皆さんこんにちは!
2022年度入学国際社会学部東南アジア第二地域ビルマ語専攻の小出紘輔と申します。
2024年9月から2025年8月までルワンダのProtestant University of Rwanda(以下略称PUR、旧Protestant Institute of Arts and Social Sciences: PIASS)で交換留学を経験しました。
この留学体験記では、自身の経験をわかりやすくまとめ、今後アフリカ、とりわけルワンダへ飛び出していこうとする後輩たちの一助となることを願い、寄稿いたします。
ルワンダに飛び出した理由は2点挙げられます。
1点目は学習面で、平和構築と持続可能な開発の両立を学ぶこと。
2点目は生活面で学生という対等な身分で現地社会に溶け込みたかったことです。
まず1点目についてです。私はもともと東南アジア地域・ビルマ語専攻でしたが、ミャンマーの情勢悪化に伴い留学先の再考を余儀なくされました。大学では国際協力論や途上国開発を学んでおり、その知識を新興国の現場からも学びたいと考えました。
そのため「新興国」「英語が使える」「協定校」という条件で検討し、アフリカが選択肢として浮上しました。中でもルワンダは、約30年前の大虐殺から急速な復興を遂げ、平和構築と持続可能な開発に取り組む国である点に強く関心を持ちました。
次に、2点目の理由についてです。私は将来、新興国での事業創出を通じて社会課題の解決に貢献したいと考えています。今後も新興国に関連する仕事に携わりたいという思いは変わりませんが、学生という対等な立場で現地社会に溶け込み、生活を体験できる機会は今しかないと感じました。
駐在などで新興国を訪れる場合、安全面や生活環境の違いから、その国全体を深く理解し、体験することは難しいと考えるからです。
留学先の開発学部・平和構築学科は、1学年15名程度の少人数制で、コンパクトな学生寮も利用できると聞き、密なコミュニティの中で現地社会を肌で感じられると期待しました。
私の1年間のルワンダ滞在は大学に通っていたフィエ期(9月〜5月)とRwanda Nut Companyという現地法人でインターンをしていたキガリ期に分かれます。
キガリは首都であり、フィエ(旧名ブタレ)はルワンダ南部に位置しており、教育の中心として有名な都市です(注)。
3-1-1. 授業
PURの授業スケジュールは常に集中講義のようになっており、1~3週の間、毎日同じ授業が開講され、授業が修了したら次の授業に移るスタイルです。イメージとしては、1~3週間で単位を取り切る感じです(テストは基本的に学期末に行われます)。
コンパクトなキャンパスで授業が行われています(写真1)。
写真1: PURフィエキャンパスの講義棟
私が2学期間で受講した授業は以下のとおりです。
• Negotiation and Mediation(交渉と仲裁)
• Peace Education(平和教育)
• Nonviolence in Theory and Practice(非暴力の論理と実践)
• Peace and Conflict Sensitive Development(平和構築と紛争解決に配慮した開発)
• Reconciliation in Theory and Practice(和解の論理と実践)
• Political and Economic Systems in Africa(アフリカ政治経済)
• Religion, Conflict, and Peace(宗教と紛争と平和)
• Designing Peacebuilding Programs(平和構築プログラムのデザイン)
ルワンダやその他紛争地域の例を下に、平和構築とその後の開発において必要な要素を学びました。
すべての授業が共通してディスカッションベースで進められます。授業日までにリーディングを済ませ、議論するというスタイルは大変ではありましたが、主体的に授業に関わる力が養われました。
特に印象的だったのは、開発学部で学部長として働かれている佐々木和之教授の授業です。佐々木先生の授業は複数ありましたが、「Reconciliation in Theory and Practice(和解の論理と実践)」では大虐殺で生き残った被害者・加害者の関係者の方々から、紛争後の和解についてお話をいただく機会がありました。
かつては憎しみあっていた両者が、横に並んでお話をしてくださる光景は一生忘れることができません。ルワンダで紛争の傷跡を目の当たりにし、平和への道を歩む人々の姿、そして佐々木先生のような平和構築に尽力する方々の姿勢を肌で感じることができました(写真2)。
写真2: 佐々木先生による授業の様子
3-1-2. 生活
私はPURの学生寮に住んでいました。
交換留学生ということで、家賃は全額免除されていました(払ったとしても月1,500円ですが…現地の学生にとっては大きな額です)。
私の部屋は6人部屋!15畳ほどのスペースにに二段ベットが三つと大きなテーブルが二つのみという、ひどく言うと監獄のようなお部屋です(写真3; 笑)。
写真3: 寮の部屋
シャワーは野外にあり、もちろん出るのは水のみ。トイレはボットン便所。停電は3日に一回、1時間/72時間ほどといったところでしょうか。断水はほとんどありません(たまに茶色い水は出てきますが)!
