アフリカンウィークス2019

活動報告

2019.12.2-20.

はじめに

佐藤裕希

アフリカンウィークス2019実行委員会 委員長


この度は、本報告書をお読みいただきありがとうございます。

アフリカ地域専攻の学生有志が中心となって企画したアフリカンウィークスの開催は、今年度(2019年度)で三回目です。イベントが始まった当時と比べると、TICADの開催や企業の投資などを通して日本社会でのアフリカのイメージは格段に変わってきています。

一方でいまだにアフリカは貧しくて援助が必要であるという思い込みや、身体能力が高く狩猟生活を行なっているというステレオタイプのアフリカ像も頻繁に目にします。また、ここ東京外国語大学においても大陸であるアフリカをひとまとめにして「アフリカ地域専攻」としています。

ヨーロッパやアジアの地域専攻の学生が各言語毎にかなり細かく分かれていることを考えると、とても乱暴な行為に感じます。しかしこれはひとまとめにした人が悪いのでしょうか。そうではありません。ひとまとめにせざるを得ないほど、日本社会がアフリカの魅力に気づいていないことに問題があるように私は思うのです。

ですので、今回はアフリカの魅力や精神的・物質的豊かさを広く知ってもらうことの第一歩として、外大生をターゲットに「君の知らないアフリカ」をアピールしていくことといたしました。このイベントを通して少しでも多くの方に知らなかった、意外なアフリカを伝えられていたら幸いです。また、私たち実行委員もイベントの準備を通してたくさんのアフリカの魅力を知ることができました。これからの学びがより深まる、大変貴重な機会を頂けたと思っております。

最後になりましたが、アフリカンウィークス2019の成功はひとえにご協力くださった皆様のおかげです。特に現代アフリカ地域研究センターの皆様には、アフリカを学ぶ者として未熟な私たちに主に知識・経験面で大変な御助力をいただきました。また、学生課の方や総務企画課広報係の高坂さんには事務面でお世話になりました。

そして何より小林茂監督とサカキマンゴーさん、それから写真展に応募してくださった方々は、私たちに「知らないアフリカ」を見せてくださいました。関わりを持ってくださった方は数え切れませんが、皆様一人一人に心からの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

目次

イベントの概要

各企画の報告

1. 展示

2. 映画

3. トークライブ

4. 小物販売

※PDF版はこちら↓

2019アフリカンウィークス報告書(WEB用).pdf

イベントの概要

  • 主催:アフリカンウィークス2019実行委員会

  • 共催:現代アフリカ地域研究センター、学生団体Femme Café

  • 責任者:東京外国語大学国際社会学部国際社会学科アフリカ地域専攻2年 佐藤裕希

  • 指導:大石高典 講師

  • 期間:2019年12月2日(月)〜12月20日(金)

  • キャッチコピー:「君の知らないアフリカ」

  • 目的:まだ知られていないアフリカの魅力を発信することで、アフリカ地域以外を専攻している外大生にもアフリカへの興味関心を持ってもらうこと。また、日本で広まっているステレオタイプなアフリカへの目線を自覚し、様々な面からアフリカを捉え直してもらうこと。特に、アフリカを「援助の対象」と捉えている人々に、アフリカの新たな魅力や豊かさを知ってもらうこと。

  • 企画内容:

1. 展示(写真展、ポスター展示)

2. 映画上映会・講演会(TUFS Cinemaとして)

3. 親指ピアノライブ

4. アフリカ小物販売会

各企画の報告

1. 展示

  • 期間:2019年12月2日(月)〜12月20日(金)

  • 場所:東京外国語大学研究講義棟1階 ガレリア

  • 内容:

①写真展「映えるアフリカ」:現代アフリカ地域研究センターと共催。地域ごとに分けて展示(東・西・南・北・その他)。

②ポスター展示「地図で見るアフリカ」:気候・植生、言語、都市、食・生業、宗教の5分野についての基本情報の展示物を地図メインで作成。

③絵画展「アフリカで描かれた顔と身体たち」:連携企画・科研新学術・顔身体学高橋班主催。

④ワークショップ「顔を描く 顔を描かれる 顔を知る」(12/6開催):連携企画・科研新学術・顔身体学高橋班主催。

  • 成果:

①写真展

国内外の22名から約60点の応募があった。「映えるアフリカ」というテーマのもとで募集して集まった写真は、やはり通る人の目を引いた(写真1, 2)。 アフリカに対する貧困や後進性といった負のイメージを変えるきっかけになったと考えられる。 映画やトークライブの来場者には学生以外も多くいたため、地域の方や映画に興味のある人にも見てもらうことができた。

