「セネガルでフランス語を学ぶ」

野間 武(西南ヨーロッパ第1地域、2013年度入学 )

1.はじめに

私は2016年3月から12月までの9か月間、アフリカ大陸最西端の国であるセネガル共和国の首都ダカールにて語学留学を行いました。東京外国語大学にセネガルの提携先がなかったため、派遣留学ではなく休学をしての留学でした。当報告書における私の留学経験についての記述が、今後セネガルへ留学を企図される学生の一助となることを期待します。

2.留学の動機

私は3年生を終えた春から留学を行いましたが、入学以後の3年間はフランス語とアフリカ社会学を専攻としていました。そのため、アフリカでフランス語能力を深化させたいと思い、仏語圏西アフリカでの語学留学の道を探りました。

西アフリカの国々の中でセネガルを留学先に選んだ理由は2つあります。1つ目は、フランスが西アフリカを植民地化していた時代に、その拠点国であったからです。私は坂井真紀子ゼミに所属し、フランスの植民地政策について研究を行っていました。なので、セネガルへ留学を行うことで、語学を伸ばせるだけでなく、将来的に卒業論文の糧になるような経験が出来るだろうと考えました。2つ目は治安が比較的安定していたからです。仏語圏西アフリカの中で、留学前に外務省の渡航情報において唯一色のついていなかった国がセネガルでした。長期留学をする上で、リスクを出来るだけ回避したい私にとっては大きな判断材料となりました。以上2点の理由からセネガルへの語学留学を決断しました。

写真1: ダカールのシンボル、アフリカ・ルネサンスの像(撮影:野間 武)

3.留学前の準備について

私は上にも述べたように、派遣留学ではなく休学留学であり、また学校についても渡航後に登録をしようと考えていたので、受け入れ機関については情報を調べる以外の事前準備は行いませんでした。私が行った留学前の準備としては、予防接種、キャッシュカードの作成、保険の加入が挙げられます。

予防接種は7種類13回(下表 回数・値段は2016年2月当時)行いました。値段的にもかなりかかってしまいますが、例えば黄熱病ならば接種後1カ月は他の予防接種を受けられないなど時間的にも制約がありますので、余裕を持って受けることを推奨します。

キャッシュカードについては、万一現地で不具合を起こした時に備えて、三菱UFJVISAデビットカードとマネパカード(マスター)の2種類を準備しました。基本的に私がいつも利用していた「ソシエテ・ジェネラル」というフランス資本の銀行のATMではVISAマスターともに対応していたので問題なく引き出すことが出来ました。

保険については、あいおいニッセイ同和損害保険の海外旅行保険に加入しました。盗難被害や病院への受診については十分考えられる事態であると思うので、それらを考慮した上で加入すればよいと思います。

4.留学期間中の流れ

私の留学期間中の大まかな流れを下にまとめます。

3月:ゲストハウス滞在。家・学校探し

4月:学校(Institut Français2コース)開始

5月:学校(Institut Français2コース)終了

6月:モロッコ旅行

7月:学校(IFEE2コース)開始

8月:学校

9月:学校(IFEE2コース)終了

10月:ヨーロッパ旅行。南下旅

11月:テスト勉強。DELF、DALF試験

12月:帰国

写真2: ゴレ島内、「奴隷の家」での一枚 (撮影:野間 武)

5.生活について

セネガルのダカールには私の留学当時日本人が経営するゲストハウスが2つありました。そこにインターンとして期間中ずっと滞在する方法もあったのですが、私は留学生としてセネガルでの生活を送りたいと考えていたので、その方法はとらずに一人暮らしを行いました。しかし、やはり現地到着直後には住居を確保できないので、最初の1か月間はゲストハウスに滞在し、そこで学校の手続き(後述)や住居の確保、情報収集に努めました。

ExpatDAKARというダカール内のフリマサイトに掲載があった電話番号にコンタクトを取り、不動産業者と何件か家を周って家の手続きを完了させました。7~8畳ほどの部屋が2部屋と別にキッチンがあり、家賃は月約22000円でした。雨季には窓を閉め切っていても、雨が部屋の中に浸水してきました。

生活環境としては、ダカール全般ではなく私のアパートに関することしか述べられませんが、お湯は全く出ず、水も最長で1か月間部屋の水道から出なかったので、その際にはアパートのグラウンドフロアにある共用水道から水を汲んで生活水として利用していました。電気は時折停電することもありましたが、基本的には安定していました。ネットについては「Orange」というフランスのネット会社がセネガルでも大きく展開しているので、そこで契約し無制限のWi-Fiを家に備え付けていました(月約6000円)。

写真3: ラマダン明けのお祭り「タバスキ」の光景(撮影:野間 武)

