許さすまじ…。この恨み晴らさでおくべきか…。
女、視線を感じ、そちらをギュインッ!と睨む。そこにいたのは会社帰りのOL、若田依子。依子、目を不自然な方に背けてる。
女 ん?…おまえか?…おまえがやったのか?
女、依子にズリズリと近づく。
女 おーまーえーかー。
思わず悲鳴を上げる依子。がらっと雰囲気が変わる女。
女 あなた…見えてるし、聞こえてるよね?私のこと。あなた、見える人なんでしょ?(カツラと白布を取る)やっと!やっとだよ!苦節三年!ついに!ついに見える人に!巡り!会え!まし!た!
女は小春日まい。アイドルのような格好をしている。依子逃げようとする。
小春日 待って!行かないで!お願いちょっと待って!ちょっとだけ私の話を聞いて!
まい、依子の前に回り込み妨害しようとするが、触れられないため依子はすり抜けてしまう。土下座して哀願するまい。依子ちょっと可愛そうになって立ち止まっている。
小春日 脅かすつもりじゃなかったの。ほんとよ?私のことが見えて、私の声が聞こえる人を探してただけなの。
いやいや怖がらせようとしてましたよね?と非難する依子。
小春日 …えーと。うん。ごめん、確かにちょーっとやり過ぎちゃったかな。なんかやってたら楽しくなっちゃって。でもね!でも違うの。怖がらせようとした方が、見つかる率が高くなるの!こう、無害そうに品良く「こんにちは」ってやってもなにも感じない人が、「許さんぞー!」ってやると振り向いたりするのよ!だからほら、心霊写真とかって苦しそうな顔で写ってるでしょ?ね?こっちの業界のあるあるなのよ。とにかく、私、あなたに危害を与えたりしないから大丈夫。信じて!
不承不承頷き、話を促す依子。
小春日 ありがとう!あ、話す前に自己紹介しないとね。私、アンダーグラウンドカンパニー所属ダック・ザ・オニオンの「リボーンの歌姫」永遠の十七歳、小春日まい(こはるびまい)です!止まった時間を動かして、もう一花咲かせるために、過去から帰って来ました!みんなーよろしくね!待って、逃げないで。
年齢詐称を指摘する依子。
小春日 え?違うよ?永遠の十七歳だよ?…嘘ですアラフォーです。でも、アイドルなのは本当だよ?オーディションちゃーんと受かったんだから。あー疑ってる!まあ確かに、私が受かったのは普通のアイドル企画じゃないけどね。さて問題です。この国で、アイドルに一番お金を落としてくれるのはどの世代でしょう?…ブッブー。確かに「推しはいますか?」っていう質問なら断然若者なの。比率的には。でもね、団塊ジュニアは人数が多い!そして、スキルがあるものには比較的財布が緩い!だから、二十代に媚びるより、四十代以上を掴む方が儲かる!ってうちの会社が始めたのが「リボーンアイドルプロジェクト」。スキルはあるのに鳴かず飛ばずで埋もれていった元アイドルを発掘して再生・リボーンするわけ。それに受かったの。(ポーズを取る)こう見えて私、スキルあるから。(回想する目)で、その日はファーストライブの日だったの。朝寝坊しちゃって、パンを咥えて駆けて来たこの六道交差点、青信号で渡ろうとしたその刹那、
トラックが走ってくる音。ブレーキ。追突される音。
小春日 キキーッ!ドンッ!ってなってバァーンって飛んで、…で気がついたら、こんな風になってたの。
それとなく同情しつつ、なぜ地縛霊になったのか突っ込む依子。
小春日 …だよね!なんで地縛霊なのって私も思った。そしたら、不知火さんが、…うん、地縛仲間の不知火さん。ほら、あそこに居るでしょ?白いワンピースでストレートヘアのザ・地縛霊みたいな人。あの人が言うには、自分の死を見てないからなんだって。人ってほら、やっぱ無意識に自分は死なないって思い込んでてさ、自分の死体見て、びっくりして、泣いて怒って諦めてってしないと、死んだ気にならないんだって。喪の作業って言うの?不知火さんもそうなんだって。ドーンってなって、あっとなって、気がついたらここに居て、そういう死者って、そのままそこに縛られちゃうらしいのよ。怖いよね。ほら、ヒヨコは最初に見たものをお母さんって思うらしいじゃん、あんな感じ。
まい、居住まいを正す。
小春日 でね、私、このままは嫌なの。死んだのなら、さっさと生まれ変わりたい。生まれ変わって今度こそ、ちゃんとしたアイドルになりたいの。だからお願い!私を、私の死体まで連れてって!!
