名前:イトヨリ・メバル
性能:HP82/知3/技5 スキル 矮芋のすりおろしと糸引き豆の和え物、季節のG・イール添え/51/6/11 あられのポップスプリング/5/0/1 精霊酒とザクロ、炭酸水割りで/5/0/1 プラン ・最初は「矮芋のすりおろしと糸引き豆の和え物、季節のG・イール添え」。 ・相手の防御力が0なら「あられのポップスプリング」。 ・相手の防御力が0なら「精霊酒とザクロ、炭酸水割りで」。 ・「矮芋のすりおろしと糸引き豆の和え物、季節のG・イール添え」。 ・「精霊酒とザクロ、炭酸水割りで」 設定: 王都で料理の修行をしていたが、精霊料理を極めるために数年前この街へやってきた。 現在、セブンハウスはバルシャの分家筋に当るジョン・オート・ハーキムの住み込み料理人として働きがてら、 ヘレンが記したと言われるレシピブックを探している。海沿いの町の出身で、体の一部に鱗がある。 ・精霊酒とザクロ、炭酸水割りで 食前に体を温めるのに最適。割ってあるとはいえ、精霊酒もザクロも火気厳禁! ・あられのポップスプリング あられ揚げの一種で、あられを逆位相の精霊油で揚げたもの。 食べると口の中ではじける感触が発泡するお酒のお供にソーグッド。 揚げる時の温度には注意しないと、はじける勢いがバクチク並になるから注意! ・ 矮芋のすりおろしと糸引き豆の和え物、季節のG・イール添え 主に夏によく食べられる料理で、各材料の産地が海、山、平地とバランスよく、なおかつスタミナ抜群。 作りたてのうちに食べないとどんどん粘度が増していって、喉につっかえてしまうぞ! オーナー:平澤陽
エンカウント:イトヨリ・メバル Written By 平澤陽
料理人ぐらいいないとかっこつかないだろ。そうハーキム卿は言っていたが、本当に体裁だけの料理人のようで、暇なのはありがたいやら情けないやら。ハーキム卿の居所は大通りから一本裏道に入った古いアパルトメントの4階と5階で、僕はそのうちの一室を使わせてもらっている。僕のほかに使用人は二人。メイドのミッチェル婆と馬丁のサンチョ。二人とも無口で、僕もまあそんなに饒舌な方でもないから、一日喋らないことも多い。ハーキム卿がここへ寄り付くのは週に1回か2回くらいで、特に予告も無くふらっと帰ってくるものだから僕はいつも慌ててしまう。ハーキム卿はいわゆる保存食的なものがあまり好きではないし、僕も出来れば腕を振るいたいとも思う。大勢の客人を連れてくることもあり、そんなときはあられのポップスプリングとなけなしの酒で場を持たせて、慌てて市場に材料を買い込みに走る。
ハーキム卿がいない日には街の図書館にこもって古い図書を読み込んだり、散策して各所の店の味をぬす……えー、味に敬意を払ったり。一度は同業者であることがばれて拳骨で殴られかけたりもしたけれど、そのときは大男のメイドのとりなしで何とか助かった。その店の霊飴細工で彩られた繊細なデザートは最高で、そのあとも何度も通わせてもらったものだけれども、今はもう無い。ときおり真似して作りハーキム卿には褒められるけれど、あの細やかな味は上手く出すことはできない。
ある日のことだ。酒精の匂いを漂わせた上機嫌のハーキム卿が、大きな袋をぶら下げて帰ってきた。いつも伊達に決めているハーキム卿には似つかわしくない麻製の粗末な袋。中に入っているのは何か球形の物体のようだ。人の頭よりも大きい。
「土産だぞ、土産」
「なんですか?」
「ちゃんと美味しく料理してくれよ」
「えーと、何すか? カボチャすか? スイカ?」
ちっげーよ、とハーキム卿。彼が土で汚れたその袋から取り出したのは、ひび割れた薄茶色の外殻をまとい、赤紫の蛍光を内に秘めた柔らかな結晶体。ところどころ葉脈のようにオレンジの網模様が浮き上がる。祖霊だ。ヴィンカーネヴィル分類タイプG6 F-E。それも、極上の。
「え、なんで、こんなの」
「ダチが鉱山で働いててな、卸に流れる前にこっちに回してくれた」
