名前:フロイダ
性別:無し ポジション:流れ者、呪術製精霊体 性能:HP108/知性2/技術4 スキル: バスター/64/0/21/防御無視凍結 エクストラ/84/0/26/防御無視凍結 プラン: 敵知性6以上、技術5ならバスター 敵知性6以上、技術4ならエクストラ 敵HP64以下ならバスター さもなくばエクストラ 設定:金髪、金眼、白い膚。パッと見20代前半に見える顔で、小柄。骨格はやや女性寄りだが四肢が骨太。 身体中に金の模様が走っている。服装はトーガ的に一枚布を羽織っているだけ。裸足。 遠い山奥の国からやってきた、呪術で組み上げられた人もどき。一般的な精霊駆動術の体系とは違う方法で身体を組み上げられている。 故国に、そしてマスターにヘレン教についての知識を持って帰るべく旅をしている。 必要な情報のストレージは膨大に用意されたのだが、代わりにAI部分が貧弱で5歳児並みの知能しか持たない。 資料探しの傍ら、賢さを求めない簡単な仕事もやっている。賃金は資料閲覧料と自らの呪術燃料になる。 夜道を金の光が疾る。路地裏を黄金の紋様が照らす。屋根から屋根へ、フロイダが跳んでいく。 倒せば金貨10枚。ヘレン教の本も読める。いつだったかウェイトレスをやった酒場の主人の言葉を借りれば、ボロい商売だ。 弱い頭ではこういうふうに言語として考えられなくても、まあこういうふうに思ってはいた。 倒すのには自信があるのだ。生け捕りとか交渉とかは上手くいかなかった。 何しろ攻撃手段、というかそのための回路が爆発専用で四つしか無いので、加減するにも上手くいかないのだ。 だが倒すのなら、とにかくチャージして、当てればいい。マスターの元でやっていた事となんら変わりない。 本はまあ、ヘレン教の本なので丈夫だろう。爆発にも耐えるだろうから倒せば手に入るはずだ。
塔を一つ飛び越えたところで、フロイダは翻り、着地と同時に強く一歩を踏み出した。
丁度、視界の隅に家屋の壁からぬるりと出てくる青を捉えたのだ。
正面に見据えたそれに接近するにつれて、金の人型はその光を増していった。
バスター:敵を呪術的に起こす爆発で飲み込む。長く溜める。
エクストラ:呪術的大爆発。結構長く溜める。
序章及び戦闘結果(By N.M)
「なるほど、本泥棒退治に協力して下さるのですね。ありがとうございます。こちらにお名前と拇印を」
ぺたり、と拇印を捺したのを確認するとマリアは頷き、先程サインした紙をハサミで半分に切り分けた。
「これ、割符になってますので本を取り戻したら本と一緒に提出して下さい」
「ははぁ、ヘレン教関連の資料を探してらっしゃる。ここで読むだけなら無料なので宗教セクションのところを探してみてください」
そこまで言ってマリアはふと、思案げな顔をする。
「そうですね。無事本を取り戻せたら長期貸出手続きを行っても良いです」
普段はやってないんですけどね、と付け加える。
長期貸出。遠方の学者や所在定まらぬ旅人などに貸し出すためのシステムで、返却は郵送で可能。
無論延滞が過ぎれば取り立てがくるが、通常の貸出よりは緩い。
「え? 盗まれた本はヘレン教と関係があるか、ですって?
