Linuxへの道のとば口にて…

ひと月経っても解決つかなかったこと

Linuxに関わってから丸四ヶ月。

ノートに続き、デスクトップ機へのインストールの成功。

ノートパソコンと、デスクトップ機の両方にVineLinux2.0がインストールされたものの、インストール成功から一ヶ月経っても解決がつかず、解決の糸口すら見つかっていない問題がいくつかありました。

  • インターネットに接続できない
  • LANが構築できない。
  • ノートパソコンでCD-ROMが使えない。
  • デスクトップ機では、起動ディスクを使わないとブートができない。

「いいじゃない。Windowsでネット出来るんだから。」

妻が言います。

しかし、せっかくインストール出来たのに、最大限使えないのではもったいない。

Linuxに関心を持ったのは、あまりにWindowsがしょっちゅうフリーズやクラッシュを繰り返していたため、「システムが落ちることがほとんど無い」といわれるLinuxに興味があったし、落ちないシステムでフリーズを気にせずネットがしたいと考えたためもありました。

なのに実際導入してみれば、一番肝心のネットがなかなか出来ない。

PPPなどのソフトのドキュメントを掻き集め試してみましたが一向上手くいきません。どうも認識すらしていないようです。うちはシリアルポートに繋いだTA(SHARP DN-TA1)で、ISDN回線に繋いでます。データが行き来していればTAの方に反応があるはずなのになにも動きがありません。

また、せっかく二台あるのだからLANを構築しようとNICを買って挑戦しています。が、こちらもはかばかしくありません。Linux対応をうたうプラネクスのカードで、ネットで紹介されてる方法で設定したおかげで認識はされていますが、接続は出来てません。ネットで集めた情報、片っ端から試してますが、一向に上手くいかないばかりか起動時にエラーメッセージが出るようになりました。

そして、CD-ROM。お借りしたPCカードでインストールは出来たものの、そのあと、急にSCSIカードを認識しなくなりました。もらったPCSC-Vカードの方ももちろん認識しない。

CD-ROM上のソフトを取り出すにはどうしたらいいのだ!!

更に、デスクトップ機の起動ディスクでしかLinuxをブートできない問題。

最初の挑戦で苦戦したLILOを入れてみても、やはり反応は同じ。

私の中に、だんだんと絶望感が満ちてきました。

なんのためのLinuxだ?

Windowsなら簡単にネットが出来る。

Windows同士ならネットワークも簡単だ。

WindowsならPCSC-Vのドライバが付属している。

Windowsならフロッピーを使わなくてもブートできる。

Windows。Windows。

世の中全部Windowsだ。

なんでこんな苦労しなきゃならんのだ。

なんで、なにもかも上手くいかないんだ。

もう嫌だ!!!!!!!!!!!!!

コマンドをほとんど使えない。システムの仕組みもわかない。

CUIが基本のLinuxで、GUIだけで使えると誤解していたための勉強不足もこの絶望感の原因の一つでした。

ノートの方にもWindowsを入れようとか考えたりもしました。(たぶん、あまり快適には使えなかったでしょうが…。)

「わからないところがわからない」

勉強不足の人間が陥りやすい迷宮に彷徨ってました。

ひと月経っても解決しなかったこと 回答編

これらの問題は、それから二ヶ月ほどかかって、問題の特定や解決が出来ました。

インターネットに接続できない

この原因は、コンピュータ自体の設定にありました。

コンピュータの設定には、OS上で行われる設定の他に、コンピュータそのものの基本的な入出力を司るBIOSというプログラムの設定があります。

BIOSがOSを読み込んで、コンピュータとシステムの管理をOSに引き継ぐことでシステムが使えるようになるのです。

もともとデスクトップ機のBIOSはWindowsように設定されてました。

で、問題になったのは、「プラグアンドプレイ」と言う機能に関する設定の部分でした。

周辺機器のデータは、通常システム起動時にBIOSがつながれている機器を認識し、システムに引き渡す形になっているのですが、それだと、新しく機器をつなぐたびに再起動が必要になる。

