アフリカを旅する

11カ国縦断旅のまとめ


 玉井遥

(アフリカ地域専攻、2019年度入学)

目次


1. はじめに

2.  旅の概要

3.  なぜ旅なのか

4.  おすすめスポットの紹介

5.  トピックごとの紹介

6.  旅をしながら考えたこと

7.  おわりに

1. はじめに


皆さまこんにちは。アフリカ地域専攻2019年度入学の玉井遥です。私は4年次の1年間を休学し、2022年6月から11月にかけて、アフリカ大陸を縦断する旅に出ていました。


東アフリカ・南アフリカの11か国(ケニア、ウガンダ、ルワンダ、タンザニア、マラウイ、ザンビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニ、南アフリカ)を訪れました。

 

2. 旅の概要


訪れた11カ国の中で、ケニアからザンビアまでの1か月半をアフリカ地域専攻同期の吉田いぶきさんと一緒に、ジンバブエから南アフリカまでの3か月強を1人で、時には大学の別の同期たちや後輩と合流しながら周りました。吉田さんは私とは別に記事を書かれていますので、そちらもぜひご覧ください。


移動手段は主にバスで、宿泊先はいわゆるバックパッカー宿を選ぶことが多かったです。それぞれの国で行きたい場所をピックアップして、ルートを決めました。長期渡航は初めてだったので、大学の先生方やトラベルクリニックの先生、大使館の方などに相談をさせていただきながら旅程を組んでいきました。また、過去にアフリカ旅をされていた方のブログも参考にさせていただきました。


実際に通ったルートは図1をご参照ください。滞在した順番は以下の通りです

ケニア → ウガンダ → ルワンダ → タンザニア → ザンビア → ジンバブエ → 南アフリカ → レソト → 南アフリカ(2回目) → エスワティニ → 南アフリカ(3回目) → (飛行機) → マラウイ → ザンビア(2回目) → ボツワナ → ザンビア(3回目)→ (飛行機) → 南アフリカ(4回目)

図1: 旅のルート(Googleマップより作成)。主な滞在先には地名を入れています。

3. なぜ旅なのか


アフリカ渡航をしようと思ったとき、留学やインターン、外務省在外公館の派遣員制度など取ることのできる手段は案外たくさんあります。その中で旅を選んだ大きな理由は、アフリカの中でもいろいろな国を見てみたいと思っていたことです。


これまでアフリカについて学ぶ中で、「アフリカ」とひとくくりにできないことを頭では理解しつつ、渡航することなしにそれぞれの違いを語る難しさを感じていました。複数国への渡航により、少しでもそれぞれの違いを理解したいという思いから、今回は旅という手段を取ることに決めました。

 

4. おすすめスポットのご紹介


この記事を書くにあたって、滞在先をどのように紹介しようかを非常に迷いました。いろいろな国を見られた反面、ひとつの場所に滞在した期間は短く、その場所について語るには不十分なのではと思ったからです。ですので、今回は特におすすめしたい場所をいくつか紹介するに留めます。

 

4-1. タンザニア ンゴロンゴロ国立公園


定番ではありますが、やはりンゴロンゴロのサファリ(スワヒリ語で「旅」の意。ここではガイドさんと共に国立公園内を見て回るツアーのことを指します)は圧巻でした。


ンゴロンゴロは公園全体がひとつの大きなクレーター(カルデラ)で、公園内に入るにはクレーターの縁から少しずつ下りていくようになっています。動物が見られるのも魅力的ですが、個人的にはこの壮大な地形を見られるのがこのサファリの推しポイントです。もちろんびっくりするほど動物がたくさんいて、私たちもライオンやシマウマ、カラカルなどいろいろな動物を見られて楽しかったです。


