さくらももこ『さくら日和』
読書さとう
さくらももこの作品は、漫画もエッセイもすべて読んできました。新刊が出て、私が手に入れていないと、娘から注文が入ります。
このエッセイでは、さくらももこの離婚のこと少し語られます。私たち家族にとっては、ご夫婦含めて親しい感じがしていたものですから、「どうしたのかな?」と気になっていました。でも、ほんの少しそのわけが判ったような気がします。
今回のエッセイでも、やはり父ヒロシが面白いのです。私の長女は店頭で立ち読みしていて、声をあげて笑ったようです。
吉本ばばな(彼女はももこと親友のようです)がヒロシに会ってしまうところが圧巻です。なんと父ヒロシは「吉本ばなな」という作家を知らないのです。
いつまで経っても父ヒロシが来ないので、もう一度呼びに行くと、モタモタとトイレから出てきて「よう」と呑気に私に声をかけてきたので私は「”よう”じゃないよアンタ、今、吉本さんが来ているんだから、ちょっとあいさつに来てって言ってるじゃん」と言うと父ヒロシは「お、吉本さんってアレか、果物の」というので「そうだよ、ばななだよ」と、ヒロシにしては果物というところまでよく覚えていたと一瞬感心したが、考えてみれば今朝まで「ばななさんが来る」という話題でもちきりだったのだから、正式に果物名まで覚えていないヒロシはやはりどうかしている。
私がヒロシを連れて来たとたん、ひと目見るなり吉本さんは本人の前で大爆笑だったのである。(「ヒロシの調子」)
やはりこんなヒロシが私は一番好きです。「ちびまる子ちゃん」の父ヒロシとまったく同じではないですか。
私は世界がどんなことになろうと、こうした姿でいるヒロシをいつも想像していたいものです。
このヒロシの姿が、実はさくらももこの姿でもあるように私には思えます。
なんだか電車の中ですぐに読み終わってしまったものです。私はこの文を1999年9月20日に書いていました。