機械の中の幽霊:アーサー・ケストラー

これも大学在学中に買って読んだ本です。きっかけは、士郎正宗の漫画『攻殻機動隊-GHOST IN THE SHELL-』がこの本の原題(GHOST IN THE MACHINE)のもじりだという、それだけだったのですが、あの漫画を楽しく読んだ人にはたまらん魅力に溢れた本です。

ケストラーはこの本の中で、“ホロン”という概念を提唱しています。ホロンとは、一言で言うと「より多いなレベルから見ると、全体を構成する一部だが、より小さなレベルから見ると多くのものによって構成された、あるまとまりを持った全体」という特徴を持つあらゆるものを指します。

パッと読むと、??ですが、例えば人体を例に挙げて説明すると、人体は骨や筋肉、内臓などが調和して構成された個体ですが、家族と言う単位から見ると、それを構成する一部となります。だから、人体はホロンです。また、家族も、ある自治体から見ればその一部ですから、ホロンです。内臓も、多くの細胞が集合して出来たものですからホロンです。全てのものはレベルこそ違えども、皆ホロン的特徴を持ってます。そして、このホロン的考え方を使えば、多くの違うジャンルの考え方を一つのこととして語ることが出来るのです。専門化があまりに進んだ現代の科学は木を見て森を見ずで、硬直してしまってます。この状況を脱するには、専門的分野を広範囲につなげ、統一的に研究していくことが必要だと説きます。

ケストラーはこの本の中で、人の精神と体の繋がりを、様々なジャンルの考え方を使って解き明かしていきます。(生物学から、社会学から、精神学から、教育学から様々です。)そこから導き出される人間像は、従来の脳によって魂と体が結びついている心身二元論的なもの(機械の中の幽霊)ではなく、あらゆる個が集まって人体を精神を構成しているという、より有機的な存在としての人間です。(余談ですが、後に夢野久作の『ドグラマグラ』を読んだとき、その心についての考え方に、この本と共通する感じを見つけてびっくりしました。夢野久作恐るべし。)

かなり分厚い本ですが、文庫も出てますので、システム論なんかが好きな人は是非是非お読みください。