小林秀雄『無常といふ事』

読書さとう

私がこの本を手にしたのは、中学2年の3学期のことでした。私が読んだのは角川文庫でしたね。

以下の6篇がありました。「当麻(たえま)」「徒然草」「無常ということ」「西行」「実朝」「平家物語」。みな短編ばかりです。この文庫本を再読したのは、もう50歳を過ぎていたものでした。

小林秀雄は、1902(明治35)年4月11日~1983(昭和58)年3月1日の生涯でした。私は一昨日八重洲ブックセンターに行きまして、吉本(吉本隆明)さんの本を探す中、この小林秀雄の写真を表紙にしてある本を見ていたものでした。その写真の顔はなかなか私には昔から親しめないものでしたが、もう今ではもういつも思い浮かべる顔になっていました。

私が五十代になって再読したときに、この『無常といふこと』に『一言放談抄』のことも書いてあるのだな、ということに気がついたものでした。もう私が当時必死になって読んでいた書物でしたね。私は吉本隆明さんの講演でこの書物を知ったものでした。

小林秀雄の晩年に書いた『本居宣長』は私には少しも親しめない本でした。いや親しめないというより、少しも感心しませんでした。でもこの『無常といふこと』という短編はいつ読んでも感心している書籍です。