ハラスメント防止に関するガイドラインについて

ハラスメント防止に関するガイドラインについて

 本ガイドラインは、表象文化論学会の「ハラスメント防止ガイドライン」(2020年7月12日制定版および2022年11月27日改訂版)をもとに、公益社団法人日本心理学会の「ハラスメント防止に関するガイドライン」(2021年5月14日制定)を参照して作成されました。ガイドラインの策定に携わった方々や、ハラスメント防止に取り組んでいる方々に、心からの謝意を表します。


2022年9月17日

物語研究会作成

2023年1月28日改訂


ハラスメント防止に関するガイドライン


1.目的

 物語研究会(以下、本研究会)は、各種ハラスメントの発生を防止することで、本研究会員とそれに関係する人々の権利と尊厳を守り、各自が自由で快適で安心できる研究会活動や職務に従事できるようにすることを目指し、本ガイドラインを制定する。


2.基本方針

 本研究会は、自主的で自由な研究者の集団として、研究会に関わる人の人権や尊厳を守るために、ハラスメントの発生を予防することに努め、また、研究会に関わる人たちは、互いが安心して研究活動や研究会活動に参加し従事できる環境を作ることに努める。


3.ハラスメントの定義

 ハラスメントとは、研究上や職務上の、当事者間の力関係の非対称を濫用して、本研究会員とそれに関係する人々の権利や尊厳を脅かし、公正かつ安全、自主的で自由な研究・労働環境を損なう行為や言動を広く指す。下記に列挙するハラスメントの区分は暫定的なものであり、上記の定義に該当するものはすべてハラスメントになる。ハラスメントは、対面の場だけでなく、手紙や電話、メール、SNS上においても起こりうる。

(1)セクシュアル・ハラスメント

 セクシュアル・ハラスメントとは、相手方の意に反する性的な発言や行為、また、性別や性的指向、性同一性などに関する発言や行為によって生じるハラスメントである。どのような性別間でも起こりえる。妊娠、出産、育児を理由としたマタニティー・ハラスメントの形をとることもある。

(2)アカデミック・ハラスメント

 アカデミック・ハラスメントとは、教育・研究上の力関係を濫用することによって生じるハラスメントである。

(3)パワー・ハラスメント

 パワー・ハラスメントとは、職務上の優越的な地位や権限、または人間関係などの優位性を利用して行なう言動によって生じるハラスメントである。

(4)レイシャル・ハラスメント

レイシャル・ハラスメントとは、民族的出自、肌の色、人種、国籍、宗教、思想・信条などを理由として生じるハラスメントである。

 

4.ハラスメントの例:

(1)セクシュアル・ハラスメント

①研究発表の場、広報文など研究会活動に関わる状況で、性差別的な発言や性的少数者に対する攻撃を行なう。

②「男なんだから」「女のくせに」といった性別役割を前提とした発言をする。

③飲物や食事の準備などを女性にのみ担当させる。

④恋愛経験や性体験についてしつこく尋ねる。

⑤連絡先などの個人情報やプライバシーに関することをしつこく尋ねる。

⑥断られているにもかかわらず、交際を迫ったり、つきまとう。

⑦相手の意に反して、身体に接触したり、極度に接近する。

⑧胸や足、顔などをじっと見つめる。

⑨見かけ上の性別がわかりにくかったり、典型的でない人をからかう。

⑩本人の了承なく、その人の性的指向や性自認について暴露したり、あげつらったりする。

⑪出張中の宿泊先を執拗に尋ねたり、懇親会・二次会に無理やり誘ったりする。

⑫育児中の会員に対して、「男のくせに育児休業をとるなんて」と配慮のないかたちで仕事を押し付ける、あるいは「女は育児に集中すべき」と主要な仕事から外す。

⑬「あなたが妊娠したせいで私たちの仕事が増えた」と嫌味を言う。

⑭妊娠時に仕事を軽くするよう求められて「妊婦として扱うつもりはない」「つわりは病気じゃない」などと言い、配慮しない。

⑮「あかちゃん(子ども)が可哀そう」と言い、研究を続けるのが身勝手な行動だと指弾する。

 

