タンザニア絵本プロジェクト


2021年5月~12月の活動報告

0.はじめに


活動報告をご覧いただきありがとうございます。アフリカ地域専攻3年の青木と申します。



私たちアフリカ地域専攻の学生がサポーターとして参加した「アフリカの魅力伝える絵本をタンザニアの子どもたちに100冊贈りたい」プロジェクトの活動報告をさせていただきます。


本プロジェクトでは、宇都宮大学の阪本先生、弘前大学の杉山先生、東京外国語大学の坂井先生を中心に、クラウドファンディングで資金を集め、手作り絵本『ニョタと不思議な音楽~タンザニアの星空のもとで~』を100冊、タンザニアの子どもたちに贈ることを目指しました。


最終的に、クラウドファンディングでは、137人の方々から、合計1,106,000円ものご支援を頂き、無事にプロジェクトを成功させることができました(図1)。

図1:本プロジェクトのクラウドファンディングWebページ(URL: https://readyfor.jp/projects/61033

2021年12月20日には、三恵社さまにて出版が実現しました。出版記念シンポジウムも開催され、外大学生サポーターの代表が企画・参加いたしました。


プロジェクトメンバーには、3人の先生方に加え、宇都宮大学と東京外国語大学アフリカ地域専攻有志の学生サポーターが20人ほど集まりました。学生サポーターは、主にSNSでの情報発信や、お礼状(アサンテカード)の作成、発送作業を行いました(図2)。

図2:完成した絵本(POD版)とアサンテカード

本プロジェクトの主役である絵本『ニョタと不思議な音楽』は、3人の先生方が書かれた物語に、タンザニアで活躍されているフランシス・パトリック・イマンジャマ(Francis Patrick Imanjama)さんの素敵な絵が添えられた絵本です。また、スワヒリ語・スワヒリ文学の権威である竹村景子先生(大阪大学)にスワヒリ語翻訳を行っていただいくなど、文学的にも品質的にも質の高い絵本となりました。


『ニョタと不思議な音楽』の舞台は、タンザニアのドドマ・マジェレコ村です。そこでは、農牧民ゴゴの人たちが多く暮らしています。ゴゴは、音楽や踊りでよく知られており、「ニョタ」とは、その伝統音楽を演じるグループの一つです。日本語で「星」という意味があり、タンザニア内でもトップクラスのパフォーマンスだといえます。


絵本には、日本人の女の子「つばきちゃん」が登場します。彼女は、タンザニア在住の椿延子さんがモデルだそうです。椿さんは、青年海外協力隊で栄養士としてタンザニアへ派遣されてから、農学校の先生や、日本の環境NGOの事務局を経て、現在もタンザニアでお暮しになっています。この物語は、そのような椿さんのご経験をもとに、書かれました。


イマンジャマさんの淡く素敵な絵が、ドドマの情景を浮かび上がらせ、まるでニョタの音楽やつばきちゃんの声が聞こえてくる気分になります。


私たち学生サポーターは、イマンジャマさんとの対談の機会を頂き、オンラインで交流会を開催することができました。本活動報告では、イマンジャマさんとの対談や宇都宮大学との交流会の様子、実際におこなった作業について、アフリカ専攻1年の二人が、具体的にご紹介します。

(青木芽衣)

1.交流会 with イマンジャマ氏

現地にいらっしゃるイマンジャマさんとオンラインでつなぎ、質問をしました。個人的には、とても楽しかったです。和気藹々とした雰囲気のなか英語スワヒリ語日本語を交えつつ、画家としての工夫から今後の展望まで様々なことにお答えいただきました。気さくな印象の方で、このプロジェクトに対しての思いも真剣に語ってくださいました(図3)。

図3:交流会の様子

どんなお話だったか、インタビューの概要をお伝えします。

(インタビュアー:Linda Kaneshiro さん)


質問:この絵本を担当するにあたり、どんなことに注力したか。

(What was your extra effort ?)

回答:子供の本は何度も描いたことがあるが、子供の視点を考え、現地へ行って彼らが好むことを観察し、助言し合って、子供がどのような本が好きなのか考えた。水性、エッジングなどを考え、アイデアを組み立てていった。また実際にマジェレコ村に行き、子供たち、タビアさん、村人と話して、日本の文化と会わせて、背景や子供の好みを気にした。


質問:この絵本が実話からインスピレーションを得たものだと知った時どう思ったか。

(What was your feeling when you hear that...)

