地元自治体の可燃ごみ削減にも貢献する高機能古紙工場。

投稿日: Feb 20, 2016 8:14:43 PM

新工場は、プラスチックや金属が付いた古紙など「あらゆる紙」を再生紙の原料として受け入れるとうたう。1日に200トンの紙ごみを処理し、トイレ用ロール130万個、ボックスティッシュ15万個を生産する能力がある。 内側にアルミが張られた酒類の紙パック、取り出し口にフィルムが付いたティッシュペーパーの箱なども、そのまま溶かして金属やプラスチックを分離できる。金属は業者へ売却し、プラスチックは自社工場の燃料として使用。廃棄物を出さない「ゼロエミッション」を実現している。経済産業省紙業服飾品課は「品質の悪い古紙でも再生できる国内随一の最先端工場だ。プラスチックなどもすべて再資源化できて、生産効率も高い」と話す。

経産省の補助金を受け新工場の建設に踏み切った。佐野仁社長室長は「パソコンやタブレットの普及でペーパーレス化が進み、再生紙の原料となる古紙は減っていく。資源の少ない国で最大限の有効利用を図るための投資だ」と説明する。

信栄は機密書類の処理にも約20年前から取り組んでいる。保存期間を過ぎた官公庁や企業の機密書類は焼却処分にすることが多い。部外者が紙製の保存箱を開けて、書類にまぎれているプラスチックや金属の異物を除去できないためだ。

信栄は保存箱に入ったまま機密書類を溶解処理して、再生紙の原料にする技術を導入。この技術が新工場の基礎になったという。

■ごみ削減で地元貢献

新工場は地元の可燃ごみの削減にも貢献している。

信栄によると、自治体の可燃ごみにまじる紙の割合は平均で3割、多いところで5割に及ぶ。富士市は、新聞や雑誌以外の「雑紙」は紙袋に入れて集積所に出すよう住民に求めていたが、「紙袋がない」などと不評で、可燃ごみにまぜて出される紙が多かった。

そこで、富士市は新工場が試験稼働を始めた2015年度から、雑紙回収の入れ物を、食品トレーなどのプラスチックごみや缶を出すときに使う市指定のポリ袋に変更。住民による雑紙の分別が進み、毎月約30トンを収集できるようになった。15年度上半期の家庭可燃ごみの量は、前年同期に比べて5・7%減った。

信栄は川崎市からも毎月1200トンの紙ごみを受け入れており、山梨県古紙リサイクル協同組合を通じて、山梨県内から出る雑紙も処理している。同組合によると、同県内で雑紙を収集している自治体は甲府市など半数程度だが、収集量は年間3千トン以上にのぼる。圧縮してから信栄の新工場まで運んでいる。

「雑紙を収集していない自治体はまだまだ多い」と信栄の担当者。再生紙の原料となる古紙をさらに確保しようと、隣県の自治体にも回収・処理を働きかけている。