即、断る依子。
小春日 駄目!え、即答って。そんな、せめて悩むふりくらいしてよ。
依子、逃げるように去る。
小春日 待って!お願い!あなただけが頼りなのにー!いけずー!待ってよー!
断ち切るように暗転。明転すると、まい、依子の前に仁王立ちしている。
小春日 ふははははは。逃げ切れたと、思った時が運の尽き、そうはイカの活き造りよ!!…んふ?なぜ私がここに居るかですって?良くぞ聞いてくれました!(学者のように)えー「地縛霊」とは、地面に縛られた霊と書きます。では、その地面が動いたら?エベレストの山頂にウミユリの化石があるように、地縛霊だって動けるのですよ!(口調を戻し、玄関を指し。)あなたの靴!!なんか歩きにくくなかった?ゴロゴロして。それね、あそこにあった小石なの。それが、あなたの靴でこの部屋まで運ばれたってわけ!つまり!六道交差点はここにある!!こんな事あるのねー。これはもう運命よ。私たちエンがあるのねー。あ、ちょっと!
玄関に行き、靴の中の小石を取り出そうとする依子。
小春日 石捨てるのはやめて!なんで?なんでよ!そうやって、すぐ死者を追い払おうとするの良くないよ!死者差別だよ!死んだらケガレなの?あなた神道なの?死んだって人間だよ。多様性の時代じゃない、ダイバーシティよダイバーシティ。
と、依子のスマホに着信音。まいを見る依子。
小春日 あ、いいよいいよ。出て出て。
依子、小石をテーブルに置きつつスマホに出る。まい、部屋を眺めてるがすぐ飽きる。
小春日 (こそっと)誰誰?…彼氏?
頷く依子。会話を続ける。
小春日 (こそっと)年上?(頷く依子)いいよね、年上。…(こそっと)なにやってる人?年収は?
依子応えつつ、邪魔しないでと訴える。
小春日 あ、ごめんごめん邪魔しちゃって。
まい、依子から一旦離れる。手持ち無沙汰。スマホから彼氏の声。どうも誰か居ると感じているらしい。問い詰める感じ。
小春日 (依子に)彼、なんか勘違いしてない?私のこと話しちゃったら?あ、言ってないの?霊が見えること。そっか、幽霊がいますなんて言ったらかえって怪しむか。ごめんごめん。…でもいっそいい機会なんじゃない?やっぱ見えるものが違うって大きいしさ。まあ、長くつきあう人じゃないなら別にいいけど。ああ、うん。余計なこと言ったー。ごめーん。…彼って結構思い込み激しいタイプ?なんかこっちの話聞いてくれないよねさっきから、ごめん黙りまーす。…(電話の向こうに念を送る)こーのーうらみー、はーらーさーでおくべきかー!