うーん、まぁミルミはヘレンと古い仲だといいますし、ミルミは最後に……おっとこれはネタバレでした、失礼。
ともかくフィクションの体裁とは言え、英雄伝記の側面もありますからなんか関係があるのではと思います」
そう言ってマリアは肩をすくめる。
「ともあれ、夜までは時間があるので今のうちに借りたい本を探してみてはいかがでしょうか」
(あれ、頭の硬いヘレン教の一部の派閥にとって認めたくないようなこと書かれてるのよねぇ)
フロイダを見送りながらマリアは先程の話を思い返す。
(ミルミが最後にヘレンを打ち破った、なんて)
マリアは盗まれた本を感知できる。にも関わらずマリアが割符を渡したのには理由がある。
本と同じように、割符にも追跡用の精霊を染み込ませているのだ。
(これで情報を得ましょう。全員駄目だったときの最終手段は用意しておかないとね)
以下、戦闘結果
この程度なら全力を出すまでもなかろう、とフロイダが光り始めると時を同じくして、本泥棒は袖から紙を一枚取り出した。瞬間、一本の矢がフロイダに刺さる。
続けて彼女がそれを広げると同時、多数の矢がフロイダを取り囲んだ。
「幕を上げる前からすでに幕は降りている」
フロイダは虚ろな声で響くその言を無視し、溜めを始める。
次の瞬間、全ての矢が回避を許さずフロイダに突き刺さった。
許容範囲を越える威力。たまらずフロイダは地面に倒れ伏した。
ふと気がつくと、本泥棒はおらず、刺さっていたはずの矢も無くなっていた。だが全身に走る痛みが先程の邂逅は本物だと告げていた。
先程の交戦を思い返す。彼女が広げた紙。あれに記されていたのは文字ではなく、何処かの地図。
矢が飛んできたこととあの地図の因果は不明だが、フロイダはこのことをメモリの片隅に記録することにした。
名前:フロイダ
性別:無し ポジション:流れ者、呪術製精霊体 性能:HP114/知性1/技術4 スキル: アーツ/52/0/18/防御無視凍結 プラン: アーツ 設定: 「…記録開始。昨日、隣のおばさんが発火麦を収穫していた。私も手伝った。現在お昼を食べた後だ。フロイデの器は大凡完成。残りの作業の大部分は記録容量となる回路に、人間性を刻む事だ。つまるところ、この音声日記をつけることだ。 しかし形状のモデルを私にしただけあって、なんだか寝たきりの双子の妹を家に置いてるような気分だ。…いや、双子の妹が居たことはない。なんとなく言ってみただけなので、そういう気分という表現は適切でないかもしれない。あまり迂闊な言語回路を組み込んでしまっては困る。今のは忘れろ。これは双子の妹が出来たようだ、と形容するのが正しかろう。 …いや、別にそうも思っていないけど。自分と似た人形が家にやってくれば必ず言う、創作上でよくあるアレだ。アレというのは婉曲的な表現で…なんというか…おい、コンリュウ!来い!本当にこれでいいのか!?…」 「再開だ。こいつも…お前も?、動き出せば私と同じ声で話すらしいので、まあ、妹のようなもんではあるかもしれない。常時私と回路を共有しているフロイデが入り込むなら尚更だ。 似ると言えば、何、お前は戦闘方法が『自爆』しか無いらしいな。設計に悪意を感じるが、仕様を聞く限りでは、一応これから出向く先では役に立つだろうと思ったぞ。何しろ、腕っ節の強い者より小回りの効く智慧者こそが覇権を取る世界らしいじゃないか。 既に仕様に組み込まれているとは思うが、お前は四つの回路を持っていて、大部分の智慧者に対して有利を取れるようになっている。しかし、いかんせん回路の起動までが遅い。しかも威力を出すには四つの選択肢すら多い。一度に用意できるのは二つ程度だ。 だが、お前は頑丈だ。ちょっとやそっとでは死なん。それを活かせ。一度負けた相手に挑む時、前回の戦闘の記録を使って相手の力を割り出して回路を用意し、接敵したら攻撃すればいい。
それがお前の戦い方だ、フロイダ。 うむ、いい時間になった。仕事だ。私はもう行くぞ。発火麦収穫の翌日、昼下がり、記録終了。…」
アーツ:ちょっと溜めて爆発。
オーナー:
ノノネヌ
エンディング:By ノノネヌ
深夜。
月光差す宿の屋根の上、毛布に包まりながら広場を見つめる金色が一人。