(2)アカデミック・ハラスメント

①不当に他会員の研究発表の機会を制限したり、意図的に人の集まりにくい会場を割り当てたりするなど発表にとって不利な状況を作る。

②論文の査読等において不当な評価を行なう。

③望まない役職を強要する、または着任を妨害するなど、研究会活動における選択の権利を侵害する。

④「こんな発表をして恥ずかしくないのか」「幼児でももっとましな文章を作れる」など暴言や過度の叱責をおこない、相手の人格を傷つける言動をする。

⑤研究会の会場や宿泊先などまでの送迎を強要する。

⑥発表申し込みや論文投稿に際し、指導学生のアイディアを盗用する、実質的な研究に寄与していないにもかかわらず共著者に入れるよう強要するなど研究倫理に反する不正行為をする。

⑦SNS上で、誤った情報に基づき特定の研究成果を貶める発言を繰り返し行う、またその拡散に積極的に加担する。

 

(3)パワー・ハラスメント

①機関誌作成や研究会準備などの活動で、正当な理由なく仕事を押し付ける。

②権限を持っている人が、研究発表などにおいて必要な情報を意図的に伝えない。

③本来の役職と無関係な、個人的な用事を強要する。

④多数の人に向けて特定の人物を不当に罵倒する、能力や性格について侮辱的な発言をする。

⑤個人情報や噂を言いふらして、当人の不利益になる状況を作る。

⑥障害があるからという理由で、研究会運営、議論、懇親会から排除する。

⑦懇親会などで、本人の望まない飲酒を強要する。

⑧断りづらい状況を作って飲み会への参加を強要する。

⑨アルコールを飲めない・飲まない人への配慮を欠いた言動や行動をする。

⑩健康上の理由で特定の食生活を送る人に対し、侮辱したり本人が望まない飲食を強要したりする。

 

(4)レイシャル・ハラスメント

①日本語能力に不安があるなどの不当な理由をつけて研究成果を正当に評価しない。「日本人しかいない場所では居心地が悪いだろう」などと配慮を装い、研究会運営、議論、懇親会から排除する。

②人種、民族、国籍、信条に関連した攻撃的で侮蔑的言動を行なう。「○○人は無礼だ」「××なんてもう消滅した民族でしょ」など受け手の属性に対し攻撃的な発言をしたり、宗教上身につけている衣類などを外すよう強要する。

③身体的、文化的な特徴や行動様式に対する揶揄やからかい、差別的な言動を行なう。たとえば「この人はこんな見た目ですが日本語は大丈夫です」など身体的特徴を揶揄するジョークをいう。

④民族マイノリティに対し、ルーツがある地域の問題について責任があるかのように追求する。

⑤「日本人ならわかると思いますが」などと人種や民族的出自の多様性を無視した前提の言動を行なう。

⑥本人の意思を無視して、人種的・民族的属性を公表したり問いただしたりする。

⑦宗教的または倫理的な理由で、特定の食生活を送る人に対し、侮辱したり本人が望まない飲食を強要したりする。

⑧本人の宗教的信条からタブーとされている飲食物を知りながら、「この料理なら大丈夫」と偽って食事などを勧める。

⑨懇親会など研究会で提供する飲食物に対する宗教的または倫理的な理由に基づく要望をあからさまに拒絶する。

⑩ベジタリアンに対し「植物なら命を奪っていいのか」と繰り返し問いただしたり、「私は動物の命をいただくことに敬意を持っている」と無理解をことさらに表明したりする。

 

5.防止のための啓発活動

 本研究会は、ハラスメントの発生を予防するために、ハラスメント防止の啓発活動に努めるとともに、一人一人がハラスメントを起こさない・ハラスメントを容認しない環境作りの啓蒙に取り組む。