名前:コニーセ・プレリカ
性能:HP56/知性4/技術6 スキル: ・シャーペンを刺す/6/0/1 手の甲にシャーペンをぶっ刺す。社畜や受験生が眠気覚ましに使う技の一つでもある。 ・現実逃避/36/0/7 回復 現実から目を背けて精神的なダメージを癒す。その場を凌ぐことが出来るだけで本当に疲れを癒せる訳ではない。 ・立ち向かう/60/0/13 防御無視 痛みでは取れぬ眠気や、目を背けても無くならない現実に突き当たった時、社畜は、会社に潰された『意思』を取り戻すのかもしれない。 ・シャーペン乱れ打ち/32/24/8 やけくそになりシャーペンを投げつけまくる。たまに敵の攻撃に当たって威力を削ぐことが出来る…かもしれない。 プラン: :敵の構えているスキルをA、敵の最新同時選択スキルを最新Aと記述する。(Aまたは最新A)は、敵との同時選択時は最新Aを参照、そうでない時はAを参照を意味する。 :一度でも『立ち向かう』が使用された時、「あの子を弔うことができるのなら!惨めな思いをしても構わない!」とドヤ顔で叫ぶ。この行はストーリーの分岐に関わります。 :初手は『シャーペンを刺す』 :Aのウェイトが7以下 で Aは防御無視ではなく 自現在HP-Aの攻撃力+24≧9 で、直前の行動が『現実逃避』の時 『シャーペン乱れ打ち』 :Aのウェイトが19以下 で 自現在HP-Aの攻撃力≦9 で、直前の行動が『立ち向かう』のとき『現実逃避』 :現自HP-(Aまたは最新A)の攻撃力+36≦0 で (Aまたは最新A)のウェイトが13以上のとき 『立ち向かう』 :Aのウェイトが8 で Aの防御力<32 で Aの攻撃力-24<自現HP で 0<敵現HP-32 で Aが防御無視でないとき、『シャーペン乱れ打ち』 :Aのウェイトが8以上 で 自現HP-Aの攻撃力≦0 のとき、『シャーペンを刺す』 :Aのウェイトが7で 自現HP-Aの攻撃力≦0 のとき、『現実逃避』 :0<自現HP-(Aまたは最新A)の攻撃力 で (Aまたは最新A)の防御力-32<0 のとき、『シャーペン乱れ打ち』 :Aのウェイトが8以上 で Aは防御無視ではなく 自現在HP-Aの攻撃力+24≧9 の時『現実逃避』 :Aのウェイトが20以上 で 自現在HP-Aの攻撃力≦9 のとき『立ち向かう』 :(Aまたは最新A)のウェイトが7以上 で 自現HP<(Aまたは最新A)の攻撃力-36 のとき『現実逃避』
:Aの防御力≦5 で 0<自現HP-Aの攻撃力 の時、敵に『シャーペンを刺す』
:(Aまたは最新A)の防御力が32以上のとき 『立ち向かう』
:『シャーペン乱れ打ち』
GM注:一部のプランの取得が困難なためプランを修正しました
設定:
セミロングの黒髪を後ろで一本結びにした、真紅の瞳と派手な赤いネクタイが印象的な痩せぎすの青年。
自称26歳で自称イケメンの社畜。
重度のナルシストで人格異常者であり、友達がゴミ捨て場で出会ったカラスのディオーナちゃんしか居ない。
前職場がブラックすぎてバックレてリリオットに辿り着き、開発職になりたくてソウルスミスにエントリーしたらリソースガードに配属され、
しかも事務仕事を大量に押し付けられ、また社畜に逆戻りしてしまった。
そのうえ怪盗ヘル・ライオットに部屋に大量のカレーをぶちまけられカラスのディオーナちゃんが溺死してしまい、怪盗ヘル・ライオットを血眼で追い掛け回すようになる。
オーナー:痴人M
ツイッター:nerunerunervous
協力:ざるそ
エンカウント:コニーカ Written By 痴人M
コニーセ・プレリカは無能である。
一万年に一秒しか針の狂わぬ時計。全自動であられ揚げを製造することのできる機械。
彼の頭の中には、その発想と設計図があった。しかし、彼は無能であった。
その時計には最低でも一辺十メートルはある精霊が必要であり、
その機械には百個のあられ揚げを揚げるための燃料として、十万個のあられ揚げを揚げることができる量の精霊が必要だった。
そのうえ、その発明の全ては、脳内設計図だけ立派で現実での実験・実証などが伴っていない、机上の空論なのである。
加えて彼は実験などしなくとも自分の脳内設計図どおりに物を作れば、無事に完成すると妄信しているのだ。
彼は昔からこうだった。頭脳と容姿だけは良いが、中身は先述の通り、救いようが無いほどプライドの高い、重度のナルシスト。
この狂気的なまでの自惚れこそが、彼が無能たる所以なのだ。だからこそ彼は失敗した。
