Harry Partch(ハリー・パーチ)

非12音音楽で有名なHarry Partchは、11-limitの音楽のために43音音階を提唱した。彼は自身の著書、『Genesis Of A Music: An Account Of A Creative Work, Its Roots, And Its Fulfillments』で自身の音楽について詳しく述べている。

Genesis of a music:, https://en.wikipedia.org/wiki/Genesis_of_a_Music?fbclid=IwAR3-MPtk3bjm4S2TD7gKS3KevyVeK4oG39tLxxaUOW-NDD_UBeLwC6eCOUo

彼の楽器は、Charles Coreyによってまとめられている。

http://www.harrypartch.com/#!instruments/csqv

1オクターブ43音からなる音楽システムを公表しており、このシステムを「Monophonique」と呼ぶ[Jedrzejewski, 2014, p.157]。43音の各周波数比と楽譜記譜法やセント値も、明確に定められている。興味がある方は、直接以下の文献か、Wikipediaを参照していただきたい。

記譜法、周波数比:[Read, 1990, pp.13-133]

セント値:[Gann, 1997, p.82]

Wikipedia:https://en.wikipedia.org/wiki/Harry_Partch%27s_43-tone_scale

Tuning Latticは、Tonalsoftによってまとめられている。

http://www.tonalsoft.com/monzo/partch/scale/partch43-lattice.aspx

彼の音階システムは短3度・長3度・完全4度・完全5度をはじめとする純正音程を取る、というものが軸にある。それゆえ、平均律の概念からは大きく外れているといえるだろう。たとえば、(0, 1)pitchの音程差には21.5セントの幅しかないにもかかわらず、(4, 5)の間には38.9セントもの差があるのである。これはEasley BlackwoodMOS音階、また平均律といったものとは大きくことなる概念である。

また彼は、OtonalityUtonalityという純正音程による3和音について述べている。UtonalityとOtonalityは必ず3和音である。2音はすべて一つのHarmonic Series(1:2:3:4:5:6:7:8:9:10...で表される音程)となるからである。またOtonal chord・Otonalityはx/k、y/k、z/kで表わせ、Utonal chord・Utonalityはk/x、k/y、k/zで表されるコードである。日本語にするならば、それぞれ上倍音による3和音、下倍音による3和音となるのではないだろうか。

また、長3和音と短3和音は、次のように考えられる。4:5:6というInverse(下の音程と上の音程が逆の和音、または逆数の和音)は1/6:1/5:1/4であり、10:12:15と同義である。4:5:6の最大の奇数は5であり、Inverseの最大奇数は15である。このとき5のほうが15より小さいので、4:5:6がOtonalityであり、10:12:15がUtonalityであると。

limitの概念を強く意識し、純正音程を多くとるならば、平均律の概念と並立させることは難しいことが、彼の音階やUtonalityとOtonaliyの考えから読み取れる。

参考記事

Harry PartchのOedipusが、ワシントンで貴重な演奏をされる

Harry Partch's Oedipus Receives a Rare Performance at UW:http://www.thestranger.com/theater/2017/05/03/25120914/harry-partchs-oedipus-receives-a-rare-performance-at-uw

動画:RareAndStrangeInstruments: https://www.facebook.com/RareAndStrangeInstruments/videos/1137932446292358/

ミュージックビデオ:BECK - "HARRY PARTCH":https://www.youtube.com/watch?v=tkQ5_AOLJ1A&feature=youtu.be&fbclid=IwAR2PvBnZyoer4Utfwua27dWtSJJECa3iqn7LnAal6G9bn-VoKyifrhI57Fk

ドキュメンタリー動画:Harry Partch Documentary-The Outsider: https://www.youtube.com/watch?v=aKD3zm0WZjA&feature=youtu.be

Jedrzejewski, Franck., 2014, 『Dictionnaire des musiques microtonales – Nouvelle édition revue et augmentée』, L'Harmattan.

Gann, Kyle., 1997, American Music in the Twentieth Century, Schirmer.

Read, Gardner., 1990, 20th-Century Microtonal Notation, Geenwood.