2024年9月投稿
映画シリーズが始まる前、「男はつらいよ」にはテレビシリーズがありました。
そのテレビシリーズは、第1回と第26回(最終回)の、2話しか現在では見ることができません。
なぜならそのテレビシリーズは、当時高価だったVTRで撮影していたからでした。
撮影済みのVTRはその後他の番組の録画用に転用され、上書きされてしまったことで現存していないのです。
ただ奇跡的に初回と最終回のみ記録用として保存されていたことで
現在その2話分のみ観ることができる、というわけです。
何とも勿体無い・・・
このテレビシリーズを企画したのが、当時フジテレビのプロデューサーだった小林俊一さんです。
(小林俊一さんの代表作には「白い巨塔」があります。)
彼は渥美清の俳優としての能力に惚れ込んでいて、1967年に「おもろい夫婦」を手掛け、それに続く
渥美清の更なる代表作を求めていたのです。
白い巨塔・ドラマ版 右:田宮二郎
新番組「男はつらいよ」 <フジテレビ 夜10:00>
「おもろい夫婦」、「くいしんぼ」での渥美清の持ち味を十分に発揮してもらおうと企画されたもの。
下町を舞台に、無学だが義理人情に厚く妹思いの主人公と、兄に似ず美人でしっかりものの妹との間の、チグハグな兄妹愛を描く人情喜劇。
妹役には「旅情」「胆っ玉かあさん」などで人気者になった長山藍子。
<配役>
車 寅次郎 :渥美 清
車 さくら :長山 藍子
車 竜造 :森川 信
車 つね :杉山 とく子
諏訪 博士 :井川 比佐志
川又 登 :津坂 匡章
川島 雄二郎:佐藤 蛾次郎
山本 久太郎:佐山 俊二
鎌倉 道夫 :横内 正
坪内 冬子 :佐藤 オリエ
坪内 散歩 :東野 英治郎
現代の私たちが、テレビシリーズを見る術はないが、少しでも情報を得たいと思い
今回は当時の新聞や情報誌に掲載されていた内容を調べてみた。
第1回 10月3日放送
脚本:山田洋次
稲垣浩一
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、佐藤オリエ
無学だが義理人情に厚い兄と美人でしっかり者の妹が巻き起こす人情喜劇。
こちらはDVD版でご確認できます!
第2回 10月10日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、佐藤オリエ、井川比佐志、津坂匡章
入院した寅次郎はじっとしていない。ついに彼は病院を飛び出した。
第3回 10月17日放送
脚本:稲垣俊
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、佐藤オリエ、横内正、津坂匡章
恋人道夫の父から家族同士で会いたいといわれたさくら。兄の存在が気になる
第4回 10月24日放送
脚本:稲垣俊
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、杉山とく子、佐藤オリエ、津坂匡章
さくらの心を晴らそうと寅次郎は、もうけた百万円でハワイ行きを計画するが
寅次郎が道夫の家族に会って以来、さくらの心は晴れなかった。寅次郎も何かションボリする日が続いた。竜造(森川信)から何かを買ってやればさくらの気が休まると聞いた寅次郎、ハワイに行きたいというさくらの願いを聞いて意を決した。百万円もの大金を持って、寅次郎が帰ってきた。競馬で取ったというのだ。竜造、つね(杉山とく子)さくらと寅次郎はハワイに行くことになったが・・・
第5回 10月31日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、杉山とく子、津坂匡章、佐山俊二
留守番中の寅次郎のところにコソ泥が侵入。コソ泥は彼のかつての仲間だった
第6回 11月7日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、森川信、杉山とく子、津坂匡章
寅次郎は言葉は通じないが、彼の語る浪花節が好きという変な外人と意気投合。
第7回 11月14日放送
脚本:山根優一郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、佐藤オリエ、横内正
2ヶ月ぶりに寅次郎が帰ってきた。その間にさくらと道夫の仲は悪化した。
外人青年に同行して密航してしまった寅次郎が二ヶ月ぶりに帰ってくると、その間にさくらと婚約者道夫の仲は終局に近づいていた。そんなさくらの悩みも知らず寅次郎は二人の仲を取りもとうとするが・・・