で、それをリアルタイムで観察し、周辺機器が繋がったらすぐにデータを読み込んで利用可能にするのが「プラグアンドプレイ」です。

デスクトップ機のBIOSは、これ専用の状態に設定されてました。

そこで、これを通常の設定に戻したら、問題なくTAが認識され、ネットへ接続できるようになりました。

ネットワークを構築できない

これは、何のことはない。LANケーブルのプラグの接触が悪かっただけでした。

何度か入れ直し、上手くいく場所で固定したら、問題なくLANが利用できるようになりました。どうやら、買ってきた日に当時一歳半の息子が力任せにプラグを引っ張ったせいだったようです。

馬鹿馬鹿しい、でも、ある意味基本的なトラブルだったと言えます。

CD-ROMが使えない

インストールで使えたアダプタが、インストール後に使えなかった理由は、カードの名前と中のチップの違いのせいだったようです。

先にも書きましたが、アダプタのカードの名前はパイオニアのなんちゃらいうカードなのですが、中で動いているチップはQlogicという会社のものでした。

インストールの際は、便宜的にコンパチで使えるカードなら細かいことを気にせずそのままドライバを使ってインストールしてしまうようになっていたのです。で、インストール後に正確な形式やメーカーに合わせたドライバを使用することで、適切な使用が出来るようにするわけなのですが、今回のパイオニアのなんちゃらカードは、そのリストに入っていなかったのです。

リストに「パイオニアのなんちゃらカードはQlogicのカードと同じドライバ使ってちょ」と書き加えれば問題なく使えるのです。

ま、どのみち借りたものですから、ノートパソコンをいただいた時につけていただいたPCSC-Vが使えればそれに越したことはありません。

こっちはちょっと難儀でした。

カードのチップを出してるメーカーがドライバのソースコードを発表していたので、ダウンロードしてみたのですが、これを自分でコンパイルしなければなりません。しかも、もともと問題があるソースだったらしく、上手くコンパイルできませんでした。

更に探っていくとソースをコンパイルする具体的な方法を載せたページを見つけました。

「IO DATA製MOF-H640とSCSI (PCSC-F)の認識」

「走れ忍者SCSIの話」

これらのページでは、最新版のPCSC-Fなどで使えるドライバの情報やソースが配布されてました。

でも、結局やってません。

ネットワークが上手く組めた時点で、CD-ROMを使う時は、デスクトップ機のCD-ROMが利用できるようになったからです。スピード的にはほとんど変わりません。

それに、プログラムやアプリケーションは、CD-ROMからより、Webから入手する方が多いので、あまり必要がない(再インストール時くらい)ことに気がついたからです。

新しいカーネルには、このチップ用のドライバも含まれるようです。

起動ディスクからしか起動できない

通常、デュアルブート環境ではLILOをブートセレクターとして使ったり、loadlin(MS-DOS画面からLinuxを起動させる)などを使うことが代表的な方法です。

loadlinは失敗しましたが、LILOによるブートセレクトは出来るようになりました。

これも、BIOSの設定のせいでした。

増設したHDDからのOSの起動を受け付けないようになっていたのです。

解決法は二つ。一台目にHDDにパーティションを切って入れるか、増設HDDからブートできるようにBIOSを設定し治すか。

後者を選ぶと、今度はWindowsを起動させられなくなり、Windowsを再インストールしたり、あれこれ手間が増えてしまいます。すぐに実行できるのは前者です。

ただ、それをするとWindowsの命綱とも言えるCドライブのスペースを削ることになります。

結局、最初に躊躇したfips.exeを利用してCドライブのスペースをLILOが認識できる8GB程度の所まで切り出し、そこに/bootパーティションを配置、本体はその後ろに(後には増設ディスクの方に)再インストールすることにし、現在は、LILOでWindowsとブートセレクト出来るようになってます。

Linuxへの道のとば口にて

当時、「Linuxへの道」の中で、こんな評価をLinuxに対してだしています。

上に書いたような問題点は、いずれも私の技術不足、勉強不足ゆえで、それらを補っていけばきっと問題点も解決していき、十二分に使いこなせるようになる日が来るでしょう。

…とは、思います。実際使いこなしている人は多く、「Windowsよりずっと使いでがある。」と言う人も多いですから、今の時点をもって評価を下すのはあまりに性急だとは思います。