ハーキム卿が言うには、友人らとの賭け事でハーキム卿はめっぽう強く、ツケがこれまで山のように溜まっていたのだそうだ。友人らは相談し、一括で彼にツケを払うことに決めた。鉱山のある支坑の監督をしている一人が仲介して鉱夫らと直接取引きを行い、格安でこの大きさの祖霊を手に入れることができたのだという。そしてそれをハーキム卿に贈った。
「大丈夫なんですか? こんなのソウルスミス通さずに」
「でかいが、この種の祖霊は駆動モノには不向きなんだってよ。武器にならなきゃそこまで目くじら立てない。だけど」
その後を引き継ぐ。
「分かってます、これ、食用としては最高だ」
ハーキム卿は笑い、期待してるぜ、と言う。一週間後までに一番こいつを美味しく食べれる方法を見つけといてくれ、と。
「そうそう、あいつら、俺にくれるって言ったくせに、お前の料理の相伴に預かる気満々なんだからな」
そうハーキム卿に聞かされて、僕は緊張する。ハーキム卿は、それじゃ期待してるぞ、と言ってまた玄関から出て行く。どうやら外に仲間が待っているらしい。僕は、とりあえず祖霊を食料庫のいちばん奥にしまいこむ。どうやって調理しよう。やっぱり揚げるのが一番かな。いやいや、あの大きさだし、生の食感を生かしてみるのも。塩竃にして? いやいや、土地のものには土地のもの、鉱山の泥竃とか……。ベッドに入ってからもどんどんアイデアが浮かんできて、僕はなかなか寝付けなかった。
次の日の朝、僕が見たのは、空になった食料庫だった。
壁には穴が空き、「ヘル・ライオット参上」と白ペンキで書かれていた。
料理の冒涜者 Written By N.M
イトヨリ・メバルはぶち抜かれた穴から外へ駆け出した。
辺りを見回すと、狂人の仮面を被り、精霊結晶を弄ぶ男が一人。
「ヘル・ライオット!?」
「ククク、お前はここのコックだな? 私を料理で満足させてみろ。さすればこれを返してやろう!」
怪盗は精霊結晶を掲げる。間違い無く盗まれたものである。
「おおっと、腕尽くで取ろうと思うなよ?
多くの追手が転がされたことはお前の耳にも入っているだろう?
残念なことになりたいなら話は別だがな!」
***
「ご飯まだー?」
怪盗が席に座って間もなく、針二本をバチのように使い、器を鳴らし始めた。
だが、イトヨリ・メバルには自信があった。
矮芋のすりおろしと糸引き豆の和え物、季節のG・イール添え。
彼の得意中の得意料理。主人もとても素晴らしいと褒めてくださった。
彼は気づくことはなかった。
怪盗の面が嫉妬に歪むところを。
しばらくして。
「これをこうして、あとは仕上げに秘伝の調味料を」
秘伝の調味料。この料理のために、きめ細かくスパイスを混ぜたとっておきの品。
これ無くしては、この料理は完成しない。しないのだが…。
(無い!?)
確かに昨晩いつもの場所にしまった調味料を入れた瓶が、無い。
精霊結晶が無くなったことを確認した時に、無くなっていないことを確認したはず。
「お探しの品は、これかな?」
怪盗の手には、いつの間にか秘伝の調味料を入れた瓶が。
「どうやら、完成できないようだな。タイムオーバーだ!!」
怪盗の面が下卑たものに変わる。
「この精霊酒うめーな!!」
大胆不敵すぎる。さすがに酒が入れば少しは弱まるだろうと思って突進したが甘かった。
気づいた時にはパイまみれになって倒れていた。
辺りを見回すと壁に穴が一つ増えていた。
精霊結晶ばかりか、秘伝の調味料まで盗まれた彼に残されたものは、完全な敗北感だった。
暇乞い Written by 平澤 陽 (タイトル:N.M)
くやしい。
祖霊を持っていかれたこともだし、あの怪盗が正々堂々と約束に対すると思ってしまったこともだ。何よりくやしいのは、このパイのクリーム。肌理細やかに泡立てられ、舐めると多幸感を呼び覚ますデザートの甘さと、意識しない飢餓感をかきたてる香辛料のほのかな香り。ああ、これは、この香りは僕のだ。あの怪盗に奪われた僕のオリジナルの七味。いつの間に混ぜたのか、でも、こんなふうな使い方があるなんて。僕はしばらく立ち上がれずに、その場にへたり込んでいた。