何百という会社にエントリーをし、悉く叩き落され、最終的に滑り込んだのは所謂ブラック企業。
朝から明朝まで不眠不休で働かされ、上司から日々圧力と罵詈雑言を浴びせられ、雀の涙ほどの給料で細々と生きる毎日。
それでも昇進や開発部への異動の望みを捨てずに耐え忍んできたが、痺れを切らして上司に直接異動したいとの申し出をすると。
「は?お前は一生ここでクソみたいな事務をせこせこと黙ってこなすんだよ。夢を見るのも大概にしろ無能のくせに。あと缶コーヒー買ってこい」
その翌日、彼は唯一の親友であるカラスのディオーナちゃんをペットゲージに入れ、上司宛に退職願を郵送すると、そのまま朝一の汽車でバックレた。
そして社畜から開放された反動でとってもルンルンな気分でリリオットに到着。
聞いていたほど黒髪の風当たりが少なくて更にルンルン。町に漂う争いの残り香とか無能な彼に感じ取れるわけがない。
前の職場ではやることができなかった(というよりもやらせてくれる筈がなかった)研究や発明をしたいと思い、
就活時代のトラウマを脳裏に過ぎらせつつも偽名でソウルスミスにエントリーしたところあら不思議。その日のうちに内定貰って大喜び。
どこもかしこも慢性的な人手不足なのだから即採用など当たり前なのだが、矢張りそんなことを無能な彼が感じ取れる筈などない。
それでもって配属されたのは研究のケの字すら存在しない戦闘部隊リソースガードだった。
そのうえ誰もやりたがらない事務作業を目一杯押し付けられてしまう。
拒否しようと思いはしたが、周囲は戦闘に携わるような屈強な戦士まみれ。もやしなコニーセでは到底敵わない。
それに加えて「頼られてる俺ステキ!」だの「仕事に追われる俺かわいそうかっこいい」だの考えちゃってるもんだから最早救いようが無い。
かくして彼は激務サビ残当たり前の社畜人生に舞い戻ってしまったのであった……
そして今日も、コニーセは溜息を吐きながら薄暗い街道をとぼとぼと歩いていた。
時刻は午前二時。悪い子も寝ている時間だ。しかし彼にとっては、これでも早く帰れたほうだったりする。
コニーセは地面に敷かれた石畳を眺めつつ、ぼやく。
「何で僕はこんなにも天才でイケメンなのに、こんな扱いをされているんだろう……」
お前のその性格のせいであるとは勿論誰も言えない。
街道の精霊灯が次第に疎らになっていき、やがて一棟の古ぼけた建築物が見えてくる。
コニーセはこの建物の地下の一室に、格安の値段で住んでいる。金が無いので光の当たる部屋など借りることが出来ないのだ。
建物に入りいつものように地面を眺めながら階段を降りていくと、なんだか美味しい匂いと、人々のざわめきが聞こえてきた。
顔を上げると、何故か自分の部屋の入り口あたりに、同じ地下部屋の住民たちが集まっている。
しかも皆が皆、手に鍋や皿を持っている。嫌な予感がして、住民たちを押し退け部屋に入る。
彼の目の前には、一面カレーまみれになった自室が広がっていた。
「……えっ?」
コニーセはその光景にただただ呆然とすることしかできず、硬直してしまう。
『……これはやっぱり、例の怪盗の……』『具入りのカレーとか一年ぶりに食べるわ』『おい兄ちゃん大丈夫か?』
『ヘル・ライオットが……』『誰かカレーと白米交換してくれませんか』『俺クリームシチューが食べたい』
周りの人々の話し声が、コニーセの耳を通り過ぎていく。
コニーセはただただ、カレーまみれの部屋を見つめることしかできずにいた。
そして暫くしてやっと、コニーセは一番重要で、重大で、カレーまみれの部屋なんかよりも大切なものに気づく。
「あ……あ、あああ……!!」
コニーセは搾り出すように声を出し、そして、叫ぶ。
「でぃおーなちゃあああああああああんッ!!!」
突然張り上げられた大声に驚く人々など目もくれず、コニーセはカレーの海を泳いでいく。
そしてカラスのディオーナちゃんのケージを、カレーの海の中から引っ張り出す。
ディオーナちゃんは、カレーまみれになって溺死していた。
その後コニーセは声にならない叫び声を上げ、適当な場所にあったカレーまみれのシャーペンをひっつかむと、
未だに入り口付近に集まって鍋でカレーをすくっている住人たちを弾き飛ばし、凄まじい速度で階段を駆け上がり、街道へ飛び出す。
『……これはやっぱり、例の怪盗の……』『ヘル・ライオットが……』
脳裏によぎる、人々の話し声。
最近噂の超迷惑怪盗、ヘル・ライオット。
名前くらいは、激務で新聞すら読む時間の無いコニーセでも知っていた。
「……ゆる、さない……怪盗ヘル・ライオットぉ!!
