ステファニー・フレッチャー『Eメール・ラブ』

読書さとう

期待して読んで、実にがっかりした本です。1997年7月に読んでいました。徳間書店で布施由紀子が訳者でした。本当にくだらない本です。

パソコン通信上でのメールによる愛の交歓を描いた小説というところなのですが、読んでみて、「なんだ、これじゃパソコン通信のことをあんまり分かってないんじゃないの」としか思えないのです。電子メールは多くの人と素早く簡単に連絡がとれるわけですが、この小説の描き方だと、もっとその特徴を明確にとらえてくれないと、あんまり面白くは感じられないのです。

こうしたメールによる愛の交歓になっていけるということは、まずは最初不特定多数が読む掲示板なり、会議室に性別等々が分かるように書き込むこと、そしてこれがインターネットではなく、割りと管理のしっかりしたBBSだからということにあります。そのことを書かないと、私には少しも身近にも感じないし、真実性も湧いてこないのです。インターネット上では、こうした内容のメールを書くことはありえないでしょう。

ついでにいうと、この訳者も少しも理解できていません。そうしたところをいくつか抜き書きして示そうと思いましたが、思えば、私はこんな本をまったく推薦する気なんてまったくありませんので、それすらやりたくないよな、と思い直しました。とにかく私よりも8歳の年下の訳者が、パソコンの世界が明確に把握できていないのをみると、まったく嫌になります。訳者があとがきに次のように書いています。

ほんとうに、うかうかしていておれない時代になりました。

うかうかしていられないのは、太古の大昔から男女の愛の話は、うかうかなんかしておれない非常に面倒で面白いことだったということであって、それがパソコン通信上のメール交換によることなら、そのことを正確に書かなきゃ、あんた自身がうかうかした能力の人というだけだよ。(1997.07.05)