Sharp and Flat(♯・シャープと♭・b・フラット)

微分音のシャープとフラットは、ピアノの黒鍵という単純なものではない。

シャープとフラットが同じ50centを指すのは、12平均律のみであり、それ以外の音律では違う音を指す。

『楽譜の数学』によれば、シャープ#とフラットbは次の式が成り立つとしている。

※qはいわゆるgenerator、ここでは完全5度。

大塚は、ドの振動数を「d」、ソの振動数「s」とし、q=s/dとするならば、#はq7/16で、bは16/q7で表されるとしている[大塚, 2003, pp.8-9]。たとえば、q=3/2=701.955セントのピタゴラス音律の場合、#は37/211=113.685セントと計算できる[大塚, 2003, p.20]。そしてまた、次の計算式も成り立つとしている。全音・wはq2/2で、半音・sは8/q5である。12等分音律、筆者の述べている12平均律をq12とし、XとYが全音の音程としたとき、q>q12ならば#>sとX#>Yb、q=q12のとき#=sとX#=Yb、q<q12ならば#<sとX#<Ybであると[大塚, 2003, pp.13-14]。

チューニングによって完全5度の値が変わる。そのチューニングの完全5度の値が12平均律の完全5度(700セント)より大きいならば半音よりシャープのほうが値が大きく、当然あるド#のほうがレbより高い音になると述べている。逆もまたしかり。

このように、12平均律以外のとき、シャープとフラットの値は50セントで一致しない。

大塚正元, 2003, 『楽譜の数学』, 早稲田出版