言ってる間に彼氏が一方的に電話を切ってしまった。しょげる依子。
小春日 え、切られた?向こうが切ちゃったの?…念が届いたのかな。なんか、本当にごめんね。そんな時に言うのも何だけど、私、あなたの彼氏に会ったことあるかも。
どういうことと問い詰める依子。
小春日 え!あ、いや、うん。正直わからないんだけどね。あの声は聞いたことあるんだよねー。なんか、面倒くさいことしてる時に面倒くさいこと言われた気がするんだよ、うん。…なに?こう、十回読んでも一文字も頭に入ってこない文章ってあるじゃん、ああいうのを読みながら、あの声でくどくど呪文みたいなのを唱えられてるみたいな?宗教の儀式か何かかな。記憶にないんだけど。
彼氏の仕事の時じゃないか?と言う依子。
小春日 え、仕事?彼の?…保険の外交員…あ!ああ!そーだ、確かそうだ!思い出した!あれでしょ?彼、サルバドール・ダリみたいなヒゲ生やしてる人でしょ?すごい怪しげって言ったら、保険は少し怪しげな方が契約取れるんですよってドヤ顔で言われた!そんで収入保障付きの保険入らされた!長期入院でも安心ですよって。即死じゃ受け取れないっつーの!大体、ああいうのは家族がいる人に勧めるもんでしょ?私は一人暮らしなのに!あー損したー。そっかー、あいつかー。(やや憐れみのこもったまなざしで)あんなのと、付き合ってるの?
彼氏の良さを訴える依子。
小春日 …え、かわいいの?あいつが?どんな所が?…ああ、いつもは俺は頼れるぜ風なのに?失敗すると「ふぁ…」ってね、なるほど。後は後は?…ふんふん…えー、それ可愛いかなぁ。…あ、もう条件反射なんだ。海鮮丼!嬉しい!食う食う!みたいな。そっか大型犬みたいな感じかな。ねえねえ、いつもはなんて呼んでるの?てか!今気がついた。私あなたの名前聞いてなかった!ごめん。こういうとこあるよね私。なんて呼んだらいい?
依子、名乗る。
小春日 若田、下は?…依子。うわ、なんかしっかりしてそー。じゃあよりちゃんかな。んで、彼氏は?稲田厚生…なんか政治家みたい。なんて呼んでんの?こーせーかな?…え、ダーリン!?なんで?あっちが?そう呼べって!?あっそう言えばさっき言ってたね。でも、今どきダーリンって。あ、ダリだから?サルバドール・ダーリン?ごめん、適当に言った。んであっちはなんて呼ぶの?やっぱりマイハニーとかそんな感じ?…「よりちゃん」なんかーい!そこは揃えんかい!ねぇでもさ、さっきみたいに一方的に電話切るのは無いよね。いくら日頃かわいくても駄目だよああいう男は。…え、あんなの初めて?
ドアの鍵を開け、彼氏が右手に十字架、左手にパック入りにんにくを持って乱入してくる。小春日、逃げ惑う。
小春日 うわ!え!なになに!コワっ!誰誰?あ、ダリじゃん。え、なに?十字架とにんにく?わたしゃドラキュラか!それにパックのままじゃ、にんにく、効果ないでしょ。せめて開けた方が匂いしていいんじゃないの?いや、私に効果無いけど。
必死に依子をなにかから守ろうとしている厚生。
小春日 大丈夫だよー。私怖くないよー。(思わず笑ってしまう)いやー、確かに大型犬だわ。よりちゃん言ってたこと、わかる気がするわ。
依子、厚生を落ち着かせ、小春日を紹介する。小春日の声は厚生には聞こえず、気配すら感じ取れない。小春日、依子に挨拶を促される。
小春日 あ、どうもよろしく。(作る)私、アンダーグラウンドカンパニー所属ダック・ザ・オニオンの「リボーンの歌姫」(テンション落ちる)あ、聞こえないのか。…小春日でーす。
依子、厚生に事情を説明する。
小春日 …そうそう。よりちゃんに助けて欲しくて。…いや、「成仏できないんですか?」って、出来てたら苦労しないっつーの、って聞こえないのか。…あ、そうだ!よりちゃんよりちゃん!ちょっと、ダーリンに言ってくれない?収入保証保険、結局役に立たなかったじゃんって。
依子、厚生に保険のことを聞く。厚生、まいの母が相続人として権利を行使し、保険金を受け取ってると説明。
小春日 え!うちのお母さんが?