中でもシマウマやバッファローはたくさんいすぎて、ツアーの後半には「またか…」と思えてしまうのがまたおもしろいのです(図2)。

図2: 本当にたくさん見たシマウマ。きっと彼らも「また人間か…」と思っているに違いない。

4-2. マラウイ ウィンべの風車

この風車は、映画『風をつかまえた少年』()のモデルになったウィリアム・カムクワンバさんが作られたものです。こちらの作品を映画館に観にいったことがあった上、彼のエピソードは私が中学生のときに使っていた英語の教科書に載っていて、マラウイに行きたいと思う大きなきっかけになりました。

注: 映画『風をつかまえた少年』の公式サイト URL: https://longride.jp/kaze/

風車があるのはウィリアムさんのご実家で、ご家族からお話を伺うことができました(図3)。現在風車は使われておらず、ソーラーパネルを用いて発電しているとのことでしたが、この風車は彼らの生活を大いに助けたと思う、とおっしゃっていました。現在は風車が観光地化しており、その意味で助けになっているということもあるのかなと思いつつ、やはり実物を見られると感慨深いものがありました。

図3: 実際の風車。左が初代、右が二代目だそう。 

4-3. レソト セモンコン


首都のマセルからミニバスで2-3時間ほどの場所にある町です。この町にはマレツニャネという、アフリカで最大の落差を誇る滝があり、ホーストレッキングで向かうことができます(図4)。乗馬の経験はほとんどありませんが、そんな私でも全く問題なく体験できました。いつもと違う高さから見る景色は新鮮でしたし、静かで澄み切った空気が印象的でした。


標高差が大きいところを移動することが多いからか、日常的に馬に乗って移動する方が多い地域で、滝までの道中に出会った方も馬と一緒にいる割合が高かったです。セモンコンは本当に静かなところで、暖炉の火と満点の星空を眺めながら過ごす夜はとてもリラックスできる時間でした。レソトは総じて標高が高く寒いので、防寒対策をバッチリしてからの訪問がおすすめです。


滝関連では、ザンビア側からビクトリアフォールズも訪れましたが、それぞれ違ったよさがあると感じました。ビクトリアフォールズは世界三大瀑布のひとつにも数えられており、その水量は圧倒的です。


私が訪れたのは7月末で、一般的には滝が綺麗に見られると言われている時期でした。水量が最大とされる時期ではないのですが、霧のような水滴が絶えず降り注ぎ、見るだけでなく体感でそのスケールの大きさを実感できました。マレツニャネは人が少なく比較的観光地化されていない秘境、といった感じだったのですが、ビクトリアフォールズは一大観光地という雰囲気で、その点も対照的だなと思いました。

図4: トレッキングでマレツニャネの滝へ向かう様子。 

4-4. ジンバブエ グレート・ジンバブエ


ジンバブエの国名の由来となった遺跡です。ジンバブエとは、ショナ語でZi(=big) mba(=house of) bwe(=stone) で、日本語では石の家と訳されるようです。その名の通り、石をふんだんに使い、精密に作られた建築物たちはとても美しかったです。


非常に狭い通路を通らないと王様の居住区に行けないなど、本当によく考えられた設計になっているのにも驚きました。滞在先のスタッフのお姉さんと一緒に訪れ、遺跡内では解説をしてくださる方もいてかなり楽しめました。


余談ですが、行きのタクシーにて人生で初めて、助手席に2人で乗り込む人を見ました。まだ後ろの席がたくさん空いていたのに、です。あとで友達に聞いてみたら、前が見えないと危ない、不安だからだそうです。その乗り方もなかなか危ないと思うけど…

 

4-5. どこでも マーケット


ルワンダのキミロンコマーケット、ウガンダのナカセロマーケット、マラウイのリンベマーケット…。新鮮な野菜や果物を手に入れるならここ!お土産もなんでも揃います。訪れた国はどこでも、素敵なマーケットがありました。区画や屋根の有無、扱っている商品は違っていても、マーケットの活気やそこにいる人びとの雰囲気にはなにか共通したものを感じました。


私が好きなのは商品の並べ方で、例えばトマトは5-6個ずつを山にして綺麗に積み重ねてあったり、お洋服のお店では針金やハンガーを駆使しながら、文字通りあたり一面に商品が並んでいたりします。一方でなかなか複雑な(適当な?)並べ方をしているお店もあって、一度中古の靴を買った時には靴の片方を探すのにかなり苦労しました(図5