公騎士団の現場検証が済んで、僕とミッチェル婆の二人で後片付けをする。サンチョはハーキム卿を探しにスマイルズの盛り場に向かったが、途中で行き違いになったようで、帰って来たハーキム卿と一緒ではなかった。バルシャの本家筋から直接に連絡が入ったらしい。
「あー、それは残念だな」
とハーキム卿。あまり残念そうなそぶりではない。
「まあ、お前たちにひどい怪我なさそうでよかったよ」
「クリームまみれにさせられましたけどね」
「今、病院はあれにやられた奴らで満員なんだぜ?」
ハーキム卿の友人にも、上からの命令であるいは興味本位であの怪盗を追った結果、ひどい目にあったものが何人もいるという。あの怪盗によって命を落としたものは今のところまだ出ていないが、公衆の面前に醜態をさらすことになったものは数知れず。布団を頭まで被って、誰にも面会しようとしない入院患者で病院のベッドはいっぱいだとか。それを考えると、確かに僕は運がよかったのかもしれないけど。
「なあ」
とハーキム卿。
「あれを自分で取り返そう、なんて考えるなよ?」
「そんな、大それたこと、考えてるように見えますか?」
と僕。
「まあ、あれだ。バルシャの殿様も相当ガチにきてる。近いうちに捕まることは確実だぜ」
「そうっすね」
そんな会話をして、その日はハーキム卿は家で昼食を取るというので、そのための食材を買いに市場へ出る。道端に人だかりが出来て、街灯に吊るされた女性を下ろそうとしている。あれも怪盗にやられたのか。そういう目で見ると、街のあちこちに彼の残した爪あとが見えるようで、市場の雑踏にもなにやらピリピリとした空気を感じる。また、あのときのようなことが起こらないといいけど。行きつけの肉屋で豚のアバラと、あとは露店のリンゴが安かったのでいくつか買う。時間もそれほどないし、一緒にローストして添えよう。
そうして、暇乞いを提出しよう。
名前:イトヨリ・メバル
性能:HP76/知4/技5
スキル
秘伝の七味/5/0/1
氏族に古くから伝わる魚醤/30/0/9 防御無視
イトヨリダイとメバルのメバルのフォン、香草のクリームパイ/40/0/14 防御無視 封印
ただのクリームパイ/55/0/14 防御無視
プラン
・初手「敵知性≦4」かつ「自HP>(敵技術×14)」のとき「イトヨリダイとメバルのメバルのフォン、香草のクリームパイ」
・初手「自HP>(敵技術×14)」かつ「敵HP≦55」のとき「ただのクリームパイ」
・初手「イトヨリダイとメバルのメバルのフォン、香草のクリームパイ」
・「15ターン目」かつ「敵知性7以上」のとき「イトヨリダイとメバルのメバルのフォン、香草のクリームパイ」
・同時行動かつ「1ターン前の同時行動時の敵防御が0以外」のとき「氏族に古くから伝わる魚醤」
・同時行動のとき秘伝の七味
・「((5-敵防御)×敵残りウェイト)≧敵現HP」のとき「秘伝の七味」
・「氏族に古くから伝わる魚醤」
・「秘伝の七味」
・イトヨリダイとメバルのメバルのフォン、香草のクリームパイ」
・「ただのクリームパイ」
設定:
リリオットで料理人として働いていたが、自分の料理を見つめなおすため、地元である海沿いの村にひととき帰った。体の一部に鱗がある。
オーナー:平澤陽
目には目を、パイにはパイを Written By N.M
イトヨリ・メバルが辞表を出そうと思った帰り道。
怪盗がそこにいた。
ただ一つの心残り、ヘル・ライオット。
やることは決まっている。
籠からクリームパイを取り出す。
何の変哲もない、クリームパイ。
料理への冒涜だとかそういうことはこの際関係はない。
言葉は要らない。ただ、叩きつけるのみ。
体が自然に動く。
針が飛び、剣気が飛んでくる。
買った物や調味料が入った籠が飛ばされるが、気にしてはいられない。
剣で牽制されるが、気にしてはいられない。
そしてクリームパイは、怪盗の顔面に、直撃した。
You Defeated the Enemy!!