第8回 11月21日放送
脚本:山田洋次、稲垣綾
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、杉山とく子、津坂匡章、小川宏
女性の下着ばかり盗む変態男が出現。登にその嫌疑がかかった。
寅次郎が住む町内で、女性の下着ばかり盗む変態男が現れた
自分の弟分である登に疑いがかけられていると知った寅次郎は、何としても犯人をあげようとした
釣竿に女性の下着をつるして待つこと数日
寅次郎はついに犯人を捕まえた
それが話題になって小川宏ショーに出演することになった
ところが小川宏のリードを離れて独走した寅次郎は…
第9回 11月28日放送
脚本:光畑碩郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、杉山とく子、東野英治郎、佐藤オリエ
寅に白石組から呼び出しがかかった売られた喧嘩は…と勇んで出かけたが
第10回 12月5日放送
脚本:山田洋次森崎東
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、津坂匡章、杉狂児、石田茂樹、石山律
かつて恩になった銀蔵に呼ばれた寅次郎、彼は銀蔵の実子を探すことになった
第11回 12月12日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、佐藤オリエ、武智豊子
瞼の母にひとめ会いたさに寅次郎は京都へ。そこで散歩先生と冬子にバッタリ
父娘水入らずの旅と思っていた散歩先生と冬子。八坂神社の八つ頭を食べている寅次郎とバッタリ。寅次郎は京都に実の母を捜しにきていた。母の居所がわかったのだが、寅次郎はテレてなかなか立ちあがらない。業を煮やした冬子は寅次郎について行くことにした。寅次郎の母(武智豊子)は連れ込み宿の女将。かくて”瞼の母”との対面となった。
第12回 12月19日放送
脚本:山田洋次東盛作
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、佐藤オリエ、佐藤蛾次郎
京都で冬子が見合いをすると聞いた寅次郎。彼はその時失恋の味を知った
第13回 12月26日放送
脚本:山田洋次、光畑碩郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、津坂匡章、井川比佐志
久しぶりに我が家に帰った寅次郎。そこには別れたはずの登が待っていた。
歳末のあわただしい世間に反して、寅次郎がのんびりと帰ってきた。とら屋に入るなり、寅次郎はびっくり仰天。涙ながらに別れた登が待っていたからだ。それよりも寅次郎を驚かせたのは、さくらと諏訪博士の仲である。さくらが風邪をひいて診察をしてもらったことから、二人の仲は急速に接近。妹思いの寅次郎は気を揉みはじめた。
実は山田監督は1クールであるという約束で引き受けた仕事だった
第14回 1月2日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、津坂匡章、東野英治郎、佐藤オリエ
散歩の家に行った寅次郎たちは人生の幸福という問題について話しあう
現在ではお正月になるとレギュラー番組は一旦お休みとなり正月特番が組まれるものだが
この頃はそんなことはなく、しっかりと通常放送されていることに驚かされる。
第15回 1月9日放送
脚本:山田洋次、森崎東
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、津坂匡章、井川比佐志、寺田路恵
登の恋の悩みを聞いて寅は冬子に登に会ってくれとたのむ冬子は…
「愛子」・・・寺田路恵 (てらだ みちえ)
テレビドラマ
泣いてたまるか・兄と妹(1967年、TBS)
熱中時代 教師編第2シリーズ「やさしさ紙芝居」(1981年、NTV) - 母親・葉子
おしん(1983年 - 1984年、NHK連続テレビ小説) - 八代百合
3年B組金八先生 第4シリーズ(1995年、TBS)
渡る世間は鬼ばかり 第5シリーズ(2000年、TBS) - 高山春子
映画
家族(1970年)看護婦
第16回 1月16日放送
脚本:山根優一郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、杉山とく子、市原悦子