図5: 靴を探してくれる店員さん。プロもどこにあるか把握していないらしい。 

5. トピックごとの紹介


この章では、旅をする中で心に残ったものをトピックごとにまとめていきます。旅する中では国ごとの相違点もありましたが、共通点もかなり多く見つかりました。そういった部分を紹介していけたらと思います。

 

5-1. 食事


今回訪れた場所では、メイズ(トウモロコシ)の粉を使って作られた練りがゆを主食のひとつとする地域がほとんどです。ウガリ、サザ、シマ、パップなど呼び名は様々ですが、私の見る限り材料や作り方はほとんど一緒です。くせがなく、お肉やお魚、野菜などどんなおかずにも合います。


面白いのが、一緒に食べるおかずがなくなると、シマを食べるのをやめてしまう方が多いこと。あくまでもおかずと一緒に食べるものという認識なのでしょうか。「おかずがなくなったら主食を食べるのも終わり!」というパターンは初めて見たので、とても興味深かったです。シマの場合、そもそも1人分のお皿に盛られている量が多いせいもありそうですが。


それ以外の主食でいうと、マラウイのお米がとてもおいしくて大好きでした。おかずではザンビアのカペンタ(いりこのような小魚)が好きです(図6)。ご飯について語りだすと止まらなくなってしまうので、今回はこの辺にしておきたいと思います。

図6: リビングストンのレストランのシマ&カペンタ。シマは半分とお願いしてこの量。

5-2. 車


今回の移動は主にバスを使っており、車に驚かされることもよくありました。まず驚くのは、どの車に乗っても基本的に音楽がガンガンにかけられていること。人気の音楽またはドライバーさんの趣味の音楽を知ることができます。今回乗った中では、ジンバブエの長距離バスが最も大音量で音楽を流しており、お客さんもみんなノリノリでした。


また、ミニバスの場合は車内の密度がとんでもないことになっています。例えば、ジンバブエで乗ったとあるミニバスでは、定員16名のところ22名の乗車率でしたし、それに加えてマーケットで販売用の商品を持っていたり、引っ越しかと思うような大きな荷物を持っていたりします(バックパックを持っていた私もその一人ですが)。


もはや私の席はどこ?状態なので、日本の満員電車のバスバージョンと思っていただければわかりやすいかと思います。特に気温が高いときには暑くて大変ですが、普段はなかなかできない体験ですし、こういうアトラクションとして(?)とてもおもしろかったです。旅の後半、南アフリカでは定員しか乗っていないミニバスが多かったのですが、定員数しか乗っていない状況について、「落ち着いて座れる!贅沢!」と思えてきてしまう自分がいました。

 

5-3. ボードゲーム


道端でボードゲームをしている方がとっても多いです。特にマーケットに行くと至る所で対戦していて、まるでボードゲームの大会に来たかのようでした。チェッカー(ドラフト)やバオと呼ばれるゲームが主流のようで、ペットボトルのキャップやビンの王冠を使いながら遊んでいる方がほとんどでした。


地域によって駒の動き方にローカルルールがあって、そんなところもおもしろかったです。そして毎日やっているからなのか、とにかくすごいスピードでゲームが進んでいきます。もはや反射なのではという高速具合で、見ているだけで圧倒されていました。


チェッカーのルールは覚えやすかったので、たまに道端で勝負を挑んでいたのですが、挑んではボロ負けし…という繰り返しでした(図7)。一度くらいは勝てるように、修行を積んでからリベンジしたいと思っています。

7: マラウイにて、ドラフト対戦中の様子。このあと負けました。 

5-4. ホスピタリティ


なんといっても人びとのおもてなしの心は半端ではありません。例えば、節約のためにバックパックを背負って歩いていたら、「送っていくよ!」と声をかけていただくことがありました。思いがけずヒッチハイクといったところでしょうか。それも、旅の間何度もです。


