国内留学体験記

「アフリカを学び、アフリカから学ぶ」

by 小黒江莉果(名古屋外国語大学現代国際学部)

【目次】

1. そうだ、アフリカを学ぼう

2. 挑戦と克己の春学期

3. Africa United ~Team for the dream~

4. 充実の秋学期

5. ありがとう!大好きだー!!

1. そうだ、アフリカを学ぼう

はじめまして。名古屋外国語大学2年(新3年)の小黒江莉果です。私は、「国内留学生」として大学2年生の1年間(2018年4月〜2019年1月)を東京外国語大学国際社会学部アフリカ地域専攻で過ごしました。

国内留学とは、名古屋外国語大学の全額支援留学制度の一つで、年間30単位の交換、学費・居住費・教科書代や交通費の奨学金を受けることができます。この制度は、2014年3月に東京外国語大学と名古屋外国語大学の間で教育・研究等交流協定が交わされて、2015年度に開始しました。成績の基準(GPA学年上位10%)、志望理由書、面接をもとに毎年、名古屋外大から2人が国内留学しています。

私が国内留学に出願したきっかけは、大学1年生の12月ごろのことです。私がお昼ご飯を食べる場所を探していると友達が「国内留学の説明会行かない?」と声をかけてくれたことでした。その瞬間まで私は国内留学の存在すら知りませんでした。興味本位で説明会に参加し、好奇心で出願することを決めました。

出願を決意して以降は、まるで大学受験の準備をしているかのような日々でした。名古屋外大では学べない、東京外大でしか学ぶことができないことってなんだろう?そんな時に見つけたのが、「アフリカ地域専攻」です。

当時の私のアフリカに対するイメージは、まさにヨシダナギさん(主にアフリカをはじめとする世界の少数民族や先住民を撮影する写真家)の写真が全てでした(写真1)。雄大な自然の中に独特な民族衣装を身にまとい、「原始的」な生活を送る人々。そんな無知な状態から私の国内留学は始まりました。

写真1: ヨシダナギさんの写真展での一枚。

2. 挑戦と克己の春学期

「国内留学生」というレアなポジションのおかげで、履修登録は学部・専攻・学年の垣根を超えて自分の好きな授業を履修することができました。アフリカに関する授業を中心に、他には名古屋外大で通訳コースの授業を受講していたこともあり、通訳・翻訳の授業や、語学の授業(中国語・韓国語・スワヒリ語)も履修しました。

アフリカについて何も知らない私にとって、アフリカに関する授業は楽しくて楽しくてたまりませんでした。新しい発見の連続で、私のアフリカに対するイメージが日に日にアップデートされています(今もアップデートを続けています)。

特に興味深かったのは、切り口が違うだけでアフリカが全く違って見えることでした。歴史の切り口から見たアフリカ、人類学的視点、開発が進むアフリカなど。いろんな切り口から観察し、複数の視点で物事を考えることは、アフリカに限らず、日々の生活にも応用しています。例えば、ニュースを見たり、新聞を読んだりするときには、そのまま受け取るのではなく、違う視点から見て、考えるようにしています。

情けない話ですが、ある時、無意識に名古屋行きの新幹線に飛び乗っていたことがありました。今思えば、自分の中でいろんなことが重なり合ってパンクしたのかなと思います。初めてで慣れない一人暮らし、やってもやっても増え続ける課題、予習・復習、海外留学のためのTOEFLの勉強、所属するテニス部の試合でも思うようにプレーができない悔しさ…。

その日は実家でゆっくり過ごし、リフレッシュすることができたと同時に、「休むこと」・「自分の時間を作ること」もタイムマネジメントの一つだと痛感しました。東京へ戻ってこの風景(写真2)を見たとき、「今日からまた頑張ろう」と心に誓いました。

真2: 毎日の登校風景。

春学期は、気づけば終わっていました。それくらい体感は一瞬でした。毎日が楽しくて、正直なところちょっぴり苦しくて、でもその度に周りに助けられていました。日に日に勉強というか、新しい発見があることが嬉しくて、楽しくて…「もっとこの環境で勉強したい」と、本気で東京外大への編入を考えていました。

3. Africa United ~Team for the dream~

私の国内留学での一番の思い出は、アフリカ専攻2年生みんなで創り上げる「語劇」に参加させてもらったことです。「語劇出る?」の言葉に、語劇が一体全体なんなのか全くわからないけれど、二つ返事で「うん!」と答えて始まった“Africa United”。(語劇は、東京外大の一大イベントである外語祭で行われます。 2018年度のアフリカ地域の劇の詳細はこちらを参照。)

私は、主役ファブリスの母役・ガードチーフ役を全うすることでしか語劇に貢献することはできませんでしたが、みんなと一緒に練習した時間と本番の50分間は私にとって最高の思い出となりました(写真3)。

写真3: 語劇の本番前。

私がここまで楽しむことができたのは、字幕のない映画を何回も何回も見て脚本を作り上げたり、演劇には欠かせない小・大道具を作ってくれたり、音響や照明を作ってくれたアフリカ専攻2年のみんなのおかげです。

