レイチェル・カーソン『沈黙の春』

読書さとう

環境問題を論ずるとき、避けては通れない本があります。1964年6月に最初は「生と死の媚薬」という名前で刊行されました。私が読んだのは、新潮文庫で訳者が青樹簗一で、私は1996年6月に読んでいました。

私はこの本の書評を書いてみようと思いながら、どうしても書き進みませんでした。この本の指摘がかなり厳しく、しかも正確に「公害問題」をいち早く警告している点は評価できるのですが、その解決方法というと、カーソン自体が述べていることでは到底無理ではないのかなと思ってしまうからかもしれません。

「十七べつの道」に書かれている数々のこと、農薬ではなく天敵を使う方法なども、どこまで有効なのかというのは疑問なところです。現在はどこでも「無農薬食品」といいながら、実は農薬を使っていたということが多々指摘されているように事態は簡単ではないのです。

ただ、もちろんこの時代にこれだけの指摘をしたカーソン女史の情熱には敬服します。彼女は人類が到達してしまった科学技術が、人類の為にあるはずなのに、逆に人類を破滅にまで到らせる姿になってしまっていることを鋭く指摘しました。そしてその破滅の道ではない、もう一つの道を歩くことを示唆しました。

これは今も成功しているとはいえませんが、誰も世界中できずきそして少しづつ努力しているところだと思います。春が喜びに溢れた季節ではなく、沈黙してしまうほどいわば生物に死に絶えたような季節になっているという時代を、私たちは見据えた上で、どうするべきかということを選択していかなければならないのでしょう。(1996.06.14)