高丘親王航海記:澁澤龍彦

文藝春秋1987年出版単行本。偶然古本屋で出会った本です。澁澤龍彦の本は基本的に好きなのですが、これは、評論やエッセイではなく冒険小説です。

貞観年間、天皇の皇子、高丘親王が、天竺目指して東南アジアへの冒険の船旅に出るという話で、8つの物語から成り、いずれも、とても幻想的で美しいイメージで彩られた珠玉の作品ばかりです。文章にも様々な仕掛けが施されていて、面白い!!

夢見がちの高丘親王は最後に天竺に辿り着くことなく亡くなってしまいますが、その姿は澁澤龍彦自身の投影であるのかもしれません。澁澤龍彦はこの本を執筆中に咽頭ガンで手術を受けてます。己の死を感じてもいたでしょう。全体に渡って透き通った感じがするのは、そのせいかもしれません。