2023.8.29.-9.3. アフリカ地域専攻有志8名のルワンダ渡航記② 


ルワンダ渡航記

〜農村・マーケットから見たルワンダ〜


by 小森まな

アフリカ地域専攻・2023年度編入学


みなさんこんにちは!2023年度入学の小森まなです。今回はルワンダ渡航記第二弾をお届けします。

渡航メンバーは2022年度入学のアフリカ地域専攻7名と2023年度編入学の私です。東京外大に編入する以前は建築学を専攻しており、主にアフリカの農村部や熱帯雨林の建築に関心を持っています。今回のルワンダ旅行では、農村部にあるフイエの住宅を見学することができました(「3. フイエの建築」参照)。

近年のルワンダは、旅行客がいつでも出歩けるほど安全な国です。しかし、いまから30年前には約100万人が虐殺されるジェノサイドを経験した国でもあります。どのような経緯でジェノサイドが発生してしまったのか、また、その歴史をどう乗り越えてきたのかを知るために渡航の2ヶ月前程から週一回の勉強会を行いました。ジェノサイドの歴史のほかにもルワンダの経済、教育、観光などについても学び、渡航にたいする準備を進めていきました。

今回のルワンダ旅行の日程は表1の通りです。

表1: ルワンダ旅行日程表

短い滞在期間でしたが、とても充実した時間を過ごすことができました。今回は上記の日程の中でも私が特に印象に残った、フイエの紅茶・コーヒー農園、農村部の建築、キミロンコマーケットについて紹介します!


2.  フイエの紅茶・コーヒー農園

外大の協定校であるPIASSへの訪問後(PIASS訪問の詳細はこちらから読めます)、早朝6時に集合してフイエにある紅茶・コーヒー農園のツアーに参加しました。

はじめに見学したのは紅茶農園です。栽培から茶摘みまで全て手作業で行っているため、機械では入っていけないような入り組んだ土地や、立っていることが困難な急斜面にまで茶葉が栽培されていました(図1)。山道に慣れていなかった為、ガイドさんの後を必死になって追いかけました。ツアーが終わった後に足元を見ると泥だらけになっていて驚きました。

図1: ルワンダの紅茶農園

次にコーヒー農園に移動しました。生まれて初めてみるコーヒーの木は想像していたものと大きく異なりました。幹の太い大きな木にたくさんの茶色い実がなっているものだと想像していましたが、実際は細い枝に可愛らしい赤色の実がついていました(図2)。今回はオフシーズンの見学でしたが、収穫直前に見学すればさらに実がついている木を見ることができたかもしれません。

図2: コーヒーの木

ガイドさんによると、品質の良いコーヒー豆を生産するには乾いた土地が適しているのだそうです。「乾いた土を使用することで、生産性は下がるけれど良いクオリティのものができる」と教えていただきました。

また、空気が乾燥しており、標高の高い土地もコーヒーの栽培に適しています。調べてみると、ルワンダは「コーヒーベルト」と呼ばれる4つの条件(降水量、日照量、平均気温、土質)を満たしている地域であり、フイエのコーヒー農園は高地という条件も満たしています。これらの条件が揃うことで質の高いコーヒー豆を生産することができます(注1)。

注1: 田代珈琲株式会社ホームページ「美味しいコーヒーの条件」

URL: https://www.tashirocoffee.co.jp/pageview.php?slug=school_condition#:~ (2023年01月11日アクセス)

高地が適している理由は、朝晩の温度変化にあります。高地は平地に比べて一日の温度変化が激しいため、コーヒ豆はその変化に耐えようと身をぎゅっと引き締めます。この固い豆がコーヒーのフレーバーを向上させ、より質の高いコーヒーを生産することができます。また、弱酸性の赤土は酸味のあるコーヒーの生産に適しています。ここ、フイエの農園はコーヒー栽培にとっての天国のような場所なのです。

コーヒー農園を見学している間、飼育されている子羊を何頭も見ました。カメラを向けるとこちらに振り向いてくれましたが、少し人間に警戒しているようでした(図3)

図3: カメラ目線の子羊

お昼には、ルワンダの伝統的な料理を堪能しました(図4)。画面中央にあるのがキャッサバです。教科書で見ていた食材を実際に食すことができて感動しました。そのほかにもスイートポテトや子羊のスープをいただきました。  

図4: ルワンダの伝統料理

食事後には臼で挽いたコーヒーを淹れてもらいました。「(コーヒー豆を)そのまま食べてみて」と言われ、苦味を覚悟で口の中に放り込んでみました。すると香ばしい香りが口の中に広がり、ビターチョコレートを食べているような気持ちになりました。見学した場所で採れたてを味わうという、非常に贅沢な時間を過ごすことができました。

