プレストーリー
マリア・リブラリィは朝から怒っていた。彼女はリリオット図書館の司書長である。怒りの原因は昨晩の出来事にあった。
彼女の管理する大図書館、その蔵書の一つが紛失している事に気がついたのだ。
本の題名は『竜殺しのミルミ』。ここ最近流行っている大衆小説である。何度も重版されているのでそれそのものは貴重ではない。
マリアはセブンハウスはラクリシャ家の観測者でもある。精霊を染み込ませた本を街中に配し、それを基点とすることで広域かつ確実な観測を行うのだ。
問題はこの技術を使用できるのが彼女一人だけであることと、本があまり行き渡らない地域の観測精度が落ちることである。
その問題を解消するのがラクリシャ管轄のこの大図書館。観測基点となる本を無料で貸し出すことで観測精度と範囲を広げているのだ。
マリアは図書館のすべての本の位置を把握している。本が図書館内のどの棚の何段目にあるか、誰に貸し出されているか、印の付いた地図を見るようにわかるのだ。当然、紛失したその本も。
「起点は日付の変わり目。それまで誰もおらず内側から施錠されていた図書館に、青髪のメイドが現れた。他の本から知れる彼女の位置と、『ミルミ』から知れる現在位置が一致。犯人と断定して良し。
しかし……彼女に該当する人物データはなし。おかしい」
おかしい点は三つ。一つは密室状態の図書館に突然泥棒が現れたこと。一つはまるで壁をすり抜けたかのようなルート。一つは日の出と同時にふっつり途切れた足跡。
「まるでお伽噺の幽霊みたい……」
全く何も無い路上で『ミルミ』の反応が消失。近くの家の本からもたらされる情報もここでメイドが消えたことを示している。
「……気は進まないけど、卿に相談しますか」
所変わってラクリシャ邸執務室。マリアはこの件についてラクリシャ卿に報告、及び指示を仰ぐことにした。
「本の紛失か……」
「はい、単なる盗難なら私自ら出張ってでも犯人を殺……とっちめる所ですが」
「本の反応自体がロストした、と」
マリアの失言をスルーするラクリシャ卿。彼女が職務(表も裏も)と裏腹に、暴力的かつ過激な思考回路の持ち主であることは百も承知である。
「ええ。持ち去ったり破損、焼却などしたりすれば反応はありますがその様子もなし。捜索範囲をリリオット全体まで広げましたが網にかかった様子は無いです」
「ふむ、不可解だな。それに、本の反応が失せてるというのも拙い。我らがラクリシャの新観測システムは何処にでもある本を利用したシステムだ。これをハックされたとなると……」
「そもそもこのシステムの存在は私と卿しか知らないですし。蟻の一穴からと言いますししばらくこの問題に注力します」
「うむ。他に必要なものはあるか?」
「そうですね……」
マリアはいたずらっ子っぽく微笑んだ。
「『竜殺しのミルミ』の最新版を一冊。人気の小説が置いてないとか大図書館の名折れですからね」
図書館の司書室に戻り、施錠する。窓明かり一つない密室。ここがマリアの自室にして裏の仕事場である。部屋の中央に置いてある分厚い本を手に取り、詠唱とともに開く。
「本に宿りし精霊たちよ、巷の噂をここに記せ」
本のページが光り、文字がひとりでに書き込まれていく。日課であるリリオットの近況を記録したのち、本題に入る。本泥棒の検索である。
まずは青髪メイドに該当する人物の照合。
セブンハウス中の青髪の女中と照らし合わせるが空振り。街のウェイトレスも調べてみるがこちらも外れ。
うんざりしながらリリオット全域の青髪を調べる作業に入った。流石に街全域となるとまる一日はかかる見込みだった。
だが、捜索網には意外と早く掛かった。日が沈むと同時に、再度『ミルミ』の反応が出現したのだ。ラクリシャ卿に連絡し、公騎士団を送ってもらう手もある。
だがダメだ。バルシャならともかくラクリシャの彼らは壁をすり抜けるような怪異相手の戦闘訓練は受けていない。自ら相見えるしかないだろう。
かくして、マリアは本泥棒を見つけた。それは偶然か必然か、時計館『最果て』前であった。
「さぁ見つけたわよ本泥棒! 今なら大人しく本を返せば半殺しで済ませてあげるわ。さもなくば……」
本泥棒の顔はよく見えなかった。マリアの方を向くと、虚ろな声で問いかけた。
「半ばで途切れた夢の跡、続けることはわるいこと?」