ディオーナちゃんを殺した罪を……償わせてやるうゥゥッ!!」
コニーセは連日の残業で充血しきった目玉を涙で滲ませ、夜の闇へと激情の赴くままに走り出した。
それから数日間、コニーセは夜が更けていようが明けていようが関係無しに、
シャーペン片手にリリオットの端から端までを走り回り、憎きディオーナちゃんの仇――怪盗ヘル・ライオットを探し続けた。
しかしそんな激情も社畜精神にまでは影響しなく、職場には毎日出勤して相変わらずの18時間労働を続けた。一時間だけ仮眠を取りはしたが。
そして、五日目。正に体力の限界ギリギリまで来ていた時に、コニーセはやっと、
大量のミルミサーモンの入った大きな鍋の中身を民家にぶちまけようとしている最中の、怪盗ヘル・ライオットに遭遇した。
「……おまえが、へる、らいおっと、だな……」
コニーセは死人同然の形相と声色でそうヘル・ライオットに告げる。
「お前大丈夫?カルシウムとか色々足りてないんじゃない?」
コニーセのあまりの形相に驚いたのか、あの悪逆非道の怪盗ヘル・ライオットまで彼のことを哀れむような声をかけた。
しかし最愛の親友を亡くしたうえに寝不足過労空腹その他諸々のバッドステートまみれのコニーセにはそんなことは全く聞こえていない。
「ディオーナの仇ィいいいいいいいいいいいッ!!
ぶっち!!!殺すゥゥゥゥゥッ!!」
コニーセは雄たけびを上げると、腐ったカレーの臭いを漂わせるシャーペン片手に怪盗ヘル・ライオットに襲い掛かった。
(協力:ざるそ)
立ち向かう意思/意志 Written by N.M
突き出されたシャーペン。
針で軽く受け流す。
ディオーナという名前に心当たりはない。
まぁ名前を聞くのは気が向いた時だけなので、被害者の一人がそういう名前なのかもしれないが。
「誰だよそれ」
「お前が! カレーまみれにして! 溺死させた! カラスの! ディオーナちゃんだぁぁぁぁぁ!!」
顔色の悪い男は吠えながらシャーペンを投げつけまくる。
針を投げつけて自分に当たりそうなものを逸らす。
「あー、面倒クセェ手合いだ」
数日前のことをふと思い出す。
エフェクティヴから盗んだカレーをどっかの地下室にぶちまけた時のこと。
なんかカーカー言ってた気がするが部屋の中はよく確認しなかった。
別に殺す気はなかったので事故である。
「そうか…それは気の毒に」
言いながらマントを翻しシャーペンを全てうちおとす。
問題は、その時の仮面の表情がクソだらけたやる気のない怠惰の表情であったこと。
完全に舐めきったとしか思えないこと。
その時、コニーセの中で、何かが、弾けた。
「あの子を弔うことができるのなら!惨めな思いをしても構わない!」とドヤ顔で叫ぶ。
彼は立ち向かった。己の勇気の全てを振り絞って。
怪盗の仮面が餓えたような表情を見せる。
「それでいい。汝の蛮勇、見せてみよ!」
高速で振るわれる剣舞。自らが傷つくのも構わず突っ込む。そしてあと一歩。
あと一歩のところで、コニーセは、力尽きた。
***
「鳥かごなら高いところに吊るしておけよなー、全く」
責任転嫁を行いながらぼやく怪盗。
「まぁこの事故でやりがいのある敵が増えたからよし」
コニーセはリソースガード仲介所の前に放置された。
「有給中。触るべからず。 Byヘル・ライオット」と書かれた看板とともに。
『墓標』 Written By 痴人M
怪盗に叩きのめされた翌日、同じリソースガード事務員の同僚に発見されたコニーセは、本当に有給を貰い、帰路に着いていた。
何時も通りの街道を、何時も通りに辿り、何時も通りに階段を降り、何時も通りに部屋に入る。
カレーの海は粗方他の住民に掬われていったのか、殆ど残ってはいなかった。流石に部屋の隅や壁の皹などにはこびりついていたし、腐ったカレーの臭いも漂ってはいたが。