洗濯機ももちろんないため、手洗いが基本。忙しい時は120円ほどで女性のワーカーさんにお願いしていました。
最初は衛生観念や慣れない家事工程に戸惑いましたが、人間は環境に適応できるものです。すぐに慣れました。また、6人部屋での生活も、素晴らしいルームメイトたちに恵まれ、最高の時間を過ごすことができました(写真4)。
とにかく誰かと過ごす時間が長いので、1人時間が必要な方には厳しい環境かもしれませんが、ここまで現地の学生たちに溶け込める環境は他にないと思います。
写真4: 最高のルームメイトたち
食事は自炊をしていました。女子寮にキッチンがあり、同時期に留学していた他の日本人留学生と料理当番を回していました。一人暮らし経験がない自分にとって、他の日本人学生に助けてもらいながら日本食を毎日食べられる環境にあったことはかなり助かりました。
寮にはmeal planというものもあり、月3,000円ほどで昼・夕食を毎日食べることができます。しかし、出てくるメニューがほぼ毎日同じで質素なため、利用者はルワンダの学生が中心でした。ルワンダの料理は素材の味を生かしたシンプルなものが多いです(米!芋!豆!という感じ)。
写真5: Meal Planの食事例
PURには他のアフリカ諸国(ブルンジ、コンゴ民主共和国、スーダン、南スーダン、カメルーン、ナイジェリア等)からの留学生も多く、彼らも私たちと同様に共有キッチンで自炊をしていました。
作った料理を分け合ったり、私が料理に不慣れな時には手伝ってくれたりと、食事の場面で特に交流が深まりました(写真6)。寮の部屋も食事の場も留学生とルワンダの現地学生とで分かれていたため、仲良くなったのは留学生が多かったです。
寮生活では、ルワンダの学生との交流が限定的だったのは心残りです。
写真6: 寮で現地学生との食事
このように、現地の学生とディープな共同生活ができることが魅力だったPURの学生寮ですが、2025年10月現在新寮を建設中!!
大学は2026年3月からの運用を発表しています。施設が新しくなるのは楽しみですが、共同生活空間は狭まってしまうと思うので、少し寂しい思いです。
寮建設の様子はPUR公式インスタグラムからチェック。
3-1-3. サッカー
課外活動としては、自分が幼少期から続けているサッカーに力を入れました(東京外大ではフットサル部TUFSALに所属)。大学のクラブ活動はほとんどないに等しいので、自身でコミュニティを探す必要があります。
最初は地域の社会人チームに所属していましたが、もう少し高いレベル感で活動したくなりました。
他を探してみると、どうやら高いレベルで定期的にプレー機会を得られるチームはルワンダ・プレミアリーグ1部に所属しているMukura VS&Lというプロチームしかないことが判明。ダメ元で練習生としての参加をお願いしてみたところ、なんと快諾していただけました(写真7)。
写真7: Mukuraでのサッカー
11月から5月まで、授業や旅行で参加できない場合を除いてほぼ毎日練習に参加していました。流石にレベルが高く、自分が一番下手な環境でしたが、チームメイトは皆優しく接してくれました。
今でも連絡を取り合ってる選手もおり、Jリーグに自分を売り込んでくれと言ってくる選手もいます(笑)。
異国の地で本気でサッカーに取り組むことができたのは非常に楽しかったですし、学生以外のコミュニティに所属できたことは、現地理解を深める上でとても大きな経験になったと思います。
3-1-4. 旅行
先述したように、PURの授業スケジュールは常に集中講義のようになっているため、長期休みの期間以外も数週間の休み期間を作ることができます。
私はこれを利用して、アフリカ・ヨーロッパ内で合計10カ国を旅することができました(写真8)。
宣伝のようになってしまいますが、私が長期インターンで運営している「Pick-Up! アフリカ」というインターネットメディアで旅行情報をお届けしているので、気になった方は是非サイトに飛んでみてください!
