社交ダンスのマナー
ヨーロッパにおいて上流階級の紳士・淑女の守るべき行動規範というものが、騎士道や宗教の影響を受けながら確立されてきました。現在では弱者である婦女子をほう助すべきというレディーファーストの考え方を含めたマナーが一般の中に浸透しております。マナーにも様々なマナーがあり、ビジネスマナー、交通マナー、テーブルマナー、冠婚葬祭マナーなどとありますが、これらは人間関係の潤滑油としてだけではなく人の信用、安全にも影響を及ぼします。根底にあるのは他人への思いやりです。
では男性が女性を同伴して、ホテルで催される社交ダンスパーティーへ出席する場合を例に、時系列でマナーを確認してみましょう。ドレスコードは、インフォーマル(平服)で、男性はダークスーツで、女性はドレッシーなワンピースです。ただし、主賓の場合はこの限りではありません。
車で女性をお迎えに上がった場合は、助手席のドアの開閉をします。降りるときも同じです。なお、お迎えは約束の時間より早すぎてはいけません。
車を降りて歩く場合は、男性が車道側を歩きます。歩く速度は女性に合わせます。
建物のドアを開けたら、女性が通り過ぎるまで手で押さえておきます。
エスカレーターで上がる場合は女性を先に乗せて、男性はその後ろに立ちます。下る場合は男性が先に乗ります。これは安全を考慮したマナーです。
エレベーターもドアが開いたら、押さえて女性を先に乗せます。降りる時も同じです。
パーティー会場に入るまで、知人、主催者に会ったら挨拶をします。同伴女性と面識がなければ紹介します。
クロークに行き荷物、コートを預けます。女性の後ろに回りコートの着脱を手伝います。
パーティー会場の自分の席まで案内があれば女性の後ろを歩き、案内がなければ先に歩いて先導します。
女性がテーブルの椅子に座るときは椅子を引いてあげます。男性はあとから着席します。
携帯電話の電源を切るか、マナーモードにします。
テーブルの同席者が後から来たときは、立って挨拶をします。
食事はテーブルマナーを守りながら、同席の人たちとも楽しく談笑します。テーブルマナーは割愛します。
スタッフを呼ぶときは、アイコンタクト又は軽く手を挙げるようにします。「すいませーん」と大声は出しません。
ダンスタイムになったら、同伴女性に「踊りましょう」とダンスに誘います。椅子を引き、手を差し伸べてフロアに誘導し、踊り終わった後は元の席までエスコートします。最初と最後は、同伴したパートナーと踊るのが礼儀となっています。
ダンスタイムで他の男性が同伴女性にダンスを申し込んできた場合は「どうぞ」と言って快く送り出します。
自分が同伴女性以外とダンスをしたいときは、同伴女性に断りを入れ、さらに相手の女性に同伴者がいれば「こちらの夫人(婦人)と踊ってもよろしいでしょうか」と断りをいれてから、女性に「踊っていただけますか」と申し込みます。踊り終わったら「ありがとうございました」とお礼を言って元の席までエスコートします。
他の女性からダンスを申し込まれた場合は基本的には断りません。
ダンスタイムではフロアの混雑に合わせて無理ない大きさのステップで踊ります。他の人とぶつかったときは相手が悪くても「すみません」「失礼」と謝ります。
デモンストレーションの始まりと終わりに拍手をします。出演者が自分の席の近くに来た時、ピクチャーポーズを決めたときも拍手をします。声援をするとさらに良いと思います。デモンストレーション中の入退室、食事、談笑は控えます。
ゲスト・デモンストレーションの演技に感動した場合は、終了後に起立して拍手を送ります。このスタンディング・オペレーションは最大の賛辞となります。
パーティーが終了したら、主催者、知人に挨拶をして帰路につきます。
以上のマナーは一つの例ですが、その都度、T(Timeタイム)P(Place場所)O(Occasion 場合、行事 )を考えて行動することが大事です。最近では気軽に誰とでも踊れるパーティーが公民館を中心に開かれておりますが、特定の人とだけ踊ったり、ダンスを教える行為はよくありません。ほかにはエチケットとして、清潔感のある身だしなみ、体臭、口臭、汗に気を配ることが大事です。最後に、現在のコロナ禍の状況においては特別なマナー、エチケットも加味されます。特に厚労省が提唱する「咳エチケット」は人の健康にかかわることですので最も重要です。最低限、ハンカチとティッシュを持ち歩きましょう。
付録 社交ダンスにおける言葉の例
1. 男性から女性へ
① 「お相手願えませんか」「踊っていただけませんか」
② 「踊りやすいですね」「本当にお上手ですね」
③ 「下手ですみませんでした」「緊張してうまくリードできず済みませんでした」
④ 「まだ日が浅く、うまく踊れず申し訳ありません」
⑤ 「またお願いします」「ありがとうございました」
2. 女性から男性へ
① 「ええ、喜んで」「はい、お願いします」
② 「あなたとなら軽々とついて行けました」
③ 「踊りずらかったでしょう。済みませんでした」「重かったでしょう」
④ 「気持ちよく踊れました」「ありがとうございました」