そして、ディオーナの亡骸もそのままになっていた。六日間放置されていたディオーナの亡骸には蛆が沸き、骨すら見えている。
コニーセはディオーナの亡骸をそっと抱き上げ、沸いていた蛆を手で払うと、部屋から出て建物の裏手にある花壇――といっても花も木も枯れきっているのだが――に向かう。
花壇に着くとコニーセはディオーナの亡骸を傍らに優しく置き、素手で花壇の土を掘り始める。
コニーセは土を掘りながら、ディオーナとの出会いや思い出を、走馬灯のように追憶する。
仕事でミスをしてただでさえでも少ない給料を更に減らされ、電気代もガス代も払えず、チロリン棒を買う金すら無くなり、体だけは清潔に保つために辛うじて通じさせることのできていた水道の水と、調味料しか食べるものが無かった時。
凄惨な労働環境による過度の疲労に加えて餓死寸前の空腹に思考どころかプライドすら崩れかけ、
深夜に近所の食堂のゴミ捨て場で、自らの尊厳をかなぐり捨てて食物を漁ろうとゴミ袋に手を伸ばしたその瞬間、
どこからともなく、嘴に未開封のパンを咥え、闇色の翼を羽ばたかせながら一羽のカラスがコニーセの傍らに舞い降りてきた。
そして嘴にパンを咥えたまま、まるでコニーセにそのパンを差し出すかのようにそのカラスは首を傾げたのだ。
コニーセにはそのカラスが天使に見えた。プライドも尊厳もかなぐり捨てそうになるまでに疲弊した自分に、神が遣わせた天使。
コニーセはパンと共にそのカラスを大事に抱き、狭いボロアパートに戻ると、カラスと共にパンを食べた。
パンの賞味期限は切れていたが、コニーセは泣きながら「ありがとうございます、ありがとうございます」と連呼しながらパンを頬張り、カラスもまた、ガアガアと鳴き声を上げながら、コニーセと共にパンをつついた。
そしてカラスとコニーセがパンを綺麗に食べ終わった後、コニーセは「冷たい水しか出ないけれど、ごめんね」とカラスに言い、水でカラスの体を入念に洗い、ごわついた襤褸切れのようなタオルでカラスの体を拭き。
――昔、自らのその自己愛の所為で虐められていた時に、唯一自分に優しく接してくれた、天使のような女性……フィオーナ。
コニーセは彼女の名前をもじり、そのカラスを、闇色の天使、ダーク・フィオーナ――ディオーナと名づけた。
ディオーナは、コニーセが帰ってくると籠の中からその翼を羽ばたかせガアガアと「お帰り」とでも言うような鳴き声を上げ、出かけるときにも同じように鳴き声を上げてくれた。
コニーセが落ち込んでいるとガアガアと鳴き声をかけて励ましてくれて、
コニーセが嬉しかったり、楽しかったりした時もガアガアと一緒に喜び、楽しんでくれて。
そして、その度にディオーナは籠の中を激しく飛び回り、安物の鳥籠だとすぐ壊してしまうので、少し値は張ったが頑丈なゲージを買ったりもして。
コニーセにとって、ディオーナは自身の生活の唯一の光であった。
それは最早、親友というよりも、恋人や夫婦と言ったほうが良かったのかもしれない。
しかし、その最愛にして最大の支えであったディオーナはもう居ない。憎きヘル・ライオットの手によって、よりにもよって、溺死させられて。
きっとカレーに沈んでいく時、ディオーナはその闇色の翼を必死に羽ばたかせ、もがき苦しみ、助けを求めて鳴き声を上げていただろう。
そして、コニーセはディオーナの仇をとるどころか、怪盗に傷を負わせることすら出来なかった。
そのうえ、怪盗はまるで、ディオーナの死を馬鹿にしたかのような顔をしていて。
「……ぼく、は」
コニーセが搾り出すようにぽつり、と呟く。
「僕は、なんて……馬鹿なんだ」
コニーセの激情があふれ出す。コニーセのプライドは、尊厳は、怪盗により粉々にされていた。そして、高すぎるプライドに基づき形成されていた、異常なまでの自惚れもまた例外ではなかった。