写真8: ステレンボッシュ大学でアフ科のみんなと再会
3-2-1. インターン
PURでの授業は5月で終了したため、残りの3ヶ月は首都キガリでインターンに従事しました。
大学では学生として様々な経験ができましたが、「ルワンダの地でよりシビアな責任が問われる環境で協働する経験を得たい!現地の民間企業で実際にビジネスを体感したい!」という思いでRwanda Nut Company LTD(ルワンダナッツ)にインターンシップの応募をし、採用していただきました。
ルワンダナッツはマカダミアナッツの生産・加工・輸出事業を展開する現地法人です。
私は農林水産省が立ち上げた「民間セクター・小規模生産者連携強化(ELPS)イニシアティブ第2号案件」に関わるルワンダナッツ内の組織構築を主に担当しました。
プロジェクトについて詳しくはこちら(農林水産省ウェブサイト)。
3ヶ月という短い期間でしたが、現地社員と協力して課題に取り組み、プロジェクト担当者1名の採用にこぎつけた経験は自信になり、達成感を得られました。
会社の業務改善にも少し関わり、課題特定のためにルワンダ全土に広がるナッツ農園をランクルで駆け回ったのも良い思い出です(写真9)。
写真9: マカダミアナッツの農園で現地社員と
さらに、ちょうど帰国のタイミングが地元横浜で開催されたTICAD9(第9回アフリカ開発会議)と重なり、同僚のオリヴィエと共に帰国し、プロジェクトのローンチイベントと商品の営業に携わるという超貴重な体験もさせていただきました(写真10)。オリヴィエには2週間ほど私の実家にホームステイし、日本を満喫してもらいました。
写真10:TICAD9で上司のオリヴィエと
ルワンダナッツにご関心がある方はこちらをご覧ください。
ここまで、簡単に私がルワンダに留学した背景と、留学中に行ってきたことをご紹介しました。
1年間を通して、様々なことにチャレンジできたと思います。特に、首都キガリで生活できた経験は、ルワンダを多面的に理解する上で非常に有意義でした。
現在フィエはルワンダの中で第5、第6の都市となっているようで、首都からもバスで3時間30分と離れていることから、人・モノ・金・情報の流れが限られています(勉学に集中するにはもってこいの場所ではあります)。
私は首都で生活できたことでルワンダ経済の実情を垣間見、開発に携わる様々な人に出会うことができました。その結果、様々な階層の「ルワンダ」を見つめることができ、地域理解につながりました。
今後も新興国と関わる上で、包括的な地域理解を試みる姿勢を忘れずにいきたいと思います。
最後になりましたが、私のルワンダ留学を支えてくださった東京外国語大学の教員の皆様、展開力事業部の皆様、佐々木先生とご家族の皆様、RNUTの原田さん・小澤さん、オリヴィエ、PUR留学の先輩方をはじめ、関わってくださったすべての方々に心より感謝申し上げます。
最終更新:2025年10月13日