女難の相がでた寅次郎それもそのはず、函館から見知らぬ女が出てきたのだ
「おどろいちゃいけない。あんたの顔にはまさしく女難の相が出ているよ」と、なじみの易者に言われた寅次郎。家に帰ると中村タミ子(市原悦子)という女が訪ねてきていた。はるばる函館からきたというタミ子。寅次郎には全然記憶がない。そのうちに寅次郎は「ハッ!」と思い出した。函館の赤提灯のタミちゃんなのだ。ところがタミ子は寅次郎が「女房にする」と約束したというのだ。寅次郎はびっくり。またヘボ易者を訪ねた。
第17回 1月23日放送
脚本:光畑碩郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、杉山とく子、津坂匡章、松村智毅
寅が酔っ払って変な男の子を連れてきた。寅は全然覚えがないという
第18回 1月30日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、宮本信子
竜造が熱をあげている女が家へ来るという。身代わりを頼まれた寅次郎。だがそこへ寅が密かに慕う冬子がきた
第19回 2月6日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、井川比佐志、森川信
諏訪がさくらに求婚するという。寅は諏訪が大っ嫌いだ
だが妹のめでたい結婚話寅の心は複雑だった
第20回 2月13日放送
脚本:山田洋次、森崎東
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、佐藤オリエ、井川比佐志、陶隆
諏訪とさくらの挨拶まわりについていく寅次郎。二人は爆弾をかかえた心境
第21回 2月20日放送
脚本:山根優一郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、佐藤オリエ、井川比佐志、森川信
さくらと博士の結婚式。寅次郎は両家を代表して挨拶にたったが…
第22回 2月27日放送
脚本:山根優一郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、杉山とく子、井川比佐志
さぬらが嫁いださびしさをかくす寅次郎。久さんと雄二郎とで三日間も飲み続ける
さくらの結婚式の翌日から、寅次郎は久さんと雄二郎をしたがえて三日三晩飲み続けた。「さくらさんがいなくなったさびしさを、お酒に紛らわせているのね」と冬子に言われた寅次郎。それからは、だまってポカーンとする日が続いた。久さんと雄二郎は寅次郎の心を察して、冬子に寅次郎の胸のうちを代弁。冬子に呼び出された寅次郎は、自分が彼女にプロポーズしたと聞いてびっくり。
第23回 3月6日放送
脚本:光畑碩郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、森川信、東野英治郎、佐藤オリエ、津坂匡章
散歩の教え子が集ってクラス会。幹事役の寅次郎は孤軍奮闘したが…
第24回 3月13日放送
脚本:山根優一郎
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、谷幹一、春川ますみ、佐藤オリエ、森川信
昔の仲間と会った寅次郎。仲間から旅に出て、また商売をやろうと誘われた
第25回 3月20日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、加藤剛、佐藤オリエ、森川信、東野英治郎
寅次郎の恩師、坪内散歩が急死した。悲しむ寅次郎と、冬子の前に現れたのは…
最終回 3月27日放送
脚本:山田洋次
演出:小林俊一
出演:渥美清、長山藍子、佐藤オリエ、井川比佐志、津坂匡章
失意の寅次郎は旅に出た。心配したさくらのもとに意外な知らせが届いた
冬子に恋人がいると知って以来、寅次郎の生活は変わった。晩飯をおとなしく食べたらテレビを見てスーッと二階に上がって寝てしまう。テレビもメロドラマを見る変貌ぶり。寅次郎はある決意をしていたのだ。そしてある夜、突然、どこかへ旅立ってしまった。それから三ヶ月。さくらの住む団地に雄二郎が訪ね「あんちゃんが死んだ」という。さくらは信じられなかった。
タイトル回収
最終回で寅次郎は、恩師である散歩先生の墓前で自分の気持ちを吐露する。
「先生・・・つれぇもんだね、男っていうのはよう」
テレビシリーズの最終回で、この全てのシリーズのタイトル回収を行っている。