「一万年に一秒しか時の狂わない時計?一辺10メートルの精霊なんて、御伽噺みたいな存在の『神霊』ぐらいしかないじゃないか」
「あられ揚げを全自動で揚げることのできる機械?何が悲しくて100個のあられ揚げを作るのにその1000倍の精霊を消費しなければいけないんだ」
「何で、そんな無駄なものを、実験も検証もせず教科書に載っている知識だけで練られただけの、設計図という名の唯の妄想で作り上げることが出来ると妄信して、更にそれが評価されるものだと考えていたんだ」
「『頼られてる僕ステキ』!?『仕事に追われる僕かわいそうかっこいい』!?ただ単に面倒な仕事を押し付けられているだけだろう!?それを何故喜んでいるんだよ!」
叫ぶ。涙が溢れる。止まらない。近隣の住民が五月蝿いと怒鳴りつけてきたが、それでもコニーセの激情の吐露は止まらなかった。
「そうだ、馬鹿だよ!僕はどうしようもない馬鹿だ!ディオーナが、僕の親友が殺されたっていうのに、その復讐を誓ったのに!
何で僕は仕事なんかしにいってたんだ!その仕事だって、他人に押し付けられたものばかりなのに!」
「そのうえあの怪盗は、ディオーナの死をまるで馬鹿にしたような顔をして!
あの時、あの怪盗に、あと一歩……ほんの一歩だけ先に歩み出すことが出来ていたなら!
もしも僕が仕事を休んで十分な睡眠をとって疲れを癒して、もっと速く動くことが出来ていたなら!あの怪盗を倒せたかもしれないのに!」
「僕は、僕はッ……!」
「……僕は、無能だ……」
コニーセがその感情の全てを吐き出したとき、掘られた穴は丁度ディオーナの亡骸が収まる大きさになっていた。
コニーセはディオーナの亡骸を手で優しく包み、穴に入れ、そっと土で埋める。
そして枯れ木の枝を二本程折り紐で結び、十字架を作りディオーナを埋めた穴の傍に立てる。
それはディオーナの墓だった。
「……こんな墓しか作ることができなくて、ごめんね。ディオーナ」
暫しの沈黙の後、コニーセはそう言うと立ち上がり、手についた土を軽く払う。
「君の仇は絶対に討つ」
そう言い放ったコニーセの瞳は、真っ直ぐと目の前を――現実を、見ていた。
『籠の鳥』 Written by 痴人M (タイトルN.M)
コニーセは近くの商店で新聞を一部と、チロリン棒を買えるだけ買い込んだ後部屋に戻り、チロリン棒を齧りながら考える。
新聞を読むと、怪盗には高額の懸賞金が懸けられているうえに、事態を重く見た各組織の重鎮達が、猛者・強者と呼ばれる歴戦の戦士に懸賞金以上の大金を支払い、怪盗の捕縛の依頼を検討しているらしい。
それに怪盗にコニーセと同じように悲惨な目に遭わされ、復讐を誓った人間も相当数居るようだ。
そうなると、出来るだけ早く怪盗に接触しなければ、仇を打つ前に逃げられるか、誰かに倒されてしまうだろう。
せめて一発くらいは彼奴の腹にぶち込みたい。
あの時、あの一歩をもっと速く踏み出すことができていれば、必ず一発かますことができたのだ。
そうなると先ずは眠り、身体的な疲れや、寝不足や精神的ダメージによる思考の鈍りを出来るだけ取るべきだと考えた。
しかしベッドはカレーに塗れて使える状態では無かったので、そうなると地べたに寝転がり眠るしかない。
本当はベッドでしっかりと眠り、万全の体制でもって再戦に臨みたかったのだが、出来ないものは出来ないのだからしょうがない。
コニーセは地べたに直接寝転がり、扉を開けて腐ったカレーの臭いを外へ逃がしつつ眠った。
目覚めると、皮肉なことに時計は午前二時を指していた。
何も敷かずに地べたで寝たせいか、体の節々が痛い。怪盗との戦闘の傷も癒えてはいないし、チロリン棒を食べたとはいえ未だ腹は鳴き声を上げるほど空いている。体調としては最悪だ。しかし目は覚めている。上々だ。