「本を読んでインスピレーションを受けるのは良いことだけど、それは窃盗を見逃す理由にはならないわ」
要領の得ない返事。これ以上の問答は無益と判断。マリアは彼女を捕らえるための戦闘態勢に入った。
ふと気がつくとベッドの中。目を開けると白い天井。図書館からの相対的位置を取得し、今どこにいるかを把握する。
「クローシャの病院か……」
ちょうどその時、年配のナースが部屋に入ってきた。ここの院長だったはずである。
「あぁ、やっと目覚めましたかマリアさん。こんな夜中に路上で大の字になって気を失ってるとか何があったんですか」
「あー……」
答えに逡巡する。本泥棒に返り討ちにあってここに運び込まれたのは明白。本が盗まれたのは機密事項……とここまで考えて気づく。
理由を知らねばそこまで必死になる理由は悟られない。そして本を返さなかったり故意に破損させたりした者へのマリアの熾烈な言動は広く知れ渡っている。つまり、正直に言っていい。
「ひとの図書館から本を返さないクズ・オブ・クズを追っかけてたんだけど、ちょっとドジッちゃって」
「早晩そうなるだろうと思ってましたよ。そういう荒事は公騎士団に任せればいいんですよ。取り立ては司書の仕事に含まれないでしょう?」
「人には譲れないものが有るのよ。……んん、よし、体は動く。一旦帰るわ」
「治療費は……」
「ラクリシャに請求して。私の給料から差っ引いて払ってくれるだろうから」
再びラクリシャ邸執務室。
「……というわけです」
「司書長、お前相手だから忌憚ない意見を言わせてもらうが……阿呆か?」
「今回は相手の強さを見誤りましたね……」
「今回だけじゃない。本の返却期限切れた相手に実力行使するのは止めろ」
「病院の院長にも言われましたよそれ」
はぁ、とラクリシャ卿は大きな溜息をつく。
「で、どうするつもりだ。もう一度殴りに行くつもりか?」
「非常に腹立たしいですが今の私では勝てません。あぁ腹立つ。でもいつまでも放っておくわけには行きません。そこで賞金をかけます」
「リソースガード任せか」
「まぁセブンハウスだろうがヘレン教だろうがエフェクティヴだろうが行きずりの旅人だろうが構いませんがね。本を回収すれば今回の顛末のログも取れるはずです」
「ウチで出せる金はそうないぞ。先日の事件で予算が逼迫してることは知ってるだろう」
「そこは自腹で出します。卿にしてもらいたいのは告知の手続きと青髪メイドへの注意喚起ですね」
「気軽に言ってくれるなぁ……」
かくして、リリオットの本泥棒に賞金が掛けられることとなった。彼女から本を取り戻せば金貨10枚。ただの捕物としては破格である。
ただ、図書館の印があるのでそこらの本屋で買って誤魔化す手は通じない。勇士たちよ、彼女の手から本を取り戻せ!
名前:マリア・リブラリィ
性別:女 ポジション:セブンハウス・ラクリシャ家 性能:HP38/知7/技6 スキル: スノーロード/0/36/4 墓碑/24/0/7/防御無視 心流/30/0/7/回復 遥か彼方/20/15/5 虚空紗剣/24/0/7/炎熱 クリムゾネス/32/6/9/炎熱 イエローワールド/1/6/1 幽弾/6/0/1 プラン: 980カウント以上でクリムゾネス 敵構えなしかつ直前の同時行動時の敵スキルが防御無視でも炎熱でもなく、(6-ウェイト)*敵技術<自HPで経過カウント100以上ならクリムゾネス 敵構えなしかつ直前の同時行動時の敵スキルのウェイトが1で防御0ならイエローワールド 敵構えなしかつ直前の同時行動時の敵スキルのウェイトが4以下で攻撃15以下なら遥か彼方 敵構えなしなら幽弾
敵HPが(残ウェイト-1)*(6-敵防御)以下なら幽弾
残ウェイト10以上かつ(クリムゾネス攻撃力-敵防御)≧敵HPならクリムゾネス。
残ウェイト9かつ敵回復で(クリムゾネス攻撃力-敵攻撃)≧敵HPならクリムゾネス。
残ウェイト9かつ敵防御無視で(敵HP-クリムゾネス攻撃力)が0以下かつ(自HP-敵攻撃力)未満ならクリムゾネス。
残ウェイト9かつ(敵HP+敵防御-クリムゾネス攻撃力)が0以下かつ(自HP+6-敵攻撃力)未満ならクリムゾネス。
残ウェイト8以上かつ敵HP≦24なら墓碑。
残ウェイト8以上かつ敵HP+敵防御≦虚空紗剣の攻撃力なら虚空紗剣。
