時の葦舟三部作 第一巻 絆の都:十月劇場

芝居は悲しい事に再生が出来ないので、是非ご覧くださいとは言えませんが、この三部作、仙台の伝説的アングラ劇団十月劇場の末期の代表作の一つです。

骨子には、『指輪物語』が使われており、伝説の全てを統べる指輪を見つけた考古学者の家族三人とデブ猫一匹が、時空を超える葦舟に乗って、指輪をあるべき所へ返すため過去現在未来と旅をする壮大な物語でした。全国でも珍しくなってしまったテント芝居(公園などに大きいテントとセットを組み、そこで芝居をやってしまうという芝居です。)です。三部作なのですが、私は第一巻が一番好きです。

「絆の都」では、25世紀の未来、危機に瀕した世界の人類最後の都市を舞台に、宮沢健治の人格を埋め込まれたレプリカントとそれを追うブレードランナー。家出した娘を探す、ベルリン大学教授とその妻、怪しげな屋台をやりつつ伝説の指輪を探す三馬鹿トリオらが、主人公一家と織り成す、SFスペクタクルです。

全体を通して流れるのは、家族愛と、“人間は駄目だ。でも、それでも生きているんだ。”という人の抱える問題を受け止めつつポジティブに戦おうとする姿勢です。

ラストで、テントの向こうに燃え盛る炎の海を渡っていく葦舟を見た時、ゾクゾクして涙が出ました。

現在、TheatreGrupe OCT/PASSと改称し、芝居の内容はどちらかというと現実の世界の問題を扱う話が多くなってしまいましたが、私はあの世界の方が好きです。