斎藤美奈子『妊娠小説』

読書さとう

2003年の6月に読んでいました。この著者は、最初同じ文春文庫で『読者は踊る』を読んでいまして、次に読んだのがこの本でした。この方は、私のような昔の全共闘及び全学連が嫌いなようで、それはもう嫌というほど分かります。

最初の森鴎外「舞姫」、島崎藤村「新生」、小栗風葉「青春」のあたりは、もう面白く読めました。「妊娠小説というより、いっそ中絶小説と言っていいんじゃないかな」なんていう思いで読んでいました。しかし、その後さらに読んでいくのは、なんだか私には辛いんですよね。私も読んでいる小説が多いのですが、「よくまあ、こういう風に読めるものだな」と感心しているばかりでした。私なんか、こんなに丁寧に読めていません。というか、こういうふうに読んでいくのはつらいのですよ。恋愛も、そしてそれにともなう妊娠も誰もが経験があるわけであり、そしてその「妊娠」のほうは望まないこともあったかと思うんです。そうしたときの痛々しい思いがどうしても甦えってしまうのだと思いました。