残ウェイト10以上かつ(クリムゾネス攻撃力-敵防御)が24以上かつクリムゾネス攻撃力>残ウェイト*(6-敵防御)ならクリムゾネス。
残ウェイト8以上かつ敵防御≧2かつカウント100以下なら墓碑。
残ウェイト8以上かつ虚空紗剣攻撃力-敵防御≧24かつ虚空紗剣攻撃力>残ウェイト*(6-敵防御)なら虚空紗剣。
敵が凍結でない防御無視、敵攻撃-自HPが-35以上、残ウェイト14以上の7の倍数、虚空紗剣の攻撃力42以上、以上を満たすなら虚空紗剣
敵が凍結でない防御無視、敵攻撃-自HPが-35以上、残ウェイト8以上、以上を満たすなら幽弾
敵が凍結でない防御無視、敵攻撃-自HPが-35以上、残ウェイト7、以上を満たすなら心流
残ウェイト8以上かつ自最大HPと現在HPの差が30以上なら心流
残ウェイト6以下かつ敵防御無視か回復なら幽弾。
残ウェイト5以下で15≧敵攻撃なら遥か彼方
残ウェイト4以下で15<敵攻撃ならスノーロード
残ウェイト3以下で (6-残ウェイト) ×敵技術<自HPで、経過カウントが100を超えていればクリムゾネス。
さもなくば幽弾
設定:
赤いボブカットの髪に白いローブを着た、大人しい印象を受ける女性。24歳。
リリオット図書館の司書長にしてラクリシャ家の観測者。セブンハウスはそれぞれ独自の内偵機関を持つ。
彼女もその一人である。
マリアは表向きはおしとやかな司書としての顔を見せているが、本の貸出期限を過ぎても理由なく返さなかったり、故意に汚損や紛失などしたものには容赦ない制裁を加える。
故意かどうかは彼女の独断で決めるものの、観測者としての能力をフル活用した上でのことなので良識からそうそう外れることはない。
マリアはラクリシャ家の観測者でもある。数年前に編み出した、精霊を利用した本の追跡システム。
その功績で若くして司書長に任命された彼女はそれをさらに進化させ、ジフロマーシャの観測システムに匹敵する情報集積システムを編み出したのだ。
問題は現在彼女以外システムにアクセスできない事で、後継者の目処も立っていない。
引退するまでに見つかるでしょ、とマリアは楽観的だが、命知らずなマリアを見ているラクリシャ卿からすれば気が気でない。
戦闘時には手元にある本を媒体に精霊駆動を行い、容赦無く攻め立てる。
そのカタチはマリアの知る物語、その登場人物の行使する御業。
だが正体を知られれば見切られる可能性がある為、別の物語の名を借りてカバーする。
また、自分が扱いやすいようにしているために、元となった技から変質している。
スキル設定:
スノーロード:其は瞬時に吹雪を起こして造られる雪の壁。長くは持たないが防壁には十分。
墓碑:其は劣化し脆くなった精霊の墓石。脆さを伝染させる性質を持つ精霊の化石は守ったその身ごと対象を押し潰す。
心流:其は夕日の如き暖かな光。精霊の力が全身を巡り、戦い続ける力を呼び起こす。
遥か彼方:其は遥か彼方の果てに近づきし者の杖術。変幻自在に動くスタッフが敵を一掃する。
虚空紗剣:其は虚空から放たれる、勇者が振るうとされる光の剣。
クリムゾネス:其は紅蓮の化身たる姫、太陽の剣。物語の〆を担う必殺の剣。
イエローワールド:其は死に至る呪いという名の病。心か無くとも辛いものは辛いのだ。
幽弾:其は人の虚を突き、冥府へ誘う凝縮した精霊の塊。まさに死が如しである。
裏設定
雪道→凍土:オリジナルと比べると強度と維持力の点で一歩劣る。
エピタフ→愚霊剣:塊をぶつける為、鋭くする手間がないぶん威力と引き換えに出が早い。
HeartStream→夕焼け空:回復量は最低限。これでも多いくらいである。と言うか実質ただのガッツであり戦闘続行
MostFarPlace→鋼鉄ブラシ:棒を遠隔操作するので、より大胆な攻撃も可能
マーガレット・ヴォイド→貫く:防御無視はないが、防御が疎かなときに撃ち込むので大して変わらない
灼熱姫→オオヒルメの剣:元より小さなぶん、形成速度は明らかに速い。
黄色い世界→D:カラカラに乾いた世界は辛い。辛いと言うことを知っているぶん強度がある
ゴーストブリット→死:連射力と威力を両立した効率的な射撃
イラスト:https://charat.me/avatarmaker/ (CHARATアバターメーカー)