まい、母とのあまり思い出したくない記憶が蘇る。
小春日 …あの人が私の保険金受け取ってるの?受取人にしてなかったはずだけど、なんで!?…あの人が相続人だから?。なによそれ…。元気にしてた。ふーん。さぞかし喜んでたでしょうね?あの人、金にしか興味ないから。…親不孝って?…生きてさえいてくれたらそれで良かったって?…ふーん、そんなこと言ってたんだあの人。そっか、泣いてたんだ。へー…。
まい、顔を歪め、手で覆う。嗚咽、そして唸り声。
小春日 …な・に・が・親不孝だーー!!生きてた時から、散々親孝行せがんでた癖にーー!!あの人はいつもそうだ。人前ではいい人のフリして、人がいない時は私になにをした!私がやることなすことバカにして、金のことしか言わないで。あんたが反対しなけりゃ、あの時アイドルになってたし、もっと!人並みの!普通の人生送ってたってっつーの!!あーもー、収まらない。このままじゃ死ぬに死ねない。
まい、全身全霊で依子に訴える。
小春日 よりちゃん、わかったよ。私が成仏できないのはあの人のせいだ!あの人がのほほんと生きてる内は、私は死ぬわけに行かない!(依子に懇願する)よりちゃんお願い!私を実家に連れてって!ちょっと遠いけど、乗りかかった船でしょ?行ってくれなきゃ私、ずっと取り憑くよ!だからお願い!!
依子、厚生に話す。依子は仕方ないなあという気になってる。厚生、なんでそんな事する必要あるのかと。
小春日 ダリ!あんたが邪魔するな!大体私がもらうはずの保険金をあいつに渡したあんたも悪い!理屈はわかるけど悪いものは悪い!…行く理由なんていいじゃない!行けばわかるよ。あ!美味しい海鮮丼あるよ?はらこ飯って言って、鮭の炊き込みご飯にたっぷりイクラを載せたやつ。故郷の秋のお店ソウルフード。私は食べられないけど行って二人で食べなよ。ね、連れてってよ!!ねえ!!
厚生、しぶしぶ受け入れる。依子もOKする。
小春日 よし!そうと決まれば夜行バス!まだ、今なら便あるから。…えー、なんで?明日も仕事?休みな休みな。どうせ、よりちゃんは有給取りたくても色々抱え込んで我慢しちゃうタイプでしょ。良くないよ!そんなに我慢していると、やりたいことが手遅れになるよ、私みたいに!さ、着替えて着替えて!荷物用意して!ダリもさっさと準備する!さあさあいざ征かん北の地へ!我が、厭うべき母の待つ、故郷へ!
暗転。
小春日(ナレーション) その時から、私たちの旅は始まったの。
明転すると走る小春日。
小春日 待ってー!そのバス待ってー!やった間に合った!
小春日(ナレーション) 結局、高速バスに乗り遅れそうになったり。
小春日 ええ!?バスジャックー?いい加減にしてよ。(おどろおどろしく)邪魔するな!こーろーすーわーよー。あ、逃げた。あいつ霊感あったのかな。ふー、助かったね。
小春日(ナレーション) バスジャックを呪いで撃退したり。
小春日 駅についた!さ、バス乗り換えて、はい、このバス停で降りて!さーて、実家まで一本道なんだけど、とにかく遠くて険しいから気をつけてね。ほらほらまだ先だよ。あ雪降ってきた。
小春日(ナレーション) 挙げ句に、田舎道で遭難しかけて。
小春日 なんでこんなに雪降るのよこの時期に!!あ、よりちゃんしっかりして!駄目だよ眠ったら死ぬよ!おーい、誰かー!助けて下さーい!あ!
小春日(ナレーション) その果てに、道でお母さんと再会した。
小春日 お母さん。…あ、そうか、見えないのか。あ、よりちゃん待って!よりちゃんは向こうで出来たお友達で、お線香上げに来たって言って。
依子、言われた通りにする。嬉しそうにする母。実家に上げる。来たこと言わなくていいの?と聞く依子。
小春日 いいのいいの。私が来たなんて言ってもどうせ信じないし、この方があの人の本性が出るから。うわー、なんかみすぼらしくなったなあこの家。ほとんど廃墟じゃん。ね、こんな家に縛られてたんだよ、ずっと。…飛び出さなかったらきっと、今もここで燻ってた。あ。
仏間に通される依子たち。
小春日 この遺影、成人式の写真じゃん。なに考えてんのこの人。まあ、帰ってなかったから。写真撮る機会もなかったけど。
鈴の音。依子たち線香をあげる。正座してそれを見る小春日。母、依子たちに昔の小春日のことを話す。
小春日 始まったよ…いつもだよ…いつもそうやって、自分は私を愛してて、私の人生のために尽くしてきたってフリをする。こっちの犠牲なんて知ろうとも、わかろうともしないで。…私がどれだけ…え?
