廃車のプラスチック、新車バンパーに再利用

投稿日: Nov 02, 2017 9:12:41 AM

廃車のリサイクルで、末端の材料まで付加価値を高める取り組みが始まる。中古車オークション運営のユー・エス・エスなどが新会社を設立。スクラップを破砕してプラスチック類を選別し、バンパーなどの原料によみがえらせる。これまでプラスチック類は燃料として安く販売するしかなかったが、リサイクルすれば価格を5倍以上に高められる。国内で廃車の数が減るなか、付加価値を生み出してリサイクルの存在感を高める。

ユー・エス・エス子会社のアビヅ(名古屋市)や資源リサイクルを手がけるエコネコル(静岡県富士宮市)などが出資し、7月に新会社「プラ2プラ」(名古屋市)を立ち上げた。自動車や家電など、金属とプラスチックが混合した製品をリサイクルする技術を持った企業が手を組んだ。

エコネコルの工場では、1250馬力の破砕機を使い、プレスされた自動車を破片にする。磁石などを使って鉄と非鉄に分け、非鉄をさらに銅やプラスチックに細かく分けていく。全体の10~15%がプラスチックになる。

分類したプラスチックはこれまで製油会社などに燃料として販売しており、1キログラムあたり10円にしかならなかった。「ゴミにならなければいいという位置付けだった」(エコネコルの佐野文勝社長)。新会社のプラ2プラは、このプラスチックをさらに細かく分け、再び製品に使える水準まで質を高める。

ポリプロピレンは加熱・成型して細かいペレットにする。生産能力は1時間あたり500キログラムで、プラスチック製品メーカーに納める。価格は1キログラムあたり50円以上と、加工前の5倍超になる。石油からプラスチックをつくる工程も考えると「二酸化炭素の削減に大きく寄与する」(佐野社長)。

稼働当初は収納ケースやハンガーへの再生を見込むが、段階的に添加物の配合などのノウハウを応用。車のバンパーに使えるレベルまで耐久性を高める構想を掲げる。19年6月までに2億円、5年後には10億円規模の売り上げを目指す。

各社がノウハウを持ち寄った背景には、廃車の供給が減っていく焦りがある。自動車リサイクル促進センター(東京・港)によると、15年の廃車引き取り台数は前年比6%減の320万台。車の保有期間が延びているほか、中古車の輸出も好調だ。国内の新車販売は減少傾向で、量に頼らずに付加価値を出さなければ今まで通りの売り上げを確保できない。

電気自動車(EV)化が進めば車体の軽量化がさらに重要になり、プラスチック部品へのニーズがさらに高まるとみる。

プラ2プラが国内で手がけるプラスチック再生にとって、追い風ととれる状況もある。7月、中国政府が業界団体に対し非鉄スクラップの輸入を18年末までに制限するように通達したとの現地報道が出た。金属以外のごみが多く混じる低品位のスクラップは処理の負担が大きく、環境汚染につながると判断したという。

日本からの非鉄スクラップの輸出はすでに「止まり始めている」(佐野社長)。再生技術を持たない国内業者の非鉄スクラップがエコネコルなどに流れる見込みが大きいという。

政府も後押しする。経済産業省は再生プラスチックを使った自動車を対象に、購入時に消費者が負担するリサイクル料金のほぼ全額を割り引く仕組みを早ければ22年にも導入する。「廃車から新車へ」の資源の循環は、電動化だけでない環境対応策の1つに育つ可能性がある。