3. フイエの建築

コーヒー農園を見学している間に、土壁でできた家屋を何軒も見ました(図5)。

図5: 土壁の家。窓上の模様が日本の青海波模様を思い起こさせる。

よくみると同じ土壁でも屋根の素材が鉄のトタン、プラスチックのトタン、レンガなど異なっています。四角い土壁の家屋の他にも、西洋を感じさせるようなデザインの家屋や(図6)、レンガが使用されたエントランス(図7)の家屋も見られました。

図6: 西洋の影響を感じさせる家屋。

図7: レンガが使用されたエントランス。

このように家の形式が異なる理由をガイドさんに尋ねたところ、以下のような答えが返ってきました。

「フイエの家は、もともと葉っぱに囲まれたドーム状の家屋だった。それに土壁が加わり、葉っぱの屋根と土壁の家ができたんだ。その後、屋根が葉っぱからトタン、レンガに変わり、今の形になった。一時期は耐久性の無さから、政府により土壁の家が廃止されてレンガの家が増えたのだれど、土壁の方が気候に適していることがわかった。それで元の土壁の家に戻ったんだ」

ガイドさんによると、専門家の調査により、土壁がフイエの気候や土地に適していることや、屋根をレンガにしても安価で建設できることが判明したといいます。一時期は廃止された土壁の家でしたが、今ではその数が増えつつあります。

ルワンダは内陸国で、建築素材として土以外ほとんど全て輸入に頼るほど資源が乏しく、隣接するケニアに比べて建築費用が20%から40%高いと言われています。そのため、その土地にあるものでなんとか家を建てなければなりません。フイエを含む多くのルワンダの農村部において、土は豊富にあるため、その土を用いて日干しレンガを作ります。それを積み重ねることで見事な土壁の家が完成するというわけです。

一年の季節が乾季と雨季に分かれているルワンダですが、雨季には日干しレンガがどろどろと溶け出してしまいます。その対策として、土に少しだけセメントを足して圧縮した日干しレンガを使用している地域もあります(注2)。

注2: 庄ゆた夏(2018)「ルワンダ、ルリンド郡マソロ村 ── トイレから考える国際開発協力」『LIXILビジメス情報』URL: https://www.biz-lixil.com/column/urban_development/pt_report024/  (2023年1月11日アクセス)

かつての日本の家屋にも土壁が採用されていました。しかし、メンテナンスや冬季の断熱の観点から土壁の施工棟数は減少しています。

対してルワンダの気候は、平均気温が一年を通して20度前後であるため、家屋に断熱材を入れる必要はありません。また、土壁の蓄熱効果により、最高・最低気温が和らぎ室温が安定します(注3)。以上の観点に加えて、主材料である土がすぐに手に入るという条件が重なり、土壁の家が最もルワンダの土地に適しているということになります。

注3: トヨダヤスシ設計事務所(2015)「もしもルワンダに日本の土壁の家を建てたら。」URL: https://www.t-sakan.com/tuchikabe/ruwanda/ (2023年1月11日アクセス)

4. キミロンコマーケットでの学び

 客引きが多いことで有名なキミロンコマーケットにも行ってきました。キガリに3日間滞在した内、キミロンコマーケットには初日と最終日の2回訪れました。密集した空間に商店が立ち並んでおり、どこへ逃げても客引きがついてくるような、かなり刺激的な空間でした。商品を高値で売りつけようとする交渉術もとても興味深く、値引きの攻略法を考えながら何度でも訪れたくなるような場所です。

今回では、私が見事に引っかかった交渉テクニックと、それを踏まえた値引きのコツを紹介します。

人生初のキミロンコマーケットは、タクシーを降りた瞬間から客引きに迎え入れられて始まりました。客引きは私たちが日本人だと分かった瞬間からどこまででもついてきます。私は彼らから商品を買うことはしたくなかったのですが、客引きをしてこない商店を見つける方が大変だったので、直感でその中の一人についていくことにしました。

今回の目的はアフリカ布のスカートを仕立ててもらうことだったので、早速自分の好みの布を選ぶところから始まります。店を決めた後にも他の客引きがやってきましたが、気づかないふりをします。赤色の可愛い生地を見つけたので仕立ててもらうようにお願いしますが、スムーズにいきません。どうやらスカート以外にも、バンダナやカバンを一緒に買って欲しいというのです。

キミロンコマーケットで頻繁に使われる交渉テクニックとして「セットで売りつける」というものがあります。私も実際に「スカートと同じ生地のバンダナとシュシュをつけるよ。今なら1000フラン(ルワンダの通貨:RWF)値引きするよ」などと交渉されましたが、一度目のその提案には乗りませんでした。