写真1:開催前日の夕方、写真展の準備風景。

写真2:設営後の写真展・ポスター展示会場の様子。

②ポスター展示

地図をメインにして、読むことよりも眺めることで理解できるようにすることによって、アフリカにそれほど興味を持っていない人でも「見てみようかな」と思えるような展示になった。 展示に関して感想を直接言ってもらったり、アンケートに書いてもらえたりすることもあった。

③パネル展示「アフリカで描かれた顔と身体たち」(2019年12月3〜20日)

家を描く。顔を描く。好きなものを描く。小さな頃から多くの人が親しんでいる描画という行為。私たちにとって、描くとはどういうことなのでしょうか。世界中の人たちは、顔を、人を、どのように描くのでしょうか。

私たちはここ数年、アフリカを含む世界のさまざまな地域でフィールドワークを行いながら、現地の人に「絵を描いてもらう」という研究を進めています。同じものでも、人によって、地域によって、描きかたは実に多様です。例えば顔。目と口だけで顔を描くこともあります。きめ細かく繊細な表情を描くこともあります。一本の線で輪郭を描くこともあれば、点をつないで顔を描くこともあります。

本企画ではパネル展示として、アフリカで描かれた顔と身体を集めた絵画展を開催しました。さまざまな絵画を通して、それを描いた人たちが何を見て、何を思い、何を伝えようとしているのか、想像してもらえたことでしょう。(高橋康介・中京大学心理学部

④ワークショップ「顔を描く 顔を描かれる 顔を知る」(2019年12月6日夕方)

実際にフィールドで現地の人に絵を描いてもらっている研究者たちがフィールドワークの様子について語る、各地で描いてもらった作品を紹介・解説する、さらには参加者自身でも絵を描いてみる体験を共有する、というワークショップを行いました(写真3)。最初は他人の顔を描くということに戸惑っていましたが、描くこと、描かれることを通してコミュニケーションの広がりを体験できるイベントとなりました。(高橋康介・中京大学心理学部

写真3: ワークショップのひとコマ。出来上がった似顔絵を持ち寄って。

  • 総括:

展示物は足を止めて見てもらうことが難しいと感じていたので、より一目見て興味を持ってもらえるようなものにすることを心掛けた。「君の知らないアフリカ」という全体テーマに沿って展示以外の企画が進行し、アフリカの様々な面を伝えていこうとするなかで、この展示企画はその根底にある基礎的な、しかしまだまだ知られていないようなアフリカの姿を伝えられたのではないかと思う。例えば、写真展についていえば、極端な場合、アフリカには紛争や政治の腐敗がはびこり、「映える」景色などないとイメージしている人もいる。しかし展示された写真を見れば、そのようなことはないのは一目瞭然である。また、基礎データの展示も、アフリカの人々がどのような生活をしているのか、思想を持っているのか、などが伝わるものになったと思う。(展示班・班長 後藤えり

  • コメント:

今回は貴重な機会をありがとうございました。我々がフィールドで集めてきた絵がパネルで並ぶ様子は壮観でした。またワークショップでは留学生の参加もあり、多国籍な状況で顔を描きあうという稀有な経験ができました。今回の企画を通して、皆様の少しでも新しいモノの見方が提供できたのなら、企画者冥利に尽きます。我々も思いを新たに、さらなる研究を進めていきます。(高橋康介・新学術「顔身体学」計画班長/中京大学心理学部

2. 映画

  • 日時:2019年12月10日火曜日 18:00-20:00

  • 場所:東京外国語大学アゴラ・グローバル プロメテウスホール

  • 企画内容:

映画「チョコラ!」の上映、上映後トーク(小林茂監督と本学坂井真紀子准教授)

  • 内容:

◆映画のあらすじ

東アフリカを代表する国、ケニア共和国。首都ナイロビから北東に車で約1時間行った所に、人口10万の地方都市ティカはある。映画は、この町のストリートで暮らす子どもたちの厳しい生活環境やその背景、NGOや親との関係をユーモアを交えながら丁寧に提示していく事で、思春期を迎えた子どもたちの儚くも力強く生きていく姿を描き出します。(TUFSシネマホームページ「アフリカン・ウィークス上映会『チョコラ!』」より)

◆トークセッション

映画終了後多くの方に残っていただき、和やかな雰囲気の中トークセッションを行うことができた(写真4)。 はじめに小林監督より、作中に登場するボトルと親指ピアノの実物のご紹介があり、映画に出てくる子供たちの存在がぐっとリアルに感じられた。坂井先生との対談形式で映画撮影の裏話などをお話しいただいた。 最後15分程度が質疑応答の時間に充てられた(3名の方から質問)。

写真4: 上映後の講演会の様子(左:坂井真紀子准教授、右:小林茂監督)。

  • 参加者数:140名

  • 寄せられた感想:

配布したアンケートにて、

これまで観る機会が無かった、よい作品を観られた

映画を撮るにあたっての苦労などを聞けて非常に興味深かった

あえて明確な答え(ストーリー)を見せようとしている訳ではないことに気がついた

映画を作ることになった経緯は小林監督のオリジナリティそのものに思えた。坂井先生の要所要所のガイド的な言葉も効いていた

人との出会いが人生を変えることがあるのだなと、しみじみ思った

などの感想を寄せていただいた。

  • 総括:

上映後のトークセッションにて、映画を製作された監督ご本人にお話しいただいたことは、映画「チョコラ!」の理解への大きな助けとなったと思う。また、その「理解」とは一つの正解があるものではなく、ひとりひとりのこれまでの経験などによって変化するものだと、この度アンケートを拝見して改めて実感した。その変化の幅の大きさは、強固なストーリーを提示しないこの映画の手法、そしてアフリカの懐の広さによるものだと言えるだろうか。

今回のアフリカンウィークスのテーマは「君の知らないアフリカ」であったが、「新しい世界を見せてもらった」などの声をたくさん寄せていただいた。まだまだ勉強中の身ではあるが、多様なアフリカという世界の一端をご紹介することができていたら幸いに思う。今後もアフリカの懐の深さから学びを得(時には甘えさせていただくかもしれないが)、関係性を模索していけたらと思っている。

最後に、今回の上映会を実施するにあたりお世話になった小林監督、坂井先生、「チョコラ!」配給会社東風さま、本学TUFSシネマご担当者さまをはじめ、ご来場いただいた方々、すべてのご協力くださった方々に心よりお礼を申し上げる。また、広報にあたっては本学総務企画課広報係の高坂さまに多大なご助力をいただいた。 ありがとうございました。(映画班・班長 椎木彩水紗

3. トークライブ

  • 日時:2019年12月13日金曜日 18:00-19:30

  • 場所:東京外国語大学アゴラ・グローバル カフェスペース

  • 企画内容:親指ピアノ奏者サカキマンゴーさんによる演奏と講演、質疑応答

  • 参加者数:およそ40名

  • 総括:

サカキマンゴーさんの軽快な語りで終始和やかな雰囲気だった。親指ピアノの演奏はほかではなかなか聞くことができないので、観客の皆様は興味を持たれ、ライブを非常に楽しんで帰ってくれたように思う。講演者と観客の距離が良い意味で近く、一体感のあるトークライブだったように感じた。アフリカの楽器の説明やサカキマンゴーさんのアフリカでの体験談の際には、感心や驚きと言った様々な反応があり、これまでよりいっそうアフリカの音楽に興味を持っていただけたようだった(写真5)。

時には、サカキマンゴーさんから「どのようにアフリカと向き合うか」というお話もあり、ただ楽しんでいただくだけでなく、アフリカとの関係性をいかに築いていくかという問題提議もなされ、非常に有意義な時間になったと思う。同時開催した販売会も盛況で、音楽にとどまらずアフリカ文化の魅力を伝えられたのではないだろうか。

全体を通して、「君の知らないアフリカ」という全体のテーマに沿った内容となり、ご来場してくださった観客の皆様に新たなアフリカの魅力を伝え、よりいっそうアフリカに興味を持っていただけるきっかけづくりをすることができたと思う。(トークライブ班・班長 渡邉陽菜

写真5:トークライブで語るサカキさん。

4. 小物販売

  • 企画内容:アフリカ小物を扱っているブランドやNGO団体3つによる、アフリカを身近に感じられる小物の販売

<第1回>

日時:12月10日火曜日(映画上映日) 17:30ー20:00

場所:東京外国語大学アゴラグローバル、カフェスペース

販売者:国際協力団体スービ、学生団体 Femme Café

販売物:Femme Café...コーヒー

スービ...雑貨(ピアス、コースターなど)

<第2回>

日時:12月13日金曜日(トークライブ開催日) 17:30ー20:00

場所:第1回と同じ

販売者:トゥマンボ、学生団体 Femme Café

販売物:Femme Café...第1回と同じ

トゥマンボ...雑貨(ピアス、イヤリング、ヘアバンドなど)

  • 総括:

今回の小物販売は幅広いアフリカの雑貨、コーヒーを通じて「君の知らないアフリカ」に触れてもらうことが目的だった。購入していただいた方々にはアフリカの小物を通じてこれからよりアフリカを身近に感じてもらうことができると思う。今までになかった試みだったため、至らない点が多かった中、出店のためにお越しくださり、来場者の皆さんを楽しませてくださったスービさん、トゥマンボさん、ファムカフェさんに感謝申し上げたい。(小物班・班長 松下夢実

Femme Caféさま http://femmecafe.com/

スービさま https://kichintoaydf.wordpress.com/

トゥマンボさま https://www.iichi.com/mobile/

最終更新:2020年2月4日