そしてコニーセは部屋の中を漁り始めた。
シャーペンは全て打ち落とされ、捨て身の特攻は寸でのところで捻じ伏せられた。
本気で仇を討つのならば、武器や防具などが必要だ。
しかしどれだけ探しても、武器や防具になりそうなものはシャーペン以外何も無かった。
どうやら自分が激情に任せて扉が開いたままの部屋を放置し飛び出して怪盗を探し回り、始業時間になると職場に行き、終業時間になるとまた怪盗を探し回っていて一度も部屋に戻らなかった六日間の間に、泥棒か何かが入ったようだ。鍋すらも無かった。
せめて一時間の仮眠を取ろうと思った時くらい部屋に戻れば良かった、とコニーセは思ったが、後悔先に立たずである。
『ペンは剣よりも強し』という諺にあやかり、願掛けのようなつもりでシャーペンは持っていくつもりではあったが、何かいいものはないだろうか。
そう思い、改めて部屋を眺めていた時。
「……あ」
目に一つのものが留まった。頑丈で、硬く、壊れにくく、生き物を護るもの。
「……ディオーナ、君も仇を討ちたいのか」
それは、かつてディオーナの住まいであった、ゲージだった。カレーの水分の所為か、所々錆びてしまっていたから盗まれなかったのだろう。
コニーセは優しげな瞳でゲージに触れる。金属製のゲージは冷たかったが、コニーセの心は暖かい感情で満たされていた。
コニーセはポケットにシャーペンを入れるだけ入れると、ディオーナのゲージを掴み闇夜に躍り出る。
怪盗はすぐに見つかった。まるでコニーセが来ることを待ち構えていたかのように、餓えた表情を仮面に浮かばせて。
「カルシウムとか色々一応摂取できたみてぇだな。ちったぁマシな面構えになったじゃねえか」
「怪盗ヘル・ライオット。お前を倒す」
「名前を間違えなかったのは褒めてやる。しかし手前は俺には勝てない!またタコ殴りにしてやるよ、そいで有給取らせて死ぬまで無駄にオネンネさせてやる!」
「あの子の仇を討てぬ限り、無駄な有給も無駄な睡眠も必要無い!覚悟しろ、ディオーナの仇!」
虫すら鳴かぬ闇夜の中。精霊灯に照らし出されるは、シャーペンを構えた男と、剣を構えた怪人。
小説より奇怪な、しかし現実に存在する戦いが幕を開けた。
名前:コニーセ
性能:HP42/知3/技7 スキル: ・シャーペンを刺す/7/0/1 シャーペンをぶっ刺す。投げ飛ばしてぶっ刺してもいい。 『ペンは剣よりも強し』という諺があるが、本当だろうか。 ・ゲージ/34/33/8(変更前名称:シャーペン乱れ打ち) カラスのディオーナちゃんのゲージ。 とっても頑丈だが、今はもう、この中に住まうものは居ない。 ・仇を討つ/63/0/12(9+3) 防御無視(変更前名称:立ち向かう) 「先へ、先へ。速く、限りなく速く、あと一歩だけでいい、先へ!」 とか言うと厨二病っぽいけど要は防御かなぐり捨ててゲージでぶん殴るだけです。 プラン: :(敵との同時選択時は敵の最新同時選択スキル、そうでない時は敵の構えているスキルを参照)をMとする。回復は攻撃力0とみなす。 :初手は『シャーペンを刺す』 :Mのウェイト≧12 の時『仇を討つ』 :敵の技術が5 で 自現HP=42 で Mの攻撃力が0 で Mのウェイト≧3 の時『仇を討つ』 :Mが炎熱の時以下 A:Mが防御無視でなく 0<自現HP+(33-炎熱スキルの攻撃力) で Mの防御力-34<0 の時『ゲージ』 B:Mが防御無視でなく 炎熱スキルの攻撃力-33≦0 の時『ゲージ』 C:Mが防御無視でなく 敵の現HP+(Mの防御力-34)≦0 で (炎熱スキルの攻撃力-33)≧自現HP で Mのウェイト≧8 の時『ゲージ』 D:Mが防御無視で 敵の現HP-34≦0 で 自現HP-炎熱スキルの攻撃力≦0 で Mのウェイト≧8 の時『ゲージ』