この外語祭期間は、心底楽しみながらも、勉学も語劇にも全力を注ぐみんなの姿にたくさんの刺激を受けていました。「時間は自分で作るものだよ」とある子が私に言ってくれました。私はハッとしました。時間がないと嘆く前に、時間を作る努力をしようと思えました。そして、いつか私も誰かに、そんな言葉をさらっと言えるようになりたいです。

アフリカの2年生のみんなとの距離がぐっと縮まったこの外語祭期間。練習の後に、たわいもない話をだらだらしたり、コンビニのおでんを一緒に食べたり、悩みを打ち明け合ったり、一つの鍋をみんなでつついたり…(写真4

写真4: アフリカ地域専攻2年生のみんなで鍋パーティー。

語劇本番は、みんなの姿を舞台袖から見て、「やっぱりかっこいいな」と思ってしまいました。アフリカ地域専攻の語劇「Africa United」に足を運んでくださったみなさん、ありがとうございました(写真5)。

写真5: 本番終了後の集合写真。

4. 充実の秋学期

秋学期は、環境にもすっかり慣れ、自分の学びたいこともはっきりしてきたこともあり、履修はスムーズに組むことができました。アフリカに関する授業はもちろん、秋学期には伊東剛史先生による「人間と動物の関係史」という授業も履修しました。

春学期でアフリカに関する授業を受ける中で、私の中ですごく気になることがありました。「動物と人間の関係」です。ペットや野生動物、狩りを手伝う動物、スポーツハンティングの餌食になってしまう動物、タンパク源となる動物…私は、妹のような、姉のような存在の愛犬(バニラ)がいることも相まって、「人間と動物の関係」の複雑さに興味を持つようになりました(写真6)。

写真6: 愛犬バニラと「たふもにゅ」前で。

自分のやりたいことや学びたいことが明確になった秋学期は、春学期以上に自分から積極的に行動することができたのではないかと思います。いろんな講演会やセミナーに足を運んだり、授業での発表やレポートも自分の興味関心に沿った内容で進めたりすることができました。

相変わらず課題に追われる日々ではありましたが、春学期より格段とQOLが向上していたように思います。時間の使い方も変わり、勉強に対しての「目的・意識」も変わり、全てがいい方向へと変化していました。時間の使い方が変わった例として、早起きをして授業前にジムに行って筋トレで自分を追い込み、真冬に汗だく・半袖で授業を受けたこともありました(笑)。

そんな「充実」の秋学期とは裏腹に、日が経つにつれ“ある感情”が私の中で徐々に膨れていきました。秋学期の終わりは、国内留学の終わりを意味しています。そして、それは同時にアフリカ専攻のみんなとの別れでもありました。私は、寂しくて寂しくてたまらなかったのです。

この時に初めて、編入しなかったことを少し悔やみました(今はむしろ戻る決意をしてよかったと思っています!)。国内留学で学んだことを「私が名古屋で発信しよう!」という思いで戻ることを決意していたのに、みんなともっと一緒にいたいという思いがこみ上げたのです(写真7)。

写真7: 私の大好きな場所から見える大好きな景色。

5. ありがとう!大好きだー!!

この一年を振り返ってみると、本当にいろんなことがありました。笑って、泣いて、苦しんで、悩んで、語って、笑い飛ばして。その思い出一つ一つを今でも鮮明に覚えています。そして、いつでも誰かが私のそばにいてくれました。

いつも楽しい授業でアフリカの魅力を教えてくださった大石先生、坂井先生。毎週水曜日にお昼ご飯を一緒に食べながらいろんな相談に乗ってくださった現代アフリカ地域研究センターの皆さま。いつでも私をあたたかく見守ってくれている家族。突然現れた私を迎えてくれて、輪の中に入れてくれたアフリカ地域専攻のみんな(写真8)。辛いことを一緒に乗り越えた国内留学の同期。部員の一員として一緒に戦ったテニス部のみんな。

ここには書ききれないほどたくさんの人に支えてもらいました。本当にありがとうございました。感謝してもしきれません。

写真8: アフリカ地域2年のみんなと先生が開いてくれた送別会にて。

感謝してもしきれないので、私はこれからの活動を通して、私を支えてくださった全ての人へ感謝の気持ちを表したいと思います!いわゆる「出世払い」ですね。頑張ります。みなさん、今後の私にご期待ください!!!!

最後ではありますが、

みんなありがとう!!!大好きだよーー!!!

「ぴばやばぴ!」

(「エリカ四段活用」の最上級。私が挨拶で「やっぴー」と言うことが語源となってアフリカ2年のある人が作り出した造語。)

最後まで読んでくださりありがとうございました。私の20年の人生で最も濃い一年を文章にまとめるのは至難の業でした。感情が溢れた文章になってしまい、読みにくくなってしまったこと反省しています。ここに書いたのは、ほんの一部にすぎないですがうまく伝わったでしょうか?

この記事を通して、一人でも多くの方に「名古屋外大から現れたちょっぴりクレイジーな国内留学生」のことを知っていただけたら幸いです。

最終更新: 2019年3月4日