乗せてほしいとお願いしたわけでもないのに、見ず知らずの人間を乗せてくれる方がこんなにいるのかと驚きました。他にも、ご飯やお酒をおごっていただいたり、仲良くなった方のお家に泊めていただいたりしていました。長距離バスで不安がっていると、自分の行き先・フライトを変更してまで一緒にいてくれた方もいました。

 

マラウイ在住のマダム(ザンビアで出会い、のちにマラウイを訪れたときに泊めてもらうなど大変お世話になりました)が、「このあたりの人たちはホスピタリティがすごいでしょう」と話していたのが印象的でした。彼女はコンゴ民主共和国の出身で、若干出身国によってホスピタリティ精神に差がある、とも言っていましたが、私からすればどこの方もみなさん素晴らしすぎました(図8)。

図8: お世話になったマダム&息子さんとマラウイ湖へ。 

6. 旅をしながら考えたこと


考える機会がとても多かったのが、与える/与えられるということについてです。

旅をしていると、どうしても「アジア人のお金持ち旅行者」として見られることが多くなります。「お金を貸してくれない?」とか、「結婚しよう」とか声をかけられることは日常茶飯事。


通りすがりの方に声をかけられた時は、「あーはいはい、またね」という感じで受け流せるものですが、お世話になった方から言われてしまうと、こちらとしても複雑な気持ちになります。学生の貧乏旅だし余裕はないし、でも何かあげたからといってすぐに生活に困るような状況ではない。


かといって、「ちょうだい」と言われてすぐあげてしまうのは、なにか違うような気がする。そんな葛藤がありました。あとから考えると、モノのやり取りが発生することによって急に上下関係ができてしまうような、対等性が失われてしまうような気がしたからだと思います。

 

一方で、私が与えられる立場に置かれることも多々ありました。先に書いたように、ご飯をごちそうになったり、車に乗せてもらったり、仲良くなった方のお家に泊めてもらうこともありました(図9)。たくさんの出会い、ご縁に支えられた旅だったと心から思います。

図9: ボツワナ-ザンビアのカズングラ国境。トラックに乗せてもらい国境を越える。

この「与えられた」経験は、「果たして私はこの人たちと同じように、見ず知らずの他人にまで与えられる人間でいられるだろうか」と考えるきっかけになりました。彼らはただもらうだけの精神を持っているのではなく、自分が持っているものは与える、他者が持っているものはいただく。個人主義ではなく、言葉通りみんなで一緒に生きているんだなと感じました。

 

それは相手の人生により深く関わっていくことであり、責任が伴う難しいことだと思います。普段そういった習慣がないと、なぜそこまでするのかと感じてしまうくらいです。


この旅を通して私自身は、こういう深い関わりもいいものだな、と感じられるようになりました。濃密な人間関係は、多少めんどうな部分がありながらも愛にあふれていて、とても心地よいものだったからです。


私はもともと深い人付き合いが得意な方ではないのですが、帰国してからは淡白な人間関係に寂しさを覚えることもあり、自分でも驚いたくらいです。向こうでできた友達からは、未だに時差を完全に無視した時間帯に電話がかかってきたり(図10)、自撮りの写真が大量に送られてきたりするけれど、それもなんだか嫌いじゃないなと思うのです。

図10:タンザニアのザンジバル。友達との電話はスワヒリ語の勉強にもなっています。

7. おわりに


ここまでいろいろと書いてきましたが、一番伝えたいのは、今回の旅に出てよかったと心から思っているということです。帰国後すぐ、「アフリカに帰りたい」と思ったほど、大好きな場所ができました。たくさんの素敵な方と出会えました。本当にありがたいことです。


旅を終えた今、旅の様子を伝えることが、お世話になった方々への恩返しのひとつになればいいなと思っています。拙い文章ではありますが、私が大好きな人びとや場所の魅力が少しでも伝わっていたら幸いです。


お読みいただき、ありがとうございました!

最終更新:2023年2月8日