回答:物語だけど現実に基づいている、これは嬉しかった。絵描きは現実から学んで描くので、以前描いたフィクションよりノンフィクションであることが嬉しかった。マジェレコの現実を基に、日本の子供もマジェレコの子供も読んでくれる。


質問:日本とタンザニアの関係についての思い。

(Feeling about relationship between Japan and Tanzania.)

回答:日本は昔からタンザニアと仲が良かった。yukoやsakamoto等の名前は、現地のものと似ている。覚えるのも書くのも簡単。似ているので親しみがある。それに、二国間の関係は今も増えている。私の息子も日本のことを知りたがっているし、マジェレコの子供もこれから先、日本のことをより近くに感じられるだろう。とてもいいことだ。日本に行ったことはないが、日本人の友達が多いので近くに感じられる。JATAプロジェクトを通じて日本との関係が始まり発展している。若者や子供へもそれは広がっているようだ。


質問:影響を貰った人物は?

(Was you influenced by someone?)

回答:子供の頃に絵を描き始めたのだが、父にはとても助けてもらった。両親が支えてくれた。父親が道具を買ってくれ、二人で絵を描く競争もした。親子の対立もあるけれど、親の応援は大切。七年生の時、ゲーテインスティトゥートに通わせてもらった。描画は趣味で始めたが、今や仕事であり生活である。「芸術の家」でお互い助け合った。村みたいな感じ。Lilangaとは特に二人でどんな仕事でも助け合った。他の人と助け合ったこともあり、それは今もそうである。子供に油絵をドゴドゴセンターでも教えた。同僚の絵描きにも助けられた。教え教えられ、 今も助け合っている。


質問:子供の頃は?

(Could you tell us about your early age ?)

回答:最初は色々な人を描き、特に父親が警察官だったので警察を描いた。最初は人だったが、段々と他のものも描き始めた。動物を描いたのは、父が警察官の傍ら牧畜の仕事をしていたから。サッカーなどスポーツも描くようになった。映画を見ると、昔は海や洋服が出てくるロビンソン・クルーソーが好きだった。動物なら犬やニワトリ。お客さんや象も描いた。仲間同士でミクミ動物公園へ行って観察し、描けるように練習した。タンザニアでは国民が動物を見ることが出来るから。子供を描くのも好きだった。今は趣味だが、教えることも教えられることも仕事になるかもしれない。子供は喜びが好きだから、動物の捕食被食は描きたくない。


質問:子供との関わりは?

(How did you communicate with children ?)

回答:私が子供の頃は、両親がアイデア作りを支えてくれた。今は、大人として子供と描くのは好き。子供は平和で喜ばしくて、女性も同じだ。子供、女性、少女と一緒に仕事をするのは気持ちが良い。少女は真面目に描くからね。私の考えだと、子供たちのためだったら、(今はストリートチルドレンにも教えているが)読み書きが教えられなくても絵は教えられることもある。そしてそれが喜びでもある。絵は間違いのようでも実は新しい視点だったり、そういった経験を得ることもある。私も教え教えられるんだ。実際、私の作品でも、子供にヒントを得たものがある。大切に保管するスケッチも見直すと発見がある。


質問:現在の新型コロナウィルスの状況について聞かせてほしい。

(How is it going during pandemic ?)

回答:問題は以前からあった。例えば絵描きさんの間でも、病気はコロナ前から常に話題だった。政府との関係でも問題はいつでもある。例えば、コロナやエイズ。色々な問題が絵描きの頭も悩ます。そういった問題と向き合いつつ、その日その日をやっている。


質問:私(Linda Kaneshiroさん)は将来、絵を描くことに関心がある。そういった、将来画家を目指す人へのアドバイスをいくつかお願いしたい。

(Give them some advises who are intereste in drawing in future.)

回答:皆が生まれながらに芸術家であり、文化的である。子供と混ざりながら絵を描いたりすると、生まれながらに芸術家であれば、マジェレコの子供でも道具さえあれば将来のために絵を描くのではと思っている。活動に助言するなら、政府は教育を頑張っているし子供はSNS好きだが、子供に直接絵を教えることのような行動を大切に。絵を描く才能があっても、経済的余裕で描けないこともある。教育が必要かもしれない。芸術には最初も最後もないのだから、芸術家はそういう活動にも継続的に関わるべきであろう。


質問:これから挑戦したいことは何か?

(What you want to try in the future.)

