「ルワンダで平和構築を学ぶ」

内田歩(2015年度入学)

1. はじめに

こんにちは、東京外国語大学国際社会学部アフリカ地域専攻4回生の内田歩です。私は、2017年9月〜2018年8月まで、平和構築を勉強するためルワンダに留学していました。外大の授業では2年半アフリカについて学んできたものの、実際にはアフリカに行ったことがなかったため自分の目で見て確認したい、現地の学生たちと議論してみたいという思いが次第に強くなり、1年間アフリカに住むことを決めました。今回はルワンダで経験したことを少しだけシェアさせていただきます。

2. ルワンダを選んだ理由

以前からルワンダのジェノサイド後の和解に関心を持っていたため、現地の学生たちと議論できる機会のあるルワンダの大学に行きたいと思ったのが一番の理由です。その他には、治安がとても良く日本人の先生が大学で教鞭をとっていたためアフリカ留学に反対していた家族を説得しやすかったこと、著しい変化を遂げているといわれるルワンダなら開発の現場も見ることができると思ったことなどが理由として挙げられます。

写真1: 友人の家に続く道。毎日片道2時間かけて街まで歩いているそうです。

3. 奨学金について

私は「トビタテ!留学JAPAN」(※1)という、文部科学省と民間企業が連携して若者を支援している留学制度を利用しました。大学の成績などは関係なく、実現可能かつ面白みのある留学計画の提出と自分のやる気次第で採用してもらえるので、十分な額支援してもらえる奨学金制度を探している人にはおすすめです。

4. 大学での授業

2017年9月から2018年の8月までの約1年間、Protestant Institute of Arts and Social Sciences(PIASS) (※2)というルワンダの大学に在籍し、平和構築を学んでいました。


<PIASS大学で履修できる授業の例>

  • Negotiation and Mediation
  • Reconciliation in Theory and Practice
  • Source and Dynamics of Conflict in Africa
  • Religion, a Source of Conflict and a Resource for Peace
  • Psychosocial Trauma and Healing
  • Peace and Conflict Sensitive Development
  • Nonviolence in Theory and Practice
  • Global governance and International Organizations など


特に印象に残っているのは「和解」(Reconciliation in Theory and Practice)についての授業です。それまで一緒に授業を受けてきて信頼関係が築けていたからこそできた、アフリカの学生たちとの本気・本音の議論はとても心に残っています(写真2)。何よりも、真剣に自分の国やアフリカの平和のために将来働きたい、という熱い想いをもって平和構築を学ぶ友人たちと出会えたことに感謝です。

写真2: 授業の様子。ディスカッションが多く、ルワンダ人だけでなく、ブルンジ、コンゴ、南スーダン、タンザニアなどアフリカ諸国からの生徒がともに学びます。

5. ボランティア

毎週水曜日の午前中に、小学校で英語の授業のお手伝いをしていました。私がお手伝いしていた小学校は比較的優秀な子たちが集まっていて、授業はすべて英語で行われていました。ルワンダでは初等教育就学率が90%を超えると言われていますが、田舎の学校に行くと子どもの数に対して教室や先生の数が足りなかったり、家庭の事情などで途中から学校に来ることができなくなったりしてしまう生徒がまだまだ多くいるのが現状です。それにしても、子どもがかわいいのはやっぱり世界共通です〜(写真3)。

写真3: 小学校の子どもたち。

週に一度、水曜日の午後には14人からなる女性グループと一緒に活動をしていました。ジェノサイドの被害者と、加害者を家族にもつ女性たちが生活収入の向上と和解・関係の再構築を目的に、ともに作業しているグループです(写真4) 。アフリカの布を使ったブックカバーや自分たちが育てた花を使ったアクセサリーを日本で販売するために、毎週協力して作品を製作しています。1年間関わらせていただいて、最初の頃よりもだんだん女性たちの間にお互いを思いやる温かい雰囲気ができてきたことを実感し、とても嬉しかったです。和解のために活動を続ける女性たちから多くのことを学びました。

写真4: 女性たちが手に持っているのがアフリカの布キテンゲを使って作ったブックカバーです。

6. インターン

World Vision Rwandaで2ヶ月間インターンシップをさせていただきました。フィールドに行く機会が多く、本当に村の奥の奥まで訪ねて現地の人たちと交流したり、開発の現場を自分の目で見ることができたのは貴重な経験でした。一方で、現地の人々が本当に必要なものを見極めることと、それをプロジェクトにして実施する難しさも目の当たりにしました。衝撃的で印象に残っているのは、貧困家庭の子どもたちに誕生日プレゼントのうさぎを配ったことです(写真5)。うさぎは繁殖させて売ったり(一羽300円くらい)、自分たちで食べたりします。

写真5: 誕生日プレゼントのうさぎと子どもたち。

7. 寮生活

留学生活が半分終わり、残りの半分でもっとアフリカの友人と仲良くなりたい、彼らのことを知りたいと思い、大学の学生寮に入ってみました。ルワンダ、ブルンジ、コンゴからきた女の子たちとくだらないことから真剣な議論までたくさんおしゃべりをして、ふざけて笑って、毎日米と豆を食べて、一緒にお祈りをして素敵な時間を過ごすことができました(写真6)。今までの人生の中で一番笑っていた時期な気がします。電気がたまにつかないのも、ダニと南京虫との戦いも、毎朝のバケツ一杯の水浴びも、今では全部懐かしくて楽しい思い出です。

写真6: 寮の仲間たちと。

8. おわりに

千の丘を吹き抜ける風の匂い、友達と見上げた満天の空、突然泣き出した友人の声や、純粋に必死に生きる人々のきらきらした目、忘れられない瞬間をいまでもふと思い出します。ルワンダで学んだことを、これとこれを学んだ、と限定的に言語化するのは私にとってすごく難しいことなのですが、自分の目で見たこと肌で感じたこと、そういう感覚的なものやその時々に心に起こった感情などを、特に大切に自分の中にとっておきたいと思っています。アフリカは、ルワンダは私にとってたくさん大切な人が生きている場所。何らかの形でこれからも関わっていきたいです。

このまま大学を卒業していいのかと漠然な不安を抱えている人、自分の目でアフリカをみてみたい人はとりあえず飛び込んでみることをおすすめします。

最後までお読みくださってありがとうございました!

注:

※ 1 トビタテ!留学JAPAN https://www.tobitate.mext.go.jp

※ 2 ピアス大学(Protestant Institute of Arts and Social Sciences ) http://www.piass.ac.rw

最終更新:2018年9月30日