6.学校について

私は2つの語学学校にそれぞれ2コースずつ通いました。

1つ目は「Institut Français」というフランスが世界的に展開している機関です。セネガルでは首都のダカールの他にサンルイやカオラックにもあるようです。施設自体も非常に洗練された建物で、校舎の他に映画上映スペースや音楽堂があるような、大きな施設です。授業はフランス人(もしくは国籍は違うがフランスで育ってきたフランス語母語話者)によって、テキストに沿って行われ、かっちりとしていて質の高いものでした。一クラス約10~15名で行われ、クラスメイトの国籍、年齢は多種多様です(夫の仕事の都合で来ているのだろうと思われるマダムが多めではありますが)。授業料は1クール(週5回1日3時間の3週間コースもしくは週3回1日1時間半の2か月コース)約2万円、それに加えて初期会員登録費用(約1万5000円)と教科書代金(約4000円)がかかります。ある程度のレベル以上のコースになると、人数不足で授業が開講されないことがあります。

写真4: Institut Français Dakar(撮影:野間武)

2つ目は「IFEE」というダカール大学(シェク・アンタ・ジョップ大学)付属の外国人向けフランス語学校です。私はIFEEのサマースクールに2コース通っていました。こちらは大学付属機関ということで、Institut Françaisとはがらりと雰囲気が変わり、校舎等しっかりしてはいますが、いわゆるアフリカっぽさを感じられます。クラスメイトは最初のコースでは9割がアフリカ出身の学生で、2コース目はヨーロッパ人やアジア人も増えました。文法、読解、発音などそれぞれに担当教員がおり、1日2種類の授業が計4時間ほど行われます。面倒見がいいとは言えませんが、教員のレベルは高く、授業としてもそれなりに充実していると思います。授業料はInstitut Françaisと同じく1クール約2万円ですが、こちらの場合1クールが約5週間ありますので、割安となっています。

IFEEはサマーコースだけでなく、11月から6月までの通年コースも開講しているようで、語学学校での授業に加え、セネガルの歴史などを学ぶ授業もあるとのことです。年間通して授業料が約6万円と破格の安さです。私が滞在していた時は9月末までに登録をしてほしいとのことでした。

7.費用

○渡航費

往復約300,000円

○予防接種

7種類13回約100,000円

○保険

約200,000円

○住環境

・家賃:22,000円×8(176,000円)

・Wi-Fi:6,000円×8(48,000円)

○学費

・Institut Français:20,000円×2、初期費用20,000円 (60,000円)

・IFEE:20000円×2 (40,000円)

・DELF/DALF試験 約4,000円×3 (12,000円)

○旅行

2回計約35万円

○ゲストハウス

1か月約60,000円

+生活費

総計 約1450,000円

8.成果

私は語学習得を第一の目標に留学に赴き、帰国の約2週間前に行われたDALF試験においてC1レベルに合格することが出来ました。個人的には満足いく成果であると考えています。また、IFEEにおいてはシステム上の不備がいくつかあり、そのことについて自分の意見を教員に伝えなければならない機会が何度もあったので、異文化環境での意見発信力も高められました。

写真5: セネガル第二の都市、サンルイ(撮影:野間 武)

9.後悔

セネガルには提携校がなく、9か月間基本的に語学学習を続けていたため、ゼミの学習について進めることが出来なかったことを少し後悔しています。もちろん現地で生活し、知見を深めることで、卒論に向けてのベースを築くことは出来ましたが、専門的なレベルで何かを学習することは出来ませんでした。もっと積極的に行動(例えばアンケートを作るなど)することで、ゼミの学習においてもさらなる成果を得られただろうと感じ、心残りとなっています。渡航前から明確なビジョンを持って、準備を進めておけばよかったと思います。

10.おわりに

セネガルへの留学で留意しておいてほしいことは、学費や生活費の安さだけを理由に、フランス語の語学留学先として安易に選択することはやめておいた方が良いということです。セネガルの公用語はフランス語ですが、現地の人同士の会話でフランス語が使われるということはまずなく、街中を歩いていてフランス語が聞こえてくるということも滅多にありません。なので、語学学習だけを目的とするならば、フランスやスイスの方が好ましく、セネガルを選択する場合、語学以上の付加価値を持っておかなければ後悔してしまうでしょう。ですが、逆にセネガル自体に理由を見出しているならば、多くの面で充実した生活を置くことが出来るとも思います。自分の留学における目標を明確にして、その上でセネガルを留学先として選ぶ学生が増えることを心から願っています。

写真6:セネガルイスラム教、最大勢力ムリッド教の聖地であるトゥーバ (撮影:野間 武)

Last updated: 2017年7月3日