回答:長い間したいと思っていた計画はある。子供の本を描いたときも訊かれたが、スタジオ、車、教室とかを持ちたい。どれも高価だが。将来、教室に五人くらいでも生徒を集めて絵の道具をあげて、(全員では上手くいかないから少数でだけど)スケッチグループ絵画グループなどと分けて活動の機会を作る。小学校などでやってみたい。子供と仕事をする場が欲しい。政府に依頼しようかと考えている。もっと参加して子供に教えたいし、子供同士で教え合うのも良いかも。


(藤原萌乃)

2.宇都宮大学との交流会

昨年の5月20日、絵本プロジェクトに参加する東京外国語大学と宇都宮大学の学生がZoomを使用し、オンライン交流会を開催しました。東京外国語大学からはアフリカ地域専攻の学生が、宇都宮大学からは国際学部の学生が中心に集まりました。

まず初めに、Zoomのブレイクアウトルーム機能を利用した「カタカナ禁止ゲーム」を行いました。参加者が複数のチームに分かれ、各チーム1人がメインルームでお題を受け取り、それぞれのチームのブレイクアウトルームでそのお題をカタカナを使わずに説明するというものです。初対面である上にZoom上での開催だったことから、なかなか積極的に発言しにくい状況ではありましたが、ゲームという形で気軽にコミュニケーションを取ることで、自然にぎこちなさが無くなっていったように感じました。

緊張がほぐれた後は、再びブレイクアウトルーム機能を使用し、少人数で自己紹介をし合う時間が設けられました。お互い大学ではどのような勉強をしているのか、なぜアフリカに、このプロジェクトに興味を持ったのかといった質問から始まりました。同じアフリカに関心のある大学生が集まったにもかかわらず、ここが興味を持つ、または実際に研究している地域、分野は多岐に渡り、新たな視点や発見を得ることのできた貴重な時間でした。


話題はさらに、サークルや部活、趣味など個人的な話題まで幅広く展開していきました。同じ部活に入っている人、入っていた人、同じ趣味を持つ人が出会う場面も多くあり、大学やアフリカの話をしていた時とはまた違った意味で距離が近づいていくのを感じました。

オンラインという形ではありましたが、ゲームや自己紹介を通じてお互いのことや学校の様子を知ることができ、有意義な時間になりました。会の終わりには「いつか対面で会いましょう」とコメントする学生もおり、このプロジェクトが普段通りの状況で行われていれば、もっと深い交流が生まれていたのかもしれないと少し切ない気持ちも残りました。

(江川莉奈)

3.外大での発送作業1

7月19日、坂井先生の研究室にアフリカ地域専攻の学生が数名集まり、クラウドファンディングで支援をしてくださった方々への返礼品の発送準備作業が行われました。

返礼品は絵本とDVD、そして絵本の絵を描かれたイマンジャマさんの絵入りお礼カード(Asanteカード)です。手伝いを行った我々学生も、これらの実物を見るのは初めてでしたので、返礼品のクオリティに驚き、同時に自分がこのようなプロジェクトに参加しているということを改めて実感しました。


大学入学前、私はアフリカの教育や子供に関する問題に漠然と興味を抱いていたものの、アフリカに関わる事業やイベントに参加したことが一度もなかったため、大学に入ってすぐにこのように現地の子供たちに直接絵本を届ける取り組みに参加できたことが個人的にとても嬉しかったです。

実際に私が手伝いをした発送準備は、名札に支援者の皆様のお名前とご住所を書き、封筒に貼るという作業でした。手を動かしながらも、1年生が3年生に勉強の相談をしたり、坂井先生に研究室やアフリカ研究について教えていただいたりと、和気藹々とした雰囲気で作業は進められていきました。

プロジェクトに参加して具体的な作業をしたのは今回が初めてでしたので、自分がメンバーの一員であることを感じられた日となりました。返礼品を受け取った方々が支援をしてよかったと感じてくださればとても嬉しいです。

(江川莉奈)

4.外大での発送作業2

完成した絵本やDVDといったクラウドファンディングの返礼品を封筒に入れ、郵送する作業でした。学年も様々な学生サポーターたちが午前中に外大に集まりました。リストを見比べながらラベルに宛名を書き、DVDを梱包して、確認して……といった一連の作業を続けるのは大変でしたが、このプロジェクトに出資してくださったみなさまへの感謝を込めて丁寧に作業しました。


リストに並ぶ大勢の名前を見ると、これだけたくさんの方々が全国から賛同してくださったのだとふと気づき、とても感動しました。途中でポストカードが上手く刷れなかったり、宛名を書き間違えたりと手作業ならではのこともありましたが、何とか全て梱包を終え、郵便局に出せました(図4)。

(藤原萌乃)

図4:発送作業の様子

最終更新:2022年1月24日