でも、少なくとも今の時点では私にとって「とても使い勝手が悪いOS」であると言わざるを得ません。

悪評の高いWindowsは、でもとりあえず、ちまたに溢れる入門書を読めばとりあえず最低限のことは出来ます。(一般の人にとって、今のパソコンに求められる最低限はインターネットが出来ることだと思います。)使いこむほどに使い勝手が悪くなるとしても、機能を拡張しようとしたらLinuxとは数桁違いの金がかかるとしても、とりあえずWindowsに対応しているハードは、Linuxのそれと比べものにならないほど多い(=選択肢が広い)のを考えれば、何も知らない初心者がなにげに手を出して後悔しないですむのは、残念ながらまだまだWindowsの方だと思います。

実際、うちでは妻はWindowsのアプリでネットをし、家計簿を付け、ポスペをやり、ホームページを作り、USB接続のスキャナで画像をスキャンしています。私もこのページ以外はホームページビルダーを使ってますし、Linuxでネットが出来ない以上メール、ネットサーフィンもWindowsでやらざるを得ません。

Windowsへの反発心もあってLinuxへ大きく傾いた私の関心も、正直中立に戻っています。

本や資料を漁ったり、パソコンに向かって実践する時間と金がある人なら、きっとLinuxでパソコンの力を最大限に発揮することが出来る状態まで持っていけることでしょう。そういった時間や労力を惜しまない人にはお勧めです。

でも、現在「ちょっとパソコンやってみようか」という人の大半は、そんな余裕のない人です。というか、余裕を、興味を十全にパソコンにLinuxに向けることができない人だと思います。

実際、私の知り合いで最近パソコンを始めた人がいますが、32万かけて買ったVAIOにさわれるのは一週間に2~3時間ほどだと言います。同じく職場の上司は、プリンタやスキャナもセットでパソコン買って、触ってるのはほとんど息子さんだけという状態だそうです。こういった人に現時点のLinuxは、どう考えても勧められません。

Linuxでやってることはなに?というアンケートで圧倒的に多かったのは「インストール」という答えだったそうです。“他のOSを入れる”のは知的好奇心を刺激してくれます。でも、大半の人が欲しいのは簡単に使える道具なのです。最近のディストリビューションはこの点にかなりの配慮をし、かなりインストールしやすく、使いやすいものになっているのだと思います。Linux創世の頃は今の何倍も“ハッカーのオモチャ”だったと言います。沢山の研究者やボランティア達の弛まぬ努力が、Linuxをここまでにしたのだそうです。

でもね、でも、まだ足りないと思うのです。

今のLinuxに足りないのは、「未熟な使い手への配慮」だと思います。(有料ディストリビューションなどでは有償の分ユーザーサポートがついてくるようですが…。)今まで出た様々なソフト、カーネルの安定性、強固さなどに使いやすさ(言えば、“どれだけ考えないで使えるか”ですね)が加わっていったら本当にWindowsを越える日がやってくるだろうと思います。

さて、今の時点で私は、Linuxに対しこんなことを考えています。まあ、やれることからコツコツとやりながら、(聞いたことあるフレーズだな)地道に勉強してやれることを増やしていくしかありません。いつか、私にとって(そして家族にとっても)Windowsを越える日がくるように…。

【誤解の無い様 8年後の補足】

かなり絶望した感じで終わっている文章ですが、この後も懲りずに飽きずに、Linuxのインストール、カスタマイズ、失敗を繰り返しながら経験を積み、パソコンを買えばLinuxを入れ、新しいディストリが出ればダウンロードして試し、今でもWindowsと半々ぐらいで利用しています。

以前ほどLinux熱は高くありません。

サーバー利用なども特にしない現状では、仕事で使うならWindowsの方が多いですが、自分の時間で楽しむならやっぱりLinuxの方がいいですね。

経験したディストリは最初期はVine、その後Plamoにはまり、一時期gentooやKnoppixやubuntsuなども併用しましたが、以後はほぼ継続してPlamoを使ってます。

Plamoはバランスがいいですね。結構便利な機能もありつつ、でも大事な所はスケルトンで見通しが利くので使いやすいです。

Linuxのハードへの対応もだいぶ早くなりました。

サーバー用途は勿論、デスクトップの完成度の面でも、ubuntsuなどなら十分使用に耐えるものだと思います。

なにがなんでもLinuxとは言いませんが、代えられない理由も特に無くなってると思います。

この文章、今の時点から読み返すとちょっと気恥ずかしい文章でもあり、前面書き換え、あるいは削除も考えましたが、「こういう時代もあった」という意味合いで、掲載を続けることにします。

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