E:『仇を討つ』
:Mが封印で防御無視でなく (Mの攻撃力-33)/10≦3 の時『ゲージ』
:Mの防御力≦6 で 敵HP+{(Mの防御力-7)×Mのウェイト}≦0 の時『シャーペンを刺す』
:Mの攻撃力が0 で 34≦Mの防御力 で Mのウェイト≦7の時『シャーペンを刺す』
:Mが防御無視でなく 0<自現HP+(33-Mの攻撃力) で Mの防御力-34<0 の時『ゲージ』
:Mが防御無視でなく 敵の現HP+(Mの防御力-34)≦0 で (Mの攻撃力-33)≧自現HP で Mのウェイト≧8 の時『ゲージ』
:Mが防御無視で 敵の現HP-34≦0 で 自現HP-Mの攻撃力≦0 で Mのウェイト≧8 の時『ゲージ』
:Mが防御無視の時『仇を討つ』
:『シャーペンを刺す』
設定:
あの子は僕の唯一の光だった。
光の無い人生など必要無い。
『仇を討つ』。
仇を討てないのならば、どんなことをされたって構わない。
カラスのディオーナの仇を討つため「限りなく速く一歩先へ」踏み出す為に、社畜という称号や全てという名の生活費を捨てて怪盗に立ち向かおうとしている男。
ちなみにカラスのディオーナが何故彼に近づいたかというと、パンの袋が開けられなかったからである。カラスって頭いいもんね。
ついでに言うと鳥籠を壊すほど暴れた理由は「逃げたかった」からで、ディオーナはコニーセのこと大嫌いでした。コニーセマジピエロ。
無能は自覚しても無能だった。でも一発ぶちかませたら満足するんじゃないかな。無能だけど。
オーナー:痴人M
協力:ざるそ
討てぬ仇 Written By N.M
コニーセはたしかに速くなっていた。
怪盗が針を投げるより速く肉薄。
直接針で受け止めるが互いに手の甲を掠る。
「おらッ!!」
貪欲そうな表情に変わり、長剣が振るわれる。
がっちりケージでガード。
そのままケージを振るうが気の抜けた顔になりやすやすと弾かれる。
「そんな振るい方で倒せると思うか!?」
「ぐぬぬっ!!」
針とシャーペンで互いに削れていく体力。
「じゃあいい加減終わらすか」
その一言とともに怪盗の右手に力が集まる。
「くっそぉぉぉぉぉぉ!!」
シャーペンを振り回すが、怪盗を止めるには至らない。
「死して裁かれ天獄地獄。社畜に未来はありゃしない!!」
臓腑を抉るが如き拳が、コニーセの腹を直撃した。
You have been slain...
代償 Written By N.M
「そんなに我が身が大事かねぇ」
シャーペンによる刺し傷をさすりながら怪盗がつぶやく。
「まぁ人は誰しも自分がかわいいもんだ」
鳥籠を持ち上げ、無造作に放り投げる。
「今日は何曜日だったかなー」
コニーセを担いでどこかに運んで行く…
***
日が昇る。
コニーセは意識を取り戻した。
目の前には壁。下半身は床についている。そして何かに埋もれている。
この臭いは…間違いなく生ゴミ。
つまるところ、エビ反り状態て生ゴミに埋もれているのだ。
しかも腕がバンザイ状態で壁に固定されている。
怪盗がやったのか。
これでは、清掃員か誰かに助けてもらうまで、どうすることも出来ない。
カー、カーカー
カラスが飛んでくる。
(ディオーナ…天国から助けに来てくれたのか…)
もちろんディオーナではないしカラスは生ゴミに埋まった人間の事など気に掛けない。
カラスが集まってくる。餌となる生ゴミをつつくためである。
この状況で、カラスが朝食を開始したらどうなるか。
「あだっ!! あだだだ!!」
驚いたカラスが離れるが、碌に動けないことを確認すると食事を再開する。
「ひぎゃ! あぎゃ! や、やめてぇ…」
清掃員に見つけられる頃にはコニーセの精魂は尽き果てていた。