依子、お母さんに伝えようか?とまいに言う。その想いを伝えようか?
小春日 よりちゃんがお母さんに?私の想いを?言っても無駄よ。どうせ、この人には伝わらない。
依子、母親に霊が見えること、友達というのは嘘で、まいにここに連れて来られたことを捲し立てる。
小春日 …ちょっと、よりちゃん!言わないでって言ったでしょ!やめて!余計なことしないで!…ほら、この人はこういう人なの。私絡みのことはなにも興味ないし信じてもくれないの。そういう人なんだから!
そこに娘がいるのか?と問う母。いますと答える依子。
小春日 え?
あの娘はなんて言ってる?と問う母。まいにさっき言ってたことを言っていいかと問う依子。
小春日 え?ちょっと待って…私の言いたいこと…。(整理して言おうとして言葉にならない。まい、振り切るように。)いい。私、歌う。アイドルだから。
まい、すくっと立ち上がる。でもお母さんには聞こえないよ?と言う依子。
小春日 うん、聞こえないと思う、けど、よりちゃんに言ってもらってもたぶん、伝わらないし、納得できないの。私が。(母に向かって)お母さん、これね、お母さんのこと思って私が作詞したの。デビュー曲だったはずの曲。聞いて下さい「アイは解凍中」
劇中歌に関しては、母と娘の歌であれば完全に別な曲とかなにかの替え歌とかでOK。以下はあくまで一例。
「アイは解凍中」 作詞小春日まい
ママ、アイをありがと
でも それが私を傷つける
ママのアイは猫の目みたい
コロコロ変わって惑わせる
私はママのコピーじゃない
でも DNAが否定する
ママの言葉は絶対零度
滾るリビドー凍らせる
鏡に映る私の顔
それは誰の笑顔なの?
アイの残滓舐めながら
いつまで私は彷徨うの?
だから
解凍中 解凍中 解凍中 解凍中
解凍中 解凍中 解凍中 解凍中
私はアイをリボーンする
ママのアイはリリースする
解凍中 解凍中 解凍中 解凍中
解凍中 解凍中 解凍中 解凍中
レンジじゃ溶けないママの呪い
地獄の業火が溶かしてくれる
自由になったら いつかきっと
溶けた涙が光になる
解き放たれたら いつかきっと
春風の中で また会える
解凍中 解凍中 解凍中 解凍中
解凍中 解凍中 解凍中 解凍中
私はアイをリボーンする
ママのアイはリリースする
解凍中 解凍中 解凍中 解凍中
解凍中 解凍中 解凍中 解凍中
レンジじゃ溶けないママの呪い
地獄の業火が溶かしてくれる
小春日、歌い終え、お辞儀をする。顔をあげられない。と、母、拍手をする。驚きで顔を上げる小春日。
小春日 お母さん!聞こえたの?
依子が尋ねると、聞こえた気がしたと答える母。
小春日 …あ、違うんだ。…そう。なんか聞こえた気がしたの。そうか。そうなんだ。
依子、小春日が薄くなってるという。
小春日 え、私が?…そっか。お別れなんだね。…よりちゃん、ダリ、ありがとう。帰り案内できなくて悪いけど、駅前まで戻ったら、駅前の白樺食堂って所に寄って。あそこのはらこ飯は絶品だから。帰り気をつけてね。…またいつか、次会ったら、
まい、声が出なくなる。それに気が付き、三人に手を振り、そして、消える。
おしまい