コミックマスターJ:田畑由秋(脚本)余湖裕輝(作画)

ヤングキング別冊OURSという雑誌を御存じでしょうか?「HELLSING」や「エクセル・サーガ」、「トライガン・マキシマム」などが連載されてる月刊誌です。なかなかいい漫画が多いにも関わらず、割とマイナーです。

「コミックマスターJ」は、その雑誌に連載されてる作品の一つです。

コミックマスターと呼ばれる、伝説の天才アシスタント。高額の報酬(一作500万!)と引き替えに、あらゆるタッチと常人では不可能なスピード、的確なパースと技量、必要なら作者すら作り出せなかったアイディアを込めたネームまで作り出してしまう男。しかし、彼は出版されたあらゆる漫画雑誌をチェックし、自分の気に入った作品しか引き受けない。

彼は“J”と呼ばれる。

きっとJACKのJなのかしらん。はっきり言って基本の骨子は「ブラックジャック」です。でも、「ブラックジャック」より、より馬鹿馬鹿しく、そしてより熱い物語です。はっきりいって笑えます。

でも、Jの言葉は時に結構痛く、重くも響くことがあります。

彼の語る言葉は、表現に携わる全てのものの理想と美学に訴える言葉だからだと思うのです。

「漫画は無理やり終わらせるべきではない(中略)生きるのを諦め…自殺するのと一緒だ。」(第一巻第三話「終わらせる男」)

「どんなに憎まれようが私にとっては…いい作品が読めれば満足なんだよ。」(第二巻第五話「燃えよJペン」)

「あんた自らが変わらなければあのネームと同じだ。それに、みんなはあんたのために尽くしているんじゃない…作品のためだ。」(第三巻第一話「マンガの国」)

「一流の漫画家ならば…原稿上げてから病気になれ!!!」(第四巻第四話「日はまた昇る」)

(「世界が終わっても描くって言うのか!」と聞かれ)「そんな時…だからこそだろうがっ!」(第四話第七話「君は知っているか」)等々

現実の漫画家業は消してこんな熱いものではないかもしれません。でも、何かしら表現に携わる、なにかを生み出す作業をするものには、この熱さが必要だと思うのです。でなければ、生み出されたものが人の心を動かせるはずがありません。

『コミックマスターJ』は、そんな熱さを与えてくれる作品です。