Temperament(テンペラメント)

一部またはすべての音程に、Temperが施されている調律の総称と本ページでは考える。

Temperamentは、日本語に直すことができない。テンペラメントとしか言いようがないのである。

西洋音楽的な流れで最古のTemperamentはMeantoneであり、比較的新しいものが12 Equal Temperamentである。ただし、12 Equal Temperamentは702Centの完全5度を700Centとして考えた場合に使うことが多い。1オクターブを単純に12分割したもの、という考え方をするならば、それは12EDOである。

Temperamentという言葉は、英語版『The New Grove dictionary of music and musicians』に書かれていない。「Temperaments」という複数形で、いくつかの「temperament」の説明に、「temperament」という言葉が使われてはいる[Grove, 1980c, p.660]。また、『標準音楽辞典』では、「temperament」という言葉に対し、「平均律、または音律」と書かれている[浅香, 1966, p.757]。しかし平均律と訳せばウェル・テンペラメントの概念から大きく外れ、音律とするならばピタゴラス音律もテンペラメントとなる。『New Grove dictionary』の「Temperaments」では「PYTHAGOREAN INTONATION・JUST INTONATION」と、「EQUAL TEMPERAMENT」という風に、明らかにIntonationという言葉とTemperamentという言葉が使い分けられている。David Copeもまた、調律とイントネーションを次のように使い分けている。「微分音はイントネーションの変化によって生じ、管弦楽の演奏者は、イントネーションを使い分けて演奏する。もう一方で調律法はオクターヴ内の限られた分割数を算出する」と[コープ, 2011, p.125]。さらにJoe Monzoは自身のウェブサイト、「Tonalsoft encyclopedia of microtonal music theory」の「TEMPERAMENT」[『TEMPERAMENT』, Tonalsoft encyclopedia of microtonal music theory, http://tonalsoft.com/enc/t/temperament.aspx(最終確認日:2015年9月22日).]で、4人の音楽理論家の定義を紹介している。加えて藤枝守も、「チューニングは、一般に『調律』と訳される。またテンペラメントは『音律』と訳されることが多く、その意味が曖昧になっている。音律という用語は、『音高を規定する』という一般的な意味を与えたほうがわかりやすい。そして、テンペラメントに対しては、『音程を調整する』という意味を込めて、『整律』と呼ぶほうが好ましいように思える」と述べ[藤枝, 1999, p.99]、テンペラメントという言葉の再定義を試みている。

これらのことより、Temperamentという言葉は明確な定義が存在しないことが考えられる。