どすこい(仮):京極夏彦

出版されてから半年以上。買ってからも五ヶ月くらい経てやっと読了。

「な、なんだこれは!?」

そんな感じですね。まず、本屋で見つけたときから腰砕けでした。その奇妙な装丁は噂に聞いてましたが、

ぶくぶく太った分厚さ。

脂汗じみた、てらてら光るブックカバー。

一層暑苦しさを掻き立てるしりあがり寿氏のおすもうさんの絵。

力士ではない。おすもうさんだ。

「なんだこれは」ですよ、ほんと。

読了後の第一印象もまた、「なんだこれは!?」でした。

おすもうさん、おすもうさん、とにかくおすもうさんです。全七話。ベストセラーとなった主にミステリー作品の名をパロッたタイトルで、設定やストーリーにもそこはかとなく元の話が生きていたりいなかったりしてます。

ある方は「これはデブ殲滅の書だ。デブ殲だ。」と言っておられましたが、私はそうは思いません。

これは、京極氏のデブへの最大限の愛情表現ではないか?と思うのです。好きじゃなかったら、ここまでとにかくデブに-もといおすもうさんに-こだわってあれだけ大部数の本など書けないと思うのです。

どの話も、おすもうさんにこだわるあまり、とてもシュールで何が何だかさっぱりわかりません。全体として各話が入れ子構造になってますが、はたしてそれに何処まで意味があるのかわかりません。どことなく筒井康隆のメタ構造の作品っぽい雰囲気も感じますが、筒井氏よりも暖かい文体で、その暖かさは、登場する全ての暑苦しいおすもうさん達に惜しげもなく向けられています。

むしろ普通の体型(なり痩せ方の)人物の方がひどい目に遭ってます。意味もなく急激に太ったり、殺されたりしています。

最後の「ウロボロスの基礎代謝」は、比較的、意味の通った普通の小説っぽくあります。でも、結局はなにも解決しません。そして、みんなデブになった…。と言う感じです。

書いてて暑苦しくなります。頭が脂肪の塊になったようにぼんやりしてきます。オモチロイヨ。

京極氏最高の奇書と言うべきでしょう。

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