フロイダは睡眠を必要としないが、身体を動かすと静止してる時に比べてかなり燃料を消費する。なので、仕事の無い夜は大抵、ストレージの整理がてら眠りの真似事のような事をしている。目はかっぴらいてても意思は持たず、動体が視界に入った時に特定のパターンであるか判断するのみである。
フロイダは落ち着いていた。冷静という意味でなく、単に不安が無かった。
『本泥棒の体力は低く』、『瞬間に振るう力が強い』。『本泥棒は色んな人に追われているので色んな状況に対応しなければならない』。記憶と情報を組み合わせた時、自分の使う手は限られる事がわかった。ほぼ一択だ。最早、もし外したら自分にはどうしようも無いと割り切るしか無い案件だった。
どうしようも無い。こういう思考をする度、ストレージの片隅で何かが引っかかるのだ。恐らく、あの地図を持った本泥棒の事なのだが、それが何なのかフロイダには思い出せなかった。戦闘中に何かあったのか?どれだけ考えても思い出せない。記憶するものとしてこの地を歩いている以上、次に接敵した時には思い出さねば、などと思った刹那、紋様は光を発し、小柄はその身を空中に躍らせた。
金色の視線の先には、既に此方を見据えて地図を取り出している青メイドが居たのである。
着地と同時に1本目がフロイダの身を貫いた。
いかにも魔術的な行動なのに、攻撃は現実的な重さを伴っていた。続いて射出された矢を見ながら、今度こそ一瞬も記録を漏らしてたまるかと目をかっ開き、2本目が身に突き立つか立たないかというところで走り出す。
3本目、4本目が到達する。あと何本もこれを貰うことになるだろう。だが、その矢の威力によってフロイダが止まることはない。5本目は脚の腱を、7本目は首の筋を貫いたが、即座に金の紋様で傷が埋め尽くされる。
フロイダは思い出した。
9本目から12本目までが心臓の位置を貫いたが、最早金色そのものと化したそれは走るというより空を駆け、目標に対して自らを猛進させていた。
13本目、
「幕をッ」
喉を貫いた14本目を修復する間に15本目が飛来する、
「幕を開ける前から、」
金の光の集まっていた左手の平を矢が通過するが、未だ疾走と輝きは止まらず、
紙を下げる事は無いながらも、青のメイドは虚ろに言葉を重ねた。
「『すでに幕は下りている』!アーツ、炸裂!」
突き出された掌底から発された衝撃は、18本目の矢と引き替えに本泥棒を吹き飛ばした。
本泥棒の力か限界まで傷を負ったせいか遠退いた意識、そこから覚めたフロイダの視界に入ったのは、爆発音に驚いて起き出してきた人々と、衝撃によって爆ぜた石畳と、その上に転がる一冊の本だった。体の傷は、その痛みさえも嘘のように消えていた。
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「改めて、ありがとうございました」
一通りの感謝ののち、リブラリィ女史から紙に包まれた金貨10枚と件の本をカウンター越しに受け取ったフロイダは、世渡りのセリフを返す。
「困っている人がいたら手伝うのがドーリってもんよ!」
「あら、頼もしいですね」
この奇妙な金模様の浪人が白痴のようなものだと解釈した司書長は、このように適当に褒めれば胸を張って喜ぶ子供のようなフロイデから、公務からはみ出ない範囲で癒しを得ていた。知的な相手に交渉できるよう最低限の礼儀がある無邪気な呪術体は毎度このような感じで交渉をしている。
フロイダもフロイダで、当分の食料と大量の情報を得られるので実際上機嫌であった。そして、次からはいわゆる決め台詞として、『幕を開ける前から?』のフレーズを使おうとか考えていた。
しばらくそのまま和やかな空気が流れていたが、フロイダはハッとして、逸らしていた胸を戻した。
「では、わたくしは本を読んできます」
「はい、ごゆっくり」
リブラリィ女史の声を背に受けながら、本の山とも言える書架の間へ、金の模様は勇んで歩いていった。袋の包みを開けて金貨1枚を口に放り込んだのは、書架の先の角を曲がってからである。
その後更に金貨1枚を物理的に消費し、フロイダはこの図書館のヘレン教関連の蔵書を丸2日かけて記録した。そこで手に入れたミルミの情報と本泥棒の関係性を推理できるだけの知能は持っていなかった。