「希望する金額を電卓に打ってみて」と言われ、まずは低めに金額を提示します。まだルワンダの物価を把握していなかった私は、ルワンダでのランチ一回分くらいの値段を提示しました。その値段を見せた瞬間、客引きの顔がひきつりました。「この金額は(君が)警察に連れて行かれてもおかしくない」とギョッとされてしまったので、だんだんと値段を上げていきます。何度か客引きの提示額に呑まれそうになりましたが、その後、30分以上かけてその提示額の半額にまで値切りを成功させました(図8)。

図8: 値切り成功後に「親友認定」をされた際に客引きさんと一緒に撮影した写真。

大幅の値切りに成功し満足してしまったのか、私は二度目のセット購入に乗ってしまいます。ここで使用されたテクニックは「一度目の値引きよりも安くする」というものです。当初は1000フランの値引きだったものを、時間をおいてさらに安い金額で提示することで「イェス」と言い易くしていたのです。この時の私は、半額もまけてもらっていることに加え、長時間諦めずに交渉してくれている客引きに対して情が湧いてきていたのだと思います。その後、私は当初希望していたスカートに加え(図9)、バンダナとシュシュのセット、鍋敷きまで購入してしまいます。

図9: スカートを仕立ててもらっているところ。

結局、予算を大幅にオーバーしてしまったため、敗北感を味わいながらその日はホテルに戻りました。



その日の夜、旅の仲間と作戦会議が始まりました。私はフイエの農園見学で泥だらけになった靴をあたらしいものに新調したいと思っていたので、靴を安く手に入れるための方法を模索していました。マーケットの商品を思い返すと、瓶の蓋をアレンジして鍋敷きにしていたり、余った布でキーホルダーやトートバックを作ったりと、身の回りのものをリユースしていることに気づきました。「ならば今履いている靴もアレンジして商品になるのではないか」と思いつき、今履いている靴と引き換えに商店街に売られている現地の靴を安く買わせてもらおうと企みます。

また、黄色い服をきた客引きたちは、それぞれの縄張りを持っており、お客さんを連れてくることで店側から報酬をもらっていることに気づきました。このような連携プレーにより、マーケットの経済が回っていると思うととても興味深く感じます。

そしていよいよルワンダ滞在の最終日というタイミングで、二回目のキミロンコマーケットへ向かいました。初日に訪れた時よりも客引きの数は減っていました。「今回の日本人はあまり羽振りが良くない」という噂が流れたのかなと思いつつ、目当ての靴屋さんに向かいます。

しかし、お店に並んでいたものは想像したものとかけ離れており、全て新品のコンバースが売られていました。いくつか中古をアレンジした靴がおいてあることを期待しましたが、実際に店頭に並んでいるものは輸入品の靴ばかりでした。

衣類やバック、小物品などは、現地のオリジナル商品だったので、靴にもそのような地域性を感じられると期待していた分、力抜けしてしまいました。お店の人も忙しそうにしていたので交渉することを諦め、他の店に向かいます。次回またマーケットに来ることがあれば、その靴を持って再チャレンジすることを心に誓いました。

同行していた友人が、シャツを購入しようとしていました。ここで学んだ値切りテクニックが「本当にお金を持っていないことを示す」です。「日本人はお金を持っている」という目で見られるので、高値を提示されることは避けられません。しかし、本当にお金を持っていなければ仕方ありません。その時の私たちは滞在最終日ということもあり、手持ちのお金がほとんどありませんでした。

説明しても店の人は半信半疑だったため、真実を示すために財布の中(実際はダミーの封筒)を見せました。この「空の財布を見せる」というパフォーマンスが効果を発揮し、手持ちのお金からタクシー代を抜いた分でシャツを購入することに成功しました。

ルワンダの治安の良いマーケットだからこそできたパフォーマンスだったと思いますが、店側からすれば、手ぶらで帰らせるくらいなら何か買っていってもらいたい、そして少しでも利益を上げたいという思いがあり、今回のように安く売ってくれたのだと思います。

今回の値切り交渉の経験を通じて、ルワンダの市場商人の交渉テクニックはもちろん、その内にある温かさに触れることができました。確かに押し売りに近いと感じる時もありますが、日本に帰ることを伝えるとブレスレットをプレゼントしてくれたり、3日間の滞在で私の名前を覚えて出迎えてくれたりと、アットホームな空間であると感じました。

またルワンダを訪れることがあれば、必ず寄っていきたい場所です(次に訪れる際も、手ぶらで返してはもらえないでしょう)。

5. まとめ

 短い滞在期間ではありましたが、ルワンダの文化、人、自然の豊かさに触れることができる旅となりました。初めてアフリカに足を踏み入れる場所として、ルワンダを選んで本当に良かったです。自分の関心分野である農村部の建築についても触れることができ、非常に充実した6日間となりました。今回の旅の案内役として終始サポートしてくれたPaulとJato、現地でお会いしてくださった方々、そして一緒に同行してくれたアフリカ地域専攻 2年生のみなさんに感謝申し上げます。

2024年1月14日最終更新